2012/11/14

【号外】いきなり解散でどうなる?

総理が党首討論でいきなり16日解散を打ち出したのだ!
年内解散が確定して、12月4日公示、16日投票だって。
いやあ、いきなり動いて驚いたねぇ。
でも、問題となっていた特例公債法とかってどうなるの?、ということで調べたよ。

もともと、特例公債法というのは赤字国債を発行するための法律。
我が国では、財政法第4条第1項で「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」と規定していて、借金をして歳出をまかなってはいけない原則が存在しているのだ。
でも、そのすぐうしろに「ただし書」として「但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。」とも規定していて、公共事業などに使われる建設公債は例外的に認められているんだ。
これは、後世に渡って国民が広く利用できる社会インフラを整備するものだから、という理由なんだけど、対象経費は厳密に予算で定められていて、人件費や事務経費は使えないのだ。

で、その原則の下で、財源に充てるために国債を発行してまかなうのが赤字国債。
財政法では原則禁止されていることなので、特別法でオーバーライドする必要があるのだ。
それこそが特例公債法だよ。
昭和40年にはじめて成立したもので、その後10年間はなかったんだけど、昭和50年から平成元年までは連続して制定されたのだ。
その後しばらくバブルの時期は税収が大幅増だったので赤字国債を発行しなくても大丈夫だったんだけど、バブル崩壊後は、いきなり歳出が絞れない一方で歳入が減っていったので、またまた特例公債法の出番となり、平成6年から毎年制定されているよ。

これがないと赤字国債が発行できず、歳出に見合った歳入が期待できないので、「執行抑制」をする必要が出てくるのだ・・・(>o<)
これが「特例公債法を盾に国民を苦しめる・・・」と言われる所以なんだよね。
国民生活に必要な予算であっても「ない袖は振れぬ」で支出できない、と脅すことになる、というわけ。
実際には本当に必要なところ(例えば警察や消防の活動費など)は優先的に支出していくはずなんだけど。
一応、去年今年の反省もあって、政争の具とならないよう、今回の与野党合意で平成27年までの赤字国債発行が見込まれる予定なのだ。

実際に平成24年度の政府予算の歳入歳出を見てみると、歳入は、税収や雑収入のいわゆる真水の収入が46兆円で、国債を発行してまかなう公債金が44兆円で、全体は90兆円規模(つまりは半分は借金でまかなっている!)。
そのうち、特例公債金(=赤字国債)は38兆円にもなるよ。
歳出で見ると、国債の償還や利払いに使われる国債費が22兆円で、残りの68兆円が基礎的財政収支対象経費と言われる、国が事業を行う予算。
44兆円借金しておきながら、22兆円しか返済に回していないので、借金はふくらむばかり・・・。
いわゆる「基礎的財政収支(プライマリーバランス)の均衡」というのは、国債を発行する額と返済する額が釣り合っている状態(=それ以上借金が増えていかない状態)をさしたものだよ。
それでも自転車操業なんだけど(ToT)

で、この特例公債法を通さないと国の財政は立ちゆかないので、なんとか通さないといけない、という話になっていて、今週から野党の協力の下で質疑が始まっていたのだ。
で、今日の党首討論で、定数削減を次期通常国会で確約してもらえれば今週末にも解散すると言いはなって、それが実現することになったんだけど、そうなると、特例公債法はどうなるの?、ということになるよね。
憲法では、第54条第2項で「衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。」としていて、衆議院が解散されると国会が自動的に閉会になってしまうので、法案が成立できなくなるのだ。
ただし、この条項にもただし書があって、「但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。」となっていて、衆議院が解散されても重要な議題があるときは参議院だけが緊急集会を開いて審議することもできるのだ。
これは解散総選挙の間に国会機能が完全に不能にならないようにするセーフティガードだよ。

