2018/02/24

雪と氷の五輪

いろんなことが報道されているけど、平昌オリンピックが間もなく閉幕するのだ。
この次は、なぜかすぐ近くの北京。
その前に東京の夏季オリンピックが入るから、まさにずっと東アジアでオリンピックが続くんだよね。
なんだかすごい事態だなぁ。

夏季オリンピックと冬季オリンピックの開催年はずれていて、4で割り切れる西暦年に夏季オリンピック、4で割ったときに2余る西暦年に冬季オリンピックが開催されるのだ。
でも、小さい頃の記憶では、同じ年にやっていたような・・・、と思っていたら、そうだったんだよね。
1992年のアルベールビルまでは夏季オリンピックと同じ年にやっていたのだ。
で、その2年後、1994年のリレハンメルからずれるようになるんだよね。
そう言えば、あれ、2年後にオリンピックやってる!って思ったっけ。
ノルディック複合で荻原健司さんが連続で金メダルを取ったよね。
長野はその次なので、開催年がずれてからの開催なのだ。

日本で最初に開催された冬季オリンピックは1972年の札幌。
このとき札幌市内に地下鉄が通り、かなり街が便利になったんだって。
さらに、札幌の周辺にスキーのジャンプ台や大きなスケートリンクなどの関連設備が整備され、その後北海道から優秀なアスリートが出てくる基盤ができたのだ。
経済効果もさることながら、こういう効果も大きいんだよね。
そして、充実した冬季競技の会場がまとまってあるので、その後の冬季競技のアジア退化の拠点となり、世界大会の重要な会場の一つにもなったんだ。

でも、実は札幌オリンピックも、夏季の東京オリンピック同様に、リベンジ開催。
本当は1940年に、夏季は東京、冬季は札幌と日本開催を目指していたんだけど、第日中戦争の激化を受けて夏季・冬季ともに開催県を返上。
けっきょくは、第二次世界大戦の影響でオリンピック大会自体が中止されたのだけど・・・。
その前のドイツ(当時はナチス)までは開催していて、かなり国威発揚的なことをしていたんだけどね。
で、戦後の復興期を経て、日本でオリンピックを開催したい、との強い思いで、東京オリンピックが企画されるのだ。

1964年の東京オリンピック開催が決定すると、札幌でも冬季オリンピックを開催したいという気運が高まり、1968年開催に正式に立候補するのだ。
ところが、このときは投票で負けてしまったんだよね。
1972年開催に再起をかけ、招致活動を展開したところ、1966年にローマで開催された国際オリンピック委員会(IOC)で開催が決定したのだ。
このとき、第1回投票で過半数の得票をしてぶっちぎりで勝ったんだけど、それにはエピソードがあるみたい。
日本人IOC委員で最長老だった高石真五郎さんは、選挙でアピールしたかったんだけど、病気のために会合に出席できず、同じく日本人IOC委員だった東龍太郎さんにアピールコメントを録音したテープを託したんだって。
それを投票の直前に許可を得て会場で流したところ、多くのIOC委員の心に響き、その結果につながったんだとか。
思いが伝わったんだね。

ちなみに、夏季オリンピックは中止になっても回数をカウントしていて、戦前の東京オリンピックは第12回大会とされているのだ。
戦後の東京オリンピックは第18回大会だよ。
でも、冬季の場合はルールが違って、中止になったものはカウントしないので、1972年の札幌は、第11回冬季オリンピック大会なのだ。
東京は夏季オリンピックの開催年一覧に2回出てくるんだけど、札幌は一度だけ。
でも、なんでカウント方法を変えているんだろう?

実は、2020年の東京オリンピックに触発され、札幌でまた冬季大会を開きたい、という動きがあるんだって。
2014年に2026年の冬季大会の開催地として立候補する意向を正式に表明したのだ。
現在までに立候補を検討しているのは、スイスのシオン、スウェーデンのストックホルム、オーストリアのグラーツ、カナダのカルガリー、米国のソルトレイクシティ。
2019年にミラノで開催されるIOCで決まるんだけど、冒頭のように、東アジアでの開催が連続するので、なかなか実現は難しいんじゃないかと考えられているみたい。
どうなるんだろうね。

2018/02/17

伝来の墨

パリにはあまりおいしいイタリアンはなんだけど、お気に入りのところがあって、そこはサルデーニャ料理の店なんだよね。
東京でもあまり食べられないような料理もあって、よいレストランなのだ。
で、そこの名物料理はいくつかあるんだけど、ボクのお気に入りは、カラスミ(ボッタルガ)のパスタ。
粉末状に下ろしたものと薄くスライスしたものと両方が入っていて、濃厚な魚卵のうまみが味わえるよ♪

日本のカラスミと言えば、長崎産が有名。
肥前のカラスミは、越前のウニ、三河のコノワタ(ナマコの内臓の塩辛)と並んで日本三大珍味とも言われるんだ。
国産カラスミだと、お茶漬けに少し入れたり、薄くスライスしたものを大根と一緒に食べたりするけど、高級品だよね!
イタリアではそこまで高級な感じではないようだけど。
手のかけ方かな?

日本でのカラスミの原料は多くの場合はボラの卵巣。
傷つけないように丁寧に水洗いした後、塩を塗りつけて数日塩漬けにするのだ。
それを水洗いしてから真水につけて塩抜き。
ここでの塩抜きのあんばいは味の決め手になるそうだよ。
塩抜きしたら板の間に挟み、それを斜めに立てかけておいて一晩水抜き。
その後陰干しして10日間ほど熟成させるんだって。
熟成の最中にも、表面に浮き出る脂を拭き取るそうだから、手がかかっているのだ・・・。
それで高級なわけだ。

実は、カラスミは地中海が本場。
ギリシアやエジプトで魚の卵巣を塩漬した後に乾燥・熟成したものが作られていて、それが中国(当時は明朝)経由で安土桃山時代に本に伝来したとか。
大陸から伝来したのはサワラを使ったもので、今でも香川ではサワラのカラスミを作るらしいけど、長崎で盛んに作られるようになった際、豊富に漁獲されるボラが使われるようになったみたい。
「カラスミ」という名前も、肥前唐津の名護屋城を訪れた太閤秀吉公がこれは何かと訪ねた際、長崎代官の鍋島氏が、形が似ているからと「唐墨(中国の墨)」と答えたことによる、なんて言われているよ。
実際、日本のカラスミは熟成が進んでいて中身はオレンジ色、表面が茶褐色で、墨に似てなくもないのだ。

一方、イタリアで作られる地中海産のカラスミは、ボラだけでなく、マグロなんかも使われるみたいで、色も黄色っぽいんだよね。
材料の違いもあるのだろうけど、製法の違いも大きいんだろうなぁ。
なにより、日本のものほどは高くないので、そこまで手をかけていないはずなのだ。
たぶん、形を整えたりとか、表面に浮き出る脂を拭いたりとか、そういうのがないんだろうね(笑)
サルデーニャの特産品なんだけど、おとなりのシチリア島でも名物。
ボクもシチリアでマグロのボッタルガを使ったパスタを食べたけど、濃厚でおいしかった♪

ちなみに、台湾にもカラスミはあって、基本はボラのもの。
膜を破って表面をあぶってからスライスするみたい。
でも、台湾にはボラだけでなく、もっと巨大なアブラソコムツのカラスミ「油魚子」というのがあるのだ。
アブラソコムツは身に人間が消化できない脂肪分(ワックスエステル)が大量に含まれているため、食べるとひどい下痢をすることが知られている有害魚。
でも、その身は全体が大トロのようでおいしいとも言われているのだ。
日本ではアブラソコムツを食用に販売することは禁止されているんだけど、台湾ではその卵巣を使ってカラスミを作るみたい。
はたして、それは食べても大丈夫なんだろうか・・・。
やっぱり、大量には食べてはいけないのかな?

2018/02/10

御墨付きの技

先週フランス第二の都市のリヨンに行ってきたのだ。
 「ガストロノミーの街」と言われるだけあって、おいしものがいっぱい!
 かなり食い倒れのたびになったよ(笑)
そんな中、よさそうなお店を選ぶときに出くわすのが、「MOF」。
 和訳では、「国家最高職人章」と言うらしいよ。

 「Meilleur Ouvrier de France」のことで、「フランス文化の最も優れた継承者たるにふさわしい高度な技術を持つ職人に受章されるもの」なんだって。
フランス文化省が所管している制度で、受章者は、フランスの大統領官邸であるエリゼ宮で授与を受けるんだって。
大変な栄誉なのだ。
日本には文化勲章があるけど、 かなりの大御所がもらうイメージだよね。
だけど、フランスのものはけっこう毛色が違うようなのだ。

まず文化勲章は文化庁で文化功労者の中から候補者を選定していて、受賞分野も、科学、芸能、美術、文学、音楽など伝統的な文化、というものが多いよ。
文化功労者自体は、将棋やアニメ・マンガ、服飾、スポーツとジャンルが広がってきているので、文化勲章もそのうち拡大するかもだけど。

MOFは、フランスの文化制度だけあって料理分野が有名なんだけど、工芸やガーデニングなど、かなり幅広い部門があるのだ。
かつ、芸術家というよりは、熟練の、或いは、神業の職人を顕彰する制度。
 日本で言えば、戦前の帝室技芸員の方が近いのかも。
 帝室技芸員も、美術界の大御所が選ばれていたけど、漆工、彫金、陶工、七宝、刀剣、篆刻、工芸など、職人も選ばれていたのだ。
今でも皇居東御苑の三の丸尚蔵館に行くと その優れた作品が見られるよ。
日本の優れた美術品・工芸品の売り込みの目的もあったと言われるのだ。
万国博覧会に作品を出すのと同じだね。

ところが、ここからがもっと違うのだ。
それは、MOFは認定制度で、三年に一度のコンクールを勝ち残った人が得られる称号であるということ。
まさに料理部門では 「料理の鉄人」みたいなことが行われているわけ。
実際には、実績を持っている人だけが書類審査をクリアできて、その後筆記試験と実技審査があるようなのだ。
フランス文化の正当継承者という意味合いもあるので、フランス語の筆記試験を通らないとダメ。
それでも、数人の日本人は受賞できているんだよね。

難関をくぐり抜けると、料理部門なら、フランスのトリコロールの襟のコックコートが着用できるんだって。
そう言えば、リヨンの偉人、ポール・ボキューズさんもそれを着ていたっけ。
驚いたことに、リヨンにはけっこうMOF取得者のお店があるのだ。
さすがだいにのとしというか、職の都というか。
やっぱりリヨンは食い倒れの街なのか。
街の雰囲気だけで言えば、パリの方が大阪っぽいけどね(笑)

2018/02/03

首位、陥落

衝撃的なニュースを見たのだ。
なんと、一世帯(二人以上)の納豆の年間購入額で、水戸市が長年守ってきた首位から陥落し、福島市にその座を奪われたのだ!
しかも、今回の調査では盛岡市にも僅差で負けて三位・・・。
福島市ではもともと給食で二週に一度は納豆が出るという地域で、納豆を食べる習慣が子供の頃からついているので、消費量が高いとのこと。
地元のスーパーでは豆腐よりも納豆のコーナーの方が大きいらしいよ。

でも、ちょっと気になったのは、なんでそもそも納豆って水戸の名物なんだっけ?、ということ。
大豆の産地でもないし。
発酵に必要な環境に優れているわけでもないよね。
そもそも茨城でも水戸だけだし。
一応、水戸納豆の由来としては、後三年の役で欧州に向かう途上の八幡太郎義家公に差し出していた馬の飼料の煮豆の残りが納豆になった、のだそうだよ。
っていうか、馬の飼料の残りが糸を引き始めていて、それを試しに家来が食べたらおいしくて、それを義家公にも献上した、というんだけど、ちょっと無理がないかなぁ・・・。

しかしながら、現在の糸を引く納豆が平安中期以降に登場して、それが主に関東から東北にかけて広がっていったのは確かなようなのだ。
もともとの「寺納豆」は今でいう「 豆鼓(とうち)」のようなもので、発酵させた後に乾燥させた、豆の形を残した塩辛い味噌のような風味のもの。
これは大陸伝来のもので、後に日本の味噌や醤油につながっていくんだけど、糸引き納豆は日本発祥と考えられていて、安価に作れて栄養が豊富なので、主に庶民の間に広まっていったと言われているんだ。

実は、納豆が水戸の名物になったのは水戸線(東北本線と常磐線をつなぐ路線)の開通から。
明治22年(1889年)のこと。
現在の「天狗納豆」の創始者である初代笹沼清左衛門さんが製品化に成功し、駅前で土産として販売したところ好評を得たため。
それまでは基本的に納豆は自家製で(江戸なんかの都市には郊外の農家で作ったものを納豆売りが売りに来ていたみたいだけど)、これを製品として販売するようになったのが画期的だったんだって。
当時の水戸周辺は小粒の大豆の産地でもあって、それも功を奏したみたい。
粒の大きな大豆の場合は、先に砕いてから発酵させる「ひきわり」納豆にされていて、江戸時代なんかはむしろそっちが主流だったようなんだけど、小粒の納豆だと豆の形が残っていて、見た目にもきれいだよね。

ここで確信が怒ったのが納豆の製法。
明治に入ってから納豆の研究が進み、それまでの一度煮沸したわらに煮豆を包んで発酵させる、という手法から、純粋培養した納豆菌を接種して発酵させる方法に変わったのだ。
もともと納豆菌は芽胞を形成することで耐熱性が高く、少し煮沸したくらいでは死滅しないんだよね。
さらに、その高い繁殖力で、他の芽胞を作る最近より早く増殖するので、温度と湿度が適切であれば、放っておいても納豆ができるのだ。
最初はそうやってできているしね(笑)
一方で、このやり方にはやっぱりこつなんかもあるわけで、失敗すると腐敗したり、アンモニア臭の強いものになってしまうのだ(>o<)
そこで、工業的に大量生産するには純粋培養した納豆菌による製法が必要だったわけ。
これなら雑菌の混入は抑えられるからね。

こうして大量に作られるようになった納豆は、安価で栄養豊富なので軍用食にも採用され、戦中戦後に広まっていったのだ。
地域的な偏りはあるんだけどね。
今では流通も拡大し、人の移動・交流も盛んになったので、関西でも納豆を食べる人がわりといるみたいだよね。
水戸市では「捲土重来」を狙っていろんなことを考えているようだけど、もともと「水戸納豆」がブランド化したのは、近代工業化の成功とマーケティングによる販路の拡大だから、その偉業を継いでなんとかしてもらいたいね。

2018/01/27

危険水域

パリでは連日の雨模様でセーヌ川の水位が上がってきているのだ。
一昨年6月にも同じように水があふれて、床下浸水とかの被害も出ているんだよね。
今回もすでに、橋の下を通る水上バスは運休(水位が上がりすぎて橋の下をくぐれないため)、ルーブル美術館の一部展示室が閉鎖など影響が出ているけど、このまま行くと、過去最大級の水位上昇になりそうなんだとか。
パリのセーヌ河岸は世界遺産にも登録されているんだけど、今はドロ川のようになっているみたいだよ。

セーヌ川はフランス第二位の長さの川で、パリ市内でも大きく蛇行しているのだ。
かつて、パリでは上水道が分かれておらず、両方ともセーヌ川を活用していたんだって・・・。
それで疫病がよく蔓延したというのだけど、古代ローマですでに上下水道の概念があったのに、遅れていたんだね・・・。
ロンドンで当時世界最高と言われた水道システムを見たナポレオンさんが改革を断行し、上水道・下水道を整備し、セーヌ川の水をくまなくても水が使えるようになったのだ!
でも、けっきょくすべての排水はセーヌ川に流れ込む仕組みで、そこは変わっていないみたい。
これが今回の水位上昇の原因でもあると思うんだよね。

東京でも、昭和の時代まではよく神田川が氾濫していたのだ。
台風シーズンになると学習院下(住所は上高田)あたりがよくあふれたんだよね。
当時は下水がそのまま流れ込み、ヘドロの川になっていたのだけど、それがあふれるんだからすごいものだよ・・・。
江戸時代は「神田上水」として飲み水の確保のために整備された川なんだけどね。
神田川は一級河川で国の管理下にあるので、国としても河岸整備などを進め、今では危険水域に到達することはあっても、まずあふれなくなったのだ。

何をしたかというと、一つは河岸の整備でこれは川幅を広げること。
でも、それには用地の問題で限界があるので、同時に進めたのが放水路の確保。
川の水の流れ先を増やしたのだ。
これで増えた水が分散されるわけ。
よく氾濫して荒れるから「荒川」という名前がついている荒川も、放水路であふれることが減ったのだ。
現在のいわゆる「荒川」は放水路で、元の流れは隅田川なんだよ。
赤羽岩淵の当たりから大きく曲がって隅田川になるんだけど、この当たりがよくあふれたので、開削して中側の方に流路を増やしたのだ。
難工事だったようだけど、その感性で東京の洪水がほぼなくなったようだよ。

そして、話は戻って、神田川の秘密はもうひとつあるのだ。
それは地課の調節池。
地下に巨大な空間があって、そこに水をためておくことができるのだ。
一時的に水をプールしておいて、徐々に流すことであふれないようにしているんだ。
有名なのは、中野区・杉並区の環七(環状七号線)下にある、「神田川・環状7号線地下調節池」。
ここは事前申込みで見学できるのだけど、地下秘密基地のようですごいとよく言われるのだ。
それと、神田川と妙正寺川が「落ち合う」新宿区落合にある「妙正寺川落合調節池」。
もともと二つの川が合流する地点で、かつ、土地が低いのでよくあふれた場所なんだよね。
なので、流路を変更してもう少し先で合流するようにするとともに、調節池を設けたのだ。

このように、東京の治水は、いろいろと対策をしているわけ。
パリではどこまで対策をしているんだろう?
ただし、これらの対策には莫大な費用がかかるから、すぐにできるわけじゃないんだけど。
パリもこういう事態が続いたのだから、何か考えなければいけないんじゃないかな。

2018/01/20

パリでも定番

パンとケーキとチーズのおいしい街、パリ。
正直、料理はイタリアの方がおいしいと思うんだよね(笑)
何より、海産物が生臭くないし! でもでも、そんなパリでも、イタリア発祥のデザートである「ティラミス」はかなり定番。
フレンチのレストランでも出るし、カフェにも必ずあるのだ。
そう言えば、パンナコッタもかなり見かけるかも。

そんなティラミスの材料はチーズ! マスカルポーネだよね。
チーズはフランスの方がおいしいと思っていたんだけど、そう言えば、モッツァレッラも含め、熟成させないフレッシュチーズはイタリアのものがおいしいかも・・・。
やっぱり気候とか風土がかんけいしているのかなぁ。
フランスの寒さと乾燥がよいのかも。

で、マスカルポーネとはよく聞くけど、実際はなんだかよくわかっていないんだよね(笑)
調べてみると、生クリームを熱してからクエン酸又は酢酸を加えて固め、布でこして水分(乳清=ホエイ)を除いたものだって。
なんだかどこかで聞いたことあるような・・・、と思っていたら、フランスのデザートの定番でもあるフロマージュ・ブランと作り方が類似しているのだ!
フロマージュ・ブランの場合は、生クリームではなく、より脂肪分の少ない乳(全乳、低脂肪乳又は無脂肪乳)を温め、そこに乳酸菌と少量のレンネット(チーズを凝固させる酵素)を加えて固め、水分を除くのだ。

一般に、クリームチーズは、クリーム又は乳に乳酸菌を加え、発酵させて固めてから、水分を除いて作るのだ。
乳に乳酸菌を加えて発酵させた発酵乳はヨーグルトなんだけど、ヨーグルトの場合は乳酸菌の株がある程度決まっているようだよ。
でも、水分を切ったヨーグルトと、乳で作ったフレッシュ・チーズは非常に似ているのだ、っていうか、ほとんど同じ。
フロマージュ・ブランはヨーグルトと言われてもわからないからね。


マスカルポーネの特徴として、フロマージュ・ブランを含むクリームチーズと異なり、乳酸発酵をさせていないので酸味が少ないのだ。
しかも、乳にレモン汁や酢を加えて作るオランダのカッテージチーズに比べると、もともとの脂肪分が多いので、その「甘み」があるんだよね。
より濃厚なクリームになるのだ。 これが高カロリーの原因なんだけど。

作りたてのマスカルポーネは乳白色。
いわゆるティラミスの色である黄色は、サバイオーネと言われるカスタードの色なのだ。
これは、卵黄に砂糖を加えて泡立て、洋酒を加えて煮詰めたものだよ。
このカスタードとマスカルポーネを混ぜたものを使うのがティラミスなのだ。
一方、マスカルポーネは、古くなると黄色くなってくるんだよね。
これは中に含まれる乳脂肪が酸化されて色がつくため。
古い油が褐色になっていくのと同じだよ。
なので、ティラミスのイメージでマスカルポーネを選んではいけないのだ!

日本では、バブルの時期に「イタ飯」が大流行し、ティラミスも一気にメジャーになったんだよね。
デニーズなどのファミレスでも定番になったし、一気に需要が増えたのだ。
ところが、フレッシュチーズであるマスカルポーネは日持ちがよくないし、そんなに大量に輸入はできなかったのだ・・・。
そこで開発されたのが、植物性油脂から作られた代用品。
「マスカポーネ」だよ。
バターに対するマーガリンの発想だよね。
この代用品は、柔らかくて加工しやすく、かつ、日持ちもするので、カップデザートに使ったりするのにはもってこい。
スーパーやコンビニに並んでいる価格の安いものはこの代用品を使っているかもしれないよ。
本物のマスカルポーネを使ったものと食べ比べてみると面白いかもね。

2018/01/13

臭みに立ち向かう

パリの魚介類はくさい!
スーパーで売っているようなものは当然として、マルシェで氷の上に並べられているようなものもかなりのにおいなのだ・・・。
フランス人はあまり魚の臭みを気にしないのかな?
日本ほど冷蔵・冷凍輸送の体制が整っていないようなので、流通の問題であるのは確かなんだけど。
なので、パリでは家で魚料理を食べる機会は減ってしまうのだ(>_<)
職場の同僚はパリでは魚は食べないとか言っているよ。

実は、真空パックに入って売られているスモークサーモンもそうなんだよね。
日本で売っているものでもくさみが気になって・・・、なんてネットの相談を見たけど、パリで売られているものは多分もっとくさみがあるよ。
一応、パックを開けてそのままでも食べられるみたいなんだけど、推奨は、ドレッシングなどであえてカルパッチョやサラダにすることなのだ。
我が家では、塩漬けイクラとともに鮭親子丼にしたんだけど、わさび醤油でカバーしたのだ。

この魚のくさみの主な原因と言われているのは、トリメチルアミンという物質。
すごく簡単な構造の有機化合物だよ。
低濃度でいわゆる「魚臭」、高濃度ではアンモニアのような悪臭になるのだ。
悪臭防止法の規制対象でもあって、特定悪臭物質に指定されているんだって!
魚の場合、浸透圧を調節するために体内にトリメチルアミン-N-オキシドという物質を持っていて、これが魚の死後に付着している細菌による還元されると、悪臭の原因であるトリメチルアミンが出てくるのだ。
なので、トリメチルアミンは魚の腐敗の進行度によって増えるんだよね。
つまり、鮮度よく流通させないと、くさくなるわけ・・・。

このトリメチルアミンは水によく溶ける物質なので、水で洗えばある程度取り除けるんだけど、魚の切り身をそのまま真水で洗ってしまうと、浸透圧の関係で切り身が水分を吸ってしまい、食感も悪くなるし、味もぼやけたものになるのだ・・・。
そこで、仮に洗う場合は海水程度の塩水を使うのがよいらしいよ。
そうすると切り身は「ぶよぶよ」にはならないのだ。
伝統的には、魚の身から水分を吸い出して「締まった」状態にする方が、身がぷりぷりし、味も濃くなるので、塩水で洗うよりは、塩を振って、水分を吸った塩をぬぐい取る、という方法がとられているよ。
水分と一緒にくさみ成分もぬけるので、塩をして少し閉めると改善するみたい。
ただし、生魚はいいとして、スモークサーモンにはあまり使えないね(笑)

浸透圧を気にせずに水で洗うには、野菜ではやった「50度洗い」という方法もあるのだ。
50度前後(48度~52度)のぬるま湯を用意して洗う、というだけなんだけど。
野菜の場合は、50度前後の水で簡便に表面の殺菌をするとともに、適度な水分を吸収させてしゃっきり、みずみずしくさせるのだ。
でも、これだと魚ではまずいのでは?、と思うんだけど、ちょっと違うみたい。
表面の殺菌でこれ以上くさみ成分が増えないようにするのは効果があるとして、ぬるま湯で洗うのは、「余計な水分を吸わせない」ようにするためなのだ。
逆説的に聞こえるけど。

魚や肉の場合、やってみるとわかるのだけど、ぬるま湯に入れると表面が少し白く、固くなるのだ。
これはタンパク質が熱で変成しているからだよ。
そうすると、水が染みこみにくくなるのだ!
ところが、この程度の熱変性は可逆的なので、ぬるま湯で洗った後によく水分をぬぐい取って乾燥させると、元の色、というか、より鮮やかな発色になるのだ。
50度前後という絶妙な温度設定により、火は通らないんだけど、表面のタンパク質は変性する、というのがポイント。
熱すぎると「たたき」にしたように表面に火が通ってしまうし、ぬるすぎると殺菌できないので要注意。

ドレッシングであえるというのも効果があって、これは「酢」が威力を発揮しているのだ。
柑橘類の果汁でも一緒だよ。
トリメチルアミンは酸性条件下ではトリメチルアンモニウム塩に酸化されるので、くさみがなくなるのだ。
これは純粋に化学的な話。
ヨーグルトにつけるというのも同様の話で、中は乳酸によって酸性になっているので、くさみがなくなるのだ。
焼き魚にレモンをしぼるというのも一理あるわけだね。

ちなみに、トリメチルアミンは熱でも飛ぶので、焼いたり煮たりするとくさみは軽減するよ。
でも、先にくさみを取ってから焼いたり煮たりした方がおいしいわけで。
ちょっと工夫をすればよりおいしく魚が食べられそう。