2022/06/04

劣化でぼろぼろ

 
日本だと、平気で1000年以上前の文書が残っているので、むしろ丈夫くらいのイメージだけど、神は劣化してすぐぼろぼろになるので、記録メディアとしてはそこまで優秀ではないのだ。
俗に、フェニキア文字が刻まれた粘土板が一番優秀とか言うよね(笑)
それこそ、4000年以上前のギルガメッシュ叙事詩が刻まれた粘土板とかが残っているわけだし。
これは、粘土板自体が安定的なもので、そのためにそこに刻まれた情報が失われないため。

記録メディアの寿命の問題は、主に2つの要因があって、1つは記録している手法によるもの。
例えば、石碑に刻まれた文字は表面が摩耗して薄くなることはあっても、それ自体が消えることはないのだ。
ところが、インクで書かれた文字は徐々に薄れていくよね。
さらに、フロッピーディスクやフラッシュメモリなどの磁気で情報を記録するタイプのメディアは、外部磁場の影響でその磁気情報が狂ったり、徐々に磁気情報が読み取れなくなったりするのだ。
書き込まれた情報が読み取れなくなる、ということ。
インクの場合は保存状況にもよるけど数百年もつこともあるけど、磁気情報の場合はたいてい5~10年なのだ。

もうひとつは、記録媒体自体が劣化してしまって情報が失われるもの。
例えば、けっこう前に話題になったけど、CDやDVDなどの光ディスクは、そこに刻まれている情報自体は50年くらいは余裕でもつのだ。
ところが、これらの記録媒体の票mんのポリカーボネート(透明のプラの部分)は、紫外線等による劣化により、下手すると数年で曲がってしまって情報が読み取れなくなるのだ・・・。
保存状態が割ると磁気ディスクより寿命が短くなることも。
これは記録媒体自体の問題で、石碑であってもそれが破壊されれば情報は読み取れなくなるし、紙も劣化してぼろぼろになるよね。

でも、最近の紙はけっこう丈夫になったので、むかしほどはぼろぼろにはならなくなったのだ。
これは紙の製造工程の違いだよ。
むかしの大量生産の用紙である「酸性紙」は、木材などからパルプを作り、そこからセルロースの繊維を取りだして固めて作るんだけど、そのまま乾燥させただけだとインクがにじんで使い物にならないのだ。
そこで、にじみ防止剤のサイズ剤というのを添加するんだけど、これに使われていたのがロジン(松ヤニ)。
やっきゅうのピッチャーの滑り止めのあれだよ。
そのまま混ぜただけだと均一に混ざらないので、硫酸アルミニウムを添加することで錯体を形成させ、セルロース繊維に化学的に定着させているのだ。

ところが、これをしてしまうと、紙の中に硫酸イオンが残るのだ。
これが酸性を示すので「酸性紙」というのだけど、なぜ酸性化というと、水分の存在かでは硫酸が生じてしまうため。
この硫酸はセルロースを徐々に加水分解してしまうので、紙の本質であるセルロースが細かく分断されるのだ。
紙を紙たらしめているのは、セルロース繊維が互いに絡み合ってシート上の構造を形成しているからなんだけど、その繊維が細切れにされるのでぼろぼろになるというわけ。

西洋ではいち早く用紙の大量生産が始まっていたので、1970年代には酸性紙の劣化が大きな問題になったのだ。
古い本がみんなぼろぼろになっていくからね。
そこで出てきたのが中性紙。
ロジンと硫酸アルミニウムを使うと硫酸が出てきて紙を劣化させるので、それとは別の方法でにじみを抑えればいい、という発想。
この場合、できあがった紙は中性~弱塩基性なので、セルロースの加水分解が起こりづらく、酸性紙の3~4倍の寿命になったのだ。
今では上質紙と呼ばれるものはみんなこの中性紙だよ。
新聞や雑誌、読み捨てるためのペーパーバックなんかは劣化してもいいので安い酸性紙が使われているけど。

でもでも、中国で紙が発明されたときは、この劣化はさほど問題にならなかったので。
それよりも虫食いなどの方が問題だったんだよね。
それは単純にそういう化学的手法でにじみを抑えていたわけではないから。
さらに、和紙の場合、使っている繊維はコウゾやミツマタをとにかくたたいて取りだした繊維で、もとから相当長くて丈夫なのだ。
このため、紙のpHの問題以前に丈夫なんだよね。
なので、鎌倉時代の本とかが残っていたりするのだ。
伝統的な和紙は大量生産には向かないけど、その精神と伝統を引き継いでいる(?)のは、日本の紙幣(日本銀行券)に使われている紙だよね。
あれもミツマタをベースにしたものだけど、選択しても寄れる程度でぼろぼろにならないというのは、紙界では相当の強者なのだ(笑)

2022/05/28

追加料金いただきます

世界的にもコロナは「おさまってきた」という認識で、徐々に海外渡航が自由にできるようになってきたよね。
日本はまだ厳しいけど、国によってはPCR検査や隔離措置を求めないところも出てきて、夏休みに海外に行きたい、と考える人も増えているそうなのだ。
人気なのはハワイやタイだって。
ワクチン接種が証明できればかなり自由に入国できるから。
でもでも、実は航空チケットを抑えるなら今月中にしないとまずいみたい。
というのも、来月から燃油サーチャージで一気に航空料金が上がるから。
2~3割増しくらいになるみたいだよ!

この制度は、もともとはオイル・ショックに端を発する原油価格高騰に対応するため、海運の分野で導入されたのだ。
あらかじめ輸送料金を設定して契約しているわけだけど、その後燃料代が高騰してしまうと下手すれば赤字にもなりかねないので、そういう燃料価格の変動に柔軟に対応できるよう、一定基準を超える価格変動があった場合は運送料金にその差額を反映できるようにしたのだ。
日本で航空分野にこれが導入されるのは21世紀になってから。
航空機燃料であるケロシン(石油系燃料)型ジェット燃料の市場スポット価格が一定額以上の場合、差額が上乗せになるのだ。
今回は、ロシアのウクライナ侵攻に伴う原油価格の高騰のあおりでこの市場価格が高騰していて、その調整が6月から適用されるので、今月中に発見しないと、ということらしい。
ちなみに、原油価格が基準価格以下になれば「上乗せ」はなくなるわけだけど、制度導入後、ごくごく短期間なくなった期間はあるものの、ほぼほぼ常に「上乗せ」分はあるようなのだ。
そういうのって基準額を見直した方がいいんじゃないの?、とも思うけど、航空料金の場合、基準価格を下回ってもマイナスの調整は行われないようなので、低めに設定しておいてもらった方がいいみたいだ。

これと同じような制度が電気料金にもあるんだよね。
それが「燃料費調整制度」。
もともと電気事業は地域独占が認められた公益事業で、厳しい料金規制が行われていたのだ。
電気料機を値上げしようと思うと国(資源エネルギー庁)に新料金案を申請して認可してもらわないといけなかったんだよね。
でも、火力発電の燃料である原油価格はけっこう変動するので、その価格変動に合わせていちいち国の認可を取らないと電気料金に反映できないのでは困るわけ。
燃料価格が上がれば電力会社のリスクになるし、燃料価格が下がれば顧客である需要家にとっては損している形に。
そこで、燃料価格に一定基準を設けて、その歯煮を超える価格変動があった場合は自動的に電気料金に反映できる仕組みを入れたんだよね。
それが燃料費調整制度。

これが電力全面自由化後も大手電力の料金体系には残っているのだ。
電力会社だけでなく、新電力と言われる新規参入事業者でも、インフラ系企業が電力分野に進出したガス系の新電力の場合は同じような制度があるよ。
そもそもガス料金でもそのむかしは規制料金で、同じような天然ガスの市場価格に連動させて自動的にガス料金を調整する仕組みがあったからだと思うけど。
なので、こういう事業者から電気を買っている場合、電気の使用量が減っても電気料金が上がることがあるのだ。
っていうか、現在はまさにそういう状態。
でも、実はこれはまだましな方なんだよね。

最近問題になってきているのは、格安の新電力と契約していたら電気料金が一気に跳ね上がったという話。
ここで問題になっているのは「市場連動型プラン」と言われる契約なんだよね。
電力の部分自由化が開始されてから、新規参入者を増やすため、自前で発電所を持っていなくても市場から調達できるよう、卸電力取引所が整備されたのだ。
で、このプランというのは、その卸電力取引所でのスポット価格に連動させて従量料金が変動するというもの。
電気が余っている状態、つまり、供給過剰の場合は、市場価格は下がるので、格安の電気料金となるのだ。
一方で、需給が逼迫すると市場価格は高騰するので、電気料金は上がるわけだよね。

