2014/11/29

川口「はやぶさ」探検隊

いよいよ小惑星探査機「はやぶさ2」の打上げが迫ってきたのだ。
予定どおり打上げが行われれば、明日の昼過ぎには宇宙に飛び出すんだよね。
そして、東京五輪開催と同じ2020年にまたもどってくるんだ。
前の「はやぶさ」は2010年にもどってきたから、その10年後にまた宇宙から小惑星のかけらがデリバリーされるかもしれないというわけ。

前回の「はやぶさ」はよく「小惑星探査機」と言われるけど、実験計画上は「工学実証機」で、イオンエンジンや化学スラスタなどの工学技術が長期にわたる新宇宙探査で本当に使えるかどうかを試す実験だったのだ。
その意味では、小惑星イトカワの性質を光学的手法で分析したり、そのかけらをお持ち帰りしたりした理学的な成果は「エクストラ・サクセス」ということなんだよね。
「はやぶさ」はのミッション名はMUSES-Cだけど、これはMu Space Enginnering Spacecraft Cの略で、ミュー・シリーズの固体ロケットで打ち上げられる宇宙工学実証衛星のCということなんだ。
ちなみに、MUSES-Aは日本の科学衛星ではじめて月探査をした「ひてん」、MUSES-Bは傘状の特徴的なアンテナを持つ電波天文観測衛星の「はるか」だよ。
「ひので(SOLAR-B)」の打上げでミュー・シリーズ最後のロケットだったM-V(ミュー・ファイブ)が退役したので、「はやぶさ」が最後のMUSESだったのだ。

今回の「はやぶさ2」は「はやぶさ」が実現した無人探査機による地球近傍小惑星探査の実績を踏まえ計画された正真正銘の小惑星探査計画で、そのために「はやぶさ」で発生した不具合などの対策がしっかり盛り込まれ、確実に行って帰ってきて、かつ、高確率でサンプルを持ち帰れるように工夫がされているんだ。
ほぼ同型機を打ち上げるわけではないんだよ。
見た目的にも、「はやぶさ」は大きなパラボラアンテナを一つ背負っていたのに対し、「はやぶさ2」は平面型の2つのアンテナを持っているんだ。
アンテナ一つが「はやぶさ」、2つが「あやぶさ2」と覚えるといいよ(笑)
2つになってもパラボラアンテナより平面アンテナより軽く、熱も集めないのでメリットが大きいらしいよ。
それに、今回は高速通信ができる高周波数帯に対応したアンテナがあるので、小惑星探査をした結果をより早く地球に送れるんだって。

他にもいろいろ進化しているんだけど、何より、打上げロケットがM-VからH-IIAになったことで、ちょっとだけ重くすることができるようになったのだ。
なので、搭載をあきらめていたようなミッション危機も積み込めるようになったんだよね。
燃料費込み込みでの衛星の重量は「はやぶさ」が510kgで、「はやぶさ2」が600kgと約2割増。
さらに相乗り衛星もあるしね。
大きさも、縦×横は1m×1.6mで同じなんだけど、奥行きは1.1mから1.25mになっているのだ。
前回は投下に失敗してしまったローバー(MINERVA)についても後継機が搭載されるんだけど、今度はMINERVAII1とMINERVAII2と2種類。
しかも、ドイツの小型着陸機(MASCOT)も同時に搭載されるよ。
やっぱり重量的に余裕があるんだねぇ。

「はやぶさ2」に一番期待される「サンプル・リターン」についても更なる工夫があるのだ。
前回は実は弾丸の射出には失敗していて、たまたまサンプラー・ホーンの中に入り込んだほこりを持ち帰ることができたんだよね・・・。
今回は、サンプラー・ホーンの口のところに「返し」をつけて、一度吸い上げた砂礫がホーン内にとどまるような工夫がなされていて、より確実にサンプルを採れるようになっているんだ。
さらに、サンプル格納庫の密閉度も上げて、小惑星表面にある希ガスなどの揮発性ガスも持ち帰るような構造になっているんだって。

そして、「はやぶさ2」の大きな特徴として、大きな銅の塊を高速で小惑星に衝突させ、人工的にクレーターを作った上で、そのクレーターからもサンプルを採取するというのがあるんだ。
タッチダウン時に弾丸を射出して舞い上がった砂礫を吸う、という方式だと小惑星表面のサンプルしか採れないわけだけど、クレーターを作ることで小惑星の内部からもサンプルが採れるようになるのだ。
そんなに深いところからはとれないけど、小惑星の表面では「風化」が起こっていると考えられているので、その「風化」が起こる前の小惑星の組成に関する情報が手に入る可能性があるんだ。
これは小惑星の探査という観点では大きな進歩だよね。

今回探査する小惑星の1999JU3はC型小惑星で、炭素系の物質を主成分としていると考えられているので、宇宙における生命の起源についての手がかりが手に入る可能性もあるんだ(隕石に付着していた有機物から生命が・・・、という宇宙生命起源説もあるんだよね。)。
イトカワはS型小惑星で岩石を主成分とする小惑星だったので、そもそも太陽系の成り立ちがどうだったか、という手がかりが得られたわけだけど、今回はもっとスリリングなことがわかるかもしれないんだ。
とにもかくにも、まずは打上げが成功して、無事に旅立ってもらわないと。

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