2020/10/10

御不在の間

 十月と言えば「神無月」。
国中の神様が出雲に集まるので、各地で神様が不在になるから「神無月」、逆に、出雲は神様が集まるので「神在月」なんて言うのだ。
でも、これって後付けのものなんだって。
先に「カンナヅキ」という音の言葉があって、それに「神無月」という字を当ててから出てきた俗信らしいよ。
といっても、すでに中世、平安時代には広まっていたと言うから古い話ではあるのだ。
でも、そのころすでに「カンナヅキ」の語源がよくわからないようになっていたんだね・・・。

これはわりと広く信じられていたようだけど、ひと月の間神様が全く不在ではさすがに困ってしまうよね(>o<)
で、「留守神」というものがあるのだ。
これは、神無月になっても出雲に行かず、地元に残ってくれる神様のこと。
多くの場合、かまど神や田の神のような、日常生活に密着していて、不在にされたら困るような神様と認識されているのだ。
かまどは生活に不可欠なものである一方、火元の不始末は火事につながるわけで、きちんと神様をまつらないんだよね。
1日かそこらなら火を使わない、というのもできるかもだけど、もっと長いからね。
それに、旧暦とは言え、神無月だと米の収穫が終わった後の収穫祭なんかもあって、農耕地では秋祭りがある場合もあるので、お祭りの時に神様がいないというのも都合がよくないのだ。

そうした流れで「留守神」という概念ができてくるわけ°、なぜかそこにかまど神と同一視されることの多い大黒天だけでなく、恵比寿神が入ることが多いというのだ!
これは不思議。
大黒・恵比寿の二柱セットでお祭りする例が多いからなのか、豊漁の神様として漁村地域で「留守神」になっていたのがひろまったのか、「商売繁盛」の福神としおてひと月も不在にされたら困るということなのか。
よくわからないのだけど、「留守神」というと「恵比寿が多い」と言われるくらいには広まっているんだって。

こういう系列とはさらに別に、出雲に行かない神様もいるのだ。
もっともメジャーなのが諏訪大明神。
諏訪大社にまつられている竜神だけど、あまりにも恐ろしく大きな姿なので、他の神様が驚いてわざわざ諏訪明神には来ていただかなくても、となったとかいう話なのだ。
もともとなんで集まっているかは諸説あるんだけど、「縁組みの相談」をしているとかいうのもあって、確かにそういう話なら荒ぶる竜神にわざわざおこしいただかなくても、とはなるよね(笑)
一方で、むしろ竜という蛇身なので、八岐大蛇が退治された出雲の地へ行かないようにしているなんて説もあるそうな。
実際、この時期にはちょうど、おとなりの石見国では伝統的に神楽の奉納が行われるんだけど、それは八岐大蛇退治の話なんだよね。

そして、出雲に行かない神様として有名なのは、能登国羽咋の鍵取明神。
この神様は、他の神様が不在にする間鍵を預かって守る、という伝承があるのだ。
なので「鍵取」なんだよね。
そんなに大きな神社ではないようだけど、延喜式にも載る式内社で、崇神天応の時代に創建と言うから由緒ある神社だよ。
現在は「志乎(しお)神社」という名前で、戦前の社格は郷社。
「鍵取」という名前が先なのか、伝承があるから「鍵取」になったのかはよくわからないみたい。

ちなみに、諏訪明神も鍵取明神も、再試されている神様は武御名方(タケミナカタ)なんだよね。
そして、恵比寿といえば、事代主(コトシロヌシ)のこととされることもあるよね。
さらに、かまど神と同一視されることのある大黒天といえば大国主(オオクニヌシ)。
なぜか国譲りの三柱の神がそろってしまうのだ。
これは意味があることなのか、偶然なのか?
出雲に集まるのは国津神だけという伝承もあるんだけど、その場合は他の神様に会いたくないなんて事も考えられちゃうよね。
もっとも、出雲大社の祭神は大国主なので行くも行かないもないのだけど(笑)

0 件のコメント: