2018/07/07

これが本来の味?

中東の某国に出張に行ってきたのだ。
人生ではじめてのアラブ地域。
ちょっと最近の政策課醸成を踏まえると、怖い感じがするよね・・・。
行ったところは治安は全く問題なかったんだけど。
むしろ、その蒸し暑さがきつかった。

そんな蒸し暑い中で提供されるのが、カフワ・アラビーヤ。
アラビック・コーヒーと呼ばれるものなのだ。
初めて飲んだけど、これはいわゆる「コーヒー」とは別物。
まず、色が違う。
泥水のような薄い茶色。
そして、カルダモンの風味。
なんだか薬湯を飲んでいるみたい。

淹れ方を調べてみると、その色も納得。
アラビック・コーヒーに使われるコーヒー豆はほとんど焙煎していないものなのだ。
ちょっと黄色くなった程度。
それを黄土色の粉にして使うんだ。
とってつきの鍋に超浅煎りコーヒーの粉と水を入れ、カルダモンで風味をつけつつ沸騰して煮出すんだよね。
それをそのままポットに移し、粉が沈んだ当たりで上澄みを小さなカップに入れて提供するのだ。

コーヒー豆は使っているので、しっかりとカフェインは入っているんだろうけど、いわゆるコーヒー特有の「苦味」はないので、別物に感じてしまうんだよね。
砂糖などは入れず、甘いデーツと一緒にいただくのが標準なんだって。
ラマダン中に日の入りとともに最初に口にするのが、このアラビック・コーヒーとデーツの組み合わせという地域も多いみたい。
それだけアラブ地域では浸透しているものなのだ。

実は、淹れ方自体はトルコ・コーヒーにそっくり。
トルコ・コーヒーも粉と水を鍋に入れ、煮出して作り、カップに注いで粉が沈んだところで上澄みを飲むんだよね。
でも、煮出すときにコーヒーの粉とほぼ同量の砂糖を入れるので極めて甘いのだ。
さらに、使うコーヒーも焙煎したものなので、いわゆる「コーヒー色」のものだよ。
カルダモンは入れたり、入れなかったり。

アラビック・コーヒーも最初はそれに近いものと勝手に思っていたのでびっくり!
色がついていないし、いわゆるコーヒーの香りもしないので、コーヒー豆を使っていないのかとも思ったよ。
それくらい異なるものなんだよね。
でも、コーヒーの歴史からすると、生のコーヒー豆を煮だして飲んでいたのが最初だったようなので、むしろアラビック・コーヒーの方が原点に近いようなのだ。
豆が煎られるようになったのは13世紀以降で、それまでは乾燥させただけの豆や葉を煮出して、カフェインが溶け出した煮汁を飲んでいたようなのだ。
ま、焙煎した豆で淹れたものが世界の主流ということは、そっちの方が好まれたんだろうね。
イスラム世界では、クルアーン(コーラン)で「炭」の食用が禁止されているようで、煎ったコーヒー豆が炭に似ているので、あまり焙煎しないで淹れるスタイルが残ったんじゃないかと推測されるのだ。

いずれにせよ、アラビック・コーヒーもトルコ・コーヒーも、ユネスコの無形文化遺産に登録されているんだよね。
飲み物そのものというより、その飲み物にまつわる文化や習慣なんかを含んでいるんだけど。
アラビックコーヒーの場合も、アラブ地域の遊牧民であるベドウィンが客人にアラビック・コーヒーを振る舞う、という文化で登録されているんだって。
「おもてなし」の精神込みってことだね。

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