ただし、今回は参議院でも成立させてから、ということのようなので、金曜日までに仕上げる必要があるのだ・・・。
今日は衆議院で財務金融委員会の審議・議決が終わったばかりで、明日衆議院本会議で議決をするので、明日中に参議院に送っても1日で仕上げる必要があるわけ。
通常は国会での審議は本会議だけで議論するのではなく、委員会に付託して議論を尽くしてから本会議で議決するんだよね(重要広範法案は先に本会議で議論してから委員会に付託するよ。)。
でも、これにも例外規定があって、国会法第56条第2項で「議案が発議又は提出されたときは、議長は、これを適当の委員会に付託し、その審査を経て会議に付する。但し、特に緊急を要するものは、発議者又は提出者の要求に基き、議院の議決で委員会の審査を省略することができる。」と定めていて、原則は委員会に付託するけど、本会議だけで議決してもよいことになっているのだ。
おそらく、今回はこれを使って委員会審査を省略すると思われるのだ。
※けっきょく15日(木)に衆議院で可決された後、夕方から参議院の財政金融委員会で審査をしたみたい。

というわけで、明日明後日と国会議員の先生はけっこういそがしい日程になるんじゃないかな?
当初はTPP解散なんて言われていてけど、また今日の状況を踏まえて、「いきなり明後日解散」とかなんとかそんな名前がつくかもね(笑)
このまま民主党がそのまま政権にとどまるとも思えないので、政局はまた流動化するんだろうなぁ。
米国は大統領が再任したのにね。

2012/11/10

爆歩兄弟!タッチ&ゴー

駅のポスターを見て知ったんだけど、今日から明日にかけてSUICAとPASMOはシステムメンテナンスのために一部のサービスが停止されるんだって。
で、改めて気づいたんだけど、SUICAやPASMOが使えなくなって電車に乗れなかった!、っていう事態ってないよね?
どれだけ堅固なシステムなんだろうって感心するよ。
その仕組みを調べてみると、意外な(でもいつはけっこう有名な)ことがわかったのだ。

SUICAとかPASMOって実は使うたびにセンター・サーバーと情報のやりとりをしていないんだって。
クレジットカードの場合、通信にけっこう時間がかかるよね。
あれはカードの認証をするのにセンター・サーバーに問い合わせていて、そのとき、限度額を越えていないか、不正なカードでないか、盗難などで使用停止になっているカードでないかなどなどを確認しているんだ。
でもでも、SUICAとかPASMOはまさに「タッチ&ゴー」でピッっていう間に決済が終わるんだよね。
これは、センター・サーバーまで問い合わせをしていないからこそできる芸当なのだ。

では、どうしているかというと、各端末(駅で言うと自動改札機)とICカードとの間だけで情報のやりとりをしているんだって。
で、カードにも端末にもそれなりに履歴を蓄積することができて、後でそれを照合しながらまとめていって、最後にセンター・サーバーに集約するみたい。
自動改札の場合は、通信が生きている限りは一定時間ごとに各改札機から駅のサーバーに情報を上げ、駅のサーバーはまた通信が生きている限り一定時間ごとにセンター・サーバーに情報を上げていくのだ。
最後に全部の情報を集約して矛盾がないかどうか確認して、最終的に電子的決済が完了する、という仕組みのようだよ。

駅で運賃が引き落とされたり、コンビニで代金が引き落とされたりしても、その時点ではカードに記録されているチャージ情報が書き換えられているだけで、まだ確定していないのだ。
なんらかの理由で不都合が出てきて、数字が合わない場合は、それぞれの取引をさかのぼって確認することになるんだろうね。
ちなみに、紛失時の再発行や、カード内のデータが死んで復旧するときに時間がかかるのは、まさにこのため。
センター・サーバーに情報を集約して処理し、取引の決済が完全に完了するまでは「確定」できないからなのだ。

これがSUICAとPASMOのシステムを難攻不落にしている要因で、通信が死んでいても、端末やローカル・サーバーに情報が蓄積しておけるので、しばらくは使い続けることが可能なのだ。
これはセンター・サーバーやローカル・サーバーが落ちた場合も同じ。
後でまとめて情報を送ってやって処理できればいいわけ。
これが自律分散型システムなのだ!
最近では電子マネーとしての利用も増えているし、相互利用も進んできているから取引量がのびているけど、だいたい3日くらいまでならサーバーが落ちても使い続けられるらしいよ。
なんというロバストネス(堅牢さ)♪
今回はまさにサーバーのメンテナンスをするため、情報を確定しないとできない手続である再発行や払い戻しができなくなるみたいだね。
普通にサーバーは落ちているみたいだけど、こういう手続はそんなに頻繁じゃないし、そもそも乗車券や電子マネーとしては使い続けられるから問題にならないというだけなのだ。

