2023/08/26

製菓用には酸味があるものの方がよい

 むかしからアップルパイが好きなんだよね。
ほどよい酸味のあるものがベター。
その方がリンゴらしさを感じるから。
デザートを選ぶとき、リンゴ系のものがあるとたいていは選ぶほど(笑)
パリに住んでいたときは、その辺のパン屋さんで売っているショソン・オ・ポムとかタルト・タタンがおいしくて、そこだけは素晴らしい街だと思ったものだよ。

で、日本でステレオタイプでイメージされるアップルパイ、パイ生地の上のまだ形の残るリンゴのフィリングがあってその上があみあみになっているやつ、は、米国式のアップルパイなのだ。
リンゴは温帯から亜寒帯、寒帯にかけて栽培される果物で、欧州の北の方の寒い地域では重要な果物だったのだ。
水分がそこまで多くないから、干したり、砂糖漬にしたりと長期保存もできるしね。
で、そうしたリンゴはお菓子の材料に使われるのも必然で、フランスの北の方(ノルマンディーやブルターニュ)、イギリス、スウェーデン、オランダなんかではリンゴを使ったお菓子が生まれていったのだ。
フランスの場合は、ブドウが育たないノルマンディーやブルターニュではリンゴのお酒のシードルまで作っているよね。

それが、新大陸発見後に北米大陸に持ち込まれることに。
持っていったのはおそらく清教徒のピルグリム・ファーザース。
最初の入植者たちは、欧州からいろんな種や苗木とかを持ち込んで現地で栽培しようとしたんだけど、気候の違いからあまりうまくいかず、餓死者が多く出るほどだったんだって。
その際に現地の原住民族のネイティブ・アメリカンに助けてもらったわけ。
これが後に感謝祭(サンクス・ギビング)につながっていくのだ。
このとき食料として重要になったのが七面鳥とトウモロコシ。

七面鳥はすでにネイティブ・アメリカンは家禽化していたようだけど、入植者にとっても貴重なタンパク源になったのだ。
感謝祭では七面鳥の丸焼きを食べてお祝いするよね(それが日本に伝わる過程でなぜかクリスマスにチキンという形で魔改造されるけど・・・。)。
もうひとつはトウモロコシ。
小麦の収量が少ないのでトウモロコシ粉と混ぜて作ったのがコーンブレッドのはじまりなのだ。
ベーキングパウダーを混ぜて作る非発酵系の黄色いパンだよ。
米国ではけっこうコーンブレッドって出てきて、日常の味的な位置づけ。
でも、正直ぱさぱさであんまりおいしくなかったので好きではなかったのだ。
これも入植当初からの経緯があって米国の伝統的な食べ物になっているわけだね。

でも、持ち込んだものの中でもうまく栽培できたものもあったわけ。
それがリンゴ。
後に西進・南進して行くに当たってオレンジも栽培できるようになるけど、最初に入植したのはいわゆるニューイングランド地方という北東の寒冷な地域。
グレートブリテン島北部のスコットランドでも栽培できるリンゴは、新天地ニューイングランドでも育てられたのだ。
で、貴重な食料となったわけ。
そんな入植当時の北米で、英国式のアップルパイから派生した、米国式アップルパイが生まれたのだ。
こういう経緯があるので、感謝祭の食事は、メインは七面鳥の丸焼き、デザートはアップルパイ、添えられるのはコーンブレッド、というのが多いみたい。
ただ単にアップルパイ好きなのかと思っていたけど、歴史的な経緯があるものだったのだ!

ちなみに、アップルパイをはじめとしたお菓子に使う場合は、酸味のあるリンゴの方が風味がよくなるし、味のアクセントにもなるんだよね。
生食するなら日本のフジをはじめとしためちゃくちゃ甘いリンゴがあるけど、お菓子にする場合はどのみち砂糖をたくさん使って甘みは補強するので、甘み以外の部分が大事ってわけ。
そういう意味では、おそらく入植当初に収穫できたリンゴは、大して甘くないだろうし、酸味も強いだろうから、生で食べる、なんてことはあんまりなくて、加工したんだろうなぁ、とは思うよ。

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