2017/04/08

振ればとろり

日本では生クリームは小型の紙パックに入れて売られていることが多いけど、フランスではプラスチックボトルに入れられているのだ。
そこで、半分ほどまで減ったところで一生懸命ボトルをシェイクしたら、わりと簡単にホイップクリームになったんだよね。
はじめのうちはしゃばしゃばいっているんだけど、あるとき中身が固まって振った感じが変わるのだ。
中で粘性の高いものがごてっと動く感じ。
で、開けてみると、なかなかのホイップクリームができていたよ♪

ホイップクリームは、生クリームや植物性油脂を使ったクリームを空気と混ぜ合わせ、小さな泡をたくさん作ることで食感をなめらかにしたもの。
流動性も低くなって、とろっとした状態から形状が維持できるくらいのかたさになるのだ。
でも、これは液中に固形状の乳脂肪分があるからで、温めてしまうと乳脂肪が融けてしまい、泡構造が崩れてとろっとしたクリームにもどってしまうのだ。
ウィンナーコーヒーやカフェ・モカで生クリームを熱いコーヒーの上に載せると徐々に融けていくのはこのためだよ。
逆に、ホイップするときは、乳脂肪が融けないように、十分に冷やした状態でやるとうまくいくのだ。
お菓子作りで生クリームを冷やしながら攪拌するのはこのためだよ。

でも、かき混ぜすぎも厳禁!
あまりかき混ぜすぎると、乳脂肪が大きな塊になって分離してしまうのだ。
つまり、フレッシュバターとバターミルクに分かれてしまうよ。
こうなるともうもとには戻せないので、ホイップクリームとしてはあきらめるしかないのだ・・・。
ハンドミキサーなんかで攪拌している場合は、表面がざらついてきたら危ない証拠だって。
手でシェイクしている場合は、振り続けていると、液体状のものと固形のものが分かれるのが手に伝わる感覚でわかるよ。
どて、びしゃ、みたいな。
ただ、こうするにはかなり振らなくてはいけなくて、バターを作るのにそこまで振るのは大変だったので、むかしの手作りバターはちょっと原乳を発酵させて乳脂肪が分離しやすいようにしていたんだよね。

日本の規格(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」、いわゆる「乳等省令」)では、「クリーム」は、生乳、牛乳又は特別牛乳から乳脂肪分以外の成分を除去したもの」とされているんだ。
っていうか、乳脂肪だけを取り出した、とは言えないのは、本当に乳脂肪だけ取り出しちゃうと純粋な油脂になってしまって、いわゆるクリーム状のものではなくなってしまうからかな?
なので、食品として売られている生クリームで「クリーム」と種別が書いてあるものは、100%牛乳由来。
逆に、植物性油脂などが混ざると「乳又は乳製品を主要原料とする食品」となるんだって。
種類もいくつかあって、乳化剤や安定剤を入れたものは純乳脂肪タイプで、これはスプレー式のホイップクリームなどだよ。
植物性油脂が添加されたものは「コンパウンドタイプ」で、乳脂肪だけのクリームに比べると少しあっさりしているのだ。
さらに、植物性油脂のみのものは「植物性油脂タイプ」で、これは長い消費期限のコーヒークリーム(いわゆる「コーヒーフレッシュ」などに使われるものだよ。
乳っぽいのにくさらないのはそのためなのだ!

100%の牛乳由来の生クリームも乳脂肪の含量で分けられていて、乳脂肪が18~30%と少なめなのがライトクリーム。
コーヒーに浮かべるクリームなどに使われるのだ。
30~48%のものが「ヘビークリーム」で、これはホイップしてお菓子などに使われるんだ。
スコーンなんかにつける「クロテッドクリーム」はさらに乳脂肪が多いもので、55%だって!
バターもたっぷりで、乳脂肪もたっぷりで、さらに甘いジャムをたっぷりつけたりして、スコーンはめちゃくちゃカロリーが高い食べ物なのだ(>_<)

ちなみに、生クリームを軽く発酵させてさわやかな酸味を持たせたものがサワークリーム。
乳酸発酵なので、乳脂肪はそのままで、乳糖が乳酸になるのだ。
脂肪分が多いものが酸味でさわやかになるとは危険な食品だ・・・。
でも、通常のサワークリームの乳脂肪分は16~21%ということなので、ライトクリームの部類だね。
最近では、生クリームと牛乳を混ぜたものを発酵させて作る低脂肪サワークリーム(サワークリームとヨーグルトのミックスみたいなもの?)や、無脂肪サワークリーム(ゼラチンや増粘多糖類でとろみをつけるみたい)なんてものあるんだって。
っていうか、無脂肪サワークリームって無脂肪ヨーグルトだよね?
ちなみに、サワークリームをシェイクしまくれば、発酵バターが分離してくるのだ。
なので、むかしはバターを作る途中過程でサワークリームができていたんだよ。

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