2019/03/02

要不要

食べ物の話は身近であるだけによく議論になるよね。
おでんはおかずになるか否か。
ラーメン・ライスはありかなしか。
きのこかたけのこか。
そして、カレーにジャガイモは必要か不要か。

歴史的に言えば、日本の国民食としてのカレーには、肉に、ニンジン、ジャガイモ、タマネギの三種の神器の野菜が入ったものがスタンダードのようなのだ。
そもそも市販のカレールーの箱の裏の「作り方」にそう書いてあるしね。
これは、カレーライスが普及した背景にも関係しているのだ。

カレー自体は明治の頃に英国から伝わったんだよね。
インドのカレーが英国式になって、それが輸入された感じ。
仮名垣魯文の「西洋料理通」におけるレシピでは、肉と長ネギとなっていた模様。
当時入ってきた英国式カレーは、肉にカレー味のソースをかける的な料理とカレー味の肉の煮込み料理の間の料理だったようで、日本では、カレー味の肉入りの汁物料理になっていたようなんだよね。
おそらく、長ネギは肉のくさみ消し。
そもそも、明治の初めの頃はジャガイモやタマネギのような西洋野菜はまだ一般的ではなかったのだ!

北大の前身である札幌農学校では、「少年よ大志を抱け」のクラーク博士が学生に米繁殖を禁止し、唯一カレーライスの時のみ米食を認めた、なんて話があるんだよね。
当時の日本人の体躯は今以上に小さく、それは米食を中心とする和食のせいだと考えられていたので、学寮での食事はパンによる洋食が基本とされていたのは事実のようなのだ。
クラーク博士が本当に米食を禁じたかどうかは別として。
でも、その中でカレーだけが例外になったのは、肉と野菜が同時に効率的に摂れる食事と見なされていたからのようなんだよね。
そして、その札幌農学校があった北海道の地では、気候が米国北部と似ていることもあって、学寮での洋食に使う西洋野菜が栽培されていたのだ!
そこで収穫されたタマネギやジャガイモがカレーにも使われたんじゃないかと考えられているよ。
こうして、タマネギやジャガイモが入ったカレーが生まれるのだ。

肉と野菜が同時に効率的に摂れる、という同じ理由でカレーは軍隊の食事としても奨励されるんだよね。
最初は海軍。
その際、長持ちするニンジンやタマネギ、ジャガイモといった野菜は使い勝手が良く、必然的にそれを使ったカレーがスタンダードになるのだ。
タマネギと豚肉の組み合わせはビタミンB1が大量に摂取できるので、海洋上の難敵「脚気」にも対抗できるというメリットもあったよ。
海軍のレシピでは、三種の神器の野菜が入るものになっているのだ。

海軍従軍者が家庭に「肉じゃが」を持ち帰ったという話もあるけど、カレーの場合は第二次大戦の引揚げ軍人が家庭料理に持ち帰ったと言われているんだよね。
なにしろ、そのときは陸軍従軍者の方がはるかに多いから。
すでに洋食屋ではライスカレーは定番になっているけど、それはあくまでも、「外食で食べる料理」。
これが家庭の味になるのは、やはり戦後なのだ。

陸軍でも現場で大量に作れ、栄養的に優れているカレーは重要な位置づけで、けっこう食べられたみたい。
今の自衛隊の炊き出しもカレーだよね。
そして、多少くさい肉(現地で調達した動物、場合によってはヘビやカエルなど)でも食べられるのが大きいのだ。
くさみをとるのは非常に重要で、自衛隊もレンジャー部隊必携の調味料はカレー粉だそうだよ。
そこに保存がきく野菜のニンジン、タマネギ、ジャガイモ。

この陸軍レシピが家庭に入り、カレーが一般家庭でも食べられるようになるのだ。
さらに、カレー粉と炒めた小麦粉を混ぜるのではなく、溶かすだけでいいルウが市販されるようになると、一気に簡単に作れる料理として普及するよ。
この後更にレトルトで手軽に、という大きな波も来るんだよね。
学校給食でも古米を消費するために米飯食が導入されると、まず最初に出されたメニューはカレーライスなのだ。
こうして、明治から昭和にかけ、カレーは家庭料理に入り込んでいくわけ。
で、普及したときは、ジャガイモ入りだったので、やはりそれがスタンダードなのだ。

