2024/10/26

パンを先に食べるにあらず

 今更ながら、という気がしないでもないけど、さんざんあれだけ推奨してきた「ベジファースト」が否定され始めたのだ。
厚生労働省の作成している「食品摂取基準」にも、「野菜から食べるとよい」という記述があったんだけど、それが最新版では削除されたことがきっかけ。
実は、意味がないことではないんだけど、言葉の独り歩きと拡大解釈で「デマ」が蔓延してしまったという不幸な話なんだよね・・・。
問題は、きちんとその効果を理解することなのだ。

もともとこの話は、とある実験結果に由来するのだ。
それは、食べる順番が血糖上昇にどういう影響があるかを調べるもので、野菜を食べてから10分後にお米を食べた場合と、お米を食べてから10分後に野菜を食べた場合の血糖値の刑事変化を調べたもの。
お米から先に食べると一気に血糖値が上昇し、その後インスリンが分泌されて急激に血糖値が下がっていくんだよね。
一方、野菜から食べると、血糖値の上昇が緩やかで、乱高下がない、ということがわかったのだ。

血糖値の急激な上昇にひどいものは「血糖値スパイク」と呼ばれ、ぐんと上昇した後にがくっと下がるんだけど、、この時反動で下がりすぎてしまい、低血糖状態になることがあるのだ。
こうなると、急激なふらつき、眠気などの症状が出てくるよ。
ネットでは「ドカ食い気絶部」なんてのがあるし、最近話題の漫画「ドカ食いダイスキ! もちづきさん」は大量に食べた後に恍惚の表情を浮かべているけど、その原因がまさにこれ。
サウナの「ととのう」以上にやばい状態なので、本当は避けなければいけないんだよ。

一般に血糖値の乱高下は体に負担があると言われていて、特に血管系にダメージを与えるので循環器系の生活習慣病のリスクを高めると考えられているのだ。
なので、できるだけ血糖値の上昇を穏やかにするために食べる順番を工夫しましょう、という話だったわけ。
もちろん、一口目に野菜、二口目にお米、というのではあまり意味がないわけで。
コース料理や懐石料理のように、料理ごとに多芯たーばるを開けて食べる場合において、まずは炭水化物があまり入っていない、野菜中心のメニューから食べるといいよ、ということ。
日本では給食をはじめとして「三角食べ」が推奨されているので、実は本当の意味での「ベジファースト」はやりづらいのだ。

この「ベジファースト」は、野菜に含まれる食物繊維が糖の吸収を抑制するので急激な血糖上昇を抑える、と説明されてきたんだよね。
これが単純化されて独り歩きし、かつ、拡大解釈されたのが、「ベジファースト」は「やせる食べ方」という受け止め。
難消化性デキストリンなんかを含むトクホ製品でも「糖の吸収をだやかにする」と書かれているけど、量的に糖の吸収を大きく減らすわけではないのだ。
っていうか、糖尿病の治療に使われるSGLT2阻害薬は実際に腎臓での糖吸収を阻害するんだけど、そこまで作用の強い薬なので当然処方せん薬。
それと「同等の効果が食べ方の工夫や普通に誰でも買えるトクホで実現されるわけはないのだ。

なんだけど、血糖値スパイクを防いで生活習慣病リスクを下げる、というのは忘れ去られ、糖の吸収をyるやかにする=>糖の吸収を抑える=>食べても糖が吸収されないから太りにくくなる、とどんどん拡大解釈が広がっていったわけ。
で、町医者なんかも、厚生労働省の指導もあって、生活習慣病リスクを下げる効果があって、非常に単純にできること、ということで、「ベジファースト」を勧めることが多かったのだけど、最近では、医師であっても「ベジファーストはやせる食べ方」という認識を持ってしまっている場合があるようなだよね・・・。
きちんと理解したうえで実践するのはよいのだけど、さすがにこの状況は看過できず、ということで、厚生労働省は食品摂取基準から記述を削除したようなのだ。

で、この「ベジファースト」のほかにも、わりと簡単にできる血糖値スパイクを抑える食べ方というのはあるのだ。
もっとも単純なのはゆっくりよく噛んで食べる、ということ。
もう少し気にしたい人は、GI値ことグリセミック指数の低い食品を積極的に食べる、ということ。
このGI値というのは、食後どれだけ血糖を上昇させるかの指標になっていて、野菜や豆類、肉類は低く、でんぷん質の白飯、パン、うどんなんかは非常に高いのだ。
なので、白飯ではなく玄米、食パンではんく全粒粉パン又はライ麦パン、うどんではなくそば、とすることで、けっこう血糖値スパイクは避けられるよ。
若いうちはあまり気にしなくてよいのだけど、ある程度の年齢になったらこういうのを気にしないといけないんだよね。

2024/10/19

柳の上に猫がいる、だからネコヤナギ

 外国の女性が神社の鳥居で懸垂をしている動画をインスタグラムにアップしたことが炎上しているらしいのだ。
日本人にとってみると鳥居は神社と一体不可分に結びつくもので、つまりは神聖なものなので、そんな不敬は許されない、という内容。
程度の差こそあれ、異文化交流ではこういうことがよくあるよね。
郷に入っては郷に従えで、やはり現地の文化を尊重し、そういう失礼と思われるようなことがないようにするのがベストなのだ。
で、思ったんだけど、そうは言っても、実はそこまで鳥居について知っているわけでないんだよね。
神社にある、形状はわかる、というくらいじゃないかな。
というわけで、少しだけ調べてみたのだ。

とはいえ、起源や由来が詳細に判明しているわけではなくて、諸説はあるみたい。
そんな中で、いくつか拾ってみると、おおよそこんな感じ。
まず、鳥居は神域の境界を示すもので、鳥居の先は神聖な場所という扱いで、一種の門になっているのだ。
どうも、鳥居は神社建築より古くから存在しているようで、何か神聖な場所やモノがあった場合、その周辺の神聖な区画(結界の内側)を示すものとして使われていたみたいなのだ。
現代の神社は本殿の中に御神体があって、その手前に参拝や儀式をするための拝殿があるよね。
で、神社の境内の境界や拝殿・本殿の前に鳥居が置かれるのだ。
つまり、神聖な区画である境内の境界を示すとともに、神社の中でも特に神聖レベルが高い拝殿や本殿の前にも二十バリアのように置かれているわけ。
鳥居をくぐるために神聖レベルが上がっていくイメージだね。

でも、古い振興においては、自然物や自然現象を神聖視して、崇めていたようなのだ。
岩石や樹木、山、海、川、池などの自然物の場合は、それを神聖なものと示すために注連縄や鳥居が使われたのだ。
古い神道の進行形態を保存しているといわれている、奈良の大神神社や京都宇治の宇治上神社は山体そのものが御神体なので、本殿を持たず、その山のふもとに拝殿だけが置かれていて、その一帯の神域の境界を示すためのものとして鳥居が置かれているのだ。
拝殿が必要になるのは、そこで参拝をしたり儀式をしたりするからで、そのもっと手前、ただただ山に畏敬の念を抱いて拝む、捧げものをする、みたいなもっと原始的な進行形態の場合は、拝殿も不要で、神域を示すもの=鳥居や注連縄だけあればよいはずなのだ。
これが鳥居が神社建築より古くからあると考えられてる理由だよね。
で、時代が下ってくると、鳥居が神聖な場所・モノと切っても切れなくなて、立小便禁止のために鳥居のマークを塀に書くみたいな風習も生まれてくるのだ。
これは主客が逆転してしまっているけど、応用編だね。

なぜ鳥居というのか、というのも諸説あるようだけど、ボクが個人的に気に入っているストーリーは、字のごとく、「鳥の居る場所」という意味。
記紀神話の天岩戸から天照大神を誘い出す際、常世長鳴鳥(とこよのながなきどり)を鳴かせ、天鈿女に躍らせて騒ぐわけだけど、それにちなんで、神域の前に鶏の止まり木を置いたことに由来する、というもの。
八幡神社の場合は神使が鳩だからちょうどよいし、実は、伊勢神宮などでは鶏が神使なんだよね。
熊野神社の場合は烏。
古代日本では鳥は魂に例えられたりもするけど、空を飛ぶという行為が、人間の世界である地上と神々の世界である天井(高天原)を結ぶものと直感的にとらえられていたんじゃないかな。
なので、神使としての鳥は素直なもので、鳥の止まり木を神社に置くのは自然な流れになるのだ。

