飛ばす力
今日は国立航空宇宙博物館(National Air and Space)で米国の航空産業の歴史を展示した「American by Air」という展示を見てきたのだ。
そこでは、50年代から60年代にかけてプロペラのレシプロ・エンジンからジェット・エンジンに切り替わって、航空産業が大きく変わったことが説明されていたんだよね。
この博物館は宇宙も扱っているので、当然近くにはロケット・エンジンもあるんだよね。
で、今回は、この3つの空を飛ぶためのエンジンについて少し調べてみたのだ。
プロペラを回すレシプロ・エンジンはピストン・エンジンとも呼ばれるもので、燃料を燃焼させた熱エネルギーをピストンの上下の運動に変換し、それをまた回転運動に変換するものなのだ。
ピストンの原理自体は一番最初の蒸気機関とまったく同じで、燃料と空気を混ぜて燃焼させて、そのときの熱エネルギーでピストンを動かすのだ。
蒸汽機関ではシリンダーの中に入っているのが水蒸気で、石炭などの燃料を燃焼させた熱で水を蒸発させ、でてきた蒸気でピストンを動かすんだよね。
レシプロ・エンジンの場合は、燃料と空気を適当な混合比で圧縮してシリンダーの中で燃焼させ、そのときの爆発力でシリンダーを動かすのだ。
その後排気するとまたシリンダーはもとの状態にもどるので、往復運動となるわけ。
はじめの蒸気機関はひとつのシリンダーの往復運動をカムをかませて回転運動に変換していたんだよね。
航空機のプロペラの場合は、複数のシリンダーは輪状に並列に並んでいて、うまくタイミングをずらしてピストンを動かすことで往復運動を回転運動に変えているのだ。
シリンダーの数(サイクル数)が多いほど出力は大きくなって馬力も上がるのだ。
サイクル数が大きくなると燃料の噴射や着火のタイミングの制御が難しいんだけどね。
ちなみに、往復運動を回転運動に変換するときは、そのままだと右回りか左回りかはランダムなので、プロペラ機ははじめに回したい方向に回して、そっちの向きの回転運動に変換するようにしなくてはいけないのだ。
初期のプロペラ機でエンジンをかけるときにプロペラを手動で回すのはこのためだよ。
ジェット・エンジンの場合は、燃料を燃焼させたときの爆発の熱エネルギーによる膨張をそのまま後方に噴射することで推力を得るのだ。
プロペラ機のプロペラには角度がついていて、それがスクリューが水中の水をかき回すように空気をかき回し、流れを作って前に進むんだよね。
でも、ジェット推進の場合は作用反作用の力で、押し出したときの運動量と同じだけの大きさで逆方向の運動量が押し出した方に発生するので、それで前に進むのだ。
ジェット・エンジンでは前方から空気を取り込み、これを圧縮して燃料と混ぜ、燃焼させるのだ。
そうすると大きな熱エネルギーと排気が発生するんだけど、熱エネルギーで排気はもとの空気よりはるかに大きな体積に膨張していて、これを後方に押し出してジェット推進に変換するのだ。
そのまま出してしまうと噴出口からいろんな方向に排気が出てしまって効率が悪いので、排気を回転するタービンの中を通して排気するのだ。
タービンには角度を漬けてタービン・ブレードという歯がたくさんついていて、ここを通ることで歯に斜めに力がかかって、それが回転エネルギーに変換されるんだ。
すると、排気は回転しながらまっすぐと後方に噴射されるので効率がよくなるんだよね。
さらに、このタービンの回転エネルギーを使って空気を前方から取り込んで圧縮できるのだ。
航空機のジェット・エンジンの前方にはファンがついているけど、このファンを回して空気を圧縮しているというわけなのだ。
ガスタービンのジェット・エンジンと火力発電に使うガスタービンは基本的に同じで、ジェット・エンジンは排気を後ろに押し出して推進力にしているけど、発電機の場合は他便の回転エネルギーを電気に変換しているのだ(火力発電の場合は、古葉インド・サイクルと言って、排気の熱で蒸気タービンを回して電気を作る方法もあるのだ。)。
どちらにしても、排気の温度が高ければ高いほど排気量は増えるので(機体は温度が高ければ高いほど体積が大きくなるのだ。)、高温で排気するのが理想的なんだよね。
でも、あんまり高温すぎるとガスタービンがとろけてしまうので、ギリギリの温度にする必要があるのだ。
タービン用の耐熱材料の開発がジェット・エンジンの効率に大きく影響するんだよ。
ロケット・エンジンもジェット・エンジンと同じように作用反作用で前に進むんだけど、最大の違いは空気を取り込まないことなのだ。
ロケット・エンジンは宇宙空間のような大気のないところでも飛べるように、あらかじめ燃料とともに酸化剤(液体酸素などだよ。)を一緒に積んでいて、それを混ぜて燃焼させるのだ。
なので、空気を取り込まなくても燃料が燃やせるわけ。
液体ロケットだと燃料(液体水素、ケロシン、ヒドラジンなど)と液体酸素を混ぜて燃焼させるんだけど、固体ロケットの場合は酸素がなくても燃える火薬を使っていて、それをのりのようにかためてあるのだ。
花火は水中でも燃えるけど、これは火薬の中に酸化剤が入っているからで、それと同じようなもの。
まさに大きなロケット花火なのだ。
で、ジェット・エンジンだとタービンを回転させることでジェット噴射の方向をまっすぐにするけど、ロケットの場合はノズルの部分でこれを調節しているのだ。
ノズルの壁面に沿って噴射されるんだけど、まさにこのノズルの形状が方向性の制御に重要なんだよね。
でも、このロケット・エンジンの燃焼はとても高温なので、そのままではノズルが溶けてしまうのだ。
もともとノズルを肉厚にしておいて、ノズルの内面が溶けていくときの気化熱で冷却するのがアブレーション方式といって、もっとも原始的な方法なのだ。
日本や米国のロケットでは再生冷却式というのが使われていて、燃料に極低温の液体水素や液体水素を使っているので、これをノズルの近くに通して上げることでノズルを冷却するのだ。
燃料室も高温になるんだけど、やっぱり極低温の燃料自体で冷却していて、冷却剤として使っていた液体水素や液体酸素などの推進剤を燃料として再利用されるから再生冷却方式と言うのだ。
冷やしたい部分の表面に薄い推進剤の流れを作って覆ってあげて冷却する方式もあって、これはフィルム冷却方式と呼ばれるのだ。
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