現在の状況で言うと、原子力発電の再稼働が送れているので、日本全体で供給力が下がっていて慢性的な需給逼迫状態だったんだよね。
それに加えて、ロシアのウクライナ侵攻によって原油価格が高騰したため、さらに市場価格が押し上げられたのだ。
この市場には基本的に「余っている」(=自家消費を超える余剰分の)電気が売りに出るわけだけど、原子力が止まっている今、そのほとんどは火力発電の電気。
原油価格の高騰はこの市場価格にダイレクトにきいてくるのだ。

つまり、この「市場連動型プラン」を選んでいた場合、需給逼迫と原油価格高騰のダブルパンチで電気料金が跳ね上がったわけ。
報道では2~3倍になった例もあるとかいうよね。
さすがにそのまま請求できないと言うことで暫定的にもう少し小規模の値上げだけですませた事業者が多いみたいだけど、それって単純に事業者側でリスクを取っているだけなので長続きするものではないのだ。
このため、新規契約停止とか、電気事業からの撤退みたいなことになっているんだよね。
で、撤退されてしまうと、新たな事業者と契約しなくちゃいけないわけだけど、多くの事業者は新規契約停止になっているので、「詰んだ」ということになっているのだ。
原子力の再稼働でなくてもいいんだけどm早く供給余力を大幅に上げないとこの状況は回復しないんだよなぁ。
でも、いわゆる再生可能エネルギーと言われているやつは発電容量も小さいし、発電量も安定しないから、あまりよい選択肢ではないんだよね。

2022/05/21

謎の湯

この前ひさしぶりに出張に行ったとき、温泉憑きのホテルに泊まったのだ。
ちょっと高いけど、せっかくなら、ね(笑)
朝晩と湯を堪能したよ。
そんな温泉だけど、日本は火山列島と言われるだけあって、ほぼ全国的に存在しているのだ!
温泉というと、火山のイメージがあるよね。

有名どころだと、草津、箱根、別府なんかは、火山の特徴である硫黄の香りが漂っているよね。
火山活動のあるところでマグマに地下水が温められて高温になって湧出するのだ。
これは非常にわかりやすいもの。
でも、一見近くに火山がないのに温泉がある場合があるのだ。
メジャーなのは、岐阜の下呂温泉。
でも、この温泉は活断層の上にあるのだ。
つまり、地下には大きな応力ひずみがあって、そこに蓄えられているエネルギーが熱(摩擦熱)の形で放出されるとまわりの地下水を温めるのだ。
断層にはひずみがあって住み魔も多いので、水がよくしみこんでくるんだよね。
これが「温泉脈」となるのだ。
一気にエネルギーが解放されると地震になるわけ。
そして、愛媛の道後温泉なんかは、過去の火山活動の余熱で地下水が温められたもの、と考えられているよ。
k大は四国にも活火山があったんだとか。
その熱がまだ残っているというのもすごいけど。
いずれにせよ、これらは地下にある高エネルギーにより地下水が温められているものなのだ。
そして、同じような成分が溶け込んでいるので、泉質も似ているよ。

一方で、東京なんかでもいくつか「天然温泉」と言われているものがあるけど、これは火山にも断層にも関係なさそうだよね・・・。
こういうのは、よくよく見てみると、地下かなり深くからくみ上げられているものなのだ。
地表の場合、高度が高くなると100mごとに0.6℃気温が下がるけど、地下の場合、地球の中心は熱いので、100m深くなるごとに2~3℃ほど温度が上がるようなのだ。
なので、地下深くの地下水はこの原理で自然に温度が高いわけ。
これが自然に湧き出る場合は、地表に出てくるまでにすっかり冷めてしまうのでお湯ではなくなってしまうのだけど、ボウリングで地下深くまで人工的に穴を掘って、そこからポンプでくみ上げてしまえば、温かい地下水を地表に届けられるのだ。
これが東京なんかで見られる「天然温泉」のお湯。

ちなみに、温泉法の定義では、第2条で「地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表に掲げる温度又は物質を有するもの」と定義していて、温度要件か溶存物質の含有量要件を満たせば「温泉」になるのだ。
別表においては、温度要件は「25℃」となっているので、けっこう冷めていても法律上は温泉になるよ。
また、もっと低温でも、この定義は「又は(or)」になっているので、一定量以上の溶存物質があれば温泉を名乗れるのだ。
こういう低温の温泉(なんか矛盾しているけど・・・)の場合は加温するんだよね。
逆に、草津のように超高温で湧出する場合は「湯もみ」したり、加水して冷ますのだ。
人間にとってちょうどよい温度のお湯が出てくる場合ばかりではないということ。

しかしながら、これらにも属さない温泉があるのだ。
それが、和歌山の南紀白浜温泉や兵庫の有馬温泉。
万葉集の時代から知られる温泉だけど、そもそも近畿地方には活火山なんてないのだ。
活断層はあるけど、そこまで大きなものはなし。
ましてや、地下から無理矢理くみ上げているわけではないのだ。
長らく謎の温泉とされてきたんだよね。
ところが、ごく最近になって、ひとつの仮説が出てきたのだ。
それは、南から来るフィリピン海プレートが四国沖の南海トラフでユーラシアプレートの下に沈み込んでいるところで発生している高温の水が滲出してきているのではないか、ということ。
プレートには水も含まれているんだけど、沈み込む場所付近で軽いものはそこで放出されてしまって、高温の水が出てくると見られているんだ。
それがしみてきてわき出してきているわけ。
確かに白浜や有馬の湯は塩分濃度が高くて、他の温泉と泉質がかなり異なるんだよね。
この沈み込みの場所から離れてくると、プレート境界面の熱でマグマが発生し、そのマグマで地下水が温められ、という形でスタンダードな温泉ができるのだ。
これが多くの九州の温泉。

でも、まだ不思議なこと。
有馬温泉は活断層のちょうど上にあるのだ。
なので、南海トラフ付近のプレート境界面で放出されたもともとフィリピン海プレートに含まれていた高温の水が、その活断層の隙間にしみこんで地表まで出てくるんだよね。
しかしながら、南紀白浜にはそういう活断層はないのだ。
和歌山の活断層は中国・四国の間の中央構造線だけど、そこからははるかに南。
よくわからないけど、和歌山南部でそうしてできた高温の地下水が湧出しているっぽいんだよね。
というわけで、まだまだ謎が残るのだ。

2022/05/14

海のロボ

知床沖の事故で、沈んだ船の調査に無人潜水機が使われているのだ。
100mを超える深さだと、ダイバーが潜って探ってくる、というのが難しいんだよね。
そもそも潜水や浮上をゆっくりやらないと潜水病になってしまうし、酸素タンクの容量にも限りがあるので、活動時間も相当限られるわけ。
そこで、ロボットに代わりにやってもらおう、というのは自然な発想。
もともとヒトがある程度以上の深さの海中に潜ろうとすると、耐圧や酸素確保の問題で制約が大きいので、だったらロボットをさっと沈めて調べてもらおう、ということなのだ。

今回の事故で使われているのは「ROV(Remotely Operated Vehicle)」と呼ばれるもの。
一般的には「遠隔操作型潜水機」と言われるもの。
海中では電波で信号を送れないので、有線で母船につながっていて、水上で操作するのだ。
正太郎少年が鉄人28号を動かしているのと同じ。
マリアナ海溝を潜ったことでも有名な海洋研究開発機構の「しんかい6500」は中に人が乗るのでガンダム型だね。
ところが、このケーブルが問題で、ケーブルの長さの分しか活動できないのだ。
深さも広さもどうしても制限が出てくるんだよね。
かといってケーブルを長くすればいいというものでもなく、あまりにケーブルが長いと絡んだりするのだ。
今回の知床の調査でもケーブルが絡んでしまって操作不能に陥っていたよね・・・・。
水上でヒトが操作できるので、その状況に応じて臨機応変にいろんなことができるのが魅力だけど、この短所は大きいのだ。

そこで出てくるのが、自律型の無人潜水機。
「AUV(Autonomous Underwater Vehicle)」と呼ばれるものだよ。
こちらはあらかじめ与えられたプログラムどおりに動くロボットで、ロボット掃除機のルンバのようなものを想定すればよいのだ。
ケーブルが不要なので、深さや広さには自由度があるんだけど、逆に、ケーブルを介しての電力供給ができないということなので、バッテリーの容量から来る活動限界があるのだ。
将来的によい蓄電池我ができれば連続潜行時間は伸ばせるど、これがひとつのネック。

もう一つは運用の自由度には限界があるのだ。
自分で周囲の環境を認識して動作を変更することはできるのだ。
これは障害物を回避するルンバと同じ。
さらに、必要に応じて音波で多少の通信はできるのだけど、それでもROVのようには自由自在には動かせないんだよね。
このあたりは小惑星探査機のはやぶさに似ているかな。
はやぶさの場合はあまりにも遠いところにいるので通信に制約があるのだけど、リアルタイムで自在に動かせない、という点では似ているのだ。

でもでも、技術の進歩は著しくて、最近では、複数のAUVが互いにコミュニケーションを取りながら編隊で活動する、なんてこともできるようになってきているみたい。
宇宙でも小型衛星が相互にコミュニケーションをとって編隊飛行(?)する「コンステレーション」というのがあるけど、宇宙では電波や光で高速・大容量の通信が可能なのにたいし、海中では音波による低ビットレートの通信しかできないので、なかなか難しいみたい。
それと、電波信号を受信するGPDが使えないので、位置情報をリアルタイムで更新するには別の手立てを考える必要があるのだ。
これには、海底に「海中灯台」のような形で位置情報を音波で発信してくれる装置を設置するなどを考えているみたい。
調査海域があらかじめ決まっていないと使えない手だけど。
でも、こういうのができると、「海のドローン」的に、ちょっと小さめのものが複数機で調査する、みたいなことができるようになるので、今回の事故調査なんかにも大きく役立ちそうなのだ。
広い海域でつぶさにローラーで調べなくちゃいけないなんて場合は有用だよね。

このようにROVもAUVも長所短所があるので、用途に応じて使い分けられているのだ。
もちろん、もっともきめ細やかな対応ができるのは「人の手」なわけで、そこは有人でやる必要があるんだろうけどね。
それでも、ルンバのように無人でできることが増えればそれだけ効率的なのだ。
もうすぐ、海の中でロボットが活躍する時代がやってくるね。

2022/05/07

日本のエバーグリーン

大型連休突入!
そして、5月のこの連休と言えば、こどもの日の柏餅。
けっきょくはただのあん入りの餅なんだけど、なんとなく季節ものとして食べたくなるよね。
これも柏の葉の存在が大きいかな?
香りは移っていてさわやかだけどね。

「カシワ」は、ブナ科の植物で落葉広葉樹でありながら冬になっても葉が落ちないので古代日本では申請なきとされてきたんだ。
神が宿る木とも。
そして、葉にはよい香りがあって、厚手で丈夫。
その特徴から、お皿の代わりに食べ物を載せたり、ものを包んで蒸したりするのに使われたんだ。
ここから「カシキハ(炊葉)」と呼ばれるようになり、それがいつしか言いやすい「カシワ」になった、と言われているよ。
なので、餅のようなものを包むのもむかしから行われてはいたんだけど、皐月の「端午の節句(菖蒲の節句)」に縁起物として柏餅が食べられるようになるのは、江戸時代の武家文化。

カシワはブナ科なので、秋に葉が枯れ、落ちるには落ちるんだけど、それは翌年新芽が出てから。
つまり、次の葉が出てくると、前の葉があとを譲って落ちるというわけ。
これが子々孫々代を重ねていくように見えて、武家社会では尊ばれたのだ。
もともと「菖蒲(しょうぶ)」は「尚武」につながるなんてありがたがっているくらいだから、こういう連想は重要なんだよね。
もとは18世紀後半くらいに江戸で始まった文化のようだけど、当時は参勤交代で各地の大名が江戸と地元を行ったり来たりしたので、全国区に広がっていったみたいだよ。
ちなみに、柏の葉は香りはつけてくれるけど、それ自体は硬くて食べられないのではずすのが正解。
桜餅のように葉っぱも一緒に食べるものではないのだ(笑)