止まり木なのかどうかは別としても、鳥居と言われると代替イメージする形はあるのだ、
「形」の地の左側だよね。
でも、実は鳥居の形には様式があって、伊勢神宮や全国の天祖神社・神明宮にある神明鳥居、鹿島神宮の鹿島鳥居、八幡神社の八幡鳥居、街中で見かける稲荷神社の明神鳥居などなど。
実は、鳥居の形状を見ただけで大体の御祭神の区別がつくのだ!
ちなみに、安芸の宮島の厳島神社のような「支え」がついた鳥居は両部鳥居という名前だよ。
あれは地面に埋まっておらず、自立しているという点でも特徴的なんだよね。

2024/10/12

金のひび

 なんでも鑑定団とかを見ていると時々出てくるけど、陶磁器の修復方法で「金継ぎ」というのがあるのだ。
割れたかけらをくっつけるのだけど、そこの境界部分が金色になっているやつ。
目立たないように修復するのではなく、それもまたひとつの「味わい」として楽しむ、というものなんだよね。
千利休がそういう考え方を打ち出したらしい。
ものを大事にしつつ、さらにそこに新たに芸術性を加えるというのはすごい発想なのだ。
日本発で「モッタイナイ」の次に広めたいよね?

そんな金継ぎなんだけど、これははんだのように金属を溶かして間をつないでいるわけではないのだ。
当たり前だけど、陶磁器と金属ではそこまできれいに接着しないし。
ここの接着で重要なのは、「うるし」なのだ。
うるしは一度固まってしまうと水にも油にも酸にもアルカリにも強いので、食器として使う場合でも安心。
漆器は木地物のそういう弱点を克服するものだしね。
一方で、極度の乾燥や継続的な湿気、それから紫外線が大敵。
陶磁器はこういうのには強いけど、金継ぎが修復した場合は気を付けないといけないよ。

で、具体的な方法だけど、一般に公開されているものはあるのだけど、細かなコツや美しく仕上げる手法などは師弟関係の中でのみ伝達されるので、よくわからない部分が多いのだ。
ま、職人仕事だからそういうものだろうけど。
ただ、そういう一般レシピでよいのであれば、金継ぎ体験なんかもできるみたい。ちょっと興味あるかも。
そういうのの公開されているプロトコールを見てみると、次のようなものなのだ。

(1)接着したい断面にうるしを塗り、よく乾燥させる(これは後で接着剤をつけやすくするため)。
(2)小麦粉を水で練って作ったのりと生うるしを混ぜて「麦うるし」を作り、これを接着剤としてくっつける。
(3)(一般的な漆器の場合と同じように)高温多湿の室の中に入れてうるしを固める(~2週間)。
(4)修繕した部分にさらに黒うるしを塗り、乾燥させた後磨く、という固定を数回行う。
(5)仕上げとして修繕部分に金粉(金箔を粉にしたもの)を赤うるしと一緒に塗り、乾燥させる。
(6)最後の仕上げとして透うるし(水分の多い生うるしから不純物をろ過して除いた透明度の高いうるし)をコーティング剤として塗り、乾燥させる。

うるしはウルシオールという成分がラッカーゼという酵素の作用により周辺の水と反応して重合し、固まるんだよね。
なので、「乾燥」と言いつつ、高温多湿のところにおいておく必要があるのだ。
で、固まったとき、少しだけ体積が減って縮むのだ。
コーティング剤として使う分にも気にする必要はないのだけど、金継ぎのような修復に使う場合は、そのままにしておくと修復部分が少しだけへこんでしまうんだよね。
人間の触覚はなかなかすぐれたもので、割とそういうのを知覚してしまうので、さらに修繕部分にうるしを重ね塗りし、平たんにしていく作業が必要なのだ。
これが(4)以降の作業の意味。
で、修復部分をひびが目立たないようにすることもできるけど、最後に金色にしてむしろ新たな味わいを出す、という工程になっているよ。
ここで金粉を使わず、陶磁器の地の色と近い感じの色合いで塗ってあげれば日々を目立たなくすることもできるのだ。

接着剤に使っている「麦うるし」も特徴的なもので、これはのりの成分にもなるでんぷんをあえてすべて取り除き、(麺のコシのもとである)グルテンだけを残して使っているのだ。
でんぷんのりだと一度固まっても水気があるとすぐにふやけてしまってはがれてしまうので、高温多湿な環境で固める必要のあるうるしと相性が良くないのだ。
グルテンのりの場合は、もともとの接着力も強く、固まった後も水気で柔らかくはなるけど接着力は強いままなのでちょうどよいわけ。
こういうのも昔の職人さんが工夫しながら見つけたんだろうね。

2024/10/05

みんなで、朝食に、食べよう

 最近、MCTオイルというのをよく見かけるのだ。
体脂肪の燃焼を助け、ウエストを補足する効果がある、ということで、機能性表示食品になったので、よく宣伝しているかららしい。
CMでもよく見かけるよね。
でも、けっきょくよくわからないので、ちょっと調べてみたのだ。

MCTは中鎖脂肪酸トリグリセリド(Medium Chain Triglyceride )のこと。
炭素数が6~12の中鎖脂肪酸3つとグリセリンが結合したもの。
食用油の中に含まれているオレイン酸やリノール酸はともに炭素数が18の長鎖脂肪酸(炭素数が13~21)だから、それよりも小さな分子。
具体的にはココナッツオイルやパーム核油に含まれるラウリン酸(炭素数12)のような脂肪酸のこと。
当たり前だけど、炭素数が少ないということは分子も小さい。
でも、それ以上に、脂肪酸は炭素数が増えるほど疎水性が増すので、炭素数が少ない脂肪酸は比較的水と混ざり合うのだ。
なので、炭素数の多い長鎖脂肪酸は水の中で油としてまとまっちゃうのだけど、中鎖脂肪酸くらいだとうまいこと分散してくれるよ。

この効果は絶大で、長鎖脂肪酸から構成されるトリグリセリドは界面活性剤として作用する多重産で入荷されないとリパーゼで分解されないのだけど、MCTだと胆汁酸がなくてもリパーゼで脂肪酸とグリセリンに分解されるのだ。
しかも、分解されて出てくる脂肪酸も、長鎖脂肪酸と中鎖脂肪酸で扱いが変わるのだ。
血液中には基本的に低分子のものしか入り込めないので、長鎖脂肪酸は腸管で吸収された後、いったんリンパに入り、そこから静脈に入っていくんだって。
で、すぐに大差されることはなう、中性脂肪としてエネルギー貯蔵に回されるのだ。
腸管から脂肪をたくさん吸収した琳派は白く濁っていて、「乳糜(にゅうび)」と呼ばれるんだけど、確かにこんなどろどろのものが血液に入ったら大変だ・・・。
一方、中鎖脂肪酸は糖やアミノ酸とともに門脈(腸管から吸収した栄養を肝臓に運ぶ静脈)からすぐに肝臓に運ばれて代謝されるんだよ。
これがMCTは消化・吸収が早く、すばやくエネルギーになるといわれる所以。

将来のエネルギー源として蓄えられてしまうと、信望はなかなか燃焼されないんだよね。
瞬発的な運動の場合はグリコーゲンが優先的に使われるので、じっくりと継続的にエネルギー消費をする有酸素運動でないと脂肪は減らないのだ・・・。
これが一度ため込んでしまうとなくすのが大変な理由なんだよね。
その意味では、MCTは非常に魅力的なものだけど、全部これでよい、というわけでもないんだって。
やっぱり摂取量には限界があるし、必須脂肪酸はみんな長鎖脂肪酸なんだよね。

とはいえ、同じ脂質を摂取するにしても、MCTの方が脂肪として貯まりにくく、すぐにエネルギーになって効率的、ということ。
また、胆汁酸を必要としないで消化・吸収できるので、その点では「もたれ」にくいのだ。
というわけで、当初は病院で効率的な脂質吸収のために使われていて、その後、スポーツの分野でエネルギー補給用の脂質として活用され始めたらしい。
で、そうやって使っていくうちに、どうもMCTを摂取すると、脂質の代謝自体が高まったり、食欲が抑えられたり、という効果が報告され始めたんだって。
今でも詳細のそのメカニズムは解明されてはいないのだけど、そこに目を付けたのがダイエット業界というわけで、それで一気にはやり始めたのだ。

中鎖脂肪酸を燃焼させてエネルギー源にする場合、いわゆる「ケトン体」が出てくるのだけど、ケトン体はインスリンの分泌を抑制するなどの効果があるので、そういうのが絡み合ている可能性はあるのだ。
現象として見えていることはプラセボ効果(「思い込み」)でもないようなので、おそらく何か複雑なプロセスできいてる可能性はあるのだ。
でも、機能性表示食品だと、実際に効果が認められればOKなので、詳細な作用機序は不明のままでもよいのだよね。

MCTの利点としては、脂である割にはさらっとしていていろんなものに混ぜやすいこと、そして、それ自体が強い風味があるわけでもないので、味をこわさないことがあげられるよ。
なので、とりあえずなんにでもかけちゃえ、という感じで宣伝されているよね。
飲み物やヨーグルトに入れたりもするのだ。
そうでないとサラダのドレッシングとか用途が限られるから、これも重要な特徴だよね。
もうちょっと評価が固まってきたら、この新たなアブライフに手を出してみてもよいかも。

2024/09/28

やめへんでぇ

 兵庫県知事は不信任決議を受けても辞職はしない、ということを表明したのだ。
でも、議会を解散するわけではなく、期日までに議会を解散せずに自動的に失職したうえで、その後に行われる知事選挙に改めて立候補するんだって。
ん?なんだこれ・・・。
だったら辞職したうえで、いわゆる「出直し選挙」をしたらいいんじゃないの、と思うのだけど、それは違うようなのだ。
さすが元総務官僚。
こういうところのルールには詳しいみたいだよ。

いわゆる「出直し選挙」の場合、当選後の任期が「もともとの任期満了までの残余の期間」となるのだ。
今回の場合、2021年8月1日付で知事に就任しているので、もともとの任期は2025年7月31日まで。
なので、いったん辞職して「出直し選挙」に出て、当選した場合の任期は、この来年7月末までのままなのだ。
そう、「出直し選挙」をしても1年弱しかないわけ。
せっかく選挙をするのにコスパが悪い!

で、失職してからの知事選の場合、当選後の任期は4年きっかりもらえるのだ。
今の見込みだと11月中旬くらいの投開票のようなので、2028年の11月中旬まで知事でいられるわけ。
「出直し選挙」だろうが仕切り直しの知事選だろうが、有権者の受け止めは変わらないだろうから、現職の知事にとっては厳しい選挙であることは必至。
それを勝ち抜いた後に待っている任期の長さが4倍も違うんじゃね。
この選択はそこだけ見ると頭がよいように思う。

このルールの隙間をついたような話は、公職選挙法の規定によるものなんだ。
公職選挙法第259条の2は「地方公共団体の長の任期の起算の特例」を規定していて、「地方公共団体の長の職の退職を申し出た者が当該退職の申立てがあつたことにより告示された地方公共団体の長の選挙において当選人となつたときは、その者の任期については、当該退職の申立て及び当該退職の申立てがあつたことにより告示された選挙がなかつたものとみなして前条の規定を適用する。」となっているのだ。
何が書いてあるのかわかりにくいけど、現職の地方公共団体の主張が辞職して行われる選挙にその現職首長が「出直し選挙」として立候補し、当選した場合は、その任期はもともとの任期のままとする、ということだよ。

首長の辞職はいつでも任意でできるわけで、任期満了の前に他の候補予定者が十分に準備できないうちに「出直し選挙」に持ち込むことが可能なので、その場合は圧倒的に現職が有利なのだ。
それなのに、その当選後に人気がリセットされるとけっきょく現職が居座り続けることにもなりかねな、ということで1962年(昭和37年)の改正で導入された条項なんだそうだ。
なので「条の2」ということなんだけど、公職選挙法(1950年公布)とか地方自治法(1947年公布)は戦後すぐの法律だから、10年くらい運用してすでに悪いことをし始めた不埒な首長がいた、というこなんだな・・・。

ちなみに、現職の知事が辞職又は失職し、改めて選挙で選ばれた場合、地方自治法では不信任決議が可決された場合にしか首長は地方議会を解散できないので、県議会の構成は変わらないまま。
つまり、民意がどうであろうと、首長と議会の対立は続くんだよね・・・。
今の議会は昨年4月の統一地方選で選出されているので、残りの任期は2年半ある。
その間、ずっと知事と議会が対立し続けると・・・。
まだ知事を続けたいなら、本来は議会を解散したうえで自分も辞職して、すべてを民意に問う、というのがいいのかなぁ。

