2007/12/21

イルミネーションも省エネで

クリスマスの時期だけあって、いろんなところで電飾のイルミネーションを見かけるのだ。
でも、最近は米国でも多少省エネ指向になっていて、電球から発光ダイオードのイルミネーションに変わってきているそうだよ。
発光ダイオードだと少ないエネルギーで明るいし、電球より長持ちで、さらに電球のように光っているときにそんなに熱くならないのでメリットが大きいのだ。

発光ダイオードは光るダイオードなわけだけど(笑)、英語でもそのままLight Emission DiodeでLEDと呼ばれるのはこの略だよ。
ダイオード自体はもともと陽極(cathode)と陰極(anode)のある二極真空管のことで、この真空管を使うと電流が一定方向にのみ流せるので、整流素子として使われたのだ。
直流だとまったく問題じゃないけど、交流だと電流の向きが周期的に変わるので、こういう整流素子を通して一方向にだけ電気を流す必要があったのだ。
で、技術が進むと半導体でダイオードが作られるようになり、発光ダイオードはそこからさらに発達したものだよ。

半導体は、電気をよく流す導電体と電気を流さない絶縁体の中間的な存在なのでその名前があるんだけど、周囲の電場や温度で電気を少し流すようになるんだよね。
で、このときに余分な電子(伝導電子)が電気の流れを介在する場合と、電子の不足(正孔)が電気の流れを介在する場合があって、それぞれをn型半導体、p型半導体と呼ぶのだ。
半導体ダイオードはこのp型とn型を接合させた状態になっていて、その接合部は二極真空管のように電気を一方向にのみ流しやすい性質を持っているので、ダイオードとなるとのこと、難しいことはわからないけど(笑)
で、電圧をかけてn型とp型のそれぞれの半導体が電気を流す状態になると、伝導電子と正孔が結合してプラマイゼロの状態になるのだ。
でも、エネルギー保存の法則があるので、このとき電子や正孔の持っていたエネルギーは熱や光として放出されるんだよ。
その光を利用しているのが発光ダイオードというわけ。

半導体レーザーもほぼ同じような原理だけど、レーザーと呼ばれるだけあって単一の波長の電磁波(光)だけが出るのだ
発光ダイオードもある程度出てくる電磁波の波長の範囲は決まっているものの、単一ではないので区別されるんだよね。
発光ダイオードの場合、赤外線領域から紫外線領域までの光を出すことが可能で、携帯電話の赤外線通信やテレビのリモコン、電子機器の発光シグナル、省エネ型の信号、電光掲示板など様々な用途に使われているのだ。
発光するときの波長の違いは半導体の材料によるんだけど、赤い発光ダイオードがかなり初期からあったのに比べて、青色発光ダイオードはずっと開発できずにいたので、その成功は大きなインパクトがあったんだよね。
これは日本人による成果なんだよ!
青色発光ダイオードの登場でいろんな色が重ね合わせで表現できるようになり、発光ダイオードの用途も劇的に広がったというわけ。
光の三原色を混ぜると白色光になるけど、青色発光ダイオードの開発と、それに続いた緑色発光ダイオードの開発で、やっと光の三原色がそろってカラー表示に使えるようになって、その組み合わせで白色発光ダイオードも実現できたのだ。

発光ダイオードの特徴は、電球や蛍光灯と違って不要な紫外線や赤外線などの波長をあまり含まないことがあって、これによって、紫外線に弱いものや熱に弱いものを照らす照明に使えるのだ。
また、消費電力が低くて、しかも長持ちするそうだよ。
半導体の部分は半永久的に使えるんだけど、それにつながる電極の部分が劣化するのが使用できなくなる原因だというくらい長持ちなのだ。
しかも、構造が簡単で安価に大量生産が可能だったり、電球のようにフィラメントを使わないし、蛍光灯のようにガラス管も使わないので、衝撃に強くて丈夫で、故障も少ないそうだよ。
こうやって聞くとメリットばかりだよね。

でも、電球と違って、流す電流を2倍にしたからといって2倍の明るさにはならないとか、逆方向に電流を流すと光らないばかりか壊れる可能性があるとか、静電気に弱いなどの特徴もあるんだって。
通常使われている小さい発光ダイオードではほとんど発熱は問題ないんだけど、高出力の明るい発光ダイオードでは熱もかなり出るので、きちんと放熱対策をしなくちゃいけないそうだよ。
とは言え、将来の照明器具として大きく注目されているんだよね。
そのうちイルミネーションだけでなく、室内の照明も発光ダイオードになる日が来るのかな?

2007/12/20

どてらいやつら

寒いとこたつが恋しくなるよね。
ボクは日本にいたときはどてらを着てこたつに潜り込んでいたものなのだ。
でも、米国に来てからはそうするわけにもいかないので、毛布をかぶっているんだよね(>_<)
どてらのようなちょうどよい部屋着があまりないのだ。

どてらは丹前の別名で、綿の入った和式の上着なのだ。
そのむかしは、布と布の間に綿を入れた「綿入れ」を着ていたものだけど、その一種だよ。
どてらは上から羽織って切るけど、袖が広くなっているので、中に手を入れておくこともできるんだよね。
もともとは旗本に仕える若い使用人の「奴(やっこ)」が着ていて、それが広まったんだって。

実はこれ、もともとは遊女の勝山さんという人の衣装から着ているようなのだ。
この勝山さんは遊女になる前は丹前風呂と呼ばれる売春宿も兼ねた湯屋で湯女をしていたので、「丹前」と呼ばれるようになったとか。
で、美人揃いの丹前風呂には奴がよく出入りしていて、それで奴の間に広まったみたいだよ。
この奴連中はいわゆるカブキもので、派手な格好が好きだったので「丹前=どてら」も派手な柄が定番となったのだ。

で、この綿入れがあたたかい理由だけど、それはふわふわの綿に秘密があるのだ。
綿が入るとそれだけふくらんで間に空気が入るわけだけど、この空気は布とかに比べて熱伝導率が悪いのだ。
つまり、熱が伝わりにくいので、内側からは熱が逃げにくいし、外側からは外気の冷たさが浸透しにくいというわけ。
これはダウンジャケットや毛皮でも基本的には同じで、空気を間にはさむことで断熱効果が期待できるのだ。
お布団があたたかいのもまったく同じ理由だよね。
毛糸のセーターなんかは普通の布に比べる編み目が大きくて風が通りそうな気もするけど、この空気の断熱効果のおかげであたたかいというわけなのだ。

空気の断熱効果を使っているのは、プチプチこと気泡緩衝材も同じなのだ。
これは空気の入った小さな「プチプチ」をシート状に並べてあって、衝撃吸収剤材としても使われるけど、別名で断熱シートとも呼ばれるように、窓なんかにはると冷気を遮断するのだ。
これも空気が熱を伝えにくいからだよ。
ホームレスの人が段ボールで家を作るのもこれと同じ理由で、やっぱり間に空気が入っているので段ボールはかなり外気の冷たさを遮断できるのだ。
空気の力は偉大なんだね。

2007/12/19

なんでも包めるよ

最近はスーパーなんかに自分で買い物袋を持っていくと、割引になったりするんだよね。
一時期はレジ袋をもらうとお金がかかるシステムだったけど、それが不評なので逆になったのだ。
はじめからレジ袋の値段を上乗せしておけば同じなんだけど。
「割引になる」と聞いた方が俄然やる気になるんだよね。
まく消費者の心理を利用しているのだ。

そんなエコ思考で見直されつつあるのが日本古来の風呂敷。
なぜか海外で評価が高まっていて、やっぱり「furoshiki」と呼ばれているそうだよ(今はむしろ外国の人が利用を広めているんだよね。)。
日本では明治期に西洋からかばんやリュックが入ってきてふろしきはほとんど見られなくなったけど、また海外でこういう動きがあるときっと逆輸入されるんだよね(笑)
人気の理由は、使わないときは小さく折りたためて軽量、包むときは形状や大きさにかかわらず自由に包める、という柔軟性なんだって。
たしかにそういわれてみると便利だよね。
日本で長く使われてきたのにもそれなりに理由があるのだ。

起源は定かではないんだけど、すでに東大寺の正倉院にそれらしき所蔵品があるとか。
風呂敷は衣包(ころもつつみ)や平包(ひらつつみ)と呼ばれていたんだって。
室町時代になると、大名がその上で衣服を着替えるようになったので風呂敷と呼ばれるようになったと言われているのだ。
このころはまだ蒸し風呂で、お風呂は裸じゃなくて浴衣のようなものを来てはいっていたのだ。
で、でるときに風呂敷の上で着替え、濡れた衣服は風呂敷に入れて持って帰ったのだ。
こうして風呂場に強いて使う布がものを持ち運ぶための布にもなったのだ。

江戸時代になると庶民の間にも風呂に入る文化が普及していくんだけど(このころはもう今と変わらない湯船のあるお風呂だよ。)、元禄時代には銭湯に風呂敷包みを持っていく習慣が生まれていたとか。
着替えと風呂用具一式を包んで持っていったのだ。
そうんると、平包という呼び方から風呂敷包み、風呂敷と呼ばれることが多くなって、風呂敷が一般名称になったみたい。
こうして風呂敷は広まっていくのだけど、銭湯に持っていくだけでなく、広くものを包んで持ち運ぶための布として活躍することになるのだ。

風呂敷はむかしから一反の布を無駄なく使って作られてて、この一反というのは幅が35cm~40cm、長さが約12mなのだ。
で、これを等分に切って縫製するので、正方形にはならずに多少縦と横の長さが違うそうなのだ。
風呂敷というと正方形のイメージだったけど、微妙に長方形なんだねぇ。
でも、織機で織った一反の布をそのまま無駄なく使うというところもなんだかエコロジーな感じがするね(笑)
今は機械織りで任意の大きさの布が作れるから正確な正方形なのかもしれないけど。

大きさもいろいろあって、一反の布を等分に切ったものをいくつつなげるかで変わってくるのだ。
大風呂敷なんて言葉もあるけど、最大だと畳二畳分もあるようなものまであるそうだよ。
普通に贈答品なんかを包むのは中幅と呼ばれる約45cm四方のものや、二四幅と呼ばれる約90cm四方のものだよね(ちなみに、一番よく使われるこれらの風呂敷はさっきの等分に切った一反の布の整数倍になっていないのだ!使いやすい大きさにした、ということなんだろうね。)。
引っ越しや旅支度にはもっと大きなものを使っていたみたい。
今はもうほとんど風呂敷が使われなくなったからそんなに種類はないんだろうね。
でも、なんだか風呂敷についてちょっと調べたらボクも使ってみたくなったよ。
エコバッグの変わりに風呂敷を持ち歩くというのもおしゃれかもよ(笑)

2007/12/18

タイガー・ボックス

そろそろ忘年会の時期だよね。
この時期には街で酔っぱらいをよく見かけるけど、むかしのように千鳥足でふらふらしている人は見かけないし、ましてや、酔いつぶれて道に倒れている人なんてまず見かけなくなったのだ。
お酒自体の消費量は増えているようだけど、飲み方が変わってきて、酔いつぶれるまで飲むことが少なくなったんだろうね。

この流れを受けて、警視庁では「トラ箱」を廃止することにしたらしいのだ。
トラ箱というのは泥酔者保護所のことで、全国でも警視庁のみが設置していて泥酔者保護専用の施設だったんだって。
麻布や六本木に近い鳥居坂と、浅草・吉原に近い日本堤に設置されてから、三鷹と早稲田にも設置され、4ヶ所あるそうだよ。
各警察署にも泥酔者などを保護する保護室というのがあるんだけど、かつては忘年会の時期ともなるとすぐにその保護室は埋まってしまったので、専用の施設が必要だったそうなのだ。
でも、最近はさっぱり使われなくなったので、各警察署の保護室だけで十分だろうと言うことで廃止されるわけ。
最盛期は年間で1万3千人も保護していたらしいけど、1日あたり数十人も保護していたことになるよね。

で、酔っぱらいのことを「トラ」、手に負えないような酔っぱらいを「大トラ」ということから「トラ箱」と呼ばれるようになったんだよね。
酔っぱらいを「トラ」と呼ぶのは、公家言葉でお酒のことを「ささ」と言うので、それとの取り合わせで「トラ」と呼ぶようになったとか。
暴れるところなんかもなかなか言い得て妙だよね(笑)
「ささ」はもともと女房詞(にょうぼうことば)と言われていて、「さけ」の最初の時を重ねて言った、とか、中国でお酒のことを「竹葉」と言うからとか、いろいろ説があるみたい。

酔っぱらいの足下がおぼつかない歩き方を千鳥足と言うけど、これはチドリが歩いている姿が無目的にふらふらしているように見えるからなんだとか。
もともとは砂地の上にいる虫を捕らえるときに、一見無関係な動きをしていると見せかけて油断させ、急襲するという高等テクニックなんだそうだよ。
まさに酔拳、Drunk Monkeyの世界なのだ!
酔っぱらって顔が赤い人は「猩々(しょうじょう)」と呼ばれるんだよね。
猩々は伝説上のヒヒだけど、顔が真っ赤なのでそう呼ばれるのだ。
お酒を好む性質があるというのも決め手なんだよね。

いずれにせよ、日本はこういう言葉遊びが好きなんだよね。
今では意味がわからなくなってしまったことも多いけど、こういうセンスはいいと思うんだよね。
トラ箱はなくなってしまうけど、文化としてのこういう言葉遊びは残していきたいものなのだ。

2007/12/17

飛ばす力

今日は国立航空宇宙博物館(National Air and Space)で米国の航空産業の歴史を展示した「American by Air」という展示を見てきたのだ。

そこでは、50年代から60年代にかけてプロペラのレシプロ・エンジンからジェット・エンジンに切り替わって、航空産業が大きく変わったことが説明されていたんだよね。
この博物館は宇宙も扱っているので、当然近くにはロケット・エンジンもあるんだよね。
で、今回は、この3つの空を飛ぶためのエンジンについて少し調べてみたのだ。

プロペラを回すレシプロ・エンジンはピストン・エンジンとも呼ばれるもので、燃料を燃焼させた熱エネルギーをピストンの上下の運動に変換し、それをまた回転運動に変換するものなのだ。
ピストンの原理自体は一番最初の蒸気機関とまったく同じで、燃料と空気を混ぜて燃焼させて、そのときの熱エネルギーでピストンを動かすのだ。
蒸汽機関ではシリンダーの中に入っているのが水蒸気で、石炭などの燃料を燃焼させた熱で水を蒸発させ、でてきた蒸気でピストンを動かすんだよね。
レシプロ・エンジンの場合は、燃料と空気を適当な混合比で圧縮してシリンダーの中で燃焼させ、そのときの爆発力でシリンダーを動かすのだ。
その後排気するとまたシリンダーはもとの状態にもどるので、往復運動となるわけ。

はじめの蒸気機関はひとつのシリンダーの往復運動をカムをかませて回転運動に変換していたんだよね。
航空機のプロペラの場合は、複数のシリンダーは輪状に並列に並んでいて、うまくタイミングをずらしてピストンを動かすことで往復運動を回転運動に変えているのだ。
シリンダーの数(サイクル数)が多いほど出力は大きくなって馬力も上がるのだ。
サイクル数が大きくなると燃料の噴射や着火のタイミングの制御が難しいんだけどね。
ちなみに、往復運動を回転運動に変換するときは、そのままだと右回りか左回りかはランダムなので、プロペラ機ははじめに回したい方向に回して、そっちの向きの回転運動に変換するようにしなくてはいけないのだ。
初期のプロペラ機でエンジンをかけるときにプロペラを手動で回すのはこのためだよ。

ジェット・エンジンの場合は、燃料を燃焼させたときの爆発の熱エネルギーによる膨張をそのまま後方に噴射することで推力を得るのだ。
プロペラ機のプロペラには角度がついていて、それがスクリューが水中の水をかき回すように空気をかき回し、流れを作って前に進むんだよね。
でも、ジェット推進の場合は作用反作用の力で、押し出したときの運動量と同じだけの大きさで逆方向の運動量が押し出した方に発生するので、それで前に進むのだ。

ジェット・エンジンでは前方から空気を取り込み、これを圧縮して燃料と混ぜ、燃焼させるのだ。
そうすると大きな熱エネルギーと排気が発生するんだけど、熱エネルギーで排気はもとの空気よりはるかに大きな体積に膨張していて、これを後方に押し出してジェット推進に変換するのだ。
そのまま出してしまうと噴出口からいろんな方向に排気が出てしまって効率が悪いので、排気を回転するタービンの中を通して排気するのだ。
タービンには角度を漬けてタービン・ブレードという歯がたくさんついていて、ここを通ることで歯に斜めに力がかかって、それが回転エネルギーに変換されるんだ。
すると、排気は回転しながらまっすぐと後方に噴射されるので効率がよくなるんだよね。
さらに、このタービンの回転エネルギーを使って空気を前方から取り込んで圧縮できるのだ。
航空機のジェット・エンジンの前方にはファンがついているけど、このファンを回して空気を圧縮しているというわけなのだ。

ガスタービンのジェット・エンジンと火力発電に使うガスタービンは基本的に同じで、ジェット・エンジンは排気を後ろに押し出して推進力にしているけど、発電機の場合は他便の回転エネルギーを電気に変換しているのだ(火力発電の場合は、古葉インド・サイクルと言って、排気の熱で蒸気タービンを回して電気を作る方法もあるのだ。)。
どちらにしても、排気の温度が高ければ高いほど排気量は増えるので(機体は温度が高ければ高いほど体積が大きくなるのだ。)、高温で排気するのが理想的なんだよね。
でも、あんまり高温すぎるとガスタービンがとろけてしまうので、ギリギリの温度にする必要があるのだ。
タービン用の耐熱材料の開発がジェット・エンジンの効率に大きく影響するんだよ。

ロケット・エンジンもジェット・エンジンと同じように作用反作用で前に進むんだけど、最大の違いは空気を取り込まないことなのだ。
ロケット・エンジンは宇宙空間のような大気のないところでも飛べるように、あらかじめ燃料とともに酸化剤(液体酸素などだよ。)を一緒に積んでいて、それを混ぜて燃焼させるのだ。
なので、空気を取り込まなくても燃料が燃やせるわけ。
液体ロケットだと燃料(液体水素、ケロシン、ヒドラジンなど)と液体酸素を混ぜて燃焼させるんだけど、固体ロケットの場合は酸素がなくても燃える火薬を使っていて、それをのりのようにかためてあるのだ。
花火は水中でも燃えるけど、これは火薬の中に酸化剤が入っているからで、それと同じようなもの。
まさに大きなロケット花火なのだ。

で、ジェット・エンジンだとタービンを回転させることでジェット噴射の方向をまっすぐにするけど、ロケットの場合はノズルの部分でこれを調節しているのだ。
ノズルの壁面に沿って噴射されるんだけど、まさにこのノズルの形状が方向性の制御に重要なんだよね。
でも、このロケット・エンジンの燃焼はとても高温なので、そのままではノズルが溶けてしまうのだ。
もともとノズルを肉厚にしておいて、ノズルの内面が溶けていくときの気化熱で冷却するのがアブレーション方式といって、もっとも原始的な方法なのだ。
日本や米国のロケットでは再生冷却式というのが使われていて、燃料に極低温の液体水素や液体水素を使っているので、これをノズルの近くに通して上げることでノズルを冷却するのだ。
燃料室も高温になるんだけど、やっぱり極低温の燃料自体で冷却していて、冷却剤として使っていた液体水素や液体酸素などの推進剤を燃料として再利用されるから再生冷却方式と言うのだ。
冷やしたい部分の表面に薄い推進剤の流れを作って覆ってあげて冷却する方式もあって、これはフィルム冷却方式と呼ばれるのだ。

2007/12/16

クリスマスの花?