そもそもこの非接触型のICカード利用が検討されたのは90年代なんだって。
ちょうど磁気カードを挿入する自動改札が普及してから10年くらい経つと、読み取り部の摩耗やら機器の更新やらでメンテナンス費用が高くつき、システムの拡張性も乏しいので、磁気カードが本格導入されたそのタイミングから検討が始まったみたい。
ちょうどそのころそういう技術も出てきていたんだよね。

磁気カードの場合、挿入してからデータの読み出し、正規なものかどうかの判定、データの書き込みと確認という処理を0.7秒でやっていたらしいのだ。
ところが、すーっと自動改札の横をストレスなく歩き過ぎる速度は都心部では1.2m/s、毎分72mくらいの早さで、改札の横を通る時間はなんと0.2秒しかないのだ。
しかも、カードとの通信(往復)で0.1秒かかるので、データの処理を0.1秒以内に行う必要があるんだって。
この一瞬間に、認証、読み出し、判定、書き込み、確認という処理をしているらしいよ。

現在カードと端末の間で使われているのは無線通信で、実際は「タッチ」する必要はなく、10cm以内に近づければいいんだって。
でも、この0.2秒を確実に稼ぐために「タッチ&ゴー」を推奨しているそうだよ。
無線通信は準マイクロ波と呼ばれる、1~3GHzの周波数の極超短波。
今の第三世代携帯(3G)の通信帯域と同じだね。
だからモバイルSUICAなんてのもできるのかな?

それにしてもなんとなく使っていたけど、これはすごい技術だねぇ。
そう言えば、出始めのときはおどろいたっけ。
慣れっていうのはこわいこわい。
でも、これってデータ処理の分野で言うと、画期的なシステムだったらしいよ。
開発者はこのシステム構築で博士論文を書いたらしいけど、こんなのが現実に動くわけがない、と批判する学者もいたとか(笑)
でも、この各端末が自律的に動くシステムを組み上げることで、堅固なシステムと高速処理を実現したのだ。
ちょっとこれからは自動改札を通るときもその技術に敬意を表さないとね。

2012/11/03

かわぎしがおいしいんだよ

最近、ローソンでパンを買うとき、「ふすまパン」をよく買うのだ。
低カロリーで食物繊維とミネラルが豊富なんだよね。
これはありがたい!
ちょっと食感はかたくてざらつくけど、もともとライ麦パンとかが好きなボクには気にならないもんね。
で、「ふすま」ってなんじゃらほい?、と調べてみたよ。

ふすまは小麦の表皮の部分で、米で言うとぬかに当たる部分なのだ。
イネ科の穀物は、種子が硬い表皮で覆われていて、その中に胚乳と胚芽があるのだ。
胚乳が精白して食べる部分で、白米本体や小麦粉になる白い部分。
胚芽は芽になって発芽する部分で、ここにも栄養素が多いから、胚芽米なんてのもあるくらいだよね。
米などの場合は、表皮がわりともろいので、ついてやると表皮が細かく割れ、はがれて落ちるのだ。
それが精米だよ。
これをふるいにかけると、一番大きい白い粒が白米、細かい粒が胚芽、微細粉がぬかだよ。

小麦の場合はちょっと特殊で、表皮が硬くてはがれにくいのだ。
なので、小麦をからごと荒くひいてあげると、中の白い胚乳部分は粉になり、外側の硬い表皮は大きな破片として残るんだよね。
これをふるいにかけて小麦粉を取り出すのだ。
米の場合は粉になる部分と残る部分が別なんだよね。
で、その残った大きな表皮の部分だけを集めたのがふすま。
粗挽きではなく、最初から細かく表皮ごとひいたのが全粒粉だよ。

一般に穀物のぬかには繊維質と鉄、亜鉛、銅などのミネラルが豊富で、しかも、糖質をほとんど含まないのでカロリーは低いのだ。
繊維質も不溶性の食物繊維なので、便秘にもいいし、腸の中で余分な油脂を吸着してくれたりもするとか言われているよ。
米ぬかなんかはぬか床に使ったり、かつては洗剤代わりに使われたりもして大活躍だけど、小麦ふすまは健康食品とかシリアル食品に使われるくらいしかあまり使い道がなかったんだよね。
やっとふすまを使った食品が出始めたのだ!

