2022/01/01

北極からの使者

今年の年末に大寒波がやってきた!
東京でも最低気温が零下。
日本海側では大雪・・・。
カナダでは最低気温が-50度になったとかいうニュースもあったけど、これは世界的な現象みたいだ。

実は、暖冬がなぜ起こるのかがよくわからないのとは対照的に、寒波についてはメカニズムがわかっているようなのだ。
それは、北極圏にある冷たい気団(北極気団)が膨張して南下してくるから。
この気団は膨張と収縮を繰り返していららしく、それを「北極振動」というそうなのだ。
で、膨張していくと、より低緯度地域もこの寒気団の影響下に入るんだけど、この寒気団ともともと南側にある暖気団の境界に寒帯前線ができ、そこで強風や降雪が発生するのだ。
それがまさに日本で起きている現象だよ。

もともと北極気団は北極圏をぐるりとまわって流れている寒帯ジェット気流に囲まれていて、この気流より南にはしみ出してこられないのだ。
ところが、北極圏まわりの高緯度高圧帯と、寒帯ジェット気流を挟んでその南側にある、日本列島を含む中緯度高圧帯の気圧差で、このジェット気流の強さが変わるのだ。
気圧差が大きいとジェット気流が強くなって膨張は食い止められる=寒波が来ない。
気圧差が小さいとジェット気流がよくなって寒気団が膨張して、寒気が南にしみ出してくる=寒波が来る。
この気圧差の変動は、数週間~数十年の複数の周期で似たようなパターンで変化しているので、実は寒波が来るかどうかもある程度予測できるのだ。
「振動」と呼ばれる現象の億は周期性があるんだよね。

日本の場合、北から寒気がしみ出してくると、まずは日本側地域がその影響下に入るのだ。
このとき、もともと日本上空にあった暖気団と境目で寒帯前線ができ、そこでは温帯低気圧が発生するのだ。
ここでは低気圧が発生しやすいだけでなく、発達も著しいので、強風や強い降水(寒波の場合は気温が低いので雪やヒョウ)が見られるよ。
ところが、日本列島の場合、日本海側と太平洋側の間にけっこう高い山脈が連なっているので、山脈の手前でひとしきり降水を終えて、乾いた寒気として太平洋側に吹き下ろすことになるのだ。
そうすると、日本海側では大雪、太平洋側は乾燥して極低温という寒波の状況になるよ。
で、この山脈を越えるほどの勢いになると、太平洋側地域でも大雪になるのだ。
関東で記録的大雪になるのはたいてい大寒波の時というわけだね。

もっと問題なのは、普段あまり雪が降らない地域だと、ちょっと積もっただけで大混乱するので、大雪になると都市機能が麻痺するのだ。
豪雪地帯だと屋根の角度が急で南側が大きくなっていたり、雪で扉がふさがれないように工夫がしてあったり、道路に融雪剤が置いてあったりとかするわけ。
こういうのがないところでは、屋根の雪がなかなかとけず、あるときどさっと落ちてきて人がけがする、ものを壊す。
雪でドアがふさがれて1Fから出られなくなるんだけど、2Fには出入りできるような扉がない。
道路が凍結してスリップしやすいけど、チェーンやスタッドレスタイヤなんて常備してないし、運転にも慣れていないので事故が多発するし、運転するときも徐行。
まさに東京がこれなんだよなぁ。

最近では、平成26年(2014年)の大雪が有名なのだ。
もともと関東でも2月には雪が降るけど、このときは2月上旬に投稿で30cmほどの積雪。
普段は数cmだから、その差は歴然!
足がずっぽりうまる感じだよね。
政府にも非常対策本部ができたほどだよ。

今回は関東は寒いだけだけど、滋賀の彦根なんかはすごいことになってるね。
もともと滋賀北部の米原にはスキー場もあるくらいで雪がないわけじゃないけど、彦根のような湖南地域はそこまでのせきせつがないのだ。
なので、かなりインパクトは大。
もともと雪がよく降る地域もいつも以上に降っているらしいから、被害は大きくなるかも。

