2023/07/01

で、いつなの?、いまでしょ!?

各種調査で内閣の支持率ががた落ちしているらしいのだ。
その原因は、長男による公邸でのはっちゃけ忘年会と、毎なカードに関する不祥事、そして、首相が解散権をもてあそんだからだって。
なんか、最後のやつは違うような気もするけど、特に今の政権は「けっきょく何がやりたいの?」というのが明確に見えないから、そういうのもあいまって、「国民に信を問う」という部分が見えず、政略のためだけに解散をちらつかせた、ってことみたい。
ま、こういうのはマスコミも中立的に報道するわけではないし、SNSとかでも声が大きいのがそういう人が多いから、実際に国民がどう思っているかはよくわらないのだけど。
で、ちょうどよい機会になったので、衆議院の解散について少し調べてみたのだ。

日本国憲法では、衆議院の解散に関する条文は2つだけ。
1つは天皇の国事行為を規定した第7条で、「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ」として、第3号に「衆議院を解散すること」というのがあるのだ。
基本的に天皇の国事行為は政治性を帯びないもので、実務上には内閣が決定したことを形式的に行う、という整理だから、内閣が解散について権限を持っている、というように読めるのだ。
もちろん、諸説はあるけど。

よく解散は首相の専権事項と言うけど、それは別の憲法の規定との組み合わせ。
それは第68条第2項の「内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる」で、仮に内閣の中に解散について反対する国務大臣がいても、その人を罷免することで解散に踏み切れるから。
理論上は首相だけで構成される「一人内閣」でもよいのだ。
実際には、小泉内閣における郵政解散のとき、解散に反対した島村農水大臣が罷免されたのが唯一の事例だそうだけど。
でも、首相が解散すると決めたらそれが実行できるようにはなっているのだ。
これが「首相の専権事項」と言われる由縁。

もうひとつの解散に関する憲法の規定は、第69条の「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」というもの。
これは、衆議院において不信任決議案の可決又は信任決議案の否決があった場合は、衆議院の解散か内閣総辞職をしなければならない、という規定。
どうも、戦後のGHQとのやりとりを見ると、戦前の明治憲法下では、議会を黙らせるために内閣が恣意的に解散権を行使して、みたいなものがあったので(例えば、近衛内閣における国家総動員法)、内閣が自由に衆議院の解散を決めるのはよくなくて、あくまでもこの第69条にあるような、内閣に行政を任せられない旨の議会の決議があってはじめて、ということにしたかったみたいなんだよね。

戦後すぐは、第69条の規定に関係なく内閣は解散権を有するという考え方と、解散はあくまでも第69条のシチュエーションに限定されるべきとの考え方で対立があったみたいなんだ。
まだGHQの影響下にあった1948年(昭和23年)の吉田内閣における「馴れ合い解散」は、第69条に縛られずに解散できるとする政権側と、第69条の場合に限定されるべきとの野党側の対立があったときに、GHQかた第69条に限定されると解釈されるべきと言われ、形式上内閣不信任決議案を可決させてから解散したのだ。
なので「馴れ合い」なわけ。
ところが、2回目の解散が行われた1952年(昭和27年)の段階では、野党側も早期解散へと主張を転換していて、政界では第69条に限定すべきとの主張がうすくなっていて、第7条の規定のみをもって解散が行われたんだ。
このときから、実質上第69条とは関係なく解散が行われるようになったわけ。

じゃあ、首相が「あ、解散しよ」って思ったら自由にできるかというと、そういうことでもないみたい。
やっぱり解散総選挙にはお金もかかるわけだし国政について民意を問う必要性がないとダメだ、として、解散権の濫用は牽制されているのだ。
そういう議論の中で憲法学者から示された、解散してもよい限定的な場合が4つあるんだよね。
①予算案や内閣の重要案件が否決されたり、審議未了廃案になるなど、内閣不信任と同等の判断が国会で下されている場合
②長期の審議中止等で国会機能が実質的に麻痺している場合
③党利党略により不信任決議案が提出されないまま国政・国会が停滞した状態になっている場合(野党が解散をおそれて不信任決議案を出さないのはよくあること)
④是階層選挙では争点となっていなかった重要案件が新たに発生していて、それについて国民の判断を求めるのが当然とされる場合
逆に言うと、こういう大義名分がない場合は、解散権をもてあそんでいると批判されるわけ。
で、今回はまさにそうなんじゃないか、っていうことみたい。
ただし、防衛力強化や異次元の子育て政策のための増税という話が出てきているから、真っ向からそれに対して国民の信を問う、というのはないわけではないけど。
でもでも、増税を争点に選挙すると与党は負けるので、普通はそういう切り口では解散しないんだよね(笑)

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