2022/12/24

ショウセイハショセイ

なんとなくわかっているようで、じつはきちんとわかっていない言葉ってあるよね。
しかも、そういうのに限って、自分で使うわけでもないから、なんとなく、だけでなんとなって困ることもないのだ。
そんなんでやり過ごしてきたんだけど、どうしても気になって、この間「書生」というのが何なのかを調べたのだ。
戦前までが舞台の小説にはよく登場するよね。
「高等遊民」っていうのはいわゆる「ニート」だな、とわかるんだけど、この書生というのがよくわからない。
学業が本分とか書かれているから教育を受けている立場なんだろうけど、主家で雑用なんかもこなしていたりする。

辞書的に言うと、

 1 学問を身につけるために勉強をしている人。勉学中の若者。学生。
 2 他家に世話になって、家事を手伝いながら勉学する者。

ということなんだそうだ(ネット上のデジタル大辞泉より)。
つまり、教育を受けている立場で、主家で雑用なんかをこなしている、というのはそのまんまだね(笑)
小説なんかに出てくるのは、「明治・大正期に、他人の家に住み込みで雑用等を任される学生」ということのようなのだ。
でも、現代ではこういう立場の人がいないので、余計にわかりづらいのだ。

江戸時代も寺子屋や藩校、私塾などで教育を受けてはいたのだけど、自分のふるさとを離れて「遊学」となると、そこまでおおくはなかったようなのだ。
ところが、明治になって学制が敷かれ、急性の大学や高等学校が整備されていくと、地方から都会に出てこれら学校に通う学生が出てきたのだ。
しかしながら、その当時は学生の身分でありながら単身で居住するのに適した住居が少なく、また、当時そういう高等教育を受けられる学生は基本男性で、実家では家事・炊事なんかしたことがないような者がほとんどだったので、親戚・縁者を頼ったり、他家に家賃や食費を払って「下宿」することが多かったんだって。
で、まさにそうして他家に下宿している学生で、その家の雑務を手伝うような人を「書生」と言ったのだ。

当時から苦学生はいて、生活費にも困窮するような場合は家賃や食費を払えないので、篤志家は自分の家に下宿させる代わりに家のことを手伝ってもらう、という感じで、半分使用人のような形で学制を住まわせたんだよね。
おそらく、これが小説なんかに出てくる「書生」の典型的なイメージなのだ。
我が国近代小説の袖ある坪内逍遙はすでに明治期の書生の生活を「当世書生気質」の中で写実的に表現している、んだそうだよ。
残念ながら、読んだことがないのだけど。

ちなみに、インテリ書生を抱えることは一種のステータスで、成金という言葉が生まれた明治期では、ボランティア精神というだけではなく、そういうステータスとしての社会貢献の意味では書生を下宿させたみたい。
しかも、その書生がインテリで、将来官僚になったりすると人脈も広がるので、そういう投資的な意味合いもあったようだよ。
ま、将来有望な若者のパトロンになる、ということだよね。

でも、時代が下って明治も後半になってくると、学生向けの寄宿舎や専門の下宿宿、学生用アパートなんかもできはじめ、他家に居候させてもらう形の書生は減っていったようなのだ。
一方で、書生という言葉は「住み込みで働きながら勉強している人」といったイメージになり、学生ではなくて、作家や政治家の内弟子、付き人みたいな人も含めて「書生」と呼ばれるようになったのだ。
戦前が舞台の金田一耕助シリーズなんかに出てくるのはこっちかもね。
最近は住み込みで下積みというのもあまり聞かないけど、ぎりぎり残っているのは朝日の新聞奨学生みたいな形態かな。
あれは奨学金を出してもらう代わりに住み込みで新聞配達業務をするわけだよね。
かなり過酷な環境になるので最近はなり手がいないというし、もうきていくものかもしれないけど・・・。

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