2023/09/09

その頃ソ連では

 一種のネットロアみたいなものだと思うけど、米ソ冷戦時代の宇宙開発競争に関する小話があるんだよね。
米国がマーキュリー計画、ジェミニ計画、アポロ計画と段階的に有人宇宙飛行を重ねてきて、あることを発見したのだ。
それは、宇宙空間ではボールペンが使えない!
ボールペンって、重力で押し出されたインクがペン先のタマのyら側に付着し、そのタマが回転すると同時にそのインクが紙面に転写される、という仕組みなのだ。
なので、実はペン先を上に向けて天井に字を書こうとしてもうまく書けないんだよね。
すぐにインクの供給がなくなってかすれてしまうのだ・・・。

そこで、米国航空宇宙局(NASA)はかなりの開発費をかけて無重力環境でも書けるボールペンを開発したのだ。
インクの押し出しを重力に依存するのではなく、圧縮空気などで押し出す方式。
これで無事に宇宙空間でもボールペンが使えるようになったわけ。
それが「スペースペン」。
科学館とかのお土産コーナーとかでも買えるよ。
一説には開発に100万ドルかかったとかなんとか。

一方、その頃ソ連では・・・。
鉛筆を使っていた!
というのがオチ。
NASAが一生懸命技術開発にいそしんでいる中、無理にボールペンを使うのではなく、宇宙空間でも使える鉛筆を使った、ということ。
過剰に技術開発に血道を上げる米国に対して、発想の添加でソ連は技術や金がなくてもうまくやってた、みたいな話なんだよね。
ちなみに、鉛筆の芯の主成分である黒鉛は、無重力環境ではその粉末がそこら中に飛び散って漂ってしまうので、現在は宇宙ステーションの中とかでは使えないよ。
昔は使っていたのかもだけど。

同じような宇宙開発のスタンス、というか、宇宙船の設計思想の話として、米国は宇宙船を航空機の延長で見ているの対し、ソ連は船舶の延長で見ている、というのもあるのだ。
米国の発想では、宇宙空閑に出てしまったら直したりなんかできないから、とにかく故障しないように作る(頑健性)、ひとつ故障があってもそれをカバーできるように作る(冗長性)、とおうのが基本コンセプト。
これは飛行機と同じで、飛行機は飛んでいる間は修理ができないという前提で安全な航行を確保するためにそういう発想でデザインされているんだよね。
一方、ソ連の場合は、船は途中で穴が空いたってふさぐことができればリカバリーできる、宇宙船も同じで、簡単に直せるのであればシンプルな作りにしておいて直しながら使えば良い、という発想だったらしいんだよね。
この設計思想の違いがまさに実感されたのが国際宇宙ステーション(ISS)計画。
それぞれが担当のユニットやモジュールを作って宇宙に打ち上げ、宇宙空間で組み立てていくわけ。
ISS計画は冷戦下での東西陣営の平和的な協力プロジェクトとして重要な意義があったわけだけど、ひとつのものを作るに当たってそれぞれの設計思想を知ることになり、きっと良い刺激にもなったと思うんだよね。

宇宙関係で面白いのは、地球に帰ってくるときの宇宙船の設計も。
NASAは打上げや再突入時の衝撃から宇宙飛行士を守るために低反発素材であるテンピュールを開発・実用化したのだ。
背中やおしりに係るGを分散させることで宇宙飛行士にかかる負担を軽減するため。
でも、ソ連は違ったんだよね。
宇宙飛行士一人一人石膏で型を取ってオーダーメードで座席を作るのだ。
こうして背中とおしりにぴったりの座席ができるので、Gは均一にかかるからテンピュールみたいなのは不要。
逆に言うと、NASAは誰が宇宙飛行士になっても使えるように、規定の形の座席にテンピュールを使うようにしてるのだけど、宇宙飛行士なんてそうはいっても限られているので、ソ連・ロシアのやり方の法がかしこい気もするよね・・・。
ただし、両方乗ったことのある日本人宇宙飛行士に寄れば、やっぱり米国の宇宙船の方が乗り心地がよいらしい(笑)

宇宙船関係ではもう一つあって、標準搭載品が違う、というのもあるのだ。
米国の場合、宇宙船は帰還自に海に落とすことが多いのだよね。
で、あらかじめ計算して落下地点を割り出して置いて、船を待機させて置くわけ。
なので、宇宙船には浮き輪が積み込まれているのだ。
一方、ロシアは基本地上(シベリアの森林遅滞)に落とすのだ。
なので、宇宙船にはオノやナイフなどが搭載されているんだよね。
サバイバル用に・・・。
そのサバイバルキットだけで48時間生き残る、という訓練もあるらしい。
ワイルドだろぉ?

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