2022/04/23

本当に意外と知られていなかった事実

 最近、ネットのニュースで、「レジ袋有料化は実は義務ではなかった」というのを見たのだ。
で、さっそく記事を読みに行ったんだけど、なんとなくわかったようでわからない・・・。
どうしても気になったので、自分でちょっと法令の枠組みを調べてみたのだ。
これはちょっと驚きの結果だった。


この話のおおもとの法律は「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」、通称「容器包装リサイクル法」。
平成7年(1995年)にできた法律で、いわゆる「資源ゴミ」の収集とリサイクルを規定した法律だよ。
ペットボトルやガラス容器、プラスチック容器など、リサイクルが可能なものは一般ゴミとは別に回収し、リサイクルすべきことを定めているのだ。
つまり、この平成7年のタイミングで資源ゴミの回収の制度が本格的に始まったというわけだね。
そういう意味ではけっこうエポックメイキングな法律なのだ。

そして、この法律は平成18年(2006年)に改正されて、そのとき、レジ袋等の容器包装を多く用いる小売事業者(スーパーなど)に対して、レジ袋の使用抑制のための措置を講じるべきことを求めるようになったのだ。
このときは、①レジ袋を有料化する、②レジ袋を使わない人にはインセンティブを与える(割引、ポイントアップなど)、③環境負荷の少ないレジ袋(厚手の再使用可能なもの、バイオプラスチックを使ったものなど)に転換する、といった選択肢から自由に選べたんだ。
確かに、これくらいのタイミングで、レジ袋を有料化するスーパーが出てきたり、マイバッグの場合はプラスでポイントが付加されるようになったりしたよね。
これは覚えてる。
でもでも、このときは有料化するところはそんなに多くはなくて、マイバッグ仕様による割引やポイント加算が優勢だった気がするのだ。
数円のこととは言え、上乗せでお金を取られるというのは消費者にとって忌避されるので、マイバッグを使うといいことがあるよ、という誘導策の方がイメージがいいよね。

そして、今回のタイミングで、これまでは①~③のどれでもよかったものが、①の有料化が基本、という枠組みに変わったのだ。
③の場合のレジ袋は有料化しなくてもよいことになっていて、一部のファストフードチェーンなんかはこの例外を使って無料でレジ袋を提供し続けているけど、スーパーやコンビニなどの小売大手は、本来有料化しなくてもよい紙袋も含めて、すべて有料化になっているよね・・・。
便乗有料化と言われている状態なのだ。
現在の制度では、レジ袋は有料が基本で、環境負荷の少ないレジ袋の場合は例外的に有料化しなくてもよい、ということで、その他、②のマイバッグ使用に対してインセンティブを与える取組も推奨、みたいな感じだよ。
でもでも、実は「有料化が基本」というのは、法律上の義務ではない、というのが、冒頭の記事の言いたいことだったんだよね。

平成18年改正のタイミングで導入されたのは、事業者が取り組むべき「容器包装の使用の合理化による容器包装廃棄物の排出の抑制」の判断基準を国が示す、という枠組み。
これは省令(財務省・厚生労働省・経済産業省・農林水産省の共同省令)で、本来は法的拘束力があるものではないのだ。
各省が独自の判断で制定できる下位法令で、法的に拘束力を有する義務を課すには国会で審議される法律であることが必要なのだ。
その法律の施行に必要な範囲で細かいことを定めるのが下位法令と言われるもので、閣議で決定する政令と各省が制定する省令があるわけ。
もともと「判断基準」と言っているだけあってだけあって、あくまでも細かい基準を示す、という位置づけのものなのだ。

では、なぜこれが「有料化が義務になった」と受け取られるのか。
これがもう一つのポイントだよね。
実は、その枠組み自体は平成18年改正で導入されているんだ。
新たに第7条の4というのが導入されて、さっきの「判断基準」を国が示す、ということになったのだ。
で、その次の第7条の5において、主務大臣(財務大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣又は農林水産大臣)は、この判断基準に基づいて事業者に必要な指導及び助言ができる、と規定されているのだ。
さらに、続く第7条の6では、事業者に対して、「容器包装の使用の合理化による容器包装廃棄物の排出の抑制」の促進のための取組を主務大臣に定期的に報告する義務を課していて、この報告を聞いて前条の「指導及び勧告」をする、という流れになっているのだ。
でも、これだけじゃ終わらないんだよね。

いわゆる「伝家の宝刀」になっているのが、第7条の7。
これは「勧告及び命令」という「指導及び勧告」より一段上の措置について定めている条項。
まず、定期報告を受け、必要に応じて指導・勧告を行うのだけど、事業者の取組が「著しく不十分」と認められる場合は、必要な措置をとるべきとの勧告、いわゆる「是正措置勧告」を出せることになっているんだ。
7第条の5の勧告は「こうしてね」というだけなんだけど、7第条の7の是正措置勧告は、事業者がそれに従わなかった場合、その旨を公表できる、ということになっているんだ。
つまり、是正勧告に従わない不埒な事業者は名前を公表して社会的制裁を加える、ということ。


さらにさらに、公表された上でなお是正措置暗黒に従わない事業者に対しては、審議会の意見を聞いた上で、勧告に従った措置をとるよう命令することができるのだ。
これは是正措置命令というやつ。
この是正措置命令は罰則付で、従わない場合は、50万円以下の罰金が科せられるのだ(第46条の2)。
かなり道のりはあるんだけど、事業者が国が示した判断基準に従わないと、是正措置勧告が出て、それに従わないとその旨を公表され、それでも従わないと是正措置命令が出て、これまで無視すると罰則、という流れ。
何段階かステップを踏んでいるけど、正当な理由なく判断基準に従わない、と見なされると、手順を踏む必要があっても罰金までいく、ということなんだよね。
これが「有料化が義務になった」と言われるゆえん。

当初の判断基準ではレジ袋有料化はオプションのひとつでしかなかったわけだけど、その後の判断基準の改定によってレジ袋有料化が基本となったので、この判断基準に従うことが求められるようになったのだ。
ボクはてっきり法改正があったから有料化された、と思っていたんだけど、実は実は、省令が改正されただけだったんだよね・・・。
もちろん、省令である判断基準の改定も勝手にできるわけではなくて、この場合は規制の改廃に係るものに当たるので、法律に従って意見公募手続、いわゆる「パブリック・コメント」を減ることが必要なのだ。
国からすれば、そのときに意見を言わなかっただろ、ということなんだろうけど、正直、そんなパブコメをしていたなんて知らなかった・・・。
事業者向けには説明会なんかもしていたみたいだけど。
なんか、だまし討ちされているような気がしないでもない。
こういう所に納得感がないから、レジ袋有料化はとにかく評判が悪いんだろうなぁ。

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