2024/09/21

三番目のやつ

 確か中学校で習うのだけど、大気の構成で、一番多いのが窒素の役78%。
ついで酸素が約21%。
で、残りの1%の中に光合成に使われる二酸化炭素などが入っているのだけど、実は、堂々の三位は「アルゴン」なのだ。
アルゴンは約0.9%で、残りの1%枠のほとんどはこれなのだ。
で、アルゴンって何?って気になるよね。

化学的には、アルゴン(Ar)は不活性ガスである貴ガスの一つで、原子番号は18。
(ボクは「希ガス」と習ったけど、最近は「貴ガス」というらしい。)
第18族元素と呼ばれるもので、ネオン(Ne)の下、クリプトン(Kr)の上だよね。
この縦のラインは最外殻の電子殻のうちs軌道とp軌道が閉じている(電子がすべて埋まっている)ので、反応性が低く、「不活性ガス」とも呼ばれるのだ。
なので、基本は反応することなく、空気の中で孤高の存在として漂い続けているわけだよ。
でも、それってどこから来たんだって?、というのが疑問になるよね。

その出自も明らかで、こえは地殻中にあるカリウム(K)の放射性同位体であるK40が放射性崩壊することでできるのだ(半減期は12.48億年)。
40は、約9割がベータ崩壊で電子を放出してカルシウム(Ca40)になるのだ。
で、残りの1割が電子捕獲で、原子核中の陽子が最内殻のs軌道から電子を一つ取り込んで中性子になって電子ニュートリノを出すことでAr40になるんだ。
このAr40は安定同位体で、かつ、化学反応もしないので、そのまま空気中に残り続けるわけ。
ということは、ちょっとずつアルゴンの量は増えているのだろうか?
宇宙全体では同じ安定同位体でもAr36が圧倒的に多いみたいだけど、地球や火星のような岩石型惑星の場合、岩石中に多量に含まれるK40からの供給でAr40が増えるみたい。

ちなみに、地球全体の自然放射線としては、このK40の崩壊による寄与が大きいんだって。
エネルギー的にはトリウムやウランのような核燃料に使われる元素の方が大きいのだけど、存在量が半端ないので、これら二つと並んで自然放射線の約1/3を占めているみたい。
カリウムを多く含む鉱物は長石で、中でも、花崗岩は長石を6割ほど含むのでカリウム含有率が高いのだ。
というわけなので、花崗岩は比較的多くの放射線を出しているんだ。
花崗岩は墓石に使われることが多いので、ガイガーカウンターなんかで測ってみると、墓場は少しカウントが高いんだよね。
東日本大震災の後、福島の影響を見る、とか言って街中でガイガーカウンターをもってうろついていた人がいるけど、もれなく墓場付近でカウントが高くなっていたはずなのだ。
ちなみに、かつて(昭和から平成に代わる直前)東京大学病院の敷地内で不法投棄された放射性同位元素が見つかった、という事件があって、そのインパクトから、東京大学キャンパス内を反原発の運動家がガイガーカウンターをもってサーベイしまくったらしいんだよね、
そのとき、ここはカウントが高い、汚染されている、と騒いだ箇所にはやはり花崗岩が大量に使われていたらしいのだ。
バックグラウンドレベルから少し高い程度なんだけど、知ナマコになって探すとそういうことになるのだ・・・。

で、このアルゴンは、化学反応性が低いのでふっ活性ガスとして工業分野で割とよく使われるのだ。
空気から取り出すのも比較的楽で、空気に圧力をかけながら冷却していって液体窒素と液体酸素を作るんだけど、この液体酸素から分留することで得られるんだって。
古いデータだけど、2004年には約40万トン生産されていたというからけっこうすごいよね。
ちなみに、もっとよく見かける貴ガスのヘリウムは、天然ガスと一緒に算出するんだよね。
日本は長らくほぼ全量を米国からの輸入に頼っていたんだけど、米国の生産量が減ってからは供給源の多様化を図っているみたい(生産量が減って「ネズミの国」で風船が販売停止になったこともあったよね・・・。)。