もともと全粒粉のパンは存在していて、小麦粉で作ったパンに比べて栄養素が豊富なので一部で好まれていたのだ(ホールウィートというやつね。)。
でも、ちょっと硬くてざらつくので、避ける人も多いんだよね。
クッキーなんかだとわりとましなので、全粒粉クッキーはけっこう普及しているけど。
さらに、ふすまで作るとなると・・・。

さらに問題はあって、ふすまの中にはほとんど糖質とタンパク質が含まれていないので、そのまま水でこねても形にならないし、それを焼いてもパンとしてうまくふくらまないのだ(>o<)
こねて形にならないのはタンパク質のグルテンが少ないため。
いわゆる麺類のこしを出すタンパク質だよね。
多ければもっちりとし、少ないと食感はやわらかくなるのだ。
なので、もちろんふすまでは麺類は作れないよ・・・。
それと、イーストで発酵させようとすると、中に糖質がないとダメなんだよね。
イーストは糖質を分解して炭酸ガスを作り、ふわふわ感が出るのだ。
イーストが発生させた炭酸ガスの泡がパンの生地の中に行き渡って、焼くとそのその泡が大きくなるので、ふわふわにふくらむんだよ。
で、ふすまだけだと糖質も足りないわけ。

なので、ふすまパンをつくるときには、別に小麦粉グルテンを足したり、大豆粉や小麦粉を少し入れて糖質を加えたりするのだ。
それでも、普通に小麦粉で作るパンよりは糖質が少ないので、糖尿病の患者さんでも食べられるパンができるんだ。
ふすまだけをこねて焼くと、ケロッグの「オールブラン」のような食感。
それはそれでよいんだけどね(笑)

というわけで、おいしいふすまパンを作るにはブレンドが大事なのだ。
おそらく、それがコツにもなっているんだろね。
とりあえず、ローソンで売っているふすまパンはなかなかいけるよ。
最近ではホームベーカリーで作る人もいるみたい。
ふすま粉も売っているんだって。
ボクはとりあえずは買う派だけどね。

2012/10/24

混沌と雲を呑む話

最近、よくワンタンを食べるようになったのだ。
もともとワンタン麺はわりと好きなんだけど、それ以上に、マルちゃんのワンタンの存在が大きいよね(笑)
お弁当とかを食べるときにどうしても汁物がほしくなるけど、お値段も手頃だし、けっこうおいしいし、選びがちなのだ。
カップ味噌汁ってそんなにバリエーションがないんだよね・・・。

そんなワンタンだけど、中国の華北を代表する料理の一つ。
中国大陸の場合、温暖な南の地域(華南)では稲作中心で米食文化だけど、寒冷な北の地域(河北)では小麦中心で、麺や饅頭などの点心が発達しているのだ。
ワンタンもその一つで、一般には、小麦粉で作った薄めの皮で肉や魚介類からなる餡を包み、ゆでてからスープの具として食べるよね。
四川省の方では、ゆでたワンタンにラー油をからめて食べることもあるのだ。
そのほか、揚げワンタンなんてのもあるよね。

なんでも2000年以上の歴史があるそうだけど、もともと小麦粉の皮で餡を包むという意味において餃子とあまり区別されていなかったそうな。
それが、食べ方の違い等で分化していったみたい。
平安時代に日本に伝わってきたものでは、「饂飩」と書いて餅状の皮で具を包んだスープ料理が照会されていたみたい。
当時は唐代だから唐音で「ホントン」と呼ばれていたんだけど、これの呉音が「ウンドン」と読まれることから、うどんの起源ではないかとも言われているんだよ。
「ホントン」という音がほうとうやはっとに似ているというのもあるみたい。
途中で小麦だけになっちゃってるけどね(笑)

