2017/01/14

しわとしわをあわせて?

お正月と言えばおせち料理。
で、このおせち料理で衝撃的な発言を知ったのだ。
それは、おせち料理の黒豆のに方について。
黒豆と言えば、いかにしわが寄らずに柔らかく煮えるか、ということで、ネット上にも様々な情報・レシピが載っているけど、中でも有名なのは、料理研究家の土井勝さんが15年かけて考案したという「土井式」。
これは簡便につるつるの黒豆が作れると評判なのだ!
ところが、この「土井式」について、土井勝さんの息子さんで、やはり料理研究家の土井善晴さんが衝撃的な発言をしていたのだ。

つまり、もともと黒豆は「しわが寄るまでまめに働く」という縁起物だから、しわがない黒豆はよくない、と、土井勝さんのお母さんは言っていた、ということ。
確かに、調べてみると、地方によってはむしろしわの寄った黒豆を食べることもあるみたい。
ということは、苦労せずとも、工夫せずとも、普通に柔らかくなるまで黒豆は煮とけばよかったってこと?
15年かけたレシピが自分の母親に否定されていたとは・・・。

現在のおせち料理自体は、江戸時代に徐々に形になってきて、明治以降に形式化したものなんだって。
そもそもお重に詰めて、というのが明治以降の話で、江戸時代はお膳に載せた料理とお重に詰めた料理の両方があったみたい。
明治以降の様式が「日本の伝統」と認識されている例の一つだね。
縁起物や語呂合わせも江戸時代考案のもののようだよ。
もちろん、古来から祝い用の料理とかはあって、当然ながらその流れも合流しているとは思うんだけど。

黒豆については、江戸の高級料亭「八百善」が考案したものと言われているようなのだ。
だとすると、やはり最初はしわがなく、きれいなつるっとした煮豆だったのでは・・・。
おそらく、それが庶民に浸透していく過程で、料理屋のようにしわなく煮ることが難しいので、「むしろしわがあった方が」ということになった可能性もあるよね。
むしろその方が理屈は通ってる(笑)

むかしながらの作り方だと、まず黒豆をやわらかく煮て、それを甘い糖蜜に浸して味を含ませるようなのだ。
徐々に糖蜜の濃度を上げて、濃い糖蜜に浸していくんだって。
この方法だと、どうしても1週間くらいかかるんだよね・・・。
それが、「土井式」では2日間でできるのだ。
ま、これも今となっては手間がかかる、ということかもしれないけど。

黒豆にしわが入る原因はいくつかあって、ひとつは急に浸透圧の高い液につけると、豆から水分を奪ってしまうので、しわができてしまうというもの。
なので、むかしながらの製法では徐々に濃い糖蜜にしていくという行程だったのだ。
ところが、「土井式」では、最初に煮汁を作ってしまって、乾燥した黒豆をそれでもどすんだよね。
そうると、煮汁は豆に染みていくだけで、水分を奪っていくことはないのだ。
さらに、煮汁が熱いうちに豆を入れることで、さらに染み込みの早さを加速しているんだ。
これで一晩放置すると、甘い煮汁で戻された黒豆ができるわけ。

今度はこれをやわらかく煮るんだけど、「土井式」では、弱火でじっくりと8時間くらいかけて煮るのだ。
考案された当初は石油ストーブも多く使われていたので、石油ストーブに載せておくということだったみたい。
このとき、煮汁は豆がひたひたになるくらいに常にキープする必要があって、水分が少なくなってきたら熱湯を足すのだ。
豆にしわが寄る第二の原因として、急激な温度変化があるんだよね。
なので、水分補給には水を差したりしないわけ。
また、沸騰させずに弱火でことこと煮込むというのも、沸騰させてしまうと豆の表面が空気に触れる可能性が出てきてしまうから。

というわけで、「土井式」は本当によく考えられらレシピなんだよね。
ところが、現在では黒豆は正直あまり人気のない料理・・・。
ボクは割と黒豆は好きなんだけどなぁ。

2017/01/07

マグネシウム補給

年末日本に一時帰国しているときに「こむら返り」で足がつったのだ・・・。
急に走ったらそうなったんだけど、原因としては、運動不足やミネラルの欠乏なんかが考えられるんだよね。
運動不足は仕方ないにしても(笑)、栄養面は改善できるはずなので、ちょっと調べてみたところ、カルシウムとマグネシウムのバランスが問題とのこと。
カルシウムは積極的に摂取するようにしていたんだけど、むしろ問題はマグネシウム?

