2018/10/27

ミルクと混ぜるだけ・・・?

ボク自身は牛乳が苦手だったこともあって食べたことはないのだけど、フルーチェってあるよね。
牛乳と混ぜるだけでぷるぷるのデザートができるハウス食品の商品。
最近では100円ショップにも量が少なくなっている廉価版があるそうで。
CMは見なくなったものの、人気商品なのかな。
で、このフルーチェ、きちんと作らないと固まらないそうなのだ!

作り方は至って簡単。
常温のフルーチェに冷たい牛乳を加え、よく混ぜる、それだけ。
すると、とろみが出てきてぷるんぷるんになるのだ。
ところが、この「牛乳」の選択を誤ると、失敗するんだって。
豆乳がダメなのはまだいいとして、カルシウム増強乳とか、そういうのではダメなのだ。
より具体的には、無調整でも低脂肪でも無脂肪でもよいのだけど、「牛乳」となっているのはOKで、「加工乳」や「乳飲料」と書いてあるものはダメなことが多いんだって。
それはなぜなのか?

その前に、まずはフルーチェの固まる仕組みを知らないとだよね。
フルーチェが固まるのは、ペクチンがカルシウムと反応してゲル化するから。
端的にはそうなんだけど、わかりづらいよね(笑)
ペクチンは、ジャムなんかの粘性の原因にもなっている多糖類で、植物の細胞壁などに由来するもの。
例えば、リンゴを皮ごと煮ると溶け出してくるよ。
このペクチンは、糖度が高い状態で酸性になると固まる性質があって、ジャムに粘性が出るのはこのため。

ペクチン分子の間の水素結合によりゲル化するんだけど、糖度が高くないとまわりにたくさんある水分子と水素結合してしますので、まずは糖度を高くして、ペクチンより水分子と水素結合しやすい糖に水をトラップさせる必要があるのだ。
加えて、酸性にすることにより、ペクチンの分子中にあるカルボキシル基(-COOH)の電離が抑えられるので、さらに水分子と水素結合しづらくなるのだ。
結果、ペクチン分子同士が水素結合で集まって、ゲルを形成することになるわけ。

で、ジャムが固まるのはこのメカニズムなんだけど、フルーチェはちょっと違うのだ!
ジャムが固まるときのペクチンはHMペクチン(高メトキシペクチン)と呼ばれるもので、カルボキシル基の多くがメタノールとエステル化したもの。
つまり、自由に電離できるカルボキシル基が少ないもの。
フルーチェに使われているのはLMペクチン(低メトキシペクチン)で、HMペクチンを処理してエステル化の割合を減らしたもの。
このLMペクチンはカルボキシル基が多いので、カルシウムイオンの存在下でゲル化するのだ。
カルシウムイオンの正の電荷が中心になって、そのまわりにLMペクチンの負の電荷(カルボキシル基由来)が集まるような感じで、カルシウムイオンで「架橋」されるんだよね。
カルシウムイオンが+2価なので、こういうことができるのだ。

フルーチェと牛乳をまぜると固まるのは、牛乳中のフリーのカルシウムイオンによりこの「架橋」が行われるため。
粉末の脱脂粉乳を混ぜても、フリーのカルシウムイオンがないから粉っぽくなるだけでかたまらないよ。
無脂肪でも低脂肪でも、液中にフリーのカルシウムイオンがあればフルーチェは固まるのだ。
では、なぜ加工乳や乳飲料ではダメなのか。

それは、加工乳や乳飲料の多くには「安定剤」が入っているため。
安定剤は、加工乳や乳飲料の成分が分離せず、均等に分散するように加えられるもの。
例えば、果汁が入った飲むヨーグルトは、そのままにしておくと乳脂肪分が沈殿しちゃうんだよね。
これは発酵バターを作るときの原理と同じ。
でも、ここに安定剤であるペクチンを入れてあげると、乳脂肪が分離しなくなるのだ。
ここでのペクチンはHMペクチンだよ。

すると、この安定剤のHMペクチンが一緒に入っている状態だと、フルーチェの中のLMペクチンとカルシウムイオンを取り合うことになるのだ。
HMペクチンは、LMペクチンに比べてカルボキシル基(=カルシウムイオンとつながる部分)が少ないので、カルシウムイオンとLMペクチンによる網目構造が途中でぶちぶち切れることになるのだ。
カルシウムイオンとLMペクチンの網目構造が水分子を包含してゲルになっていくんだけど、それがほころぶんだよね。
これにより大きな網目構造ができないので、ゲル化が阻害されるわけ。

というわけで、フルーチェを作る場合は、安定剤(ペクチン)が入っていない、「牛乳」を使う必要があるよ。
ものによっては安定剤の種類が違ったり、量が少なかったりで固まる場合もあるみいだけど、やっぱり「牛乳」で作るのがよいみたい。
無脂肪乳や低脂肪乳は「除いて」いるだけで、足してはいないからね。
でも、そういう意味では、安定剤が入っていなければいいのなら、プレーンのヨーグルトのような安定剤が入っていないものなら固まるはず。
自分ではやらないけど、やってみたらおもしろいかも。

0 件のコメント: