2018/12/01

日本のシェイドグロウン

先日、京都は宇治の人からお茶の話を聞いたのだ。
日本各地にお茶の名産地はいくつもあるけど、宇治が元祖で本場、そもそも、抹茶も煎茶も玉露もみんな宇治が発祥、ということだったんだよね。
確かに茶文化の中心は京都だと思っていたけど、栽培・加工もそうだったんだね。
ま、むかしは長距離の流通は難しいから、まさに都の近郊の宇治エリアが茶の栽培地として重要だったのかも。
でも、よくよく考えてみると、違いがよくわからない・・・。
抹茶は粉になっているから明らかに違うとして、煎茶と玉露の差は?
というわけで、少し調べてみたよ。

日本史の教科書にもあるように、日本に中国大陸から茶を伝えたのは栄西上人と言われているよ。
実は、もっと古い時代(奈良時代?)にもいったん喫茶文化は伝わっていて、伝教大師最澄も比叡山で茶を育てていた、とも言われているのだ。
でも、その古い茶はいったん廃れてしまい、それが催行されたのが、日本の臨済宗の開祖である栄西上人が禅宗とともに喫茶の習慣を日本に持ち帰ったから。
栄西上人から茶の種をもらった明恵上人が京都は宇治の地で茶の栽培を開始したんだって。
これが現代まで続く宇治茶の歴史なのだ。

当時の茶は粉をお湯にとく抹茶。
抹茶は、碾茶(てんちゃ)を臼で挽いて粉にしたもの。
で、碾茶というのは、収穫前に覆いをして日光を遮った状態で育てられた茶の木から摘んだ葉を蒸して乾燥させたものだよ。
まさにシェイドグロウンのお茶なのだ!
(メキシコのシェイドグロウンのコーヒーは、森林を伐採せず林の中でコーヒーの木を育てるものだけど。)
こうすることにより、茶の葉がやわらかくなり、また、甘味成分のテアニンが増え、苦味成分のカテキンが減るのだ。
普通に日光を当てたままの固くて苦い茶葉ではおいしい抹茶にはならないみたい。
今では粉末状にしたものが売られているけど、江戸時代までは碾茶の状態で売られ、それを飲む前に石臼で挽くのが普通だったんだって。
今でも挽き立ての抹茶を飲ませることはあるみたいだけど。

覆いをせずに育てた茶の葉を摘み、蒸してからもんで乾燥させたのが煎茶。
いわゆる「手もみ」をするのだ。
「てもみ」は熱をかけながら板の上で蒸した茶の葉を手でぎゅっとまとめ、板に押しつけたりするんだけど、こうすることで茶葉から水分は抜けていくのだ。
また、この過程で針状の形状に加工するんだよね。
こうすることで、保存性も高まり、また、お湯を注いだだけでお茶が出るようになるのだ。

「煎茶」とは字のごとく、最初は「煎じて」、つまり、茶の葉をお湯で煮出して作るお茶だったらしいんだけど(最初期は薬として服用されたこともあるよ。)、この「手もみ」を入れて加工することにより、お湯を注ぐだけで茶が抽出できるようになったのだ。
これが画期的な発明。
宇治の茶農家の永谷宗円さん(その子孫が「永谷園」を創業するよ。)がこの製法を発明し、山本山の創業者である山本嘉兵衛さんが江戸での商業的成功を収めたことで全国に普及したとか。
山本山ってそんなころから活躍しているのか!

ちなみに、明治の近代化以降は「機械もみ」が普及していて、「手もみ」は超高級品。
「手もみ」だと、お茶を入れた後茶葉はまさに葉っぱの形にもどるんだよね。
でも、「機械もみ」の場合は、途中で茶葉を切る公邸が入ることが多いので、ボクらがよく目にしているお茶がらのように、茶葉が刻まれた形になるのだ。
「手もみ」は力をかけて6~7時間かけてやるそうだから、そりゃあ「機械もみ」が主流になるよね。

そして、玉露は、碾茶を作るときのように覆いをして日光を遮って育てたお茶を蒸してもんで作られるお茶。
江戸末期に山本山の六代山本嘉兵衛さんが考案したんだって。
茶葉を「露」のように甘くあぶったので「玉露」という商品名をつけ、それが一般名称にもなったみたい。
現在のような棒状の玉露は、明治になって辻利の辻利右衛門さんが完成させた形だそうだよ。
山本山に続いて辻利か。
玉露は、普通の煎茶より甘く、また、覆いをかぶせることで発生する独特の香り(覆い香)を楽しむもの。
熱い湯で淹れると苦味が出て、風味も飛んでしまうので、50~60度くらいで淹れて、人肌程度の温度で飲むのがいいんだって。
なるほど、そういう違いがあったのか。

さらに、煎茶と玉露の間の「かぶせ茶」というのもあるのだ。
玉露の場合は20~30日間日光を遮蔽するんだけど、かぶせ茶の場合は1週間~10日程度。
煎茶よりは甘味が強く、少し覆い香もあるんだって。
まさに中間的なもの。
しかも、熱いお湯で淹れるとより煎茶に近く、ぬるいお湯で淹れるとより玉露にちかくなるようで、淹れ方によって違った味が楽しめるのも特徴だって。
帯に短したすきに長し、ということではないみたい(笑)

というわけで、なんとなくお茶の違いがわかったよ。
こういうのはやっぱり調べてみないとわからないなぁ。
逆に日本に関心のある外人の方がよく知ってたりね。

0 件のコメント: