2016/12/03

欧州冬の風物詩

パリのクリスマスマーケットに行ったんだけど、なにやらおいしそうな、香ばしいにおいが・・・。
何かと思ったら、マロン・ショー(焼き栗)。
欧州では冬のよく街中で売られているものなんだね。
ちょうど寒かったので思わず買ってしまった(笑)
はじめは天津甘栗のような感じかと思ったんだけど、ほのかな甘みとほっこりした食感。
これは全く別物だね。
どちらかというと、芋類に近いかも。
じつは、この欧州の焼き栗は、日本の栗や天津甘栗とは種類が違うんだよね。

クリの仲間は北半球の温暖湿潤な地域に広く分布しているんだけど、木材としても優秀なことに加え、実が食べられるので古代から栽培されてきたのだ。
日本でも三内丸山遺跡(縄文時代)で栽培の痕跡が見つかっているよ。
種類は異なるけれど、ユーラシア、北米では広く一般的に食べられてきたものなのだ。
しかも、ドングリと違ってあく抜きせずに食べられるので、非常に有用なんだよね。

日本の栗はいわゆる和栗というやつで、渋皮が身に密着していてはがしづらいことが特徴。
なので、生の場合は渋皮を包丁などで剥く必要があるのだ。
ゆでたり焼いたりしても渋皮が剥きづらいんだよね・・・。
中の実は淡黄色で、熱がとおるときれいな黄色になるのだ。
なお、今食用になっているのは栽培品種として、実が大きくなるもの、甘みが強いものなど品種改良を重ねた結果できたものだよ。

日本でもよく食べられる天津甘栗はシナグリという中国原産の栗。
こちらは渋皮がはがれやすく、甘みが強いのだ。
このシナグリを焼いた小石の中で砂糖をかけながら焼いたのが天津甘栗。
渋皮が密着していないので、ころんと身の部分だけが出てきて食べやすいんだよね。
これは製法に工夫があると思っていたんだけど、実は栗の種類の違いなのだ!

イタリアのピエモンテ産の栗、などと言われているのはヨーロッパグリ。
渋皮は比較的はがれやすく、実は茶色。
これが栗色(マルーン)なのだ。
本場のモンブランのクリームは茶色いけど、これは渋皮ごとクリームにしているわけじゃなくて、栗の実自体が茶色いからなのだ。
外皮に軽く切れ目を入れて炒るだけで比較的簡単に実を取り出すことができるので、欧州では街角で焼き栗が売られているのだ。
甘みは薄めだけど、デンプン質が多く、粘りけが少ないのだ。
なので、天津甘栗よりももっとほくほくした感じの仕上がりになるんだ。
このあたりが焼き芋に近い感覚を与えているのかも。

それと、重要なのは煮崩れしないこと。
これがマロン・グラッセにしておいしく食べられる理由なのだ。
和栗は実が割れやすいので、甘露煮くらいならいいのだけど、マロン・グラッセのように徐々に糖度を上げて何度も煮るという感じの製法には向かないのだ・・・。
なので、マロン・グラッセを作る場合はどうしてもヨーロッパグリが必要なんだよね。
ま、日本は日本で渋皮煮のようなものもあるので、栗の特徴にあわせておいしく食べるということかもしれないけど。

で、ここでわかりづらいのが、フランス語における「栗」の表現。
フランスでは、大きめの栗を「marron(マロン)」、小ぶりの栗を「châtaigne(シャテーニュ)」と呼ぶんだけど、もともと「マロン」というのは街路樹でもおなじみの「マロニエ(セイヨウトチノキ)の実」のことを指しているようなのだ。
もともとヨーロッパグリは、イガの中に実が3~7個入っている小ぶりの実だったんだけど、栽培品種の中に、イガの中に実が一つだけしか入っていない大きめの実ができるものができたみたい。
で、それがまるでまるでマロニエの実のようなので、「マロン」と呼び始めたのがはじまりと言われているのだ。
一方、元祖のマロニエの実は、日本のトチの実と同じで毒性があるので生食はできず、しっかりあく抜きなどの工程を経て、デンプン質だけを取り出す必要があるんだよね。
なので、本来の「マロン」だからと言って食べないように気をつけないといけないのだ!

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