2021/12/25

石にてこ入れ

全国宝石卸商協同組合が63年ぶりに「誕生石」を改訂したようなのだ。
もともと米国の宝石商組合が定めたものに、日本らしい珊瑚や翡翠を1958年(昭和33年)に制定したのがはじまりなんだって。
その後、他の団体も独自に導入していったため、宝飾関係の業界全体で統一されておらず、消費者の混乱を招いていたので、全国宝石卸商協同組合が日本ジュエリー協会と山梨県水晶宝飾協同組合の賛同を得て改訂したんだそうだよ。
ちなみに、他の国でも米国版をオリジナルとしつつ、いろいろ足したりしているそうで、世界的に統一されてはいないようなのだ。

現在の誕生石の一覧は次のとおり(【 】が今回追加されたもの)。
1月: ガーネット
2月: アメシスト、【クリソベル・キャッツアイ(猫目石)】
3月: アクアマリン、珊瑚、【ブラッドストーン】、【アイオライト】
4月: ダイヤモンド、【モルガナイト】
5月: エメラルド、翡翠
6月: 真珠、ムーンストーン、【アレキサンドライト】
7月: ルビー、【スフェーン】
8月: ペリドット、サードニクス、【スピネル】
9月: サファイア、【クンツァイト】
10月: オパール、トルマリン
11月: トパーズ、シトリン
12月: トルコ石、ラピス・ラズリ、【ジルコン】、【タンザナイト】

今回追加されたものにはいくつか類型があって、アレキサンドライトやスピネル、タンザナイト、ジルコンなどは米国で採用されているものの追認。
日本独自に追加したのは、猫目石、生尾ライト、モルガナイト、スフェーン、クンツァイトの5つ。
なんとk、2月の猫目石は、2月22日が9「猫の日」だからだって!
残りのブラッドストーンは、公式発表資料に「歴史的背景も考慮し」とあるんだけど、これがよくわからないんだよなぁ・・・。

ボクが断然注目しているのは8月。
だって、8月生まれだから。
これまではペリドットとかサードニクスとか、いまいち地味だったんだよね。
しかも、お値段もかなりリーズナブルな部類。
そこに「スピネル」が入ってきたのだ。
あまりなじみのない名前の宝石だけど、わりと高級なものなんだって。

化学組成は MgAl2O4で、ここに微量のクロムが混ざると赤く発色するのだ。
少ないとピンク、多いと真っ赤。
特に赤くて透明度の高いものが高級で「レッド・スピネル」と呼ばれるのだ。
ミャンマー産が多いらしいよ。
で、このレッド・スピネルは長らくルビーと混同されていて、英国王室の戴冠式に使われる「黒太子のルビー」は実はレッド・スピネルで、あそこまで大きくて発色がよいものはめちゃくちゃお高いよ。
(小さなものは「ルビーの偽物」的な見方をされて、希少な宝石なんだけど価格があまりあがらなかった歴史的経緯があるようだけど。)
これはエドワード黒太子が入手した宝石なのでその名前があるんだけど、赤くてきれいな宝石なのでルビーとされてきたのだ。
後世になってスピネルであることがわかったんだって。
それでも、世間一般では「スピネル」という宝石名称はまだまだ一般的でないし、すでに有名になってしまっているので名前は変わらないみたい。

ルビーと混同されるのだけど、ルビーはコランダムと呼ばれる酸化アルミニウム(Al2O3)の結晶のうち、微量にクロムを吹くんで赤を呈色しているもの。
スピネルではアルミニウムだけでなくてマグネシウムも混ざっているんだよね。
で、ルビーのモース硬度は9.0だけど、マグネシウムが入っている分スピネルは少し柔らかくて、モース硬度は7.5~8.0なのだ。
それだけ傷つきやすいので扱いは注意しなきゃいけないんだよね。

2021/12/18

八百八島

 最近知ったんだけど、日本国内の島の数って、政府の公式見解と各自治体が発表している数字で違いがあるそうなのだ。
政府は、昭和62年(1987年)に実施した海上保安庁の調査で「6,852」としているんだよね。
戦後すぐにGHQの指示で海上保安庁が調べたときは2,394あまりで、その後、トカラ列島、奄美群島、小笠原諸島、沖縄の変換に伴って数は増え、昭和44年(1969年)には「3,922」になっていたんだって。
そこからするとけっこう数が増えているんだよね。
でも、この数字は内訳がなく、どの島を数えているか不明だったので、昭和62年に改めてきちんと基準を設定して数え尚したわけ。
この時の基準が、「周囲0.1km以上の陸地」というもの。

一方で、政府ではないところが数えたものとしては、昭和57年(1982年)に財団法人日本離島センターが数えたもので「4,917」というのもあるのだ。
これは地図上で「島」とか「礁」とか「岩」とか固有名詞がついている水に囲まれた陸地を規模に関係なく数えたもの。
当然数え方が違うので数も違うんだよね。
これは大きな陸地でも名前がついていないと数えないし、本当に小さな陸地でも名前さえついていれば数えてしまうので、ちょっと怪しい数字ではあるのだ。

で、各都道府県は自らの治世情報として島の数なんかを公表しているんだけど、それを単純に合計すると、このどの数字にも当てはまらないそうな・・・。
ようは、地方自治体はさらに独自の数え方をしているというわけ!
昭和62年の調査についてはどの島を数えているかがわかっているので、政府としては自治体に政府公式見解に合わせるよう要請はするんだろうけど、周囲1km以上くらいだと、海中の大きな岩みたいなものもあるわけで、自治体としてはそういうのを「無人島」というのははばかられるんだろうな、とは想像できるよね。
とはいえ、我が国の領土の「島」であるかどうかで、領海の範囲や排他的経済水域(EEZ)の広さが変わってくるので、けっこう重要。
内海はどうでもいいのかもしれないけど、外海についてはけっこうシビアだよ。
沖ノ鳥島は「岩礁」なんじゃないかなんてクレームが出ることもあるけど、あそこが領土としての「島」なのか、「岩礁」なのかでEEZの広がりがかなり変わってくるんだよね。
そりゃあ、狭めたいと思っている勢力から見れば邪魔でしかない(笑)

ちなみに、日本国内だ最大の島は、当然「本州」。
日本人の多くは「島」という認識ではないけどね。
世界的に見ても第7位の大きさの島だよ。
次いで、北海道、九州、四国、となるんだけど、その次は択捉、国後となって、さらにその次が沖縄。
つまり、北方領土のあるなしでけっこう領土の広さに影響が出てくるわけ。
これは北方領土問題が大きな問題であることがよくイメージできる数字だよね。

一般的な、大きな陸の塊が「大陸」、小さな陸の塊が「島」で、最小の大陸は豪州、最大の島はグリーンランドとなっているんだ。
グリーンランドは豪州の1/3~1/4くらいの大きさなので、そこまで大きな差があるわけではないんだよね。
ただし、第2位のニューギニアになるとそこからさらに1/3くらいなので、グリーンランドを除けば、桁一つ落ちるくらいには大きさの差はあるのだ。
でも、これってイメージ的なもので、実際の定義としては使えないので、国際的には、国連海洋法条約(UNCLOS)の基準で判断されるよ。
3つの基準があって、
①自然に形成された陸地であること(=埋め立て地ではない)
②水に囲まれていること(=琵琶湖の竹生島のように湖の中の陸地もOK)
③高潮時に水没しないこと(=常に水面に出ている陸地がある)
となっているのだ。

我が国の沖ノ鳥島が一部の国から問題視されるのは、消波ブロックなどを設置し、波浪による侵食によって満潮時に水没しないようにしているから。
放って置いたら水に沈むんだからもはや「島」ではないだろう、ってことなんだけど、EEZのこととかを考えると、断固確保すべき領土なんだよね。
似たような名前の南鳥島は海山の山頂部が水面に出ている島なのでそういう心配が全くないんだけど。

2021/12/11

ヤーレンソーラン

北海道のソーラン節と言えば、かつて栄えていたニシン漁の歌。
江戸時代は東北地方の日本海側でもたくさんとれたらしいけど、明治・大正の頃にはとれなくなり、漁場が北上していたのだ。
そして、北海道ではよくとれるようになり、一大産業になったんだよね。
今でもそのときの栄華を伝える「鰊御殿」なんかが残っているけど、そこまで儲かるのか、とびっくりするようなものだよ。
今ではニシンというとお正月の昆布巻きと数の子くらいのイメージしかないけどね。

ニシンは近海で大量にとれる魚だったので、貴重な水産資源だったんだよね。
とはいえ、冷凍技術なんかない時代は別の方法で保存する必要があったのだ。
それが「身欠きニシン」。
ニシンの干物なんだけど、アジの干物なんかとは違って、水で戻してから食べることが多いのだ。
戻すと身が崩れやすくなるので、「身欠き」と言うのだ。
ニシンは脂がのっていることもあり、米のとぎ汁に一晩つけて戻すというのが一般的だよ。
米ぬかは天然の界面活性剤で、余計な脂分を吸い取ってくれるのだ。
特に、表面にある脂分は酸化・劣化していて臭みのもとになっているので、臭み消しにもなるわけ。

戻した身欠きニシンは甘く煮付けて甘露煮にしたり、煮物にしたりするのだ。
甘露煮にしたものをそばの上にのせれば、京都名物のにしんそば。
煮物の場合も、京都のおばんざいの「にしんなす」が有名だよね。
もともとニシンは卵巣(=数の子)や精巣(=白子)が大きいのだけど、それを守るために小骨が多いんだよね。
なので、新鮮なうちなら刺身もあるし、そのまま焼いて食べることもあるんだけど、この骨が邪魔になるのだ。
干してから水で戻して煮てしまうことで、骨を柔らかくして食べやすくする、というのがあるのだ。

ちなみに、欧州でもよくニシンを食べるけど、こっちは少し種類が違うセイヨウニシン。
やはり北の寒い海に住んでいるんだけど、やはり骨が気になるので、若いうち(卵巣や精巣が発達する前)に酢漬けにして食べるのだ。
それがハーリング。
臭みがあるのでタマネギのような香味野菜やハーブと一緒に食べることが多いよね。
ピクルスを中心にして巻くとロールモップスという料理になるよ。
大きいニシンは燻製にするんだけど、これはキッパー。

多くの場合、エラと内臓を取り除いてから濃い塩水につけてから加工するんだけど、この過程で身の表面が赤くなるんだよね。
なので「赤いニシン」とも呼ばれるみたい。
これはかなり臭気が強いことでも有名なんだよ。

で、洋の東西を問わずにニシンはよく食べられているんだけど、北海道で一番多くとれていた時代は、別の使い道もあったのだ。
それが魚油を搾り取るのと、その絞りかす(鰊粕)を肥料にすること。
江戸時代からイワシなどから行灯用の魚油を搾り取り、その絞りかすを肥料(金肥)にしていたけど、全く同じようなことをするのだ。
当時は生物由来の油が基本で、魚油が安かったんだよね(もちろん、灯火の燃料に使うと独特のにおいがするのだけど。)。
米国もランタンの円了として鯨油をとっていたので、海産物由来の油というのはその当時はわりとメジャーだったのだ。
ニシンも大量にとれたので、そういう加工品に向いていたんだろうね。

しかし、昭和になる頃には北海道でもとれなくなってきて、戦後すぐにニシン漁は廃れていくことになるのだ。
とれなくなった原因ははっきりしないのだけど、どこでもとれなくなったわけではないので、乱獲というよりも、海流の変化とかそういう環境の変化ではないかとみられているようだよ。
ま、そういう状況でも日本においてもしっかりと食文化は残ったわけなのだ。
でも、シシャモ同様、すでに国産ニシンは希少で、輸入物が増えているんだよね・・・。
本来は食文化は時代の変化とともに変わっていくものなんだろうけど、物流が発達して輸入できるようになったので、複雑になってきているね。
未来に人たちがこういうのを研究するときは大変だろうなぁ。

2021/12/04

置くだけで邪気退散、病気平癒の御利益

 最近ネットの情報で知ったんだけど、すごいものがあるのだ。
その名は、「テスラ缶」。
価格はナント250万円もするんだけど、ベッドの近くに置いておくだけで、がんなどの病気が治ったり、欠けた歯が再生したり、いやなほくろが消えたりするんだって!
これが本当なら250万円でも高くないよね。
本当なら・・・。

「テスラ」とはついているけど、ペイパルのイーロン・マスクさんが起こした電気自動車のテスラ社とはなんお関わりもないのだ。
でも、なんとなくそのすごい技術力と関係あるかも、と「勝手に」思ってしまう人が多いみたい・・・。
この缶はまったくの謎で、中を明けると効力がなくなると言われていて、決して中身を出そうとしてはいけないのだ。
なので、なんでこれが有効なのかは完全なブラック・ボックス。
まさにオカルト(=「秘されたもの」)そのものだよね。

で、けっこう信者(?)の人が多くて、ツイッターなどで「テスラ缶のおかげでがんが治りました」みたいな情報が流れているんだよね。
一部のあやしいインフルエンサーが積極的に広めようとしているのもあるようだけど、それはどちらかというとステマに近いものだね。
そして、EM菌と放射脳の親和性が高かったように、テスラ缶と反ワクチン派は相性がいいようで、現代の医療技術を否定し、こっちの方が安全でいい、と騒いでいるようなのだ。
本人がそう思っているだけならなんだかなぁ、なんだけど、これに踊らされてしまう人もいるので見過ごせないんだよね。

これも本当にそういう人がいたのかどうかは不確実だけど、病院でのがん治療(抗がん剤や放射線)をやめてテスラ缶にすがった結果、37歳の若さでなくなった男性の奥さん、と言う人のツイートが広まっているのだ。
その流れではっと気づいたんだけど、現代医療のがん治療って、抗がん剤にしても放射線にしても、副作用がかなり強く、つらいものなんだよね・・・。
で、このテスラ缶の場合は、ベッド脇に置くだけ。
実際に治ったという声もある。
ということで、ただでさえ病気で心が弱っているので、現実逃避的にふらふらっと頼ってしまうようなのだ。
長い時間とお金をかけて化学的に積み上げてきた医療技術を信じず、見ず知らずの人の本当か嘘かもわからない匿名のツイートを信じてしまうのだ・・・。
むかしからがんなどのなかなか治らない病気につけこむあやしいものはたくさんあったけど(古くはアガリクスなんかがそう)、これもそれと同じだね。
身近にいるといたたまれなくなる(>_<)

で、このテスラ缶が全くの謎かというと、実は事態はさらに展開してきているのだ。
テスラ缶をあやまって落とした人がいて、中身が出てしまった、という報告が出てきたんだよね。
その結果、そのテスラ缶は効果がなくなってしまったのでまた買います、という話になったんだけど、その人はせっかくだからと中を分解したのだ。
すると、出てきたのはどう見てもただのセメント・・・。
この情報で三つどもえの争いが起きたのだ。

第一勢力は、ただのセメントに見えてもこれは何か特殊な鉱石を含むもので、缶の外に出してしまうと効果がなくなる、だからきちんとテスラ缶を正規で買うべき、という敬虔な信者。
第二勢力は、こんな中身なら自作できるんじゃね、試しにパワーストーンとかいろいろ自分で工夫して作ってみたら効果が出た、というDIY系信者。
もともと偽薬(プラセボ)効果なので、確かに「イワシの頭も信心から」で、信じるものは救われるのかも。
そして、第三勢力は、ひょっとしてこれってウソなのか、だまされてたのか、と気づいてしまった人たち。
ヘレン・ケラーの「water」のごとき「悟り」があったのだ。

で、居間はこの人達がネットで論争しているんだって。
このテスラ缶を輸入販売している業者は一生懸命第一勢力を支援しているみたい。
だって、勝手に作られたら売り上げが激減だから。
実際に前よりは売れなくなっているみたい。
それにしても、地獄絵図のような恐ろしい世界だ。

2021/11/27

アゲアゲ↑

 「マツコの知らない世界」で油揚げを取り上げていたのだ。
ボクはむかしから豆腐が好きなんだけど、揚げも好きなんだよねぇ。
汁物の具にしてもよいし、かりっと焼いてもおいしいし。
何より、いなり寿司は子供の時から好物なのだ。
で、そこで知ったんだけど、油揚げは豆腐の薄切りをただ揚げたものではないのだ!

水分が多い豆腐をそのまま油で揚げると、いわゆる「厚揚げ」のようになるんだよね。
つまり、中心に豆腐的なしっとりした部分が残るのだ。
油揚げのようなスポンジ状にはならないわけ。
厚揚げは逆にそこがよいのだけど、どんなに薄く切っても、普通の豆腐を揚げている限りは薄い厚揚げ(?)になってしまうみたいだよ。
では、油揚げは何を揚げているのか?