マグネシウムも必須のミネラルで、人体ではその多くはカルシウムとともに骨に蓄積されているんだって。
植物の場合は葉緑体の中のクロロフィルの中心にマグネシウムがあって、光合成に不可欠だから人間以上に重要なミネラルなのだ。
とすると、野菜などの植物性の食物を食べていれば補給できそうな気もするけど、そんなに多く含まれているわけではないみたい・・・。
マグネシウムの不足は、糖尿病やら鬱病やらに関連しているとも言われているのだ(>_<)
でも、日本ではあまりマグネシウムのサプリは見かけないよね?
それは、日本人の食生活と関係があるみたい。

マグネシウムを比較的多く含む食品としては、豆類、アーモンドなどの種実類、海藻類が知られているのだ。
豆の中でも特にダイズには多くて、さらに、大豆の加工食品である豆腐は、豆乳を塩化マグネシウムを主成分とする「にがり」で固めたものなので、マグネシウム・リッチな食品なのだ!
豆腐の中でもしっかり固めている木綿豆腐が一番多いんだって(おそらく、沖縄の島豆腐はもっと多いのだ。)。
さらに、日本でっよくつかわれるゴマやわかめ、ひじき、あおさなどにもマグネシウムは比較的多く含まれているので、日本式の食生活だと欠乏するということはあまりないみたい。

ところが、フランスに来て見ると、マグネシウムのサプリが売っているんだよね。
逆に、カルシウムはマイナーなようなのだ。
さらに、マグネシウムを増強したミネラル・ウォーターも売っているよ。
これもおそらくフランスの食生活を反映しているんだよね。
フランス人は牛乳、バター、チーズなどの乳製品を非常に多く食べるし、さらに、飲んでいる水はカルシウム含有量の多い硬水。
こういう環境なので、カルシウム不足を心配する必要はあまりないんだよね。
逆に、フランス人の食生活の中には、マグネシウムを多く含む食品は少ないのだ。

さらに、水の問題もあるんだよね。
水の硬度は、中に含まれるカルシウムとマグネシウムの量で決まるんだけど、フランスの水はカルシウムが多い硬水。
マグネシウムはむしろ日本の水より少ないくらい。。
日本の水道水だと、カルシウムとマグネシウムの比率は4:1くらいなのに対して、フランスでは15:1くらいで圧倒的にカルシウムが多いのだ!
フランスの水のカルシウム含有量は日本の2倍くらいなので、マグネシウムの量は日本の半分くらいということになるよ。
食生活の中にも多くないし、水の中にも少ないので、サプリとして摂取したくなるのがわかるのだ。

ということは、ボクもフランスにいる間にマグネシウムの摂取には気をつけないといけないということか。
一時帰国中の「こむら返り」がフランス滞在中のマグネシウム不足によるものとは思わないけどね(笑)
ま、フランスでも豆腐は手に入るので、ときどき豆腐を食べるようにすればよいかな。

2016/12/31

免税でお買い物

休暇で一時帰国しているのだけど、なんと、この場合は国内の免税店でtax freeの買い物ができるというのだ。
つまり、消費税なし。
税率8%だから、これはけっこう大きいよね。
一方、銀座三越内には、空港になるのと同じようなduty freeのフロアができたんだよね。
って、これって何が違うんだ?ってことで調べてみたのだ。

日本語では同じ「免税店」だけど、英語ではきちんと使い分けているのだ。
空港内にある「免税店」はduty freeで、消費税だけでなく、酒税、関税、たばこ税も非課税。
これは、そもそも日本国外での取引という扱いをされるので、課税されないということなのだ。
なので、これは基本的に日本を出国後で、目的地の国に入国前というわけ。
多くは出発地の空港で買うけど、機内販売も免税だよね。
理論的には入国前にもあるのだけど、多くの空港では入国審査前の免税店というのはないみたい。

日本の場合は、アルコール類にかかる酒税や、たばこにかかるたばこ税、香水等にかかる関税が大きいため、これらが免除されると相当な割引になるんだよね。
たばこなんかは国内販売価格のほとんどが税額相当分だから大きいのだ!
アルコールもそう。
酒税が高い(=アルコール度数の高い)ウイスキーなどの高級酒ほどこの効果は大きいよ。
なので、空港の免税店ではよくウイスキーを売っているわけ。

 一方で、tax freeというのは消費税が免除になるもの。
これは、国内での販売ではあるんだけど、「輸出品の販売」ということで、消費税法上課税が免除されているものなのだ。
免税店の設置には税務署に許可をもらう必要があって、多くの場合、免税カウンターで特別の手続きが必要だよ。
パスポートの確認と、買った物品が国内で消費するものではなく、海外で消費するものであることを宣誓することが求められるのだ。
さらに、出国する際も手荷物で持ち込む必要があって、パスポートに貼り付けられた購入明細と実際に持ち込んだ商品を照らし合わせて、不足がないか確認されるのだ。
仮に不足がある場合は、その足りない商品は国内で消費したと見なされ、改めて消費税が徴税されるよ。

海外旅行に行ったときの「タックスリファンド」と実は同じで、タックスリファンドの場合は、一度消費税を払った後、空港で手続きをすると消費税相当分がもどってくる仕組みだよね。
なので、事後免税制度と呼ばれるのだ。
こちらの方が確実なんだけど、やはり手続きが面倒なので、事前に消費税なしで買えるtax freeが増えているわけ。
でも、国内で消費する分も含めて消費税なしで買われたらまずいので、空港での確認手続きが発生するのだ。

三越銀座にあるduty freeの場合は、商品はそこではもらえず、必ず出国ゲートの先の引き渡しカウンターでもらうわけだけど、これはいわば、出国した後に買う商品を国内で予約しただけの状態にしてあるってことなんだろうね。
成田空港株式会社との合弁でやっているようだけど、おそらく、様々な法的なハードルをうまく乗り越えて運営しているのだ。
実は、銀座阪急にはロッテ資本のduty freeの免税店もああるんだよね。
今後こういうのが増えてくるかも。

これまでは、特定免税点制度という形で、沖縄にだけduty freeの免税店が認められていたのだ。
沖縄振興の一環として、沖縄振興特別措置法の中で定められているものだよ。
沖縄の空港の場合、国内線であっても、内地(奄美、与論を含む沖縄県以外の日本国内の地域)に行く航空券を持って入れば買い物ができるのだ。
沖縄県庁の近くには、ギャラリアという免税店のショッピングモールがあるよね。
ここの場合も買い物をした後、空港での引き渡しになるよ。
そういう意味では、三越銀座のduty freeはこれに似ているのかも。

ちなみに、tax freeの方は「非居住者」限定の制度なので、外国人観光客や海外に在住している日本人で一時帰国している人向け。
なので、万人がそこで買えるわけではないのだ。
逆に、duty freeの方は、日本を出国予定の人出あれば誰でも利用可能。
三越銀座の場合は、パスポートと航空券の控えがあって、成田空港または羽田空港の国際便に搭乗する人出あれば利用可能なのだ。
ゆっくりと商品を選べるし、東京在住者にはよいかも。
空港の楽しみがひとつなくなるけどね(笑)

2016/12/24

モロッコの謎を追え

フランスのスーパーにも「モロッコインゲン」が売っているんだよね。
一本ずつで買えるので、サヤインゲンやモロッコインゲンは一人前の自炊をするには助かる食材なのだ。
ナスやズッキーニは日本の者より巨大だから・・・。
この辺は量り売りのうれしいところだね。
で、このパリのスーパーで売っているモロッコインゲンもモロッコ産だったので、ボクはてっきりモロッコの野菜だと思っていたんだけど、実はそうではないようなのだ!

結論から言うと、モロッコインゲンというのはタキイ種苗の登録商標で、一般名はヒラサヤインゲン。
つぶれた形の平たいサヤインゲンの品種としてタキイ種苗が売り出しているのが「モロッコ」なのだ。
命名の由来は、モロッコ原産とかではなく、地中海沿岸地域で栽培されている「ヒラサヤインゲン」から作った品種で、映画「カサブランカ」にあやかったとかなんとか。
必ずしもモロッコのものではないのだ!
フランスのスーパーに並んでいるのも、モロッコ産だけでなく、スペインさんとかもあるから、南欧から北アフリカの地中海性気候での栽培に向いているのかも。

もともとインゲンは中南米原産の新大陸野菜。
アステカではすでに乾燥された豆が重要な食料となっていたようなのだ。
インゲンマメは高タンパクで、乾燥重量の約2割がタンパク質だというから、「畑の肉」ことダイズの3割には及ばないにしてもなかなかの数字。
肉を狩猟に頼っている中南米の生活様式から考えると、貴重な栄養源だったろうね(中南米地域では今でも重要なタンパク源だって。)。
で、これが大航海時代に欧州に渡って広まるのだ。

すでに16世紀には育てやすく食べやすい栽培作物として広がり、特にギリシアなどの地中海沿岸地域で栽培が進んだのだとか。
フランスでは、完熟した豆を使うだけでなく、未成熟のうちにさやごと食べる「サヤインゲン」としての利用が出てきたのだ。
フランス語では「haricot vert(緑のインゲン)」と言うよ。
で、サヤインゲン専用の品種も作られ、インゲンは豆とサヤインゲンの2とおりで食材として重要な位置を占めるようになるのだ。

16世紀末には欧州から中国に伝わり、17世紀の江戸時代になって日本への渡来。
一般に、隠元禅師が中国禅を日本に伝えるときに持ってきたと言われているので、日本語では「インゲン」なのだ。
ちなみに、隠元禅師は中国臨済宗の僧侶なんだけど、日本には栄西さんが茶とともに中国から持ち帰って日本独自の発展をしていた臨済宗がすでにあったので、新しく来た隠元禅師は「臨済正宗」などの名を名乗ることが許されず、臨済宗を開いた臨済義玄さんの師匠である黄檗希運さんの名を取って「黄檗宗」と名乗ることになったんだよ。
京都の黄檗山はその総本山の萬福寺のあるところなのだ。

温暖な地域では1年で三度も収穫できるほどの栽培のしやすさもあって、爆発的に広がったんだね。
関西でインゲンマメのことを三度豆と呼ぶのはそういうことらしいのだ。
で、このインゲンマメの種類の中に、赤インゲン豆(金時豆やレッドキドニービーンズ)、うずら豆、虎豆などがあるのだ。
甘納豆や白あんなんかはインゲン豆から作るから、江戸時代になってから伝わった割には和菓子食材で重要な地位を占めている気がするなぁ。
それほど役に立つ栽培作物だったんだろうね。

むかしはサヤインゲンというと固いスジがあるので、下処理として両端を追ってスジをとっていたけど、今の品種ではもうとらなくてもいいんだって!
よく母親の手伝いでやっていて、ぽきっと織る感触がすきだったんだけどなぁ。
モロッコインゲンの場合も、スジは気にしなくていいみたい。
サヤエンドウだとまだスジが気になることがあるけどね。
ここでもインゲンは優等生なのか。

2016/12/17

第三の米?

フランスで米と言えば、細長いインディカ米(長粒種)がメジャーなんだよね。
日本人以外は粘りけの少ない米を好む傾向があるんだとか。
っていうか、日本式の米(ジャポニカ米、短粒種)は、日本、朝鮮半島、中国東北部・・・、と世界でもごく一部でしか栽培されていないから仕方ないんだけど。
今では和食ブームもあるし、中国でもジャポニカ米が好まれているので、世界的にメジャーになってきているようだけど。
でも、そこで気になったのが、欧州でよく米を食べるイタリアやスペイン。
実は、彼らが食べている米は、日本の米とも違うし、かといって、インディカ米でもなかったのだ。

米は大分類では、粒が丸くて粘りけがあるジャポニカ米と、粒が細長くて粘りけの少ないインディカ米の2つがあるのだ。
で、ジャポニカ米にも実は小分類があって、日本などで栽培されている温帯性のジャポニカ米と、中国南部やジャワ島なんかで栽培されている熱帯性ジャポニカ米(ジャバニカ米とも)があるんだ。
で、イタリアやスペインの米は、このジャバニカ米に近いもののようなんだよね。
確かに、スーパーでリゾット用の米として売られているのは、日本米よりはひとまわり粒が大きいもの。
でも、本当に熱帯地域で栽培されているジャバニカ米は、日本米ほど粘りけもなく、また、粒もかなり大きいもの。
欧州の米所の米は、ジャポニカ米とジャバニカ米の中間くらいのものなのだ。

欧州に稲作が伝わったのは、ローマ帝国崩壊後、7~8世紀にムーア人がイベリア半島へ侵入したころ。
ムーア人は北西アフリカのイスラム教徒で、水稲による稲作をしていたようなのだ。
イベリア半島やイタリア半島はたまたま水稲栽培に適していたので、そのまま水田による稲作が根付き、米がよく食べられるようになったみたい。
欧州の他の地域は乾燥していることもあって、小麦がメインだし、されに土地がやせているような北欧では、カラスムギ、ライ麦なんかが主な穀物だったんだよね。
新大陸からジャガイモが入ってくると、一気に欧州に広がることになるのだ。
稲作ができるというのは、環境的にかなり恵まれているということみたい。

ボクははじめは欧州は全体的に陸稲で、インディカ米だと思っていたので、リゾットやパエリアも基本はインディカ米だと思っていたんだけど、実はそうではないので、インディカ米ではおいしくできないのだ(>o<)
リゾットは、米のとろみが全体を包み込んで一体化していなくてはいけないんだけど、インディカ米だと粘りけが少ないためにうまくいかないのだ。
むしろ、日本米の方がおいしくできるくらい。
パエリアも、インディカ米だとぱさついてしまうし、現地では好まれる「おこげ」もできないんだよね。
インディカ米で作ると、具だくさんピラフになってしまって、パエリアって感じじゃないんだよね。
やっぱり、インディカ米よりは、日本米で作った方がおいしくできるのだ。

そう考えると、日本でリゾットやパエリアが好まれる理由がわかる気がするね(笑)
インド料理でも、日本人はぱさぱさのインディカ米よりはもっちりとしたナンを好むよね。
やっぱり、日本人の舌には粘りけのある米が好まれるんだろうなぁ。
でも、結局はそれぞれの地域で、その土地でとれる米をどうおいしく食べるかで料理が発達してきているはずで、その点では、日本と似た米を育てている地域の料理が日本人の口に合うのは当たり前なのかも。
タイ料理屋インド料理だと、べたつく日本米よりはさらりとしたインディカ米の方がおいしいと思うけど、まさにそういうことなんだろうね。

どうも日本人が単純に考えているよりも、世界の米事情は複雑なようなのだ。
こういうのは海外に出てみないとよくわからないね。
米国にいたときは、普通にカリフォルニア米が日本式のジャポニカ米で、それが普及していたのでよくわからなかったのだ。
やっぱり海外に目を向けてみるといろいろとわかることがあるね。
勉強になるのだ。

2016/12/10

パリでアジアの味を

パリは人種のるつぼなので、フランス料理以外にも各国料理がいろいろあるのだ。
その中でも、数的に目立つのは、中東風のケバブ、中華総菜、レバノン総菜、そして、寿司・焼き鳥。
ケバブは欧州の至る所で見かけるらしいので、パリに限ったことではないのかもしれないけど、パリを代表するファストフードになっているよ。
レバノンはもともとフランスの移民統治領だったこともあって、多いみたい。
街中でよくレバノン杉の国旗を見かけるよ。

ここで注意したいのは中華総菜。
多くの場合、「chine(中国)」とは書いてなくて、「asiatique(アジア風)」と書いてあるのだ。
確かに、生春巻きとか、ブン(ベトナムの米粉の細麺)、フォー(ベトナムの米粉の平麺)、タイ風サラダなどなど、中華の枠内には収まりきらないものが売っているんだよね。
どうも、これらの店の多くは、旧仏領インドシナ、すなわち、ベトナムやラオスの出身者がやっているらしいのだ。
フランスが最初に大規模に中華系移民を受け入れたのは第一次大戦後らしいんだけど、ベトナム戦争の前後になると、統一ベトナム主義による迫害から逃れてきたベトナム系難民の多くがフランスに流入し、その人たちが住み着いたらしいのだ。
で、おそらく、この人たちがそういう総菜屋をやっているんだよね。
それもあって、エスニックな味付け(甘酸っぱ辛い)やコリアンダーの多用など、日本で言う中華とはまた違った味わい。

パリ市内にも中華街と呼べるような場所があるんだけど、その中でも有名な、パリ南東部(13区)のプラス・ディタリ(Place d'Italie)は、ベトナム・ラオス出身の人たちが集まって作った中華街。
なので、中華食材のみならず、東南アジアっぽいものが並ぶよ。
乾麺のフォーやチリソース、ライスペーパー、ニョクマムなどなど。
最初に来た中華系移民は主に広東省から来たので、今でも炒飯のことは「riz cantonais(広東風ライス)」と呼ぶんだよ。
ベトナム・ラオスからの移民の後からやってきたのは浙江省や旧満州の人たち。
でも、この人の「風味」をあまり感じることはないかな。

一方で、この中国の人たちが何をやっているかというと、日本食レストランをやっているのだ・・・。
日本食と言っても、サーモンの寿司と焼き鳥くらいしか置いていないものが多く、最近は、日本風ラーメンと称する、日本のラーメンとはまた違った麺類を出す店もやっているみたい。
パリに人たちはそれが「日本食」と思っているのかもしれないけど、これは誤解につながるんだよなぁ(>_<)
もちろん、ちゃんとした和食の店もあるにはあるけど、多くは高級な店なので、庶民は知らないのだ。

じゃあ、日本人は何をしているかというと、フレンチの店を出しているのだ(笑)
最近パリでは日本人シェフのレストランが増えているんだよね。
パティスリーではサダハル・アオキなんかもあるし。
自分の腕が本場で通じるか試したいのかな?
こういうところのフレンチは、日本の食材を使ったり、日本風のアレンジであっさり目立ったり、より素材の味を活かすような調理法だったりするわけ。
フランス人からしたら亜流に見えるのかもしれないけど・・・。

というわけで、パリのアジア人によるレストラン事情は錯綜しているんだよね。
ボクはエスニックな味が好きなので、むしろ、きちんとベトナム料理がおいしアジア総菜店を見つけているのだけど、日本で食べるような中華を期待するとがっかりすることもあるのだ。
何事も、背景とか知るとまたtがった見え方があるものだよね。

