2016/12/24

モロッコの謎を追え

フランスのスーパーにも「モロッコインゲン」が売っているんだよね。
一本ずつで買えるので、サヤインゲンやモロッコインゲンは一人前の自炊をするには助かる食材なのだ。
ナスやズッキーニは日本の者より巨大だから・・・。
この辺は量り売りのうれしいところだね。
で、このパリのスーパーで売っているモロッコインゲンもモロッコ産だったので、ボクはてっきりモロッコの野菜だと思っていたんだけど、実はそうではないようなのだ!

結論から言うと、モロッコインゲンというのはタキイ種苗の登録商標で、一般名はヒラサヤインゲン。
つぶれた形の平たいサヤインゲンの品種としてタキイ種苗が売り出しているのが「モロッコ」なのだ。
命名の由来は、モロッコ原産とかではなく、地中海沿岸地域で栽培されている「ヒラサヤインゲン」から作った品種で、映画「カサブランカ」にあやかったとかなんとか。
必ずしもモロッコのものではないのだ!
フランスのスーパーに並んでいるのも、モロッコ産だけでなく、スペインさんとかもあるから、南欧から北アフリカの地中海性気候での栽培に向いているのかも。

もともとインゲンは中南米原産の新大陸野菜。
アステカではすでに乾燥された豆が重要な食料となっていたようなのだ。
インゲンマメは高タンパクで、乾燥重量の約2割がタンパク質だというから、「畑の肉」ことダイズの3割には及ばないにしてもなかなかの数字。
肉を狩猟に頼っている中南米の生活様式から考えると、貴重な栄養源だったろうね(中南米地域では今でも重要なタンパク源だって。)。
で、これが大航海時代に欧州に渡って広まるのだ。

すでに16世紀には育てやすく食べやすい栽培作物として広がり、特にギリシアなどの地中海沿岸地域で栽培が進んだのだとか。
フランスでは、完熟した豆を使うだけでなく、未成熟のうちにさやごと食べる「サヤインゲン」としての利用が出てきたのだ。
フランス語では「haricot vert(緑のインゲン)」と言うよ。
で、サヤインゲン専用の品種も作られ、インゲンは豆とサヤインゲンの2とおりで食材として重要な位置を占めるようになるのだ。

16世紀末には欧州から中国に伝わり、17世紀の江戸時代になって日本への渡来。
一般に、隠元禅師が中国禅を日本に伝えるときに持ってきたと言われているので、日本語では「インゲン」なのだ。
ちなみに、隠元禅師は中国臨済宗の僧侶なんだけど、日本には栄西さんが茶とともに中国から持ち帰って日本独自の発展をしていた臨済宗がすでにあったので、新しく来た隠元禅師は「臨済正宗」などの名を名乗ることが許されず、臨済宗を開いた臨済義玄さんの師匠である黄檗希運さんの名を取って「黄檗宗」と名乗ることになったんだよ。
京都の黄檗山はその総本山の萬福寺のあるところなのだ。

温暖な地域では1年で三度も収穫できるほどの栽培のしやすさもあって、爆発的に広がったんだね。
関西でインゲンマメのことを三度豆と呼ぶのはそういうことらしいのだ。
で、このインゲンマメの種類の中に、赤インゲン豆(金時豆やレッドキドニービーンズ)、うずら豆、虎豆などがあるのだ。
甘納豆や白あんなんかはインゲン豆から作るから、江戸時代になってから伝わった割には和菓子食材で重要な地位を占めている気がするなぁ。
それほど役に立つ栽培作物だったんだろうね。

むかしはサヤインゲンというと固いスジがあるので、下処理として両端を追ってスジをとっていたけど、今の品種ではもうとらなくてもいいんだって!
よく母親の手伝いでやっていて、ぽきっと織る感触がすきだったんだけどなぁ。
モロッコインゲンの場合も、スジは気にしなくていいみたい。
サヤエンドウだとまだスジが気になることがあるけどね。
ここでもインゲンは優等生なのか。

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