クリスマスの花と言えば、まさにクリスマスのころに咲くクリスマスローズもあるけど、やっぱりポインセチアだよね。
赤と緑のコントラストでクリスマスカラーなのでよくこの時期に見かけるのだ。
リースに使うセイヨウヒイラギやツリーにするドイツトウヒやモミと違って、色合いだけでクリスマスにかざられているようだけどね(笑)

ポインセチアはもともと中央アメリカのメキシコのあたりが原産の植物で、名前は米国の初代メキシコ公使だったJ・R・ポインセットさんにちなむんだって。
メキシコでは「ノーチェ・ブエナ(聖夜)」という名前で呼ばれるらしいよ。
日本ではその赤さから「猩々木(しょうじょうぼく)」と言うそうなのだ。
猩々は赤い顔をしたサルのような妖怪で(オランウータンはこの妖怪に似ているので和名でショウジョウというのだ。)、大酒飲みで顔が赤くなった人も猩々と呼ばれるんだよね。
メキシコ原産なので実は寒さに弱い植物で、本当はクリスマスに向いていないのだ(>_<)
基本的には室内でかざるからいいんだろうけど、乾燥にも弱いらしいので、暖房にも注意しないと葉が落ちてしまうんだって。

アステカの人たちはすでにポインセチアを栽培していて、その鮮明な赤い色を純潔の象徴として愛していたらしいよ。
でも、その美しさを愛でるだけでなく、赤い葉を染料にしたり、白い樹液を解熱剤に使ったりもしたそうなのだ。
17世紀にフランシスコ修道会の宣教師が、クリスマスのころに赤く色づくポインセチアを聖Pesebreの誕生祭の行列に使うようになって、それがメキシコ中に広まったんだって。
それがいつの間にか名前の由来になったポインセット氏が米国に送って、一気に欧米世界に広がることになったみたい。

でも、植物としての生命力はなかなかで、増やすときは水を張った容器や土に挿し木をすると生えてくるんだって。
挿し木のコツは、切り口から出てくる乳白色の樹液をよく拭き取ることで、これをしないとうまく根が出てこないそうだよ。
もともとあたたかい地方の植物なので、あたたかい次期にやればだいたい成功するみたい。
うまくやれば、1回買うだけで毎年楽しめるようになるし、なおかつ増やせるような植物みたいだよ。

ポインセチアの花に見えているのは色のついた葉っぱで、本当の花はその先についているちょぼちょぼっとした部分なのだ。
杯状花序というやつで、ほんとんどおしべとめしべだけの状態の花で、花びらなんかはないのだ。
そんな花なので、挿し木で増やすのが一般的なようなのだ。
ポインセチアと言えば赤いイメージだけど、今では品種改良が進んでいて、園芸品種では乳白色や、黄色、ピンク、まだら入りなどいろいろあるようなのだ。

で、花が咲くとそのすぐ下の葉っぱが色づくんだけど、そのまま放っておいてもうまく色づかないらしいのだ。
ポインセチアは短日植物というやつで、日の当たる時間が12時間をきらないと花を咲かせないで、いつまでも緑色のままなんだって。
なので、うまく日の当たる時間を調節して、葉っぱをきれいに色づかせることが必要なのだ。
これは短日処理と言って、昼間はしっかりと日に当てさせるんだけど、夕方から次の日の朝までは段ボールなどをかぶせて日光を遮断するのだ。
これを40日くらい続けると売っているようなきれいな色になるらしいよ。
なかなか根気がいるものなんだね。

2007/12/15

人形から人へ

ふと気づいたらもう赤穂浪士の討ち入りの日だねぇ。
いよいよ年も押し迫ってきたのだ。
この時期になるとテレビでよく忠臣蔵をやっているけど、このもとは「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」というお話で、赤穂浪士の討ち入り事件を題材にしているんだけど、当時はその事件をそのまま脚本にすると幕府に取り締まられるので、脚本上は太平記の「塩冶判官讒死(えんやはうがんざんし)の事」に移していて、むかしの話ということにしてごまかしているんだよ。
これは伊達騒動を題材にした「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」なんかでもそのままではまずいので、設定を変えて脚本化しているのだ。

