2016/04/02

みんなのでんわ

女子中学生が行方不明になっていた事件で、改めて公衆電話の役割が見直されたよね。
東日本大震災の時に一度話題になっていたけど、そこからもう5年たっていて、また忘れた頃に、という感じ。
正直、公衆電話事業は「赤字」なので、今回の件も含め、何かの時に役立つ!、ということがわかるのが重要なんだよね。
昭和の終わり頃の最盛期に比べると設置数は10分の1以下になっているそうだけど、やっぱり必要なのだ。

公衆電話は、電話やインターネットなどの「電気通信事業」におけるユニバーサルサービスとして位置づけられているんだよね。
電話や電気、ガス、郵便などの国民が社会生活をする上で不可欠なサービスは、日本中のどこにいても、誰であっても、平等に公平に享受できるように供給することが求められるんだよね。
それが「ユニバーサルサービス」という考え方で、供給者のうち最低でも誰か1者はどのような条件であってもサービスの提供をしなくちゃいけないことが法令上義務づけられるんだよね。
これは「最終保障」や「ラストリゾート」と呼ばれるもので、南極の昭和基地にもちゃんと郵便物が届くのはこのおかげ(笑)

電気通信事業においては、電気通信事業法において「基礎的電気通信役務」という概念があって、それがユニバーサルサービスになっているのだ。
離島であっても電話が使えるというのも入るんだけど、この中に公衆電話による電気通信サービスの提供が含まれているんだよね。
電気通信事業法施行規則で細かいことを規定していて、公衆電話については、都市部では500m2ごとに、それ以外の地域では1km2ごとに1台設置が求められているんだ。
どうも、会計検査院の指摘だと、必ずしもそこまでの台数が設置されていないのではないか、という話もあるんだけど・・・。

もともとこうしたユニバーサルサービスは、公益事業が公的枠組みの下で供給独占が行われていた時代からの名残で、電話ならNTT、電気なら各電力会社といった感じで担当が決まっているのだ。
電話については、ほとんどNTTなんだけど、空港にある国際電話専用の公衆電話は第二電電だったKDDIが設置しているものもあるよ。
いずれにしても、規制されていた時代の、供給独占をするが故の義務だったのだ。
規制改革の流れで、三公社の民営化が決まり、電電公社がNTTになるとき、電気通信事業の民間参入が可能になるんだけど、このときはまだ、自分で電線を敷設した上でサービスを提供することが求められたので、日本テレコムのような新規参入者にもこの義務はかかったのだ。
なので、旧国鉄駅には青電話と言って、日本テレコムの公衆電話が置いてあった時代もあるんだよ。

さらに改革が進むと、各事業者が個別に電線を敷設するのは社会全体に見て非効率なので、既設の電線を借り受けて電気通信サービスを提供することが認められるようになるのだ。
このときは、電話事業というよりは、ISDNとかADSLとか、電線を使ったプロバイダサービスが出てくるんだよね。
で、自分で電線を保有して電気通信事業を行うのが第一種電気通信事業者、他社の電線を借りて電気通信事業者を行うのが第二種電気通信事業者になるのだ。
この時代は、ユニバーサルサービスや電線の保守管理は第一種電気通信事業者の義務になり、また、電線をかすに当たって、サービスの提供者としては競合相手になる第二種電気通信事業者を差別的に扱ってはならないなどの規制も追加されることに。

現在では、電気通信事業者の区別はなくなり、どのような業務を行うのかあらかじめ総務大臣に届け出て登録する制度になっているのだ。
一方で、ユニバーサルサービスの提供は必要なので、法律上「基礎的電気通信役務」を規定し、この業務を行うに当たっては、「基礎的電気通信役務支援機関」から補助が行われる仕組みになっているんだ。
この支援機関は、各電気通信事業者からお金を徴収して基金を積み上げ、ユニバーサルサービスを提供している電気通信事業者に補助を行うんだ。
というのも、ユニバーサルサービスは赤字事業になるので、独占供給でもないのに特定の事業者に全部背負わせるのでは持続可能性がないから。

で、現在その担い手は東西のNTTになっているわけ。
でも、この仕組みがまたちょっと変わっていて、流れ的には、NTTからユニバ^-サルサービスの提供をするので補助をしてほしい、という申請が支援機関にあって、それが認められたとき、NTTが「適格電気通信事業者」に位置づけられて補助が行われる、ということになっているんだ。
正直「?」という感じだよね。
じゃあ、NTTはユニバーサルサービスを提供することが義務づけられているわけじゃなくて、あくまでも任意でやっているの?、ということになるよね。

ここにもからくりがあるんだ。
NTTは今でも政府が株式の一部を保有している特殊会社で、完全な民間企業ではないのだ。
なので、その業務や形態は法律で縛られているんだよ。
その法律が「日本電信電話株式会社等に関する法律」。
もともと電電公社の民営化の際に作られた法律だよ。
この法律の第3条で、NTTの責務が規定されていて、その中に、「国民生活に不可欠な電話の役務のあまねく日本全国における適切、公平かつ安定的な提供の確保に寄与する」ということが明確に規定されているのだ。
つまり、法律により、ユニバーサルサービスを提供することがNTTのレゾンデートルになっているわけ。
なので、別にNTTだけがユニバーサルサービスの提供者になる必要はないのだけど、少なくとも、NTTはユニバーサルサービスの担い手として確保できている状況になっているのだ。

総務省のHPとかを見ても「法令上定められています」なんて素っ気なく書いてあるだけなんだけど、実態はそんな簡単なものじゃないみたい。
今回自分で調べてみて、改めて複雑さがわかったのだ(笑)
とにもかくにも、NTTは、人の住んでいる地域においては、国民の誰もが電話を使えるように公衆電話を設置するというユニバーサルサービスを提供する義務があるんだよね。
今回の事件のように、いざというときに役に立つので、NTTに感謝しないといけないね。

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