一方で、本格派カレーとか言って、肉とタマネギだけの欧風カレーとか、新宿中村屋の本格インド式カレー、さらには、インド人・スリランカ人・ネパール人によるインド料理店の出現など、さまざまなカレーが食べられるようになってくるんだよね。
ジャガイモ入りのインドカレー(例えば、ジャガイモとナスの入った「アルベイガン」など)もあるので、ジャガイモがカレーの具材として変だという話ではないんだけど、外食カレーの場合、ジャガイモを入れるとどうしても傷みが早くなるので、避けられる傾向にあるのだ。
「外食の本格カレーにはジャガイモが入っていないから、ジャガイモが入らないのが正解」というのはそこが逆転した言説だよ。
一方で、神田の名店ボンディのように、蒸したジャガイモが別に出てくるような店もあるし、銀座の名店ナイルカレーのように、後でマッシュポテトを混ぜて食べるものもあるので、やはりジャガイモの甘さはカレーの辛みと合うものだと思うのだ。
ボクはコロッケも載せたいくらいで、カレーにはジャガイモが入っていてほしいね。

2019/02/23

○○は突然に

なんか流行り物があって、それによくわからずのってしまう人を「にわか」とか言って馬鹿にする風潮があるよね。
でも、かつてのサッカーのように、ライト層であってもそうやって裾野が広がっていくと全体のレベルが上がることもあるから、軽視はできないのだ。
そもそもが流行り物であって、そういう人がいるから流行ったんだろうけど、昔からそのことに関心を持っているそうにすれば、「ぽっと出の素人が!」という思いがあるのかもね。
で、まさにその「ぽっと出」というところが「にわか」なんだよね。

「にわか」、形容動詞では「にわかだ(古語は「にわかなり)」の本来的な意味は、
(1)物事が急に起こるさま、だしぬけ、突然
(2)かりそめであるさま、臨時的、一時的
(3)病態が急変するさま
の3つ。
(1)の「突然」という意味が前面に出ているのが「にわか雨」だよね。
この流れで、即興で突然始まる芝居を「にわか芝居」と呼んでいて、多くは素人の人が祭礼の場などで突然始めるものだったので、「にわか」には素人による即興芸のニュアンスが加わったようなのだ。

一方(2)にあるように、「かりそめ」という意味もあって、一時的なものであって本来のものではない、的なニュアンスもある言葉。
これが「にわかファン」といった言葉につながっていくのだ。
「にわか仕込み」という言葉は「付け焼き刃」とほぼ同意だけど、「その場しのぎでかりそめに仕込んだ」というネガティブな意味を持っているんだよね。
で、この二つのニュアンスが合わさると、「素人」+「かりそめ」となって、現代のネットでよく見られる罵倒語の意味につながっていくようなのだ。
考えてみると意外とちゃんとした流れがあるものだ。

現代での「にわか」は、「にわかブーム」のような使い方だと、「かりそめ」の「一時的」な「ブーム」という意味もあるけど、むしろ「突然降ってわいた」といったニュアンスもあるよね。
本来の「ブーム」というのはそういうものでしかないような気もするけど・・・。
少しだけ否定的なニュアンスが弱まると、「突然」の意味が強くなってくるみたい。
「にわか雨」のような「ブーム」は意味が通るけど、「にわか雨」のような「ファン」というのは少しわかりづらいから、やっぱり「突然」「と「かりそめ」が融合している中にグラデーションがあるんだろうなぁ。

ちなみに、(3)の意味は古語でしか使われないようだけど、「にわかになる」と言うと、「危篤状態に陥る」という意味になるんだって。
これはおそらく(2)からの派生で、「残りの生命ももうかりそめのようなもの」というところから来ていると思われるよ。
こっちの場合は否定的なニュアンスというよりは、「はかない」といったものさみしいイメージだけどね。
このイメージも更に追加して、間もなく消え去りそうなものに対して「にわか」という言葉を使うのもありなのかも。
「あの人は今」的な芸能人を「にわかタレント」と呼ぶとかね(笑)
だれかが使い始めれば広がるかもしれないなぁ。