※ちなみに、「仮名手本」の仮名は47文字の仮名で赤穂浪士四十七士をあらわすとともに、「いろはにほへと ちりぬるをわか よたれそつねな らむうゐのおく やまけふこえて あさきゆめみし ゑひもせす」と7・7・7・7・7・7・5でいろは歌を切って最後の文字を並べると「とかなくてしす=咎(とが)なくて死す」となって、「罪もないのに死んだ」という浅野内匠頭の悲劇をも表しているんだよ。それと、「忠臣蔵」は蔵いっぱいの忠臣という意味もあるけど、忠臣の蔵(=大石内蔵助)という意味もあるんだよね。

で、実は、この「仮名手本忠臣蔵」も「伽羅先代萩」も、もともとは人形浄瑠璃の台本として書かれてて、それが後に歌舞伎の演目になっているんだよね。
人形浄瑠璃の三大名作として、「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」、「義経千本桜」とこの「仮名手本忠臣蔵」があるんだけど、どれも全部歌舞伎に取り入れられていて、しかも、歌舞伎の中でも有名な演目になっているよね。
人形浄瑠璃は人形なのでかなりアクロバティックな殺陣や早変わりなんかもできるんだけど、歌舞伎でも花道を使って舞台の左右だけじゃなく前後の広がりを使ったり、奈落やセリを使って殺陣の動きを入れたり、早変わりやとんぼ返りなんかも入れてかなり立体的に動くようになっているのだ。
でも、さすがに実現できないところとかもあるし、歌舞伎になってからまた独自に発展したので、少し脚本に食い違いがあったりするようだよ。
それと、人形浄瑠璃では義太夫がナレーションできるけど、歌舞伎はそうはいかないので登場人物が説明的な台詞を話さざるを得ないのだ。
こうして人形浄瑠璃から歌舞伎になったものを通称「丸本物(まるほんもの)」というそうなのだ(人形浄瑠璃の脚本を省略せずに収めた本を「丸本」と言っていたことに由来するそうだよ。)。
「義太夫狂言(ぎだゆうきょうげん)」とも言うそうだよ(はじめから歌舞伎の脚本として書かれたものは「純歌舞伎狂言」というそうなのだ。)。

教科書なんかにも出てくる近松門左衛門さんはもともと人形浄瑠璃の脚本を書いていて、それが翻案されて歌舞伎にもなっているのだ。
江戸では、福内鬼外(ふくうちきがい)こと平賀源内さんが人形浄瑠璃の脚本を書き始めて、それが江戸浄瑠璃の走りになり、歌舞伎にもなっているよ。
代表作は「神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし)」なんかだよ。
これは東急多摩川線の武蔵新田駅近くにある新田神社にまつられている新田義興(よしおき)さんの話で、この人は多摩川にあった矢口の渡しで謀殺されてしまうんだけど、その例が怨霊となって祟るというストーリーなのだ(この霊を鎮めるために建てられたのが新田神社で、神社の裏には義興さんをまつった塚もあるよ。)。

人形浄瑠璃の文楽も歌舞伎も今は伝統芸能としてなんだか敷居が高いようだけど、江戸時代には庶民の娯楽だったんだよね。
なので、その時代時代の事件を取り込むものがやっぱり人気で、「仮名手本忠臣蔵」や「先代伽羅萩」なんかはワイドショー的なものでもあったのだ。
まずは人形浄瑠璃で始まって、それが歌舞伎になるという流れは、今でいうマンガ・アニメからドラマへ、テレビから映画へといった流れと似たようなものなのかも。
人気のある演目はいろんなところに広がっていくということなのだ。
でも、江戸時代も後半になると歌舞伎の方が人気が出てしまって、人形浄瑠璃を演じる劇場は少なくなっていって、文楽座だけが唯一残った専用の劇場となったので、文楽が人形浄瑠璃の代名詞になったらしいのだ。

今では文楽は大阪の国立文楽劇場がホームグラウンドで、ときどき東京の国立劇場にも来るんだよね。
でも、東京にいるとほとんど見る機会がないのだ。
歌舞伎なんかは江戸歌舞伎も上方歌舞伎も両方あるんだけどね。
ボクはけっこう人形浄瑠璃には興味があって見てみたいんだけど、まだ機会がないんだよね。
できれば、歌舞伎と同じ演目を見比べてみたいものなのだ。