2023/12/02

アンチ・ハードボイルド

 うちはわりと温泉卵を常備しているんだよね。
何かあとちょっとトッピングしたい、という時に便利なのだ。
生卵だとチャんちょ料理しなきゃ、って感じだけど、温泉卵ならのっければいいか、って軽く使えるから。
それと、納豆には生卵はよくない(納豆に含まれるビオチンが白身の中のアビジンにより吸収を阻害されるため)、ということを聞いてから、納豆と混ぜる時もできるだけ温泉卵にしているんだ。
納豆の件は気にするほどじゃないとも聞くけど。

でも、この温泉卵って作ろうと思うとコツがいるんだよね。
原理が分かっていれば簡単なだけど、ゆで卵を作るときに時間を短縮すればいいはず、なんて思っているとだめなのだ。
君だけ固まってない半熟卵になってしまって、白身が固まるんだよね。
もっと短い時間でってやろうとすると、白身がちょっと固まったくらいで黄身は生のままとか。
問題は時間じゃなくて、温度なのだ。

なぜ温泉卵ができるのか。
それと、白身と黄身で固まる温度が違うから。
黄身(卵黄)は70度くらいで固まるんだけど、白身(卵白)は80度くらいないと固まらないんだよね。
つまり、この間の温度で温めれば、黄身は固まるけど白身は完全に固まらない温泉卵ができるのだ。
もともとはお風呂にしては熱めのオン繊維卵を付けておくと、黄身だけ固まって白身は流動性があるままに温まる、というところから「温泉卵」と呼ばれるんだよね。
なので、ゆでながら作ろうとすると逆に難しくて、魔法瓶とか保温できる環境で卵を温めてあげると失敗しないのだ。
スーパーなんかで普通に温泉卵が売っているけど、温度管理すればいいだけだから、実は工業的には作りやすいんだよね。

では、なぜ白身が固まって黄身が固まりきっていない半熟卵ができるのか?
これは、熱伝導の問題なんだ。
卵をお湯の中で温める時、表面から中心に向かって徐々に熱が伝わっていくわけだけど、中心温度が黄身が固まる温度になる手前で加熱を止めればいいのだ。
通常は、80度、90度を超える熱湯に卵を入れて数分ゆでるんだよね。
表面に近い白身はすぐに熱が伝わって固まり、中心部の黄身は徐々にしか加熱されないので、70度になる前に火を止め、すぐに冷やしてそれ以上熱が伝わっていくのを防ぐ、ということ。
そうなんだけど、これは難しくて、多くの場合、経験則で語られるのだ(笑)
常温に戻した卵なら、〇度のお湯に入れて数分温める、水からの場合は〇分で火を止める云々。
熱伝導の問題なので、黄身の中心にサーモスタットを入れたりすればまた別だけど、これはパラメータを振って最適条件を導き出すしかないのだ。

ちなみに、お湯に割った卵を入れて作るポーチドエッグの場合は見た目でわかるので、コツさえつかめば作るのは楽なのだ。
白身が広がりすぎないように少しお湯を入れたお湯の中に静かに卵を落とし、周りの黄身が少し固まってきたところで引き上げ、冷水にとって熱を冷ます。
すると、黄身はほぼ生、白身が流動性を残す程度に半熟に固まったポーチドエッグができるのだ。
ポーチドエッグというと日常的じゃないけど、半熟卵入りのお味噌汁でもこれは同じだよ。
白身が固まってきたかな、というところで火を止めてお椀に移せば、半熟卵入りのお味噌汁が出来上がるよ。

ちなみに、牛丼とかのテイクアウトで生卵が温泉卵に変更になることがあるけど、これはあんまり意味がないみたい・・・。
というのも、温泉卵であるという以上、卵の全体は絶対に75度以上にはなっておらず、完全に熱殺菌できていないのだ。
衛生管理上は生卵とほぼ同様の扱いが必要なんだって。
半熟卵でもこれは同じで、中心部はやっぱり75度未満のはず。
というわけで、ハードボイルドのゆで卵にするか、いっそ炒り卵(スクランブルエッグ)にするかしないと駄目なわけだ。
気持ちの問題なのかもだけど。

0 件のコメント: