2020/02/22

やつを補足せよ

新型コロナウイルスが猛威を振るっているのだ。
不特定多数の人が集まるイベントが中止になる例も出てきているね。
現時点では、カゼっぽい症状が続いているなぁ、と思ったらとりあえず自宅で静養するように、という流れになっているよ。
厚生労働省が先に示した「目安」でも、まずは学校や職場を休んで外出を控えること、と書いてるのだ。
その上で、一定の基準を満たす症状がある場合はまず電話で相談し、その後やっと医療機関を受診するように、となっているんだ。

これには明確な理由があって、端的に言えば、大勢の人に来られても新型コロナウイルス感染かどうかの診断がすぐには下せないから。
客船ダイヤモンド・プリンセス号の件でもそうだけど、現時点では、感染しているかどうかを検査するのにかなり時間と手間がかかるので、そもそもカゼを引きやすいこの時期に「疑わしい」人たちが大挙して押し寄せられても困るというのが実情なのだ・・・。
多くの場合は重症化しないといわれているから、自宅で静養して直してくれれば、というところなんだろうね。
「目安」でも、重症化しそうな兆候がある人に相談や医療機関での受診を呼びかける内容になっているよ。
自然に治る人たちなら、他人に伝染させないようにして治してもらう、ということ。
自主的な「隔離」を求めているわけだね。
これは普通の風邪でも、インフルエンザでも同じなんだけど。

でもでも、このままではらちがあかないので、簡易に検査できるキットの開発が進められているのだ。
かつて重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した際も、国立感染症研究所が民間企業と協力して簡易検査キットを開発したんだよね。
SARSもコロナウイルスによる感染症なので、そのときの知見なんかも生かしながら開発が進められているようなのだ。
検査に当たっては、偽陽性(感染していないんだけど陽性と出てしまう)と偽陰性(感染しているんだけど陰性と出てしまう)がこわいんだけど、こういう「パンデミック」のおそれがあるものについては、カニ検査の場合はとりあえず偽陽性が出るようなものでも短時間で検出できるものが望まれるんだよね。
逆に、偽陰性は感染拡大のリスクを招くので危ないのだ。
後で簡易検査に陽性の出た人だけより精度が高いけど時間のかかる方法で調べればいいだけなので。

SARSの時に開発されたのは、LAMP法というもの。
これは、標的遺伝子の6つの領域を選んで組み合わせた4種類のプライマーを使って特定の配列を「つなげたまま」増幅させるもの。
特定の配列を増幅させる手法としてはPCR法もあるんだけど、PCR法の場合は、高温下で二本鎖DNAをはがし、少し温度を下げてDNA合成酵素が特定の領域を増幅し、またそれをはがして、と繰り返して、一定の長さのDNAを増幅していくんだけど、温度の上げ下げを繰り返すので結構時間がかかるのだ。
しかも、特定の領域がきちんと増幅されたかどうかは、寒天ゲルに電気泳動してその長さを確かめる必要があって、どうしても数時間かかるんだよね。
LAMP法の場合は、二本鎖を引きはがしながらDNAを合成する酵素を使ってループ上に特定領域をつなげたまま繰り返し繰り返し増幅していくんだけど、一定の温度下で反応が進行するのだ。
で、もともとの長さの整数倍の長さのDNAができるわけ(何倍かはどこで反応が止まるかなのでランダム)。
でも、増幅される特定の領域があるかどうかはDNA合成反応が起こったかどうかのゼロサムでわかるんだ。
特定の領域を含む試料の場合は、30分~1時間くらいで増幅されたDNAで白濁するので目視でわかるのだ。

もう一つ開発が進められている方法がイムノクロマト法。
これは濾紙の上に特異的抗体があらかじめ固定されているもので、その上に検体と金コロイドなどで標識された抗体をのせるのだ。
標識用の抗体と濾紙上の抗体はそれぞれウイルス固有のタンパク質の別の場所を認識するもので、まずは標識用抗体が検体中のウイルスタンパクと反応し、それが毛細管現象で濾紙上を拡散していく際に、濾紙上の別の抗体にも反応するのだ。
すると、その抗体が固定されているところで検体と標識用抗体が補足されるんだよね。
標識用抗体には金コロイドなどがついているので、濾紙上で抗体が固定されている場所で補足されているかどうかは目で見てわかるのだ。
これは15分~30分くらいで検査できるよ。
ノロウイルスの検出なんかにも使われているんだって。
ただし、うまい具合に抗体を2種類調整しないといけないのが難しいのだ。

というわけで、とりあえず簡便に検査ができるように技術開発が進められているわけ。
それらが実用化されれば、すぐに感染の有無が確認できるから、手の打ちようも出てくるんだよね。
というわけで、現下の状況では喫緊の課題なのだ。

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