この「饂飩」が主に北に広まって定着したのが餃子。
丸い厚めの皮でたっぷりの具を包んで、蒸したりゆでたりして食べるんだけど、基本的には主食として食べるものなんだよね。
お祝いの席で食べる料理でもあって、縁起物だよ。
日本で主流の焼き餃子は戦後満州から引き上げてきた人々が広めた食べ方で、本場中国ではあまりやらない方法なんだよね。
ニラまんじゅうのようにそのまま蒸し焼きにするものもあるけど、餃子の場合はゆでるのが基本で、残り物をさらに焼いて食べることがあったみたい。

一方、南に広まってできたのがワンタン。
雲呑という表記は広州で生まれたもので、広東語だって。
ワンタンは四角い皮で少量の具を包み、ゆでてからスープの具にするのだ。
なので、北の餃子と違って主食ではないんだよね。
このワンタンが広州で麺と一緒に食されるようになってできたのがワンタン麺。
もともと麺の具としては鶏や豚のつみれ団子が入れられていたんだけど、その代わりにワンタンを入れてみた、ということみたい。
やがて、広州から香港へ人が流れると、香港料理としてのワンタン麺が発達するのだ。

香港のワンタン麺は、固めにゆでた細めの縮れ麺に丸いぷっくりしたワンタンが特徴。
ワンタンの上に麺を載せ、そこに熱いスープをかけて作るのだ。
麺がのびないように、ということなんだそうだけど、最初に香港で食べたときはワンタン麺を頼んだつもりが別のものが出てきたのかと焦ったよ(>o<)
スープは薄めで、ワンタンや麺の味そのものを楽しむんだそうだよ。
日本のワンタン麺はラーメンにワンタンが具として入っているのが基本なので、だいぶ趣が違うんだよね。

このワンタンは、中国から日本以外にも広まっているのだ。
ヴェトナムはもちろん、マレーシア、シンガポール、インドネシア、タイなんかにも似たようなものが。
音も「ホントン」に比較的近いものなので、やっぱりワンタン起源。
ワンタン麺的な料理として広まったものと、スープとして広まったものがあるみたい。
餃子・ワンタンのように餡を皮で包むという手法はシルクロードを経由して欧州まで至り、イタリアのラビオリになったと考えられているけど、それだけ人類に愛される料理法ということなんだろうね。
実はグローバルスタンダードの料理なのだ!

2012/10/20

正しく使おう!

山中教授のノーベル生理学・医学賞受賞のすぐ後で、大問題が発生したのだ。
そう、iPS細胞研究の臨床研究に関するねつ造疑惑・・・。
まだ調査中というのが公式スタンスなんだろうけど、限りなく黒に近いグレーだよね。
本人はウソをついているうちに、自分でも本当だと信じ始めちゃっているのかな?
前には韓国の研究者がES細胞でねつ造した事件があったけど、そのときは世界中でES細胞研究が止まる事態にもなったんだよねorz
今回は断罪すべきところは断罪するとして、そういう「伸び盛り」の分野に負の影響を及ぼすことがなければいいけど。

で、この人、社会的制裁はあるとして、研究者としては他にもペナルティがあるのだ。
というのも、国から研究費をもらっていたんだよね。
虚偽申請で研究費を獲得していたり、研究費の成果として虚偽の実績報告をしていると処罰の対象になるのだ(>o<)
例えば、国の研究費のほとんどを持っている文部科学省では、研究活動の不正行為についてガイドラインをまとめているんだよね。
よく話題になるのは研究費の不正使用で、空出張やら預け金やら横領やら、信じられないような話が出てくるけど、それは研究費の使い方の話なのでこのガイドラインの対象外。
むしろ、今回のようなねつ造・でっち上げ、盗用・ぱくりなんかも対象だよ。

研究費の使い方の方は、基本的に個別の制度ごとに会計・経理の仕方が違うので、それぞれで定めているんだ。
ただし、結果的に正しくない使われ方をしていたとしても、「故意」と「過失」があるので、切り分けるのが普通なのだ。
例えば、研究費の使用については、知らずにやってしまった、或いは、手続き上のミスがあった場合で結果的に研究費が正しく使われなかったものについては「不適正経理」という扱いにあるんだよね。
悪意を持って研究費を不正に使う「不正使用」とは峻別しているのだ。
当然過失でも許されない部分があるのでペナルティはかかるわけだけど、故意のものに比べれば相対的に軽くなるのだ。

