2024/03/30

紅の衝撃

 小林製薬の紅麹の件がすごいことになっているのだ。
まだまだ正確なところはわからないけど、現実問題として、100名を超える人数が健康被害で入院していて、死亡例まで出ているわけだからね。
事案を認知してからの小林製薬の対応の遅さも指摘されているよね。
かつ、水から売っているものだけじゃなくて、原料として他社製品に使われている例が多いと言いうのだから大変だ。
でも、ネットを見ていると、けっこう勘違いに基づくコメントなんかもあるのだ。
そこで、現時点で分かっていることを頭の整理のためにもまとめてみるよ。

まず、今回問題になっているのは、紅麹のサプリで、健康食品としてこのサプリを飲んでいた人のうち、腎臓に悪影響が出ている人がいる、というのが問題の根幹。
腎臓は機能がダメになると基本は回復することはなくて、悪化すると人工透析になったりするわけだけど、そういう事例も報告されているばかりか、死亡例もあるのだ。
ただし、この時点では「関係がありそう」というだけで、直接的な原因かどうかはまだ調査中、というステータスだよ。

じゃあ、何が悪さをしているのか?
もともと紅麹はカビ毒のシトリニンというのを賛成する菌株があることが知られていて、これは腎毒性を持つ物質なのだ。
そのせいで、欧米では紅麹の食品等への利用に制限がかかっているのは報道されているとおり。
一方、アジア文化圏では、台湾では紅酒の醸造に、沖縄では豆腐ようの発酵に使われるなど、紅麹が伝統的に食品分野で使われてきているんだよね。
仮にカビ毒を産生する菌株でも、そんなに大量に紅麹を摂取するわけでないので、「ただちに健康に影響するレベルではない」ということで使われてきていたわけ。
ところが、この紅麹を調べていくと、どうもコレステロールを下げる働きのある物質も作っていることがわかり、健康食品としての利用につながっていくんだけど、今回問題になっているサプリのように、一度の大量に摂取するような使い方になると、産生量が微量であってもシトリニンを産生すること自体が問題になるのだ。
そこで、小林製薬は、シトリニンを産生しない菌株を開発し、安全に使える紅麹として製品化していたのだ。

ところが、今回こういう事案が発生したので、すわっ、やっぱりシトリニンが混ざっているのか、ということになったんだけど、どうもそれは違うみたいなんだよね。
今回健康被害が報告されている製品(サプリメント)を後から調べてみても、シトリニンは検出されていないのだ。
こはファクトとしてそう。
なので、健康被害の原因はシトリニンではない、ということ。
これにより、突然変異の先祖返りで小林製薬の紅麹の菌株が再びシトリニンを産生するようになった、というのは否定されるのだ。
では、何が原因なのか?

よくよく調べてみると、今回の健康被害が報告されている製品は、特定のロットに偏っているようなんだよね。
つまり、その時その工場で筑われた製品が問題である可能性が高いのだ。
そうなると、いくつか可能性が絞られてくるわけだ。
製造プロセスに問題があって、まだよくわからないけど、何か腎臓に悪影響を及ぼすような毒物が混入してしまった可能性。
この場合、どこからどうやってそれが混入したのか、というのが次の問題になってくるよね。
逆に言うと、これだと対策はしやすいのだ。
これとは別の可能性としては、このロットの製造過程において紅麹の菌株に突然変異が起こって(有意に表現型が変わるかどうかは別として、遺伝情報的には一定の確率で常に変異は入っているよ。)、シトリニンと似たような腎毒性を持つ新たな未知の物質が作られるようになってしまった、というのも考えられなくはないのだ。

こっちは影響がさらに拡大する可能性があって、他社製品の製造過程でも同じような突然変異が起こる可能性があるので、小林製薬だけの問題ではなくなってしまうのだ!
もともとそんなピンポイントで変異が入る確率は極めて低いのだ他の製造会社では発生していないんだと思うけど、小林製薬の製造ラインでそういう事象が起こったのであれば、他社の製造ラインでも同様のことが起こる確率はゼロではないのだ。
この場合は、その未知の物質に対するスクリーニングを横展開していくことが求められるよ。
すでに、一部紅麹関連製品を扱っている企業で、「当社の紅麹は小林製薬のものではありませんので安心してください」みたいなアナウンスをしているところもあるけど、そういうことではなくなってしまうのだ。
ちなみに、紅麹から抽出した色素はシトリニンの有無を確認しているので、色素だけしか利用していない場合は安全、という情報もあるけど、仮に未知の物質が原因だった場合、それは式粗抽出の過程で紛れ込んでいないのかどうかは未確認なので、これも否定されてしまうんだよね・・・。

いずれにしても、まずは原因の究明が待たれるのだ。
風評被害にもつながりかねないから、かなりの確度を持ったものでないとだめだけどね。
そういう意味では、この騒動はまだまだしばらく続くだろうなぁ。

(追記)
厚生労働省が小林製薬の大阪工場に立入検査に入ったけど、どうも、問題のロットに青カビが作るカビ毒の「プベルル酸」というのが混入しているのがわかったみたいだね。
この天然化合物自体の身体への毒性はまだよく分かっていないみたいだけど、これが真犯人とすると、紅麹の問題ではなく、製造過程の問題ということになるね。

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