2017/09/16

ケトルの中が、鍾乳洞やぁ

フランスの水道水は硬水。
日本と比べてめちゃくちゃ大量のカルシウムイオンが含まれているのだ。
なので、洗濯物はごわごわになるし、髪はばさばさになるし、軟水に慣れた日本人には悩みの種・・・。
でも、カルシウムがたくさん含まれているんだなぁ、と何より実感できるのは、電気ケトルの中にできる「水垢」(ライムスケイルと呼ばれるみたい。)。
っていうか、「水垢」というより、石灰の結晶が析出しているんだよね!
まるで鍾乳洞の形成を見ているようだよ。

水道水中のカルシウムは、多くの場合炭酸水素ナトリウム(Ca(HCO3)2)の形で溶けているのだ。
すなわち、二酸化炭素が溶け込んだ炭酸水の中にカルシウムが溶け込んでいる状態。
ところが、この水を熱すると、二酸化炭素の溶解度が下がって水の中から抜けていってしまって、炭酸イオンがすくなくなるため、不溶性の炭酸カルシウム(CaCO3)=石灰になってしまうのだ。
これが「水垢」の正体。

内面に石灰が析出しているわけだけど、これが意外とがっつりと張り付いているんだよね。
洗い物用のスポンジでこすった程度ではなかなか落ちなくて、メラミンスポンジを使ったり、クレンザーをつけてがりがりこすれば落ちなくはないんだけど、内面に傷がついてしまうのだ(>_<)
しかも、そうやって傷ができると、その凹凸のあるところにまた石灰が析出しやすくなるんだよね・・・。
というわけで、物理的にはがすのはあまりよい方法ではないわけ。

では、どうすればよいかというと、化学的な反応で出てきたものなら、化学的な反応で除去すればよいのだ。
炭酸カルシウムは水には溶けないけど、酸には溶けるし、水中に炭酸水素イオンが大量にあれば、炭酸水素カルシウムとして再び水に溶けるようになるので、それを使えばいいわけ。
酸としては、手軽に使えるのはお酢。
食用酢に含まれる酢酸と炭酸カルシウムが反応して、水溶性の酢酸カルシウムと炭酸になるので、石灰を溶かすことができるよ。
酸性雨が石灰岩やコンクリートを溶かしていくのと同じ。
でも、反応はそんなに早くないし、強くもないので、できれば熱を加えた方がよいのだ。
少量の酢を溶かした水をケトルに入れて、沸騰させてからしばらく放っておくわけ。
においは酸っぱいけど、けっこう落ちるよ。

炭酸水素イオンを添加する簡単な方法は重曹(炭酸水素ナトリウム=NaHCO3)を使う方法。
こちらの場合、あまり熱をかけると炭酸水素イオンが二酸化炭素として抜けていってしまうので、ぬるま湯程度がおすすめ。
ぬるま湯にたっぷりの重曹を溶かしたものを入れて、がしがしと振るとよいのだ。
これは、小学校の理科の実験で、石灰水に息を吹き込むと最初は白く濁るけど、さらに息を吹き込み続けると又透明になるのと同じ原理だよ。
石灰水は水酸化カルシウムの水溶液で、ここに息を吹き込むと呼気中の少量の二酸化炭素が水に溶け込み、炭酸カルシウムが析出して、白濁するのだ。
さらに二酸化炭素を加えると、水に不溶の炭酸カルシウムが水に可溶の炭酸水素ナトリウムになるので、濁りが消えるわけ。

実は、この方法は水垢だけでなく、茶渋にも有効なんだよ。
茶渋は茶に含まれるポリフェノール類とカルシウムが反応して固まったもの(カルシウムを中心にポリフェロールがキレートで重合するのだ。)。
なので、ここからカルシウムをはがしてやればよいわけ。
やっぱりカルシウムイオンが水により溶けやすい状況を作ればいいので、お酢や重曹が有効だよ。
がっつりと茶渋がついてからだとなかなか落ちないけど、初期の段階でケアしてあげればかなりきれいに落とせるみたい。
やっぱり早め早めの対応が大切だよね。

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