今回は文部科学省の科研費をもらっていたようだけど、科研費の場合は「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」の対象になるので、法令による罰則も適用される可能性があるのだ。
不正な手段により補助金の交付を受けた場合は罰金だけでなく懲役刑もあるんだよ!
「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令」で対象となる国の補助金や委託費が定められていて、その経費についてはこの法律が適用されるのだ。
科研費もその一つだよ。
で、不正などがあった場合は、第17条の規定で「交付決定の取消」が行えることになっていて、さらに、その次の第18条でその場合に「補助金等の返還」を求めることができるようになっているんだ。
今回は事実関係を調査した上で、不正行為が認められれば、交付されていた科研費の一部又は全部の返還が求められることになるよ。

具体的な手続については、科研費の交付要綱科研費取扱規程に定められているよ。
交付要綱は適正化法とあまり変わらない表現ぶりだけど、重要なのは取扱規程。
不正行為が発覚した場合、ペナルティとして以降2~5年間は科研費が申請できなくなるのだ。
いわゆる「みそぎ」だね。
取扱規程の細則で、不正行為の内容に従って定めるけど、規定ぶりはあいまいなので、個別に判断しているみたい。

ちなみに、文部科学省の場合は、「水平展開」ということで、科研費で不正行為をした研究者は、他の文部科学省の研究費をもらえないルールになっているそうだよ。
その期間にもよるけど、研究者としての生命線である研究費が止められることになるので、相当つらいよね・・・。
ま、それだけのことをしてしまった、ということだけど。
今回のように大々的に報道されずとも、そういう制裁は受けることになるのだ。

さすがに今回の人はもう研究者としてはやっていけないだろうね。
一時の過ちでで一生がダメになってしまうのだ(ToT)
国民の税金を使っているということを意識して、正しく使ってほしいね!

2012/10/13

アップルがプレイステーションを買収したわけじゃない

めでたいことに、今年は日本人のノーベル医学・生理学賞が出たのだ!
1987年の利根川進博士以来の快挙♪
もちろん、京都大学の山中伸弥教授だよ。
受賞理由は言わずとしれた「iPS細胞」。
最初の研究発表から6年という短期間で、50歳という若さでの受賞はその成果がすばらしさを物語っているのだ。

このiPS細胞というのは、成体の体の細胞に細工をしてあげると、体中の様々な種類のどの細胞にも分化できる能力を持つ細胞になるというもの。
induced Pluripotent Stem cellsの略で、日本語では「人工多能性細胞」とも呼ばれるのだ。
これまで再生医療の研究に使われていたのは受精卵由来のES細胞(Emryonic Stem cells)。
受精卵が細胞分裂を始めてから16細胞~32細胞くらいになったとき、単に細胞がくっついている桑実胚から中空の胚盤胞呼ばれる形状になるんだけど、球状の細胞の層の中にぽつぽつと細胞が転がっているイメージなんだよね。
その中の細胞を取り出して培養してできるのがES細胞で、受精卵を使わないと作ることができないのが難点だったのだ(実際的にも、倫理的にも)。
一方、iPS細胞は体の細胞を使って作れるので、その点はクリアできるし、何より、自分と遺伝情報が全く同じクローンの細胞が作れるのが魅力なんだよね。
ES細胞の場合は、どうしても核移植などをしないとクローンにできないのだ・・・。

ES細胞は受精卵から取り出して培養するだけなんだけど、iPS細胞の場合は細胞に処理をしないといけなくて、それが「induced」と呼ばれる所以。
2006年に山中教授がマウスでiPS細胞を樹立したときは、4つの遺伝子を導入することで実現しているのだ。
ES細胞に特異的に発言している遺伝子を導入すれば、幹細胞になるんじゃない?、という発想の下、そういう遺伝子を洗い出し、さらに組み合わせ実験で絞り込みをして、これだ!、という4つの遺伝子を突き止めたのだ。
その後、これは薬剤をうまく使えば3つの遺伝子でできることもわかったんだけどね。
この成果の後、世界で大競争が起こってヒトのiPS細胞の樹立が行われることになるんだけど、ここでも山中教授は実際に患者さんの細胞を使って樹立するという偉業を成し遂げるのだ。
今のところ、本当の意味で世界No.1の実力なんだよ。