2019/02/16

光あれ

フランスに来て2回目の歯医者にかかっているのだ。
東京で作った高級な歯のクラウンが割れてしまったんだよね(>_<)
なかなかこわれない、というから高い買い物をしたのに・・・。
でも、割れてしまったものは仕方ないので、現在修復の最中。
で、こういうことがあると、いろいろと歯科治療について調べちゃうんだよね。

そこで気になったのが、レジンによる修復法。
日本では公的保険適用なんだけど手間がかかるということであまりつかわれないみたいなんだけど、欧米では一般的のようなのだ。
いわゆる「銀歯」はアマルガム合金を歯の穴につめたものだけど、その詰め物をプラスチックに代えたもの。
見た目が白くできるので、修復の跡が目立ちにくいんだ。
それで好まれるみたい。

つめものに使うのは、コンポジットレジン(複合材合成樹脂)で、とろっとした液体状のものを穴に流し込み、その後、紫外光を当てると固まるという仕組み。
光を当てるまではかたまらないし、熱などをかけて乾燥させる必要もないので、わりと簡便に固められるのだ。
それも魅力の一つ。
ただし、紫外光を当てる装置が届かないところだと使えないんだよね。

ここで使われるレジンは光で固まる光硬化樹脂。
特に紫外線で固まるものなので、紫外線硬化樹脂というものが使われているよ。
固まる前はモノマー(一つ一つの分子が独立した状態)で、光を当てると重合してポリマー(多くの分子がくっついて大きな構造を作っている状態)になるのだ。
多くの場合、不安定な炭素・炭素二重結合があって、そこにエネルギーの比較的強い紫外線が当たると、その二重結合のうちの一本がきれ、となりの分子の同じようにきれたところと新たな結合を作ることでつながるのだ。
もちろん、もとのように自分の中で二重結合が復活することもあるけど、確率的に、まわりにいっぱいフリーの結合の切れている分子がいるので、他の分子とくっつくことが多くなるよ。
こうして一つの大きな分子につながっていくのが重合反応。

紫外線硬化樹脂の場合、この結合の切れ方に大きく分けて二通りあるのだ。
一つは、両方の炭素がそれぞれ電子を一つずつ持って電気的な中性な状態できれるもの。
これはラジカル型と言うよ。
電子対になっていない中性的な電子は非常に不安定で反応性が高く、似たようなラジカルを見つけるとすぐに反応するのだ。
もう一つは、片方が電子を持っていってしまって、2:0の割合で電子が分かれてきれい場合。
つまり、電子対をそのまま持って行ってしまうのだ。
切れ方として、真ん中できれいに切れるのか、片方は端から切れてしまうのかの違いかな。
この場合、電子対がある方はわりと安定的で、まわりの水素イオンと水素結合して電気的に中性になるんだけど、電子を全てとられてしまった方はとても不安定。
負の電荷を持っているものとすぐに反応しようとするのだ。
で、たまたまとなりに別の分子で電子対ごと持っていった切れ端が来ると、そこに新しい結合を作ってしまうわけ。
このときは、反応の中心が正の電荷を帯びているので、カチオン(陽イオン)型と呼ばれるよ。

いずれにしても、二重結合のうちの一本が切られ、そのままでは不安定なので、近くにいる同様に切れたものとくっつくという寸法。
紫外線を当てるとどんどん切れていって、すぐにまわりの同じようにきれたものとつながっていくのだ。
歯の修復に使うレジンの場合は十数秒ほどで固まるよ。
歯の型を取るときよりもはるかに楽なのだ。

でも、このレジンにも弱点はあるんだよね。
それは、割れやすいことと着色しやすいこと。
つまり、もろくてすぐに見た目が悪くなるのだ・・・。
でも、高くないものなので、定期的に入れ替えればいい、という意見もあるよ。
あまりに詰め物が固すぎると歯のかみ合わせに悪いから、詰め物の方が摩耗する方がいいんだよね。
それと、銀歯(アマルガム修復)の場合、どうしても水銀を使っていてそれが唾液中に微量に溶け出すという問題があるし、それ以外の金属イオンも溶け出して金属アレルギーの原因にもなるから、レジンの方がその点でも優れているのだ。
でも、日本だと高価なセラミックのクラウンを勧めてくるんだよね。

2019/02/09

オオカミに一番近いイヌ

パリの街中では、雨の日だろうが、風の日だろうが、犬を散歩させているんだよね。
しかも、リードを外して。
そう、ほとんど放し飼い。
でも、イヌの方がおりこうさんで、ちょっと飼い主から離れると後ろを振り返ったりするのだ(笑)
そのまま逃走したりはしないみたい。
で、そんな中、けっこう柴犬を見かけるんだよね。
欧州でも人気なんだって。
こっちで買うと日本以上に高いらしいけど。

柴犬は、言わずとしれた代表的な日本犬。
秋田犬や甲斐犬に並んで6大日本犬種のひとつなのだ。
あまり大きくならないこともあって、一番の人気種で、飼育頭数も多いんだよね。
飼い主にはなれるけど、見慣れぬ人には警戒心を持つので、番犬にも適していると言われるのだ。
日本人が犬と聞くと真っ先に思い浮かべるのは柴犬のイメージだよね。

ところが、あなどるなかれ、実はオオカミに一番近いイヌが柴犬だったのだ!
イヌの起源についてはずっと研究されていて、見た目からオオカミだろうとは思われていたんだけど、なかなか確たる証拠がなかったんだよね。
他に似たようなイヌ属の動物(ジャッカルやコヨーテなど)もいるし、何より、プードルからゴールデンレトリバーまで、イヌと言っても幅広いからね。
で、最近になった、ミトコンドリアのDNAの変異で系統樹のどのあたりで分岐したのかをさかのぼる研究が行われたのだ。
その結果、タイリクオオカミ(ハイイロオオカミ)がおそらく起源で、柴犬はかなり初期の方で分岐した犬種。
かなりオオカミの遺伝子を色濃く残す古代犬種だったのだ!
日本は島国で他と交雑しにくかったのがよかったのかな?

はっきりとしたことはまだわからないようだけど、おそらくイヌの家畜化が始まったのは東アジアで、それが広まっていったみたい。
日本でもすでに縄文時代にはイヌが人と一緒に埋葬されているそうだから、その頃にはもう狩りのお供だったのだ。
今でもイヌはオオカミと交配可能なんだけど、この広がっていく過程で、アラブや欧州に行く際に、その地方のオオカミの血も混ざったりして、さらに複雑に系統樹が分岐していったみたい。
系統樹をまともに作ろうとすると、どうしてもオオカミとイヌが混ざってしまうというのはそういうことなのだ。

その結果、一見一番オオカミに近そうに見えるシベリアンハスキーは、実は柴犬ほどはオオカミに近くはないのだ!
途中で他のオオカミの血とかが入っているのかな。
それでも、かなりオオカミに近い方の犬種ではあるんだけどね。
他にオオカミに近い犬種(=オオカミに近いDNAを持っている犬種)としては、チャウチャウ(赤犬)、アフガン・ハウンド、シャー・ペイ(中国原産のしわしわ犬)、秋田犬、ペキニーズなどなど。
シャー・ペイやチャウチャウのような中国犬種もわりと早い時期に分岐したもののようなので、そのときの古い血(遺伝情報)が残っているのかもね。
その中国犬から派生しているからペキニーズみたいなのもオオカミに近いとされてしまうのだ。
逆に言うと、欧州犬種は途中でいろんな血が混ざっているんだろうね。

最近では豆柴なんてのもあるけど、これは正式な犬種ではないんだよね。
比較的小型の柴犬同士を交配させたもので、小柄な柴犬というだけなのだ。
なので、突然大きくなったりもするんだよ。
豆柴だから大きくならないというのはあまり当てにならないのだ。
まだ小型になるという遺伝的形質が固定化できていないんだよね。
これもオオカミの血のなせるわざか?

2019/02/02

雨水を吐く怪物

パリの街ではカサをさす人が少ないんだよね。
さーっと降ってすぐにやむことが多いのもあるんだけど。
なので、基本は雨宿りか、フードをかぶるか、そのまま歩くか。
ボクはカサを持っていればさす方が多いけど、小雨ですぐやみそうなときなんかは、軒下から軒下へと雨宿りしつつ移動しようとするんだけど・・・。
思わぬところから水が降ってくる!
これは、雨粒ではなくて、バルコニーなどからしたたってくる水滴なのだ。

よくよくバルコニーの構造を見てみると、日本のような雨樋がしっかりと着いていないことが多いんだよね。
屋上に水がたまらないようにする雨樋はついていることもあるけど、バルコニーに至っては、何もないか、あってもそのままバルコニーから水を吐き出す管が出ているかだけ。
パイプで地面近くまで導くような雨樋はないのだ(>_<)
このため、雨が降ったいる最中や、雨がやんでからのしばらくの間は、建物の突起部分から水がしたたってくるんだよね。
これは地味にいらつくのだ。

どうも、ローマ時代には雨樋(rain gutter)はすでにあったそうだよ。
雨水を効率的に集めたいというニーズと、壁面や柱に自由に雨にぬれると傷みが早くなるので、それをさけるために「雨の通り道」を作りたいというニーズがあったようなのだ。
ところが、問題となったのはデザイン性。
どうしてもとってつけたようなものになるので、それをいかに工夫するか、ということで発達するみたい。
解決法は二つで、壁の内側に見えないように作る、というのと、開き直って装飾的に作ってしまう、というもの。
ま、フランスの場合は、鉄筋コンクリートなら雨で痛むこともないからいっそのことつけない、という選択肢があるようだけど・・・。

そんな流れで出てきたのが、大聖堂と呼ばれるようなよく大きな教会などで見る「ガーゴイル」。
あれは水の吐き出し口に悪魔のような形の像をつけ、その口から雨樋で集めた水が吐き出されるようになっているのだ!
出てきたのは12世紀のゴシック建築の時代。
なんと、フランス発祥だって。
ま、この「ガーゴイル」は地面まで水を導くわけではなく、かなりの高さのところから水を吐き出すだけなので、建物の近くに行くと思わぬところから水が降ってくる、というのは変わらないのだけど(笑)

ガーゴイルはフランス語ではガルグイユ(gargouille)。
これはラテン語の「のど(gurugulio)」から来ていて、もともとは水が流れるときのゴボゴボ言う音から来ている言葉なんだって。
「うがいをする」の「gargle」もここから来ているそうだよ。
ゴボゴボと集めた雨水をはき出すからガーゴイルなのだ。
ゴシック様式の建物とともにこの装飾が欧州十に広がったそうだよ。

ところが、ルネサンス期になってゴシック様式が廃れると、ガーゴイルも作られなくなってくるんだって。
これが復活するのは18世紀後半からの「ゴシック復興期」の時代。
ちょうどパリのノートルダム大聖堂の修復のときに活躍した、フランスの建築家のヴィオレ・ル・デュクさんなどが大きな役割を果たしたのだ。
こうして、18世紀~19世紀にかけては、中世の教会を修復したり、新しい教会を作るときにゴシック風に建造されたんだ(これを「ネオ・ゴシック」と言うよ。)。
さらに、いつしかガーゴイルは雨樋の水の吐き出し口という機能も失われ、塔の四隅にある、デザインにアクセントを与える突起状の装飾物になってしまうのだ!
これは米国に建てられた高層ビルなんかに見られるそうだよ。
っていうか、やっぱり欧米人はまじめに雨樋を作って雨水を集める気はないのか・・・。

ちなみに、「ノートルダムの鐘」に出てくる「ガーゴイル」は本当はガーゴイルではないのだ。
あれは単なる彫像で、雨樋の吐き出し口にはなっていないんだよね。
これはガーゴイルの意匠から発展した装飾物だよ。
19世紀の修復の時に加えられたもので、フランス語では「シメール(いわゆる「キメラ)」とか「グロテスク」と呼ばれているのだ。
形から「ガーゴイル」と呼ばれてしまっているけどね。
これもヴィオレ・ル・デュクさんが付け加えたもの。

というわけで、ゴシック様式で雨樋は装飾に進化したのはいいんだけど、いつしかその機能が失われ、ただの装飾品になってしまったのだ・・・。
やっぱりフランス人には雨樋の必要性というのがいまいちぴんときていないのかなぁ。
でも、建物の近くによれば上から水が降ってくるし、建物から離れればイヌの「落とし物」がいたるところにあるし、パリの街は歩きにくいところだ(>_<)

2019/01/26

塩漬けいろいろ

フランスではなかなか売っていない加工肉があるのだ。
それは、薄切りのベーコン。
イングリッシュ・ブレックファストでは定番中の定番なのに、大陸側のフランスではほとんど売っていないんだよね。
むしろ、普通のハムの方が好きみたい。
ホテルの朝食でもハムの種類は多いよ。

そして、ベーコンの代わりとしては、ラルドンという細切りの塩漬け豚肉を使うのだ。
これは、牛のバラ肉や背脂の部分を塩漬けにしてから短冊状に切ったもの。
ラルドンの「ラル」の部分は「ブタ脂」の「ラード」だよ。
なので、見た目的にも半分以上が脂という感じ・・・。
これをカリカリに炒めてサラダの具にしたり、ゆっくり熱して脂を出してスープや煮込み料理にコクを与えたりするのに使うのだ。
本来的には塩漬けにしただけのものがラルドンなんだけど、最近は更に君背資したものまであるよ。
そうなると、ほぼベーコンと同じようなものだよね。

で、なんかに似ているなぁ、と思っていたら、それはイタリアのパンチェッタ。
あの、カルボナーラに入っている肉。
あれは豚バラ肉を塩漬けにしたものだよね。
カルボナーラに入っているやつはラルドンと同じように細切りのものだけど、本来的には豚バラ肉を塩漬けにしたものなので、ブロックみたい。
それを薄切りにしたり、細切りにしたりして使うようなのだ。

パンチェッタというのはもともとバラ肉の意味で、イタリアではブタのバラ肉を塩漬けにしたものがよく食べられていたので、いつしかその塩漬け肉もパンチェッタと呼ぶようになったみたい。
で、塩漬けにするのがもも肉の場合はプロシュット。
つまり、「生ハム」。
そして、ブタのほほ肉(豚トロ)を塩漬けにしたのがグアンチャーレ。
アマトリチャーナに入っているほろほろする肉だよ。

これらはどれも塩漬けにした豚肉の表面を乾燥させつつ熟成させたもの。
乾燥させずに燻製にするとベーコンやハムになるのだ。
たぶん、これって気候の違いなんだろうね。
陽の当たらない乾燥した風が吹くところでは塩漬けの後に乾燥・熟成ができるけど、そうでないところだと塩漬け肉が腐ってしまうので、煙でいぶして燻製にする必要があったはずなのだ。
燻製には燻製で独特の香りがついて味があるから、それはそれでよいのだ。

で、ボクが気になったのは、ラルドンとパンチェッタの関係。
結論から言うと、よくわからない(笑)
フランス語のラルドンは、もともとは「背脂(lard=ラール)」から来ているのだけど、どうも最初はこの背脂を拍子木に切ったものがラルドンだったようなのだ。
何でそんなことをしたかというと、赤身肉に差し込んで、肉を軟らかく、ジューシーにするため。
そのうち、この拍子木に切った脂を焼いて脂を出して料理に使われることも行われるようになるのだ。

で、ブタ胸肉(バラ肉)は「胸の脂(lar de poitrine)」と呼ばれているんだけど、これを拍子木に切ったものもラルドンと呼ばれるようになったのだ。
こちらはもう赤身肉に指すものではなく、その後に発生したであろう、脂を出すためのもの。
でも、これをカリカリに焼くと、肉の方もクリスピーでけっこうおいしいんだよね。
それでサラダなどの料理に使われるようになったと考えられるのだ。
おとなりの国イタリアでは、すでにパンチェッタをそのように使っていたように!

