2019/06/22

茶色い木の実

フランスで「カフェ・ノワゼット(café noisette)」というと、エスプレッソに少しだけミルクを加えたもの。
コーヒーの色がノワゼット=ハシバミの実=ヘーゼルナッツの色になるからなのだ。
ここで言うノワゼットの色は、ナッツ自身の色じゃなくて、その外側の殻の色だよ。
ハシバミの実はドングリのようなずんぐりした形でドングリより少し大きく、少しクリームがかった茶色い色をしているのだ。

日本でヘーゼルナッツと言われているのはカバノキ科のセイヨウハシバミの実。
これは欧州・地中海地域の原産で、欧州では非常にメジャーな木の実なんだ。
古代の地層を見ても相当広い範囲で分布していたことが確認されているので、きっと古くから食用にされて人間が広めていったのだ。
グリム童話に掲載されている「灰かぶり姫(シンデレラ)」では、魔法使い(いわゆる「フェアリー・ゴッドマザー)」は出て来ず、小鳥たちがお母さんのお墓の横に生えているハシバミの木の枝からドレスや靴を落としてくれるんだよ。
小鳥たちがよってくる木だから選ばれたんだろうけど、その辺どこにでもあるような木なんだろうね。
和名の「ハシバミ」は東洋原産で、ロシア沿海地方から東アジア北東部に生えていたもの。
早いうちに日本にも渡ってきていて食用にもされていたようだけど、ヘーゼルナッツほどはメジャーにならなかったみたい。
ちなみに「ハシバミ色」というのはこの東洋のハシバミの色ではなくて、セイヨウハシバミの色のことのようだから、やっぱりあまり好まれていなかったんだろうね。

ところが、欧米の人たちはヘーゼルナッツが大好き。
そのまま煎ったものを食べるし、砂糖を加えてカラメル化したプラリネはお菓子によく使われる材料でもあるのだ。
アーモンドも多いけど、欧米のナッツ風味のお菓子の多くはこのプラリネを使っているよね。
チョコレートとも相性もよく、チョコレートに焙煎したヘーゼルナッツを粉にしたものを混ぜたのがジャンドゥーヤ(アーモンドの場合もあるよ。)。
もともとはナポレオン時代にカカオ不足を補うために考案されたらしいけど、このナッツ風味のチョコレートは今や基本中の基本だよね。
そして、欧米人が大好きなのは、イタリアのフェレロ社が作り出した大ヒット商品のヌテラ。
これはただのチョコレート・スプレッドではなく、ジャンドゥーヤ風味。
ただのチョコレート風味じゃ物足りないのかな?

そして、ノワゼットと言えば、「カス・ノワゼット(Casse Noisette)」。
これは日本語では「くるみ割り人形」だけど、仏語だと「ハシバミ割り」なのだ。
英語では「Nutscracker」で対象がかなり広いんだよね。
もともとは木の実類の固い殻を割る道具なので、英語の表現が正しいんだけど、フランスでは代表的な木の実として「クルミ(noix)」ではなく、「ヘーゼルナッツ(noisette)」が選ばれたということなんだろうね。
それだけ好かれているのか。
逆に、日本だと「ハシバミ」がマイナーだから、なじみのある「クルミ」が選ばれたんだろうね。
日本ではナッツというとピーナッツだけど、これは豆であって厳密にはナッツではないし、そもそも殻を剥くのに道具は必要ないからね。
こういうところにも文化の違いが出てきて面白い。

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