2024/09/14

ハンバーグは、やっぱり食べ物です。

 「飲めるハンバーグ」というキャッチフレーズのお店で食中毒が発生したのだ。
ここのハンバーグは半生というか、中がまだ赤い状態で提供されるんだよね。
で、割るとそこからじゅわっと大量の肉汁があふれ出す、というもののようなのだ。
ボクはひき肉料理は「よく焼き派」なのであまりそそられないんだけど、最近はやりのハンバーグだよね。
有名なのは、大行列もできるという静岡拠点の「さわやか」。
でも、実は「さわやか」のハンバーグはブロック肉を専門の工場で表面を焼いて殺菌してからミンチにし、その場で真空パックして各店舗に短時間で届ける、というスタイルなんだよね。
つまり、可能な限り、肉が最近に汚染されないように細心の注意が払われているのだ。
そこまでしているからこそ「生焼け」で提供できるわけだけど、必ずしも「インスパイア系」はそうではないのかも・・・。

今回の食中毒の原因は腸管出血性大腸菌ことO157とされているよ。
この細菌は通常はほとんど病原性がない大腸菌は、赤痢菌が持つ毒素である志賀毒素(滋賀トキシン)を獲得したことにより、赤痢と同じように腸管内で出血させ、ひどい下痢を起こさせるものなのだ。
いつものことだけど、高齢者は子供は特に危険で、急性腎不全になる場合もあるのだとか。
かなり前だけど、すごい話題になった菌だよね。
それが再びの注目なのだ。

もともとこのO157は、ウシの町内風呂^らに普通にいる菌なんだって。
ウシに対しては病原性がなく、ベロ毒素が悪さをしないため、ウシが無症状キャリアになるのだ。
そんなわけで、牛肉、特に、ホルモンを扱うような場合、O157汚染のリスクは極めて高いのだ。
かつて焼き肉屋でユッケ食中毒が発生して生肉の提供が禁止になったけど、ずさんとは言えないようなものでも、細心の注意を払わないとダメなのだ。
問題になった焼き肉屋の場合はかなりずさんな扱いだったようだけど・・・。
で、先に紹介した「さわやか」の場合、そもそもブロック肉だけをもってきて、細菌に汚染されている可能性がある表面は焼いて滅菌したうえでそこをトリミングしてひき肉にするんだよね。
こうすると、十分に清潔な環境であれば、ひき肉が再起の線される可能性は極めて低いのだ。
それを真空パックにして各店舗に届けるので、あとは、各店舗でまた最新ンお注意を払って取り扱うことになるよ。
焼き肉屋と違って各店舗では内臓系の肉を切ったりもないだろうから、キッチンを清潔に保っていればいのだろうけど。

そういうわけで、やっぱり生に近い肉というのはリスクがあるのだ。
九州ではメジャーな鳥刺しも、鶏の腸管に普通に存在しちぇいるカンピロバクターに汚染されると食中毒になるんだよね。
よほど新鮮なのをきちんと取り扱わないとダメなのだ。
レバ刺しも同じで、まわりで腸管などの別のホルモンを扱っていれば当然汚染のリスクがあるわけで。
ウシの生レバーが禁止された後に豚レバーを出す店もあったけど、そもそもブタは寄生虫がいるので生食はダメなんだよね・・・。
食文化としては、きちんと扱っていれば大丈夫なので発展してきたわけだけど、ずさんなことをする人たちが出てきて食中毒のリスクが看過できなくなったので禁止になるのだ。
でも、フランスなんかはもっと適当に扱ってそうだけど、普通に生肉のタルタルステーキを食べているような。
風呂にもあまり入らないし、普段から不潔だから耐性があるのだろうか?

というわけで、よく火を通しましょう、ということに尽きるんだけど、食中毒の場合、火を通せばよいというものでもないんだよね。
有名なのは翌日のカレーは危険がいっぱいという話。
ジャガイモが入ったカレーを常温保存すると、ウェルシュ菌に汚染されている場合は食中毒を起こすのだ。
また、ちょっと前に話題になった「5日前のパスタを食べたために死亡した事件の通称「チャーハン症候群」。
こっちはセレウス菌が原因。
ウェルシュ菌もセレウス菌も、芽胞を作ることができるんだけど、この芽胞状態だと沸騰させたくらいでは死滅しないのだ。
なので、芽胞状態で耐え忍んで、冷めてきたところで増殖、となると、食中毒につながるんだよね。
常温で長期間放置せず、冷蔵庫に入れた方がいいよ、ということなんだけど、セレウス菌の場合、作り出した毒素も熱に強いので、温めなおしてもその毒素は無効化できないという罠があるのだ。
なので、冷蔵保存する場合は、冷めやすくなるように小分けにして、というのが大事らしいよ。