ということで、なんとなくだけど、結果として似てきただけで、イタリアのパンチェッタをまねてラルドンを作ったわけではなさそう。
当時は食肉の保存技術が未発達だったし、冷蔵庫もないから、塩漬けにするか、乾燥させるかしかなかったんだよね。
で、ブタの脂を使うにも、まずは塩漬けにしていいたはずなのだ。
それが料理の下ごしらえに使われ、いつしか料理の具材になり、となって、最初から食材だったパンチェッタに近づいていったと思うんだよね。
でも、実際に使ってみると、やっぱりラルドンはパンチェッタの代用にはなっても、パンチェッタとは違うんだよね。
乾燥・熟成の過程が違うのかな?

2019/01/19

濃いのが人気

なんでも「若者のビール離れ」でビールの売り上げが落ちているんだそうで。
っていうか、それは単純に人口減少とかが影響しているのでは?
そもそも若者が少なくなっているから、若者が消費するビールの量も減るよね。
でも、おそらく、それに加えて、選択肢が広がったことも大きいと思うのだ。
むかしはそれこそビールだけ飲むことが多かったように思うけど、最近では、ノンアルコール系飲料もあるし、ハイボールを含むウイスキー、各種サワー、ワイン、日本酒、焼酎、・・・とそれぞれの好みに合わせて好きなものを飲むようになったよね。
とりあえずビールで乾杯、とか、生中じゃない人?、なんてのはもう時代遅れなのかも。

そんな中、売れ行きが好調で、社会的問題にもなりつつあるお酒が。
それは、高アルコール度数の缶チューハイ。
ストロングゼロとかそういうのだよ。
これらはアルコール度数が9%。
日本のビールは5%、ワインが10~15%、日本酒が15%くらい。
ワインよりちょっと低いだけなんだね・・・。
それで一缶500mlあって、2~3本飲むとかいうんだから、ワインのボトルを1~2本飲んでいるのと同じなのだ!

でも、値段は全然安いよね。
しかも、果汁の風味などで飲みやすい。
というわけで、アルコールを飲み過ぎるおそれがある、ひいては、依存症につながりかねない、と問題視され始めたのだ。
元アイドルが飲酒運転事故を起こした際に飲んでいたのもこれだよね・・・。
時代の要請には応えているのかもしれないけど、危険なものではありそうなのだ。

もともとチューハイは、焼酎ハーボールの略と言われているよ。
ウイスキーに炭酸水を加えてハイボールにするように、アルコール度数の高い焼酎を炭酸水で割ったものということ。
戦前からシロップを加えて飲みやすくするというのはあったそうなんだけど、ハイボールをまねてそこに炭酸水を入れて飲むようになったんだよね。
どうも、昭和30年代の東京のドヤ街の山谷地区(あしたのジョーの舞台でもおなじみ、南千住と浅草の間だよ。)で生まれたようなのだ。
それが居酒屋チェー点のメニューになってから全国的に広がり、その人気から缶飲料として缶チューハイが発売されるようになったのだ。

チューハイは、明確な定義はないんだけど、焼酎やウォッカなどの蒸留酒をベースとしていて、アルコール度数が比較的低い(10度未満)なものを指すと言われているよ。
この「10度未満」というのがミソで、酒税法上、10度を越えると酒税が高くなるので、ここで「打ち止め」にしているのだ。
9%のストロングゼロは、今のアルコール飲料の分類の中で最大限アルコール量を増やしたもの、ということになるよ。
その前は「ほろ酔い」とかの1%程度の低いアルコール度数のものがはやったこともあったけど、今はノンアルコールから9%までレンジが広くなっているのだ。
ちなみに、エグザイルの公式飲料としても有名なレモンサワーなどの「サワー」は、実はチューハイと明確な線引きはなくて、ほぼ同一のものと考えられているよ。

この高アルコール度数の缶チューハイが売れているということは、アルコール飲料の消費が減っているというわけではないのだ。
外の居酒屋でビールの後焼酎を飲むというスタイルから、安価に飲むために、家で高アルコール度数の缶チューハイを飲むようなものに変わってきているんだよね。
これってやっぱり若い瀬田の経済的余裕がなくなってきていることが大きいのかなぁ。
「車離れ」なんかもそうだよね。
平均的な若者はもはや都市部で自動車を維持できるような生活は難しいから。
そうなると、この手の商品が悪いと言って規制するのではなく、もっと根本的な社会問題としてとらえる必要がありそうだね。