2023/12/16

超電磁力

 世の中には磁気治療器というものがあるのだ。
磁力によって治療をしようというもの。
もっとも身近な例で言えば、ピップエレキバン。
肩や腰にばんそうこうで強力な磁石を貼っておくと、血行が良くなくなってコリがほぐれるというやつね。
これは旧薬事法で「管理医療機器」の許可を得ているので、臨床試験をして安全性があり、一定の効果もある、と認められているのだ。

なぜ磁石をくっつけておくと血行が改善されるのか。
ちょっとネットで調べてみると、赤血球の中で酸素運搬に使われているヘモグロビンの中にある鉄イオンに磁力が影響を及ぼして云々とかあるんだけど、どうもこれはいめーじでそう語られているみたい・・・。
ピップの公式説明によると、磁気が血管内皮細胞に働きかけ、血管拡張物質である一酸化窒素(NO)の合成が活性化されるから、と書いてあるよ。
血管内皮細胞からNPOが放出されると、まわりの平滑筋が弛緩し、血管が拡張するのだ。
これにより血流が良くなる、というわけ。
心臓病の薬で使われるニトログリセリンは、体内で一酸化窒素を出し、同じメカニズムで血管を拡張することで作用を発揮しているんだ。
バイアグラも局所的に血流量を増やすわけだけど、これもNOを介したメカニズムみたい。
はじめは心臓の薬として開発されていながら今では発毛役になっているミノキシジルも同じ(笑)

おそらく、最初に旧薬事法で最初に承認を受けたときは、周りの体温が上がったとかなんとか状況証拠で結構改善効果が見込める、としていたと思うんだよね。
でも、今となっては、血流量や、場合によっては、NOの放出も計測できるので、公式見解で出すくらいで嘘はないはず。
なので、磁石を貼っておくと血管拡張により血流が改ざんされる効果はあるんだよ。
それが肩こりや腰痛の緩和にどこまで意味があるのか、というのが問題なだけで。
ここから先は「感覚」の問題になってくるから、効果測定が難しいんだよね。

海外の論文では、磁石を貼るだけでは効果なし、というのが主流で、そういう論文も多いのだそうだけど、これは主に「
痛みの緩和」という効果についてのものなんだって。
痛みについてはもともと「疼痛緩和」みたいな分野があって、効果検証はそれなりにできるようになっていて、そのスケールで測ると、有意な影響は観測できない。
っていうか、偽薬効果(プラセボ効果)以上のものはない、という結論みたい。
それが正しいなら、腰痛や四十肩みたいな痛みの症状はそうなんでしょう。
問題は、肩こりや腰のはりみたいな、なんかこわばっていて違和感を感じる、みたいな症状に対してはどうなのか、ということ。
これらは極めて感覚的だから、本当に聞いているのか、プラセボ効果なのかはなかなか判別できないよね・・・。

逆に言えば、もっとポジティブに受け止めて、肩や腰の不調の原因は「血流の滞り」なんだと信じ切って、血行が改善されればよくなる、と思い込めば、けっこう症状は緩和されるはずなんだよね。
「病も気から」の世界ではあるけど。
リハビリや整体もけっきょくはほぐして動かして血流をよくする、っていうことなので、それと同じ。
それより簡単に磁石で血行が改善する、ということなのだ。
こればかりは「信じる者は救われる」方がよさそうだ。
もともと磁石そのものにはほぼほぼ有害な影響はないし、肩こりや腰痛は生死に直結する症状でもないから。
これが抗ガン治療とかだったら困るわけだけど・・・。

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