2021/10/09

免許がないっ!

最近警察が取り締まりを強化しているのもあるけど、よくテレビで「電動キックボード」の問題が取り上げられるのだ。
端的に言えば、電動式モーターがついたキックボードは、道路交通法上「原動機付自転車」に該当するので、法令上の義務を守りましょう、ということ。
つまり、「原チャ」と呼ばれるスクーターと同等の規制がかかるわけで、運転には免許が必要、ヘルメットの着用が義務、車両(キックボード)にはライト、ミラー、ブレーキがきちんと整備されていることが必要、ナンバープレートをとることが必要、自賠責保険の強制加入、などなど。
これを知らずに使っているといきなり「切符」を着られることになるよ。
テレビではすでに無免許・車両整備不良で切符を切られている人が映し出されたりしているのだ。

「原動機付自転車」については、道路交通法第2条第1項第10号で定義されていて、内閣府令(道路交通法施行規則)で規定する排気量又は出力以上の原動機がついている車で、軽車両や車いす、歩行補助車ではないもの、とされているのだ。
車いすや歩行補助車は障害のある方や高齢者が使うもので、いわゆる電動車いすとかシルバーカー(高齢者の手押し車)のこと。
軽車両が除外されているのは、電動アシスト付自転車をこの枠組みから外すためだよ。
あれは自転車と同じ扱いでよいのだ。
車両ではあるので本当は斜度を走らないといけなかったりするんだけど。

もともと自転車にエンジンのついたものは軽車両扱いで免許不要だったんだけど、昭和27年にホンダが「カブ」(小型オートバイのスーパーカブとは違って、自転車に後付けでエンジンをつけるキット)が販売される頃に大きく普及し、事故なども増えてきたので、規制されるようになったんだって。
そのときは14歳以上の許可制。
その後、昭和35年に道路交通法が施行される際、16歳以上を対象とする免許制に移行するのだ。
これが現在に続く原付免許。
速度は出ないけど低燃費で小回りがきくから、細い道が多かったりする日本の都市部では活躍したんだよね。
そういう経緯で交通安全を確保する観点で、免許や保険、車両整備などの様々な規制がかけられるようになったわけだけど、これはやっぱり交通に占める割合が無視できず、野放図にはできないからなんだよね。

厳密に言うと、電動キックボードは最初から原動機付自転車に該当するものだったんだろうけど、町中に走っていない限りは問題にならないわけで、これまで危険視もされてこなかったのだ。
ところが、これが広く売り出されるようになり、乗る人も増えてくるとそういうわけにはいかず、きちんと取り締まりをしないといけなくなったわけだよね。
戦後に原動機付自転車の規制が始まったのと同じ理屈。
電動キックボードが原動機付自転車に該当する、ということがあまり知られていおらず、業者にょってはそれを購入者に適切に知らせないままに販売されているため、普通の自転車感覚で乗っている人が増えてきて問題化したのだ。
あれってけっこう速度も出るし、実際に危ないよね。

ボクはパリにいた頃、フランスでも問題になっていたのだ。
フランスは道が狭いし、車を止めるところも少ないので(っていうか、車庫証明なく自動車が買えてしまうため路駐が多く、道の広さに比べて走行できる車線が少ないのも大きな要因。)、自転車が重要な交通手段になっているんだよね。
一方で、押収の自転車は日本のママチャリと違って「ガチ」の自転車で、乗りこなすのはけっこう大変な代物。
そこで登場したのがキックボードで、歩くよりは速いし、割と簡単に乗れるのだ。
で、足で勢いをつけて乗るだけの、モーターのついていないもの(昭和の時代に日本でもはやった「ローラースルーゴーゴー」みたいなもの)であればそこまで問題なかったんだけど、モーターがついたものが出てきてフランスでも規制の動きが出てきたのだ。
規制が入る前は、電動キックボードのシェアサービスなんかも出始めて、気軽に、簡単に町中のステーションで電動キックボードを借りて、目的地近くの別のステーションに返す、なんてのが広まりつつある頃だったんだ。
その後すぐに日本に帰ってきてしまったのでよくわからないけど、その後はどうなったのか?

一方で、規制の網にかけるのは必要だけど、オートバイ型の原動機付自転車と全く同じ義務を課すのもやり過ぎでは、という声もあるのだ。
モーター次第だけど、そこまで速度が出せないようなものもあって、そういうのについては、電動アシスト付自転車と小型オートバイの間くらいのレベルでいいのでは?、ということで、一部の地域で実証実験が始まっているみたい。
具体的には、ヘルメットの着用義務の免除、自転車を除く一方通行での適用除外(自転車と同じように一方通行を免除)、自転車専用道の通行許可(現在はむしろ通行できない)など。
要件は、例えば、毎時15キロメートル以下の速度であることなんだって。
確かにそれだとかなりガチ目に走っているジョギングくらいの速さだから、ママチャリと同じくらいだよね。
一応警察としても、普及を妨げる目的ではなく、あくまでも交通の安全が主旨だから、適切に普及させるような取組もしているというなんだね。
何はともあれ、まずはルールはルールとしてきちんと認識されることが重要だけど。

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