2021/03/06

ひな祭りリキュール

 3月3日はひな祭り。
もともとは健康長寿を願う「上巳(桃の節句)」だったんだよね。
ひな人形も最初は飾るものではなく、川に流すもので、汚れを人形に託して川に流すことで健康を願ったのだ(「流し雛」)。
これがどうも江戸時代くらいにひな人形を飾る風習に変わり、そこに備えられるようになったのが白酒だよ。
室町時代には桃の花を浸したお酒を飲んでいたらしいんだけど、それが江戸時代に今のような白酒になったようなのだ。
一見濁り酒のように見えるけど、実は全く異なるものなのだ。
上品などぶろくとばかり思っていたよ(笑)
甘口のお酒なので、婦女子向けなんだって(っていうのもおかしな話だけど・・・)。

また、白い色に意味もあると考えられていて、花嫁衣装である角隠しや白無垢が示すように、白い色は純粋無垢であることの象徴で、そのために女の子の祭りにふさわしいと考えられたとも言われているみたい。
酒自体には清め、払いの意味がもともとあって、かつてはの桃の節句は不老長生を願って桃の花びらを浮かべたわけだけど、江戸時代に女の子の節句となってからは、こういう意味合いも出てきたんだろうね。
ひな祭りの食事と言えば、ちらし寿司とハマグリの吸い物が定番だけど、夫婦和合の象徴であるハマグリも幸せな結婚を願うとの観点でひなまつりに入ってきているようなのだ。
今はそういう社会ではないけど、当時の日本では、女の子は幸せな結婚をすることこそが大事だったからね。
そういうからみの縁起物が混ざってくるのは仕方ないのだ。

白酒は混ぜて作るもので、焼酎やみりんといったアルコール度数の高いお酒に蒸したもち米と米麹を加え、熟成させたもの。
これって、焼酎やみりんに甘酒を混ぜているようなものだよ。
麹はデンプンを分解して糖を産生するので、甘みが出るのだ。
でも、強いアルコールの存在かだし、ここには酵母、つまり、酒母や酛(もと)と呼ばれるものは入っていないので、産生された糖がアルコールに発酵することはないのだ。
その辺にも自然酵母はいるけど、アルコール存在下では増殖できないので、それだけじゃ発酵は進まないよ。
なので、後から加えているもち米は、まさにアルコール発酵の手前で止める「甘酒」の状態なんだよね。
最終的には、残っている粒をよくすりつぶしてできあがり。
どぶろくの場合はまだ粒が残っているけど、白酒はすりつぶしているので、全体的にもわっとしているのだ。

で、この製法のため、酒税法上は「リキュール類」に分類されるんだって。
仕上がりでは、アルコールは9%程度、糖分は45%程度というから、かなり甘めのお酒だよね。
甘いだけでそれなりにアルコールは強いから悪い酔いするタイプのやつだ・・・。
強めのアルコールに果汁などを混ぜるカクテルと同じ。
もっと言うと、焼酎に混ぜものをして飲みやすくする酎ハイと同じなのだ。
焼酎の甘酒割だよね(笑)
逆に言うと、わざわざ白酒を買ってこなくても、家にある甲種焼酎に買ってきた麹甘酒を混ぜても良いのかも。

この白酒で特に有名だったのは、神田猿楽町にあった豊島屋。
一説には、ひな祭りの白酒はこの店から広まったとも言われるくらいだよ。
もともとしろ酒は高級な甘いお酒として季節を限定せずに売られていたらしいんだけど、この豊島屋が桃の節句前に売り出すのが大いにもてはやされたんだそうだよ。
江戸での白酒の元祖と言われていて、桃の節句に白酒がつきものになって行くに当たって大きな貢献をしたのは確かみたい。
現在は所在地は東村山に移っているけど、白酒の製造は続けていて、皇室へも届けているとか。
ちなみに、今でも豊島屋は白酒の売り出し時期をひな祭り前の一時期に限定しているんだって
そう言われるとちょっと試してみたい。
機械ですりつぶすのではなく、昔ながらの伝統製法に従って石臼ですりつぶしているので、ものすごくきめの細かい白酒だそうだよ。

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