答えは、よく水を切ってかたくした特別な豆腐。
豆腐屋さんでも油揚げ用に別に作っているんだって。
かために作った豆腐に重しをしてさらに水気を絞り、原料大豆の2倍くらいの重さにするらしいよ。
普通に食べている豆腐は水分量が80~90%くらいらしいので、相当水抜きをしているよね。
で、こうして硬く作った原料豆腐を薄切りにし、低温と高温の油で二度揚げするのだ。
はじめは低温の油で膨らませ、それを高温の油に移して表面をかりっとさせるんだって。
低温の油の中では、原料豆腐の中野水分が蒸発するときに細かい空隙ができてスポンジ状、軽石のような多孔質の構造になるのだ。
そのままにしておくとしぼんでしまうので、高温の油で揚げることで表面のタンパク質を熱変性させて穴をふさぎ、しぼまないようにするそうだよ。
なかなか理にかなっている製法なのだ。

もともとはがんもどき・飛竜頭と同じように、室町時代に精進料理の中で生み出された食材のようなんだけど、まだその当時は食用油が高級品なので、庶民が食べるようなものではなかったんだって。
油揚げや厚揚げが一般的になるのは江戸中期くらいから。
この頃には菜種油やごま油が比較的安価に手に入るようになったので、「揚げる」という調理法が一般化するのだ。
宗教上の理由で肉食がおおっぴらにできず、かといって、近海・沿海でしか漁業はできないので魚もそこまで多くとれないので、大豆食品は江戸庶民にとって非常に貴重なタンパク源だったのだ。
豆腐や納豆はそれこそ毎日のように食べられていて、そこに、バリエーションとしてあげたものである油揚げや厚揚げが加わるわけ。

厚揚げは煮物なんかの具材に使われていたようだけど、当時の居酒屋では七輪で表面を改めて焼いて、ネギを添えて出す「竹虎」、大根おろしを添えて出す「雪虎」として手軽なおつまみになっていたようだよ。
焼いたときに網目の焦げがつくところが虎縞になるから。
油揚げの方は汁物の具にするほか、スポンジ状の内部構造を生かし、中を開いて袋状にし、そこに具を詰める、という調理法も生まれたのだ。
その代表例がいなり寿司。
もともと飛竜頭は豆腐をつぶして作った記事で具材をまんじゅうのように包んで揚げた料理だったそうで、そういうところにもヒントがあったのかも。

そして、油揚げにつきものなのキツネ。
濃い味付けで甘辛くにた油揚げののったうどんやそばは「きつね」だよね。
油揚げとネギを卵でとじて白飯の上にのせたものを信太(しのだ)丼と言うけど、これは「葛の葉」伝説にもとづくもの。
阿倍保名(あべのやすな)が信太の森で白虎である葛の葉と夫婦になってできた子供こそが安倍晴明その人、という伝説で、人形浄瑠璃や歌舞伎の「芦屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)」はこの伝説を下敷きにしたものなのだ。
なので、やっぱりキツネが関係しているんだよね。

なぜキツネと油揚げが結びつけられるかには諸説あるようだけど、キツネは収穫した米を荒らすネズミを食べてくれる動物なので神聖視されていて、稲荷神の神使とも考えられているのだ。
で、キツネの好物はネズミ、しかも、油で揚げたネズミという話になっていくのだけど、ネズミをそのまま備えるわけにもいかないので、代わりに油揚げにしたとか言われているのだ。
ちなみに、本物のキツネは油揚げが好きなわけではないし、あげれば食べないことはないんだろうけど、喜ぶわけでもないようなのだ。

稲荷神は密教の「荼枳尼天(だきにてん)」と同一視されるけど、多くの場合、この荼枳尼天は白虎にのった姿で描かれるのだ。
本場のインドではジャッカル(野干)と一緒に描かれるのだけど、中国にはジャッカルがいないので、代わりに似ているキツネになったみたい。
それが日本にも伝わっているのだ。
この荼枳尼天はもともと死肉を食べると言われる鬼女で、同じように屍肉をあさるジャッカルと関連づけられたところから一緒に描かれるようになったみたい。
それがキツネに変わったおかげで、米をネズミから守ってくれる農耕の神様になっているのだ。