ところが、問題はこの「柏」という字なんだよね。
カシワ自体は中国にもある木なんだけど、中国で「柏(はく)」というと、ヒノキ科の常緑針葉樹を指すのだ。
つまり、落葉広葉樹のカシワとは正反対!
日本で言うと、コノテガシワ、シダレイトスギ、イブキ、アスナロなんかがこれにあたるんだって。
中でも、柏槙(びゃくしん)と言われるイブキは、「松」と並んで「松柏」と称され、常緑樹の代表選手なのだ。
そう、この「松柏」のときの「柏」も「カシワ」ではなくて、中国の方の「柏(はく)」なのだ。
そして、日本のカシワを表す場合は、正式(?)には「槲」というむずかしい字を使うようだよ。
この字の場合は中国でも「カシワ」を指すのだ。

では、なぜこうした誤認が生まれたのか。
それこそ想像の域を出ないんだけど、調べた限りでは、樹木としての携帯は全く違うのだけど、その樹木の持つイメージが似通っているので、書物のテキスト情報でしか海外の情報を知り得ない古代においては混同されてもおかしくなかったのではないか、ということ。
中国の「柏(はく)」は、
①常緑樹であって、縁起物として門前などに植えられる神聖なきとして扱われた。
②葉や木材によい香りがして、木の葉を酒につけて香り付けをすることもあった。
という特徴があって、日本の「柏(かしわ)」は、
③冬になっても葉が落ちないことから神聖視され、大きな邸宅や字者などに植えられた。
④葉が大きくよい香りがし、酒食の際に打つわとして用いられた。
という特徴があるんだよね。
で、よくよく見てみると、①と③、②と④はちょっとずつイメージがかぶっていることがわかるのだ。
①と③は冬でも葉が落ちない神聖な木というイメージ、②と④はよい香りがして酒食の際に供されるというイメージ。
それこそ命がけで遣唐使を送っていたわけで、知識人といえども中国本土で「柏(はく)」という樹木の実物を見たことがあるわけではなく、知識としてこういうものというイメージを知っているだけなんだよね。
そんなときに、似たようなイメージを持つ日本の別種の樹木があった場合、混同してもおかしくないのだ。

ちなみに、この「柏」の日中問題はけっこう古くからどうも違う木を指しているようだとはわかっていたようだけど、「槲」という字は難しいし、熟語として出てくる「松柏」なんかの場合の「柏(はく)」は正しい方の植物で認識されていたので、日本人間だけでコミュニケーションしている分には全く困らず、直されなかったようなのだ・・・。
知る人ぞ知るで、漢籍を学ぶ人たちが、漢文に出てくる「柏(はく)」は日本で言う「柏(かしわ)」ではないよ、ということを語り継げばよかったのだ。
そんないい加減な、と思うけど、日本ではいまだにゲームに使うカードのこと「トランプ」と呼ぶけど、英語でのトランプの原義は「切り札」というものでは、カードそのものはカードと呼ぶんだよね(笑)
同じようなことは現代でも普通にあるというわけなのだ。

2022/04/30

ホネを見つけた

山梨の山の中でヒトのものと思われる骨が発見されたのだ。
数年前から行方不明になったいる子どものものかもしれない、ということで大きく報道されているよね。
極一部の骨しか見つかっていないので、さらに山の中を捜索するみたい。
動物や鳥が別の所から運んできた可能性もあるからね。
で、それ以上に重要なのは、今後この骨を調べて、行方不明になっている子どものものかどうかを確かめる、というのだ。
DNA鑑定をするとか。
ここで気になったんだよね。
いわゆる「骨」といわれると、そんなにいろんなことがわかるとは思えないのだけど、どうも最近の技術はかなりの発達を遂げていく、まさにいろんなことがわかるようになっているようなのだ。

