2023/06/24

危険な甘さ

恐ろしい事件が起きたのだ。
赤ちゃんの粉ミルクに有毒な鉛が混入された事件。
しかも、親戚だって。
小さなお子さんもいるみたいだし、なぜそんな強行に至ったのか、不明な点も多いのだ。

今回混入されたのは「酢酸鉛」という化合物。
普通、異物が入ると、変なアジがするので赤ちゃんもはき出したりするのだけど、不幸なことに、この酢酸鉛は甘いのだ!
そう、ミルクに混ぜられても違和感なし。
それで気づくのが遅れた面もありそう。

鉛中毒の場合、疲労、睡眠不足、便秘なんて軽いものから、腹痛、貧血、神経炎など重いものがあって、さらには、脳変性というのもあるのだ。
どうも脳神経系にも作用するようで、子どもの場合は発達障害や学習障害という形で後遺症が残ることも多いみたいなのだ。
赤ちゃんだからけっこうきついなぁ(>_<)
で、取り除くのも簡単ではなくて、錯体(キレート)にして尿中への排出を促進するみたいなんだけど、これも時間がかかる治療法だよなぁ。
というわけで、この赤ちゃんは予断を許さない状況だと思うよ。

で、この鉛についてはむかしから中毒になる人が多く、けっこういろんなことがわかっているのだ。
それは、鉛は比較的低温でとけ、加工しやすい金属として、いろんなものに使われてきたから。
古代ローマでは、水道管に鉛が使われていて、鉛が溶け出した上水を飲んでいたんだよね。
(溶け出すほど長く水と鉛が接触することはなかったとの反論もあり。)
さらに、ワインを飲むときには、アナ理煎りの甘味料が添加されていたのだ。
完熟したブドウ果汁を青銅に鉛メッキした鍋で煮詰めた「サパ」と呼ばれるシロップを使っていたんだって。
当時のワインは発酵がうまく制御できないし、そもそものブドウも糖度はそこまで高くないので、けっこう酸っぱいものだったらしいのだ。
あので、甘みのある私ぽっるを入れていたんだけど、砂糖がない古代ローマで甘味料というと、はちみつ以外にはこのサパしかなかったらしい。
ちなみに、青銅はすぐに表面がさびて青緑色の緑青が出てくるから青銅というのだけど、この緑青は毒なので、鉛でコーティングするわけだけど、それでもけっきょく毒がある・・・。

ちなみに、当時、すでに鉱山関係で鉛毒のことは古代ローマでも知られていたみたいなんだけど、鉛でコーティングした鍋で煮ても溶け出すとまでは思っていなかったのかなぁ?
実際にカタコンベとかにある古代ローマの人の人骨を調べると高濃度の鉛が検出されたりするらしいから、鉛中毒の事実はあったわけで、甘美な誘惑に勝てなかったのか、考えが及ばなかったのか。
日本でも、昔はおしろいに鉛が使われていて、役者の間では鉛中毒が多かったみたい。
昭和9年(1934年)に使用が禁止されるまではそうだったのだ。
はんだごての「むえんはんだ」も「無鉛」で、それまで鉛の蒸気を吸い込んでの鉛中毒が出るので、鉛フリーのはんだが求められて出てきたものなのだ。

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