iPS細胞やES細胞の「万能性」というのは、体に存在するどんな種類の細胞にも分化できる可能性を秘めている、という意味。
この先駆的な実験を行ったのが、今回の共同受賞者のジョン・ガードン博士なんだ。
ジョン・ガードン卿は、腸の細胞の細胞核を卵細胞の細胞核と交換する、という実験を行ったところ、腸細胞の細胞核を入れた卵細胞は普通の卵細胞同様に発生の過程を経てオタマジャクシになった、という発見をしたんだ。
これは、成体の体細胞であっても、発生の過程に必要な遺伝情報のすべてを持っていて、うまく発生という場に送り込めればひとつの個体を形作る「全能性」を獲得できる、ということを意味しているんだ(「全能性」という場合には個体まで発生できるポテンシャルを指し、すべての細胞に分化できるポテンシャルは「万能性」と呼ばれるのだ。)。
すなわち、どの細胞も基本的には遺伝情報は同じで、遺伝子の発現制御などの遺伝情報の使い方(こういうのを「エピジェネティック」というのだ。)で発生というプロセスがコントロールされていることを示したわけ。
(後に利根川博士は免疫細胞ではDNAの組替えをすることで多様性を確保している、という発見をし、すべての細胞が同一の遺伝情報を持っているわけではない、ということが証明されるのだ。)
ちなみに、ガードン卿のこの発見が論文になったのは1962年で、なんと山中教授が生まれた年の成果だよ!

で、このガードン卿の発見から、どうやったら成熟した細胞がいろんな細胞に分化する能力を取りもどせるか、という研究が始まるのだ。
イモリなんかは手がちぎれても再生するけど、ヒトではそうもいかないからね。
しかも、がんという病気は、もともと分化して成熟していた細胞が未分化な状態になり、制御不能な状態で勝手に増殖して起こるものなんだよね。
すると、逆に身勝手に増えるこの未分化の細胞を、うまく分化させ、成熟した細胞にもどしてあげれば治すことも可能なのだ。
その意味でも、ES細胞やiPS細胞の研究は重要なんだよ。
現在は、いろんな種類の細胞に分化させることには成功し始めているけど、一方で、中途半端な状態で人体に移植してしまうと、けっきょくそれががん細胞のようにアンコントローラブルに増殖してしまうおそれもあるので、その安全性の確保も急がれているんだ。
特に、iPS細胞は遺伝子導入をしているので、注意が必要だと言われているよ。

とにかく、また日本からノーベル賞が出たのは喜ばしいことなのだ。
これで19人目。
臨床応用まではもう少し時間がかかると思われるので、タイミング的には少し早いような気もするけど、この世界は日進月歩であっという間に進捗があるのもまた事実だから、これを機にまた一気に実用化に近づくかも。
まだ50歳だし、まだまだ最前線で活躍してもらいたいね

2012/10/06

揚げたら別物

ボクはもともと豆腐が好きなんだけど、その加工品も好きなのだ。
そう、厚揚げとか、油揚げだよ。
夏の暑い間は冷や奴がいいし、冬の寒い時期は湯豆腐がうれしいけど、春や秋なら少し焼いて温めた厚揚げなんかは最高なのだ。
生姜醤油で食べるとおいしいよね。

厚揚げと油揚げって、単に揚げる前の厚さの違いだけと思っていたらさにあらず!
厚揚げは水切りをした豆腐を一丁そのまま、又は半丁に切ってから、表面がきつね色になるまで揚げたもの。
仲間で火を通すことはせず、外はかりかり、中はなめらかな豆腐のまま、というものなのだ。
豆腐の食感が残ったまま香ばしくなっているのがポイントで、だからそのまま食べてもおいしいんだよね。
江戸時代には、厚揚げを網で焼いて縞状に焼き色を付けたものが酒の肴の定番で、青ネギをちらした「竹虎」、大根おろしをそえた「雪虎」として親しまれていたそうだよ。
表面を揚げてあることで煮くずれしづらく、味もしみやすいので、煮物にも使われるんだ。
しっかりと煮込まなくても表面に味が染みこむので、小松菜と炒め煮にしたりしてもおいしいよね。