2021/11/20

酸化で劣化

けっこうレバーって好きなんだけど、ちゃんと下処理していないやつはなんか臭みがあるよね。
血なまぐさいというのもあるけど、そうではない独特の臭みが。
それは、レバーに豊富に含まれる脂肪酸が酸化されることによって出てくるもののようなのだ。
中高齢者のいやなにおいと言われる「加齢臭」も皮脂が微生物により酸化されて出てくる物質が原因なんだよね。
たいていの場合、脂は酸化されるとくさくなってくるのだ。

レバーの場合、中に含まれる不飽和脂肪酸のアラキドン酸が、血液の中に含まれる鉄イオンが触媒となって酸化されてしまうのだ。
なので、レバーの臭み取りには「血抜き」が重要。
臭みができるのをできるだけ回避するわけだね。
牛乳につけるのは、すでにできてしまった臭み成分を牛乳中の粒子成分(乳タンパクや乳脂肪)に吸着させて除去指定るんだよ。
これらの粒子は表面がでこぼこで、そこににおいのもととなる成分がくっつくのだ。
さらに、ショウガやハーブなどにより、より強い風味でごまかす、というのもやるんだよね。
いわゆる「ベルサイユ方式」で、よりにおいの強いものでごまかす、マスキングという手法なのだ。

なので、レバーをおいしく食べるためには、調理前にしっかりと血抜きをする。
ちょっと鮮度の落ちているものはすでに臭み成分ができているので、牛乳につけてその臭み成分を取り除く。
取り切れない分はショウガなどのにおいの強いものでごまかす。
という三段階方式になるよ。
どれか一つをすればいいというわけでもなく、それぞれ原理が違うので、組み合わせが大事なのだ。


油脂が酸化して品質が落ちるのは一般的なことで、俗に「酸敗」と呼ばれる現象。
炭素鎖の中に二重結合のない飽和脂肪酸は酸化されにくいんだけど、二重結合を持つ不飽和脂肪酸は、その二重結合のところに酸素が結合しやすくて、酸化されやすいのだ。
でも、いわゆる「必須脂肪酸」はみな不飽和脂肪酸なので、ヒトは摂取しなければいけないという宿命もあるんだよね。
ビタミンE(トコフェロール)のような脂溶性の酸化防止剤を使うこともあるけど、大事なのは、しっかり遮光すること。
食用油の場合、肝臓で起こっているような金属イオンが触媒となって酸化が起こることは少ないのだ。
というのも、金属員は基本的には水溶液の中に存在しているけど、食用油の中にはほとんど水は存在していないので、作用しようがないのだ。
では、なぜ酸化が起こるのかというと、紫外線が悪さをしているんだよね。

酸素の存在下で不飽和脂肪酸の二重結合炭素のところに紫外線が当たると、二重結合の一本がきれて、不対電子(ラジカル)ができるのだ、
ここに酸素がやってくると、二つの酸素原子が炭素鎖に結合した「過酸化脂質」というおのができあがるよ。
ところが、これは非常に不安定なので、徐々に分解していくんだけど、そのときに、臭気物質であるアルデヒドやケトンが発生するんだよね。
これが「自動酸化」と呼ばれるもので、空気にさらしておくだけで起こってしまうんだ!
現象的には、火は出ていないけどゆっくりゆっくりと油が燃焼して言っている状態だよ。
実際に酸化熱という形で発熱もしていて、場合によっては自然発火現象も起きたりするのだ。
なので、窒素充填とかで酸素を排除して、さらに光をあまり通さない容れ物に入れておきでもしないと、使わなくてもどんどん油は劣化してしまうのだ。

そして、この酸化反応は熱により促進されるんだよね。
なので、加熱されうると劣化が早いのだ。
揚げ油を使い続けると劣化していくのはこのため。
さっき見た反応でいやなにおいが出てくるんだよね。
これが悪い油を使った揚げ物のいやなにおい。
そして、過酸化脂質はより低分子のアルデヒドやケトンに分解されるだけでなく、となりの過酸化脂質と重合してより高分子になることもあるのだ。
重合した脂質は黄色~褐色に着色し、粘度も高くなるんだ。
換気扇のしつこい油汚れがそれ。
質の悪い揚げ物の色が悪くなって油ぎれが悪いのもこれだよ。