2023/12/23

ゆっくりやれば上品に

 最近、煮干しの出汁が気に入っているのだ。
子供のころはなんか生臭くて少し嫌だったんだけど、この頃、煮干し系ラーメンを食べて、改めてそのうまみに気づいたというか。
むしろ、ここのところは煮干し系の出汁を求めている気がする。
なんか、濃厚なうまみを感じるんだよね。
で、さっそくスーパーで煮干しを買ってきて、味噌汁用の出汁をとってみたんだけど、こっちは普通。
あの濃厚さは、大量に使うとか、ぐつぐつ煮るとか、そういう要素があるんだろうなぁ。

煮干しは、鰹節や昆布と並んで日本の出汁文化を支えるもの。
西日本では「いりこ」と呼ばれ、「いりこ出汁」はさっぱりとしていて上品な出汁とされるのだ。
そのうまみの主成分は鰹節と同じグルタミン酸なんだけど、カツオの身の部分だけ使って加工される鰹節とは違って丸ごと使うので、カルシウムやミネラルなども豊富らしいよ。
また、鰹節はほとんど脂肪分のない赤身のカツオを使うわけだけど、煮干しの場合は、小さなカタクチイワシなどの青魚が原料。
小さいうちなのでそこまで脂はのっていないけど、青魚特有の不飽和脂肪酸があるのだ。
この不飽和脂肪酸は酸化されると、いわゆる「生臭み」になるので、煮干しにはその風味がどうしても付きまとうわけ。
煮干しも地鰹節同様に長期保存可だけど、不飽和脂肪酸の酸化による劣化があるので、冷暗所に保存して早めに使ってしまう方がよいみたい。
市販されているものは劣化を遅らせるために脱酸素剤が入っていたりするよ。

煮干し出汁の取り方はいくつかあるんだけど、短時間で出汁を引きたい場合はに出すのが一般的。
頭とワタからは雑味・苦味・えぐみが出るので、頭を外し、身を三枚におろすように割って黒いワタを取り出してから入れるとよいらしいよ。
それでもアクは出るので取らないと嫌な味が残るのだ。
量的には、1リットルに30gというのだけど、これは思ったより多くの量を入れるイメージかな。
1~2匹でよいかと思っていたら、10匹分くらいは入れないとだめみたいだ。

時間をかけてよいなら、水出しが上品な出汁になってよいらしい。
やはり頭とワタを取って水につけて数時間。
翌朝のお味噌汁に使うなら夜のうちからつけておけばよいみたい。
この方が雑味が出ないんだそうだよ。
でも、家庭の場合は、出汁を取った後に煮干しのガラを取り出さないことが多いので、その場合は煮出すのとあんまり変わらないかも・・・。
とにかく出汁のうまみが欲しい、という場合は、フードプロセッサーで煮干しを粉末状にして、粉末出汁のように使ってもよいのだ。
雑味なんかも多くなるはずだけど、カルシウムも丸ごと取れるのでメリットもあるのだ。
ラーメンにも煮干し子ってトッピングで使われるけど、あれが入ると一気に出汁が濃厚になるんだよなぁ。

鰹節は加工にけっこうな技術がいるけど、煮干しは割と単純。
小魚を塩水で煮てから干すだけ。
比較的に手に入れやすい食材だったのだ。
西日本の場合は、北海道でとれた昆布を日本海ルートで開運で運べたので、昆布が手に入りやすかったのだ。
それで昆布だしが多いのだけど、東日本、特に太平洋側はそれが使えないこともあって、昆布は手に入りにくかったそうな。
で、江戸の食文化はかつお出汁がメインになるけど、鰹節が普及するまでは煮干しを使うわけだよね。
田舎料理では煮干し出汁が多いのはそれが理由。
もちろん、だしを取った後にそのまま汁物の具として食べることもあるけど、お正月に食べる「田作」のように、乾煎りして味付けして食べる場合もあったのだ。
意外と便利な加工食品だったのかも。

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