2016/12/03

欧州冬の風物詩

パリのクリスマスマーケットに行ったんだけど、なにやらおいしそうな、香ばしいにおいが・・・。
何かと思ったら、マロン・ショー(焼き栗)。
欧州では冬のよく街中で売られているものなんだね。
ちょうど寒かったので思わず買ってしまった(笑)
はじめは天津甘栗のような感じかと思ったんだけど、ほのかな甘みとほっこりした食感。
これは全く別物だね。
どちらかというと、芋類に近いかも。
じつは、この欧州の焼き栗は、日本の栗や天津甘栗とは種類が違うんだよね。

クリの仲間は北半球の温暖湿潤な地域に広く分布しているんだけど、木材としても優秀なことに加え、実が食べられるので古代から栽培されてきたのだ。
日本でも三内丸山遺跡(縄文時代)で栽培の痕跡が見つかっているよ。
種類は異なるけれど、ユーラシア、北米では広く一般的に食べられてきたものなのだ。
しかも、ドングリと違ってあく抜きせずに食べられるので、非常に有用なんだよね。

日本の栗はいわゆる和栗というやつで、渋皮が身に密着していてはがしづらいことが特徴。
なので、生の場合は渋皮を包丁などで剥く必要があるのだ。
ゆでたり焼いたりしても渋皮が剥きづらいんだよね・・・。
中の実は淡黄色で、熱がとおるときれいな黄色になるのだ。
なお、今食用になっているのは栽培品種として、実が大きくなるもの、甘みが強いものなど品種改良を重ねた結果できたものだよ。

日本でもよく食べられる天津甘栗はシナグリという中国原産の栗。
こちらは渋皮がはがれやすく、甘みが強いのだ。
このシナグリを焼いた小石の中で砂糖をかけながら焼いたのが天津甘栗。
渋皮が密着していないので、ころんと身の部分だけが出てきて食べやすいんだよね。
これは製法に工夫があると思っていたんだけど、実は栗の種類の違いなのだ!

イタリアのピエモンテ産の栗、などと言われているのはヨーロッパグリ。
渋皮は比較的はがれやすく、実は茶色。
これが栗色(マルーン)なのだ。
本場のモンブランのクリームは茶色いけど、これは渋皮ごとクリームにしているわけじゃなくて、栗の実自体が茶色いからなのだ。
外皮に軽く切れ目を入れて炒るだけで比較的簡単に実を取り出すことができるので、欧州では街角で焼き栗が売られているのだ。
甘みは薄めだけど、デンプン質が多く、粘りけが少ないのだ。
なので、天津甘栗よりももっとほくほくした感じの仕上がりになるんだ。
このあたりが焼き芋に近い感覚を与えているのかも。

それと、重要なのは煮崩れしないこと。
これがマロン・グラッセにしておいしく食べられる理由なのだ。
和栗は実が割れやすいので、甘露煮くらいならいいのだけど、マロン・グラッセのように徐々に糖度を上げて何度も煮るという感じの製法には向かないのだ・・・。
なので、マロン・グラッセを作る場合はどうしてもヨーロッパグリが必要なんだよね。
ま、日本は日本で渋皮煮のようなものもあるので、栗の特徴にあわせておいしく食べるということかもしれないけど。

で、ここでわかりづらいのが、フランス語における「栗」の表現。
フランスでは、大きめの栗を「marron(マロン)」、小ぶりの栗を「châtaigne(シャテーニュ)」と呼ぶんだけど、もともと「マロン」というのは街路樹でもおなじみの「マロニエ(セイヨウトチノキ)の実」のことを指しているようなのだ。
もともとヨーロッパグリは、イガの中に実が3~7個入っている小ぶりの実だったんだけど、栽培品種の中に、イガの中に実が一つだけしか入っていない大きめの実ができるものができたみたい。
で、それがまるでまるでマロニエの実のようなので、「マロン」と呼び始めたのがはじまりと言われているのだ。
一方、元祖のマロニエの実は、日本のトチの実と同じで毒性があるので生食はできず、しっかりあく抜きなどの工程を経て、デンプン質だけを取り出す必要があるんだよね。
なので、本来の「マロン」だからと言って食べないように気をつけないといけないのだ!