2023/07/15

酸味は危険

ネットのレシピは危ないものも多いと言われているけど、新しいやつが出てきたのだ。
これまで問題になったのは、豚肉ユッケとかだったけど、今度は自家製サワークリーム。
ツイッターで拡散されているのは、特濃牛乳を買ってきて、瓶に移し替えてから日陰に2~3日間常温で放置、そうするとクリームが分離してくるので、それを取り出すと酸味のあるサワークリームのできあがり、別の容器に移して冷蔵庫へ、というものらしい。
っていうか、いきなり牛乳を常温で数日放置って危険すぎる・・・。
酸味が出てきているかもしれないけど、同時に刺激臭もあるのでは?
つまり、腐敗しているのでは。

本物のサワークリームは、生クリームを乳酸発酵させたもの。
つまり、このレシピとは順番が逆で、先に牛乳を静置して生クリームと低脂肪乳に分け(工業生産的には遠心分離)、その生クリームをヨーグルトとか発酵バターの要領で乳酸発酵させるのだ。
生クリームは脂肪分が多いからちょっとくどいけど、これを乳酸菌発酵させることでさわやかな酸味が出てくるんだよね。
ちょっと乳酸発酵させると保存性が高くなるので(これはヨーグルトも同じ)、最初はそのために発酵させてたと思うんだけど、生クリームそのものとはまた違った使い方ができるのも今につながっている理由なのだ。

ちなみに、ボルシチやビーフストロガノフにかかっているのは「スメタナ」と呼ばれる東欧の発酵乳。
こちらは低温で発酵させた乳で、好気性菌と嫌気性菌が共存して発酵しているのが特徴。
基本的に乳酸菌と呼ばれる一群のバクテリアは通性嫌気性菌(酸素があったもなくても生きていけるもの)で、乳酸発酵は酸素の非存在下で進むんだよね。
これにはちょっと熱をかけてあげないといけないし、殺菌もしたいので、鍋に入れてじっくりあたためながら、ゆっくりかき混ぜる、ということをするのだ。
これはヨーグルトも発酵バターも同じ。

今回のレシピでまずいのは、瓶に移し替えるという部分。
特濃牛乳を買ってきた状態だと、牛乳は加熱殺菌されているし、パックの中は清潔なので、問題ないのだ。
ただし、開封後は早めにお召し上がりください、ということで、外気に触れると雑菌が混入するおそれがあるので冷蔵庫で保存しつつ早めに消費してね、ということ。
なのに、滅菌しているかどうかもわからない瓶に入れて常温で数日放置、ということなので、ほぼほぼ腐敗するような気がするんだよね・・・。
用王のスメタナの場合は、もともと気温も低く、低温発酵ガス済んでいくので、雑菌が繁殖しにくいという事情があるのだ。
これをより気温が高く、湿度もある日本でやる、というのはちょっと危険。
せめて、冬とかに限定しないと。

どうしても試してみたい場合は、
①冬の寒い時期に
②煮沸消毒して滅菌した容器に移し替え
③そこにヨーグルトなどの乳酸菌煎りの発酵乳を種として少しまぜ
④しっかり栓をして、直射日光の当たらないところで静置
という感じかなぁ。
買ってきた生クリームを少しあたためてヨーグルトをほんの少しだけ添加、その後滅菌容器に移して発酵させる、でもよいような気はするけど。
納豆菌だとほかの雑菌より強いから失敗はしづらいのだけど、乳酸発酵はけっこう難しいんだよねぇ。
数日おいてみて、刺激臭や腐敗臭がしていたら失敗なので、素直にあきらめましょう。

一番安心なのは、しゃんされているヨーグルトメーカーで作ることかな。
普通の牛乳を使えばヨーグルトができるけど、生クリームを使えばサワークリームになるはずなので。
無調整乳を買ってきて、クリームと低脂肪乳に分けた後、それぞれ乳酸発酵させると、クリームはサワークリームに、低脂肪乳はカッテージチーズになるよ。
カッテージチーズの場合は、凝固分が多く含まれる「カード」というものができるので、それを水切りする必要があるけど。
そう考えてみると、ヨーグルトメーカーというのはけっこう面白い機械かも。

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