2022/07/23

匂い立つ大地

アニメ「ゴールデンカムイ」はつに冒険の舞台が樺太に移ったのだ。
このコンテンツのおかげで一気にアイヌへの関心が高まったようだけど、千島列島や樺太についての日本とロシアの関係にも注目が集まるかも。
政府が発信してもなかなか北方領土の話は伝わっていかないけど、こういう娯楽コンテンツは協力なんだよなぁ。
でも、それ以上に今は樺太(サハリン)が社会の注目を集めているのだ。
それは、「サハリン2プロジェクト」の行方・・・。
日本のエネルギー事情に大きな影響が出かねないんだよね。

ロシアは大資源国で、中でも天然ガスは大量に採掘できるのだ。
その天然ガスはユーラシア大陸を横断するパイプラインで欧州諸国に供給されているんだけど、その欧州地域への入口になっているのがウクライナ。
このパイプラインはウクライナを通って西側に延びているんだよね。
ちょっと前、ウクライナで親EU政研ができてロシアともめたとき、ロシア(というか、実際には国営企業のガス供給会社のガスプロム)はウクライナ向けのガスの価格を上げてきたのだ。
旧ソ連地域のよしみで西側諸国より安く卸してもらっていたんだけど、それを西側諸国並みの価格にする、と宣言されたわけ。
これでウクライナとロシアがもめて、ウクライナ向けの供給は止める、とかいう話に発展したのだ。

このとき、西側へのパイプラインはウクライナを通っていて、西側向けの供給は止めていないので、ウクライナに敷設されているパイプラインにはガスが通っているわけ。
で、このもめ事があった後、西側へのガス供給が支払った金額に比べて少なくなっている、ということがわかったんだって。
ロシアはウクライナが途中で勝手に抜いているんだと言い、ウクライナは当然そんなことはしていないと言い、けっこう欧州地域でもめたみたい。
その頃から欧州のガス供給問題はウクライナがネックになっていたのだ。
で、今回の紛争で、やっぱりロシアから欧州地域へのガス供給が滞っていて、ドイツやフランスなどでは大規模なエネルギー不足問題が発生しようとしているんだよね。
原子力で電気青まかなえるフランスはまだましなんだけど、原子力を捨て、自然エネルギー偏重に転換していたドイツはロシアのガスがないと相当つらそうなのだ。
これが欧州で問題になっている天然ガスの問題。
日本はわりと「対岸の火事」的に見ていた人が多いと思うんだけど、今度はそれが「我がこと」になりつつあるのだ。
それが「サハリン2」の問題。
やっと樺太に話が戻る(笑)

ロシアは資源大国なんだけど、まだまだ資源が眠っているとよそくされているのだ。
そのひとつが樺太周辺の化石燃料資源。
樺太等の周辺を8つの鉱区に分け、それぞれ開発をしようという話が出てきたんだよね。
そのうちの第2鉱区、樺太北東部沿岸域で天然ガスを採掘しているのが「サハリン2プロジェクト」だよ。
ソ連崩壊後のロシアには資金力も技術力も不足していたので、このプロジェクトには外資の参加を角だったのだ。
で、距離的に近いこと、天然ガスの供給もとに多様性を持たせたいことなどから、日本も参加することになって、石油メジャーのシェルとともに、三井物産や三菱商事がこの話に参加したのだ
プラント建設にも日本企業がロシア企業と共同で受注していたりするよ。
で、サハリン2だけは開発が成功し、天然ガスの採掘が行われていて、日本も買っているんだ。

でも、この開発途上でもロシアらしい「いやがらせ」的な話があったんだよね。
2001年にいったん開発計画はロシア政府に承認されるんだけど、2006年になって、環境アセスメントの不備を指摘して、プロジェクトを止めろ、と言い出したのだ。
あわや開発中止かとなったんだけど、ロシアの国営企業のガスプロムが、シェル・三井物産・三菱商事で作ったサハリン・エナジーという開発会社に51%の株式保有率で参加することで解決させたのだ。
なんか、難癖つけてこのプロジェクトをロシア企業が乗っ取ったようにしか見えないよね・・・。
もともとそういうことをする国だから仕方ないのかもだけど。
こうしてなんとか開発中止の危機を乗り越え、供給開始までこぎ着けたのだ。

ところが、ロシアのウクライナへの侵攻を契機に、シェルがサハリン2から撤退。
日本企業にもかなりプレッシャーがかかったんだけど、エネルギー安全保障の観点から日本企業は引き続き参加する、という判断になったのだ。
で、なんとかなったはずなんだけど、今般新たな大統領令が出て、サハリン2の運営はロシアの新会社にすべて移せ、となったのだ。
これにはこれまで出資してきた日本企業もびっくり、というのが現状。
日本のロシアへの天然ガスの依存度は9%程度らしいけど、1割近くなくなるのあつらいよね・・・。
ただでさえ原発が再稼働できずに火力が主力になっているのに、
そして、欧州もロシアからガスが手に入らなくなってきているので、他の地域から買おうとするのだ。
それで天然ガスの国際的な争奪戦が起きていて、価格も跳ね上がっているんだよね。
そんな状況下でこれはやばい、というのが今回の問題なのだ。
やっぱりロシアは「おそロシア」だ。

0 件のコメント: