2025/08/09

ぱっと散る

 最近はトラブルもあるようだけど、花火のシーズンになったのだ。
空中で火薬を爆発させるだけで本来的には季節的な要素はないはずないし、なんなら、日本の場合は冬の方が空気も乾燥して住んでいるし、早く暗くなるから見栄えがいいはずなんだけど、それでも「夏のもの」というイメージだよね。
なんでも、江戸の華と言われた隅田川の花火は、隅田川での船遊びが許された納涼花火解禁期間の開始日に花火師の玉屋と鍵屋が宣伝目的で互いに競い合って花火を上げたのgははじまりだそうで、
一説に、基金やこれらの死者をともらうために吉宗公が始めた、とも言われるけど、これは歴史的には間違っているそうだよ。
そんな日本の花火。
世界的に見ても芸術性が高いと言われているよね。
それは、打ち上げ花火の技術力。
その広がり方、色などが独特の進化を遂げているのだ。
海外だと、ただ広がるだけみたいのが主流だったから。

日本の打ち上げ花火は紙製のカプセルの中に丸めた火薬をきれいに並べて作られる煙火玉というもの。
大きいものでは尺(一尺は約30cm)を超えるので「尺玉」なんて呼ばれ方もするよね。
その火薬玉の並べ方で花火の広がり方が変わり、火薬玉の組成で色が変わるのだ。
そこが花火師の技術力。
おそらく、広がり方は歴史的に経験則として語り継がれてきたもので、今は多分計算もしていると思うのだ。
きれいに放射状(実際に空中では球状)に広がるのを基本に、変わり者としてハート形とか字の形にするなんてのもあるよね。

もう一つのポイントが色。
花火に使われる火薬は伝統的な黒色火薬。
酸化剤の硝石(硝酸カリウム)に燃料である木炭と酸化促進剤の硫黄を混ぜた組成が基本。
見た目が真っ黒なので黒色火薬なんだけど、種子島に火縄銃が伝わって以来、日本でも生産が拡大するのだ。
で、戦国の世が終わり、平和な江戸時代になると、それが花火に応用されるというわけ。
典型的な文化的な発展だね。

で、この黒色火薬そのものは赤く燃えるのだ。
線香花火はこの黒色火薬をごく少量使ったものなので、あのちょっと淡いオレンジがそもそもの色。
この黒色火薬に、添加物として金属粉を入れると色が変わるんだよ。
これは金属元素の炎色反応を利用したもの。
そう、化学で習う

リアカー(Li)赤
なき(Na黄)
ケイ村(K紫)
動力(Cu緑)
かると(Ca橙)
するもくれない(Sr紅)
馬力(Ba緑)

というやつ。

これを混ぜ合わせてさらに色を作っていくのだけど、このときのポイントは、絵の具を混ぜるイメージではないということ。絵の具の色は吸光反応、特定の色(波長)の可視光を吸収すると、その吸収する光の色と補色の関係にある色に見えるのだ。
例えば、植物が緑色に見えるのは葉緑素の色だけど、この葉緑素は光合成に赤い光を使っているんだよね。
つまり、赤い光を吸収するから、その補色の緑に見えるのだ。
一方で、この花火の色は金属の炎色反応で発色なので、光の色の重ね合わせの方になるのだ。
つまり、赤緑青が基本で、全部混ぜると白色になるというやつ。
カラーテレビでいろんな色味を出せる原理と同じ。
赤と緑が混ざれば黄色(絵の具の場合は黒)、緑と青を混ぜると水色(絵の具の場合は深緑)のような感じ。
実際には、金属の炎色反応は人間のカラー認識の基本のRGBと一致しているわけではないので、直感的に色の混ぜ合わせは予測しづらいんだよね。
発色の違いもあるし、この辺は経験値がものをいうのだ。
例えば、絵の具だと桜のピンク色を作るには赤と白を混ぜればいいけど、これを花火で再現しようとするとけっこう大変らしいのだ。

ちなみに、途中で色が変わる花火は、それぞれの色の火薬玉の詰め方の違い。
外側から燃えていくので、外側と内側で異なる色の火薬玉を使うと、燃焼中に色が変わるというわけ。
これも花火の広がり方と合わせて絶妙なバランス配置がいるはずで、やはり難しい技術なのだ。
でも、こういう技術に日本が優れているのってなんだかほこらしいよね。
こういうすぐに社会に役立つわけではないところに過剰に技術力を咲くのが日本らしいというか、なんというか。

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