2023/12/30

良い子はいねがぁ

 クリスマスには良い子にサンタさんがプレゼントをくれるのだ。
でも、秋田では、大みそかに悪い子のところにはなまはげが来るのだ。
このギャップ!
欧米では、よい子にしていると報酬としてサンタさんからプレゼントがもらえるわけでインセンティブ付与型なんだよね。
一方、日本の場合は、何か悪いことをするとペナルティがある、ディスインセンティブ型なんだよね。
だからと言って日本が陰湿とかいう単純な話じゃないけど。

欧米では、よい子にしていないと悪魔とか怪物が来るなんて教訓めいた俗信はあるので、それがたまたまクリスマスとは関係ないというだけ。
っていうか、むしろ、クリスマスに無理やり教訓が結び付けられているんだよね。
サンタクロースの起源は聖クラウスの逸話と言われていて、この人は、貧しさのあまり三人の娘を身売りせざるを得なくなった家族のところに真夜中に訪れ、窓から金貨を投げ入れたのだ。
すると、暖炉のところに下げられていて靴下に入って、それを朝見つけたこの家族は娘の身売りを免れたんだよね。
これが夜中に靴下の生にプレゼントが入っているというオリジナル。
なお、この話はクリスマスの話ではないみたいだけど、聖ニコラウスの祭日は西方教会でも東方教会でも12月なのでクリスマスの習俗と習合していったのかも。

ちなみに、キリスト教のクリスマスは「降誕祭」で、神の子イエスの誕生を祝う宗教行事。
本来は教会にミサに行く日。
ツリーやリースなどの飾りつけはするし、御馳走でお祝いする風習もあるのだ(ディケンズのクリスマス・キャロルを見ると近代英国のクリスマスの風習がよくわかるよね。)。
このとき、クリスマスのお菓子として、フランスはブッシュド・ノエル、イギリスはクリスマス・プディング、イタリアはパネットーネ、ドイツはシュトーレンを食べるんだけど、これが今のクリスマス・ケーキの源流。
日本は「キリスト者」の国ではなかったので、表面的なクリスマスの風習だけが取り入れられた結果、飾りつけやクリスマスのお菓子、サンタさんだけが浸透したわけ。

実は、キリスト教以前から欧州地域では冬にお祭りをする風習があったんだよね。
それが「冬至祭り」。
ちょうど新暦のクリスマス直前くらいが冬至で、昼間の時間が一番短い=太陽の力が最も弱っている日なのだ。
なので、太陽の力の再生を祝ってお祝いをするというわけ。
クリスマスをいつにするかはローマ時代に会議で決めているんだけど、すでにいつかわからなくなっていたキリスト降誕の日をローマ歴の冬至に合わせたようなのだ。
先日のようにお祭りもやっていたし、ちょうどよいからね。

で、日本だけど、日本は正月になると「歳神」様が来る、という習俗があるのだ。
折口信夫先生言うところの「マレビト」としての来訪神。
なんだかよくわからないのだけど(笑)、この来訪神をきちんとお迎えすることで、その年の幸福や豊穣を願うのだ。
門松は来訪神を迎えるための飾りつけ、鏡餅はお越しいただいた来訪神の依り代となるものだよ。
で、その来訪神がお帰りになったところで鏡割りをして、歳神様の運気と力の宿った餅を食べて自分に一体化させるんだよ。
そのとき、邪を払うと考えられている小豆(赤い色が邪を払うと考えられているのだ。)と一緒に食べるので、お汁粉にすることが多いのだ。

秋田のなまはげ、甑島のトシドン、能登のアマメハギなどは、仮面をつけた来訪神に扮した人が実際に各家庭を回って戒めを行うという習俗で、ユネスコの無形文化遺産にも登録されているんだよ。
本来歳神様は見えない存在だけど、それを仮面をつけて紛争して「見える化」したうえで、年の瀬の忙しい時期に怠けている人を懲らしめるという教訓的な意味合いが持たされているのだ。
東北から北陸、九州・沖縄まで似たような習俗があるので、やはり何か根底に共通のコンセプトがあるんだよね。

歳神様は豊穣をもたらす存在なわけだけど、お正月に来るのだ。
早くて大晦日、遅くて小正月までなのだ。
「年越し」というものにはカレンダー以上の意味はないけど、かつての日本社会ではおそらく唯一のまとまった休みの期間なんだよね。
逆に、ここで休むために、日持ちのするお正月料理や餅を用意したりとお正月の準備をするわけで。
そういうみんなが忙しくしている時にさぼっている連中は、豊穣を約束してくれる存在である歳神様に懲らしめてもらわないと困るのだ。
そんなことでは豊穣は約束できないぞ、と。
となると、現代社会でもせめてお正月にはニートの皆さんを懲らしめる現代版なまはげが活躍してくれることを祈るしかないね(笑)

0 件のコメント: