2021/07/24

登録抹消

 つい先日、オンラインで開催されている第44回世界遺産委員会で、英国の世界遺産のひとつが登録抹消になったのだ。
「海商都市リヴァプール」だよ。
原因は都市の再開発で、もともと問題視されていて「危機遺産」登録はされていたんだよね。
それがいよいよ挽回できないところまで来たので、今回登録抹消ということになったのだ。
これで完全抹消は3例目。

最初の抹消はオーマンの「アラビアオリックス保護区」(自然遺産)。
ここのオリックスはユニコーンのモデルにもなったと言われる動物なんだって。
ところが、油田などの資源開発をするために保護区を1/10に縮減したいという要請がオマーン政府から出てきて、もめたのだ。
なんとか保護区を維持しようと世界遺産委員会で議論が行われたんだけど、なかばけんか腰になってしまっていたオマーン政府はその改善策を拒否し、登録抹消になったのだ。

次は独国の「ドレスデン・エルベ渓谷」(文化遺産)。
川を挟んだ地域が登録されているんだけど、渋滞解消のために川に架橋する計画がもともとあったんだよね。
でも、その橋が景観を損なわれるということで、世界遺産委員会からはトンネルにするなどの代替案も提案されたんだけど、地元での住民投票の結果、橋を架けることになったので晴れて登録抹消・・・。
これは当初から独国側がけんか腰で、地元住民に不便を強いるなら世界遺産でなくてもけっこう、という感じだったらしく、まだ同情的な議論があったオマーンの礼とは違って、「見せしめ」的に抹消されたようだよ。

3例目が今回の「海商都市リヴァプール」(文化遺産)。
やっぱり都市の再開発の問題で、景観が損なわれるということなのだ。
ずっと議論をしてきたけど、再開発計画側が寄り添うことはなく、ここまで来てしまったんだよね。
似たような状況に陥りつつアルのが「ウィーン歴史地区」(文化遺産)。
ここの緩衝地帯と言われる、世界遺産登録された地区を取り囲む地域に大型複合施設を建設する計画があって、そんなのができると景観が損なわれるのでダメ、という話。
やはりウィーンの地元民は建設に賛成で、世界遺産でなくても世界的な音楽都市であるウィーンには観光客は来るし、世界遺産にこだわりすぎて生活が不便になるのはいやだ、ということのよう。
世界遺産センター長みずからが現地訪問して議論をしているようだけど、おそらく登録抹消は時間の問題なのだ(>_<)

これらは今後の大きな課題なんだよね。
日本の文化財でもそうだけど、古民家や武家屋敷が文化財に指定されると、雨漏りなどをしても勝手に回収できなくなって不便と言われているよね。
それのもっと規模の大きなものと考えるとわかりやすいのだ。
真正なものを後世に残していくというのは大事なことだけど、以下に現代に生活している人々と折り合いをつけるかが問題。
日本の場合は「歴史地区」みたいな登録がないので身近ではないけど、すでに京都なんかでは景観条例と都市の再開発の問題は出てきているよね。
世界遺産登録抹消には結びつかないけど、我が事としても考えていかないといけないのだ。

ちなみに、現在登録されたけどこのままでは危ないとされている「「危機遺産」のリストには、32カ国51件が登録されているようなのだ。気候変動の影響による支援環境の変化のようなどうしようもないのもあるにはあるんだけど、周辺情勢の不安定さ、密漁による希少動物の減少などの人為内戦内線による政情不安で全部が「危機遺産」入りしているよ・・・。

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