2020/07/04

ゆれてゆられて

ボクも小さい頃はけっこう乗り物酔いしたんだよね。
長距離のバス移動なんかはきついし、船もよく揺れるようなやつはダメ。
なので、よく乗り物酔いの薬のお世話になったのだ。
正直、聞いているかどうかはあやしいのだけど(笑)
気休めくらいにはなっていたのだ。
まさにプラシーボ効果だね。

この乗り物酔い、実は今もってどういうメカニズムで発生しているかよくわかっていないんだって。
っていうか、「乗り物酔い」っていうのをどう定義するかの問題もあるんだよね。
バランス感覚を司っている三半規管に影響が出て諸症状が起こっているのは確かなんだけど、その症状は、頭が重くなる、気持ち悪くなって場合によっておう吐する、冷や汗が出る、血の気が引くなどなど。
どういうメカニズムでそういう症状が出てくるかの詳細はわからないのだ。

本音を言えば、死ぬような症状ではなく、不快だ、というだけなので、医学者がしのぎを削って突き詰めていく、ということがなかったんだよね。
でも、この不快感をなんとかしてほしい、というニーズはあるので、酔い止めの薬というのは存在しているのだ。
ところが、この酔い止めの薬の開発が大変だったんだ。
というのも、小型実験動物としてよく使われているネズミやウサギは乗り物酔いをしないのだ!
ひょっとしているとしているのかもしれないけど、外から見ただけでは撚っているかどうか判断できないのだ。

人間と同じように乗り物酔いするのは、イヌ、ネコ、サルなどの大型の動物ばかり。
これらの動物は乗り物酔いをすると「吐く」んだよね。
なので、撚っているかどうかが明らかなのだ。
でも、実験動物としては大きいし、何より1匹1匹が高い!
そこで、小型の実験動物が求められていたのだ。
そこで目をつけられたのが、ジャコウネズミ。
ネズミと言ってもむしろモグラの仲間でげっ歯類ではないのだ。
なので、実験動物そしては「スンクス」と呼ばれることが多いよ。
ちなみに、このスンクスを実験動物の傾倒して確立したのは日本なのだ。

スンクスはネズミくらいの大きさで、揺れる台の上に固定して適宜揺らすと乗り物酔いをして、吐くんだよね。
なので、薬を投与してその様子を観察すると、吐き気が抑えられたかどうかがわかるのだ。
こうしていろんな薬が試されていって、今では確立した酔い止めの薬というのが存在しているのだ。
なんで聞くのかわからないものもあるのだけど。

その中で、比較的作用がわかっているのが、抗ヒスタミン剤。
風邪薬や花粉症の薬に入っているもので、眠気をもたらす副作用もあるよ。
この副作用は中枢神経系に対して鎮静作用を持っているからなんだけど、どうもこれが他にも聞いているのだ。
実は、吐き気についてはわりとよくわかっていて、脳の中にあるCTZ(化学受容トリガー領域)という部分があって、そこが刺激されるとおう吐反応が起こるのだ。
なので、そこを抑制すると吐き気が止まるわけ。
まさに抗ヒスタミン剤はここに作用することが知られているよ。
ただし、実は問題があって、ここに薬を作用させると吐き気は止まるんだけど、気持ち悪さ(悪心)までが解消されるわけではないらしいのだ。
つまり、ここだけをターゲットにして薬を作っても、「気持ち悪いんだけどはけない」という最悪な状況をもたらしかねないのだ。
なので、実験動物で調べた後、ヒトがどのように感じるかを詳細に調べる必要があるんだよね。
こういう「気持ち悪さ」みたいなのは数値化もしづらいので、けっこう大変なんだと思うよ。
でも、酔い止めというのは、臨床現場で使われるようなくすりではないし、ある程度プラシーボ効果も見込まれるもので、そこまで厳密でなくてもなんとかなっているんだよね。
とはいえ、つわりの軽減や抗がん剤の副作用である悪心・おう吐への対応という他の用途もあるので、さらに研究は進められているみたい。

この乗り物酔いという状態には、加速度の時間変化である躍度又は加加速度が関係していると言われているお。
距離の時間変化(時間による微分)が速度、速度の時間変化hが加速度で、加速度がどのように時間変化をするか、というもの。
このままだとイメージしづらいし、直線運動だと理解しづらいんだよね。
ある点を中心にそのまわりをぐるぐる回る等速円運動を考えると比較的イメージしやすいのだ。
等速円運動をしているとき、その物体は円の中心方向に引っ張られるように力がかかっていて、進行方向から見て円の中心方向に90°ずれた方向に加速度がかかっているのだ。
この加速度が一定だと同じ速度で円を描くんだけど、この加速度がぶれると、その円がぐちゃぐちゃになるのだ。
まさにカーブを曲がるときにきれいになめらかな曲線を描いて曲がるのではなく、ふらふら揺れながら曲がる感じ。
そういう動きを思い浮かべると、確かに乗り物酔いしそうだよね。
それと、加速度の時間変化というのは、来るまで言えばアクセルやブレーキのきかせ方ということなのだ。
アクセル踏みっぱなしでどんどん速度を上げている時は快適だけど、頻繁にアクセルの踏み込み具合を変えたり、ブレーキをちょこちょこ踏んでみたりすると車の動きがぎこちなくなるよね。
下手な運転で車酔いしやすいのはこういうところに原因があるみたい。

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