2016/07/02

色がついたら疑え

また有名人の覚せい剤事案が発生したのだ・・・。
ラブホテルに女性といたところへ警察が踏み込んだみたいだね。
で、こういうとき、テレビドラマだとさっと検査キットを出して、「謎の白い粉末」を透明な試薬の入った小さな試験官に入れて振って確かめるのだ。
反応して色がつくと、○○の疑いあり、とか言って現行犯逮捕するんだよね。
たぶん、今回も同じようなコトが起きていると想像されるのだ。

こういう麻薬・覚せい剤の捜査で使われているのは、マルキス試薬とシモン試薬というものなんだって。
どちらも確定的に麻薬や覚せい剤だ、と証明できるものではなく、あくまでも短時間でその疑いがあるかどうかを確かめるもののようなのだ。
正式には、その粉末をより詳細に時間をかけて調べるんだよね。
もちろん、所持者・使用者については、毛髪や尿が検査されるのだ。

では、この試薬はどうなっているかをちょっと調べてみたんだ。
ネットで見つけた関東化学の説明書によると、マルキス試薬は麻薬と覚せい剤の両方を調べることができて、シモン試薬は覚せい剤を調べることができるみたい。
マルキス試薬の中身はいたって単純で、濃硫酸にホルムアルデヒドが混合されたもの。
ホルマリンと硫酸を混ぜたものと考えればよいのだ。
ここに麻薬とか覚せい剤のようなベンゼン環を持つアルカロイド(アミノ基を持つ化合物)があると、ホルムアルデヒドによって架橋され、これらの分子が重合して高分子になるのだ(アミノ基とアミノ基の間をホルムアルデヒドがつないでしまうのだ。)。
この反応が起きると、色がつく(呈色する)わけ。

ベンゼン環はもともと紫外線を吸収するのだけど、分子が大きくなるとより低いエネルギーの光を吸収するようになるのだ。
可視光を吸収するようになると、その補色に色づいて見えるんだよ。
例えば、一番波長が短い紫の光を吸収するようになると、黄色く見えるし、もう少し波長の長い青い光を吸収するようになるとオレンジに見えるのだ。
この光の吸収スペクトルは化合物の構造で決まるので、何色になったかでどんな化合物が入っているか当たりがつけられるというわけ。
覚せい剤ならオレンジ色、モルヒネ・コカインなら紫色になるよ。
刑事ドラマで液が紫色になるやつはこれなのだ!

シモン試薬は覚せい剤の有無を簡単に調べるもの。
上のマルキス試薬では、覚せい剤と反応するとまずオレンジ色になるんだけど、少し時間が経つと色が変わってくるのだ。
このとき、アンフェタミンなら褐色、メタンフェタミンなら緑青色になるのだ。
シモン試薬でも、アンフェタミンなら赤っぽいオレンジ、メタンフェタミンなら青い色になるよ。
このシモン試薬は、A液(炭酸ソーダ)、B液(ペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウム)、C液(アセトアルデヒドとエタノールの混合液)の3つを順次加えていってまぜるんだ。
それぞれ目薬の容れ物に入っているのだ。
これはわりと複雑な反応みたいだけど、錯体の構造が変わって液の色が変わるみたい。

これらの試薬で色がつくと、麻薬なり覚せい剤の疑いあり、ということで、より詳細な確認検査に回されるのだ。
似たような反応をする物質もあるにはあるので、あくまでも1次スクリーニングなんだって。
ちなみに、メタンフェタミン(昔で言うヒロポン)は今でも国内で医薬品として使われることがあって、日本薬局方にも掲載されているのだ。
日本薬局方の確認試験では、ヘキサクロロ白金(IV)試液と混ぜるとオレンジ色の沈殿ができるとか、ヨウ素試液と混ぜると褐色の沈殿ができるとかが掲載されているよ。
こっちは、覚せい剤の疑いが、というのとは逆で、ちゃんと医薬品に有効成分が入っているかどうかの確認試験なんだけどね。

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