一方、油揚げは専用の豆腐を作ってから、それを薄く切って揚げたもの。
仲間でしっかり火が通っていることがポイントで、独特の食感が出るのだ。
豆腐とはまったく違うよね。
厚揚げが高温の油でさっと揚げるのに対し、油揚げは低温で揚げて膨脹させてから、高温の油でもう一度揚げてかりっとさせるんだって。
よく膨脹するように、揚げる前の豆腐はもともと薄めの豆乳でしっかり堅めに作るようなのだ。
よく揚げることで中までスポンジ状になって、味がしっかりと染みこむわけ。
いなり寿司やきつねうどんの揚げなんかはおいしい汁を吸ってなんぼだからね(笑)
袋状に開くことができるのもミソで、それでいなり寿司や巾着などが作れるのだ。
でも、厚揚げに比べると油がよく染みこんでいるので、しっかりと油抜きをしないとしつこいよ。
ここで手を抜くとおいしくないのだ(>o<)
ちなみに、新潟名物の栃尾揚げは油揚げと厚揚げの中間のように感じるけど、中までしっかり火が通っているので、分厚い油揚げという位置づけなのだ。

豆腐の伝来自体は奈良時代と古いけど、食材として広く使われ始めるのは室町時代の終わりから。
実際に庶民の食卓に並ぶようになるのは江戸時代からで、そこから全国的に普及したみたい。
肉食をあまりしなかった江戸時代の人にとっては重要なタンパク源で、納豆や豆腐といった大豆加工品は重要な食材だったのだ。
油揚げはすでに江戸時代初期の文献にも登場しているそうで、同時期に料理として発達した天ぷらからの着想ではないか、という説も。
おそらく、もともとは豆腐をそのまま揚げてみて厚揚げが生まれて、その後、薄切りの豆腐をしっかり揚げて油揚げができたんじゃないかと思うのだ。

油揚げと言えばおいなりさんの好物だけど、もともとキツネが好きだったのはネズミを油で揚げたもの。
でも、そんなものはお供えしづらいので、精進ものの豆腐を揚げた油揚げが供えられるようになったんじゃないかと考えられているのだ。
さらに、そこから油揚げがキツネの好物に変わり、それで市にメタ油揚げが入ったうどんはきつねうどんとなっていくのだ。
でも、本当は稲荷神はインドの荼枳尼天(だきに)天なので、乗っているのは野干(やかん)。
野干は野狐などとも言われるけど、本来はジャッカルのことなのだ。
日本にはジャッカルが生息していないので似ているキツネが当てられただけ。
そういう意味では、稲荷と油揚げは実はそんなに関係していないのだ。

また、油揚げで巻いたものを信田(しのだ)巻き、きつねうどんの別名をしのだうどんなどと呼ぶことがあるけど、この信田というのは「葛の葉」伝説から来ているのだ。
平安時代に安倍保名(やすな)が信田の森を訪れた際、猟師に追われていた白狐を助けるのだ。
実はこのキツネを年を経て妖力を持つに至ったキツネで、「葛の葉」という女性に変じて、その際にけがをした保名の見舞いにやってくるのだ。
やがて二人は結ばれ、生まれた子どもが後の安倍晴明。
安倍晴明が5歳になる年に保名に正体を気づかれ、葛の葉は森へと帰っていった、という話だよ。
天下に名だたる陰陽師の安倍晴明の力の源を空かすエピソードとして有名なのだ(けっきょく人外の力、という整理なんだけど。)。
で、その連想で、キツネ=>信田、となるわけなのだ。

こういった言葉遊び的な名前が付けられるのも、それだけポピュラーな食材だったという証拠なんだろうね。
肉を食べるのもよいけど、たまには揚げでヘルシーにすますのもよいことなのだ♪
ただし、豆腐って意外とカロリーが高いし、油揚げや厚揚げは油で揚げた分さらに高いので、そんなにダイエット効果は期待できないよ(笑)
コレステロールなんかはだいぶ抑えられるけどね。