2014/11/01

裏の畑でポチが鳴く

エボラ出血熱の問題でにわかに問題になったけど、我が国では、エボラ出血熱に罹患しているかどうかまでの検査はできるけど、いったんエボラ出血熱の患者だと判明した場合、その患者さんの検体を使ったエボラウイルスの研究はできないんだよね・・・。
これは、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症予防法)の枠組みによる規制なんだ。
この法律では、第一種病原体とされるエボラ出血ウイルスや天然痘ウイルス、ラッサ熱ウイルスなどはそもそも所持自体が禁止されていて、政令で定める病原体を厚生労働大臣が指定する施設で試験研究に使う場合は例外的に所持することができる、とされているんだ。
エボラ出血熱ウイルスについては、研究できるものとして政令で指定されているんだけど、研究できる施設がない、というのが問題なのだ。

扱える施設が全くないのか、というとまた違って、設備的には扱える施設はあるんだけど、その設備が使えない状況にあるんだよね。
具体的には、厚生労働省の試験研究機関で或国立感染症研究所の東村山庁舎の中に、バイオ・セーフティ・レベル4(BSL4)相当の研究施設があって、国際的な基準で言えば、そこでは第一種病原体を扱うことは可能なのだ。
でも、この施設については住民訴訟があって、住民と和解ができない限りは最高レベルであるBSL4としては稼働してはならない、という判決が出ているのだ。
なので、実質上使えないわけ・・・。

国益という官邸で言えば、国内でエボラ出血熱患者が発生しても、判定が陽性になってからはそれ以上国内で研究できないので、米国等に検体を送って研究してもらうしかないんだよね(>o<)
実際に、ラッサ熱が発生したときはそうしたようなのだ。
なので、国会での指摘でも、政府の方針でも、早期にBSL4施設として稼働できるようにすべき、というのが出ているんだけど、エボラ出血熱の患者がそこに運び込まれて、そのウイルスを増殖させたりする、と言われると、地元住民はたまったものじゃないよね・・・。
そうそう理解が得られるものではないのだ。
こくにとしてはやるべきだけど、自分の住んでいる地域ではちょっと、ということ。

この問題はより一般的には「NIMBY」と呼ばれていて、これは、「Not in My Back Yard」の略なんだ。
うちの裏庭でやるのはやめてくれ、ということ。
原子力発電関連施設やゴミ処理施設、刑務所、下水処理施設、食肉処理施設(いわゆる屠畜場)なんかの「迷惑施設」と呼ばれる施設に共通の問題なのだ。
今も福島に核廃棄物の最終処分場を作るかどうかについてもめているよね。
沖縄における米軍基地問題も同様なのだ。
国としてはそういう施設が必要であるのは理解するのだけど、いざ自分が住んでいる地域にそういうのがあるのはいやだ、という人間のエゴの表れみたいな問題なんだよね。

原子力発電関連施設だと今回の事故のようなことがあるとそもそも人が住めなくなりリスクがあるし、米軍基地の場合も、米軍兵士による事件・事故なんかは件数的にもけっこうあるから、実被害のリスクが伴うものなんだよね。
米軍海兵隊の兵士が事件や事故を起こしたとしても、基地内に戻られたら日本の司法ではどうしようもなくて、米軍の軍紀・軍法裁判に任せるしかなくなってしまうのだ。
ゴミ処理や下水処理みたいなのは、イメージ的に忌避感があるという部分が多いんだろうけどね。

そういう問題があるので、原子力発電関連施設の周辺地域には立地対策として立派な道路が整備されたり、豪勢な体育館・公民館ができたり、といろいろあるのだ。
地元自治体にも核燃料税などの地方税収入があったりもするし。
沖縄の米軍基地の場合もそうだけど、地元で大きな雇用を作り出しているというのもあるんだよね。
なので、反対する住民と、是認というか妥協というか、賛成する住民がいるわけで、そのかねあいで折り合いをつけるような格好になるのだ。
地方選(例えば自治体の首長など)では毎回大きな争点になるけどね。

一方で、この感染症対策の場合、そういう立地対策的な「にんじん」もぶら下がっているわけではないし、基本は大きな声で反対するか、とりあえず黙っているかしかないのだ。
そうなると、自治体を巻き込んだとしても、なかなか前には進まないわけだよねぇ。
非常にデリケートで難しい問題なのだ。
だからといって何かできるわけじゃないんだけど、何もしないでいいわけでもないので、打開策は考えないと行けないんだよね。
本土から離れた無人の離島に施設を作るとかなんとか、考えられるような気もするけど、そうなると疑いのある患者を緊急搬送するのが大変だし、研究者や医療従事者をそこにとどめておくのも難しいから、あんまり案にならないんだよねぇ。

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