2021/10/30

ダブルチャンスにかけろ

もうすぐ約4年ぶりとなる衆議院総選挙。
今回はほぼ任期満了までやっていたのか。
コロナ禍は落ち着いてきているし、コロナ対応の関係もあってけっこう政治への関心も高まっているから、投票率は上がるかな?
今回は、令和に変わってから最初の総選挙で、かつ、21世紀生まれの人が初めて投票できる総選挙なんだって。
いろいろと注目の選挙なわけだよね。

ボクが常々衆議院総選挙で不思議に思っているのは、「比例復活当選」という制度。
なんだかくじの「ダブルチャンス」みたいだけど、選挙区で落選したのに議員になれちゃうの?、というところが引っかかるのだ。
もともとはいかに「一票の格差をなくすか」というところから出発してたどり着いた結論なんだけどね。
俗に、小選挙区で当選した人が「金バッジ」、比例復活当選の人が「銀バッジ」、比例単独で当選した人が「同バッジ」なんて言われることもあるけど、やっぱり政治の世界でもなんらかの「格」のようには見られているんだよね。
ま、仕事をしてくれれば問題ないのかもだけど。

そのむかしは、中選挙区制というやつで、わりと大きめの選挙区で3~5名が当選する、というシステムだったんだよね。
この方式だと、一つの選挙区からは一人しか当選できない小選挙区制と比べて「一票の格差」は是正しやすいし、比較的少ない得票数で当選可能なので中小政党でも下位で当選できるという特徴があるのだ。
でも、同一政党内での「同士討ち」が発生する可能性があるので党内の派閥の力が強くなるとか、特定の団体の支持さえ取り付ければ当選しやすくなるので利益誘導に走りやすくなるとか乃問題点が指摘され、平成の政治改革でなくなったんだよね。

代わりに導入されることになったのが小選挙区制。
でも、全議員定数を小選挙区に振り分けようとすると、都道府県を越える選挙区設定をしなくてはいけないので、現実的ではないのだ。
仮に無理矢理やろうとすると、人口の少ない県(鳥取や島根)は一人の当選者も割り振れなくなってしまい、複数県でひとつの選挙区、みたいなことになってしまうんだ。
でも、選挙事務は地方自治体に下ろされていて、各都道府県選挙管理委員会が実施するので、そういう県境を越えるような選挙区の設定はできないのだ。
なので、どうしてもどの都道府県も最低一人は当選させることになるわけ。
そうすると、どうしても「一票の格差」が大きくなってしまうんだ。
つまり、議席数が480で47都道府県なので、単純平均してしまうと10議席くらいずつになるんだけど、人口ベースで格差がないように計算すると1議席あたり人口の2%になってしまうのだ。
でも、総人口の2%というと焼く240万人で、島根や鳥取は60万人をきっているので、1/4議席しかもらえなくなってしまうのだ・・・。

そこで小選挙区制と合わせて導入されたのが比例代表制。
参議院は全国ブロックだけど、衆議院の場合は地域ごとのブロックだよ。
個人個人が出馬するのではなくて、政党ごとに候補者名簿を提出してもらって、政党ごとの得票数に応じて議席を振り分けるのだ。
すべてを比例代表にしてしまうと少数政党が乱立しやすくなってしまって安定的な政権が立てづらい、というデメリットが出てくるのだけど、小選挙区制と組み合わせることで、それぞれのメリットを生かそうというコンセプトなんだよね。
でも、上で見たように、人口の少ない県はもともと1議席を持てないので、ただ単に比例代表と組み合わせるだけでは大きな格差の是正にはつながらないのだ。

そこでさらにひねり出されたのが、現在の制度。
小選挙区で立候補した人が比例代表にも重複して立候補できるようになっていて、かつ、その重複立候補者については、候補者名簿上同一順位で並べることができるようになっているのだ。
同一順位のままだと議席を割り振るときにどちらを優先するか、という問題が発生するのだけど、そこに「惜敗率」というう概念を使うのだ
これは、小選挙区で落選したとき、当選した人に対してどれだけの割合で得票できていたかを表す数字。
当選者が得票数100で、重複立候補している人が落選したときの得票数が80だった場合、惜敗率は80%。
同一順位の場合は、この惜敗率の数字の大きな人を優先させる、ということなのだ。
こうすることで、僅差で負けた人ほど復活当選しやすくなるので、小選挙区の大きな問題である「死に票」の問題が多少改善されるのだ。

都市部の小選挙区と田舎の小選挙区を比べた場合、同じ議席1の割合であっても当選に必要な得票数はけっこう違うんだよね。
これは「一票の格差」の裏返しな分けだけど、下手をすると、都市部で落選した人の方が田舎で当選した人より得票している場合があるのだ!
そうした場合でも、重複立候補していれば比例復活当選できるので、民意をより正確に反映できるのではないか、ということ。
そう考えると、確かに意味のある制度かもしれないよね。

でも、ここまで来るとさすがに制度が複雑すぎるよね・・・。
なので、中選挙区に戻すべき、という意見も根強くあるのだ。
その方が泡借りやすいよね。
とはいえ、この惜敗率を使った復活当選を含めると、1議席を割り当てられないような人口の少ない県の問題を考えると、格差は小さくなる傾向にあるのも確か。
なかなかこうへいな選挙制度というのは、政治的にだけじゃなく、数学的にも難しいものなのだ。

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