2021/07/03

ジャパニーズ・ミックス

一時期廃れたと思われた大食い番組が復活してきているのだ。
これはYouTubeの影響なんかもあるのかな。
自分は食べられないけど、合成に食べるのを見たい、という趣向はあるみたい。
そして、それと同じくらいよく見かけるようになったのが激辛チャレンジ。
一昔前は罰ゲーム的な扱いだったけど、今となっては、最初から辛いものに挑戦し、完食できたらすごいと褒められる、みたいな感じで、大食いのプロットがそのまま援用されているような感じなのだ。
確かに激しく辛いものを食べられるのはすごいけど、自分で食べるなら、辛さはそこそこでうまみがほしいよね(笑)
っていうか、辛いだけじゃいやだよね。

食欲をそそる、とかそういう意味においては、辛さだけでなく、香りが重要と思うのだ。
うちは一味と七味を使い分けているけど、単純に唐辛子の辛みがほしいときは一味だけど、そばに入れたり、焼き鳥につけたりするなら風味付けのために七味だよね。
探してみると、世界中に同じようなコンセプトと、辛みと風味が一体化した混合スパイスがあるのだ。
七味唐辛子は日本代表だけど、中国には五香粉、インドにはガラムマサラ、米大陸にはチリパウダーなどなど。
これを使うだけで、結構本場の味に近づくんだよね。
五香粉なんかは入っていると本格中華の風味になるよ(笑)
チリパウダーもそうで、ただ唐辛子で辛いだけだと無国籍だけど、そこにオレガノやクミン、ディルなんかの風味が加わってチリパウダーになると、とたんにテクス・メックスに。
ガラムマサラも香り付けに加えると、カレーが家庭料理からインド料理に変わるよ。
そういう意味では便利だよね。

そういう意味では、日本代表の塩地味は少し毛色が違うのだ。
七味はあくまでも風味付けで、日本らしい風味にするのは醤油だったり、味噌だったり、昆布や鰹の出汁だったりするよね。
そこにアクセントを加えるもので、七味を使っても日本らしくはならないのだ。
でも、そばにチリペッパーを入れると日本らしくはなくなるけど・・・。
おそらくこれはそもそもの香辛料の使い方の違いなのかも。
香辛料はもともと、風味付けと言うよりは臭み消しに重要な意味があったのだ。
欧州で胡椒をはじめとした香辛料が珍重されたのも、鮮度が落ちて多少悪くなった肉をおいしく食べるためだよね。
欧州でも、新鮮な食材は塩と香草だけで食べたりするし。
イタリアのアクア・パッツァなんかは塩と魚貝から出る出汁でおいしく食べるもの。

日本はというと、仏教が普及して以降、そもそも獣肉をあまり食べなくなっているのだ。
海産物の場合は鮮度が落ちるとすぐに食べられなくなるから、鮮度のよい打ちに食べるか、干物や塩漬けなどの加工品にするかなので、香辛料を使ってちょっと傷んだものを食べる、ということもまずないし。
たまに食べる獣肉(イノシシ、シカ、ウマ、ウサギ)なんかでも、臭み消しはショウガと味噌程度だよね。
頻繁に食べるものではないし、食材の調達地と消費地がそこまで離れていないので、それで足りたのかも。
なので、香辛料的なものはアクセントとして風味をつける、という方向で使われることが多かったのだ。
ジャパニーズ・ペッパーと呼ばれる山椒なんかはまさにそうで、ぴりっとはするけど、その辛さを前面に出すことはあまりなく、やっぱりさわやかな香りを期待するものだよね。
紫蘇や葱、茗荷、山葵なんかと同じで薬味なのだ。

それが凝縮しているのが七味。
7種類のスパイスを混ぜることにはなっているけど、何を混ぜるかは厳格に決まっていないし、そもそも7種類じゃない場合も。
「七味唐辛子」という名前なので「唐辛子」は絶対に入るとしても、常勤メンバーは、山椒、麻の実、胡麻、陳皮など。
これに紫蘇や青のり、生姜、芥子なんかがくわわるけど、ブレンドはむしろそれぞれのお店の腕の見せ所なのだ。
ボクは祇園の原了郭の黒七味が好きだけど。
老舗もあって、日本最大七味と呼ばれるのは、浅草のやげん堀(元は両国薬研堀にあった)、京都三年坂の七味屋、長野善光寺門前の八幡屋礒五郎の3つなんだって。

起源の説はいろいろあるんだろうけど、江戸初期に両国薬研堀で唐辛子に山椒や胡麻、陳皮などを混ぜた「なないろ」というい名の混合スパイスが販売されるようになったのが最初と言われるよ。
この店が浅草仲店に移転したのが今の「やげん堀」。
当時は、お祭りの露店に来ている店のように、客の要望に応じてブレンドを買えてくれたようで、山椒多め、とか、胡麻抜き、とかもできたとか。
これが名物になって各地に広まっていったんだけど、特に有名になったのが、残りの二つだったみたい。
京都の清水寺に行ったついでに七味を買うのは定番だし、善光寺の最寄り駅であるJR長野駅にはそれこそいろんな七味が売られていて、今でも人気なのだ。

現在は海外にも展開されているんだよね。
海外で日本食というと寿司や天ぷらが定番だったけど、いまは「焼き鳥」もメジャーなのだ。
材料的にも作りやすいしね。
で、この焼き鳥の普及とともに、七味も使われるようになっていったみたい。
ところが、海外の人には「しちみ」というのが発音しづらいし、「いちみ」ともまぎらわしいので、スパイス大手のS&Bは、海外販売用は「nanami」という名称で販売しているんだよ。
今はコロナで行けないけど、海外に行ったらスーパーなどにもあるので、確かめてみると面白いよ。

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