まずもって一番大事なのは、その骨がヒトのものなのか、動物のものなのかの判別。
まるっと一人又は一体分の骨があればわかりやすいけど、一部しかない場合は素人目にはわからないよね・・・。
伝統的には、専門家が骨の形状や構造なんかからヒトのものかどうかを判別していたのだ。
でも、今はもっと進んでいるのだ!
あらかじめヒトや様々な度物の骨の形状や構造のデータが膨大に登録されたデータベースがあって、それと発見された骨を照合して、その骨が何の骨かを調べるんだって。
まさにビッグデータとAIの世界。
さらに、それにシミュレーションで肉付けもできるようになっていて、ヒトの場合は、頭蓋が見つかっていれば、顔や頭の形を予測して再現できるそうなのだ。
博物館なんかで○○原人の顔を再現しました、ミイラとして埋葬されたヒトの顔を再現しました、なんて展示があるけど、それと同じような技術。
これはその骨が誰であるかを同定する上で極めて有用なツールとなるよね。
頭蓋骨全体が見つかっていないと適用しづらいけど。

古い時代には、主に歯の治療歴から同定していたんだよね。
行きつけの歯科医院に残っている虫歯等の治療記録と見つかった頭蓋骨の歯を照合するのだ。
でも、これも歯のついている部分が見つかっていればできるんだけど、手や足の骨だけだと使えないよね。
頭以外の骨だけだと、骨の大きさや太さからある程度体格が予測できるのと、骨の状態を見るとある程度の年齢と性別が予測できるので、中肉中背の30代~50代の男性、みたいなことが予測できるだけだったのだ。
もちろん、骨折の痕なんかがあればもっと情報が得られるけど。

流れが変わるのは、DNA鑑定の技術が発達してから。
本当の白骨で、骨以外何も残っていないとさすがにきついけど、通常は肉片やらが少し残っていたり、骨の中心部に骨髄が残っていたりするのだ。
そうすると、そこからDNAを抽出することができて、それが本人同定ができるんだよね。
ただし、DNA鑑定が導入された当初はけっこうな量のサンプルがないと調べられなかったので、毛根だけ、骨だけ、みたいな状態だとほぼお手上げだったんだよね。
今はPCR方によるDNA増幅技術の発達と、保存状態のよろしくないサンプルからの少量のDNA抽出技術が進歩したので、決定的な方法としてDNA鑑定がいろんな場面で使えるようになったのだ。
今回も骨に少し残っているであろうDNAと、ご家族から提供を受けた乳歯などに残っているDNAを照合することで確認するみたい。

というわけで、現代の技術では、そんなに大きくない骨片が見つかっただけでも、それが何の骨か、誰の骨化の情報がけっこう得られるようになっているのだ。
そう考えると南下すごい世界になっているよね。
現在でもかなりの人数の行方不明者が毎年出ているし、それなりの数の身元不明遺体がやはり毎年見つかっているようなので、コストと手間を考えなければ、それなりの数でマッチングができるかもしれないんだよね。
戦後すぐは、戦争で死んだと思われていた兵隊さんが実は生きていてなんとか命からがら帰還したら、奥さんはすでに再婚していた、みたいな不幸な話はよくあったそうなんだよね。
そのとき、死体の一部なんかを仲間が持ち帰ってご遺族に渡していたみたいなんだけど、今の技術があれば、こういう不幸な誤解はかなり防げるのだ。

2022/04/23

本当に意外と知られていなかった事実

 最近、ネットのニュースで、「レジ袋有料化は実は義務ではなかった」というのを見たのだ。
で、さっそく記事を読みに行ったんだけど、なんとなくわかったようでわからない・・・。
どうしても気になったので、自分でちょっと法令の枠組みを調べてみたのだ。
これはちょっと驚きの結果だった。


この話のおおもとの法律は「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」、通称「容器包装リサイクル法」。
平成7年(1995年)にできた法律で、いわゆる「資源ゴミ」の収集とリサイクルを規定した法律だよ。
ペットボトルやガラス容器、プラスチック容器など、リサイクルが可能なものは一般ゴミとは別に回収し、リサイクルすべきことを定めているのだ。
つまり、この平成7年のタイミングで資源ゴミの回収の制度が本格的に始まったというわけだね。
そういう意味ではけっこうエポックメイキングな法律なのだ。

そして、この法律は平成18年(2006年)に改正されて、そのとき、レジ袋等の容器包装を多く用いる小売事業者(スーパーなど)に対して、レジ袋の使用抑制のための措置を講じるべきことを求めるようになったのだ。
このときは、①レジ袋を有料化する、②レジ袋を使わない人にはインセンティブを与える(割引、ポイントアップなど)、③環境負荷の少ないレジ袋(厚手の再使用可能なもの、バイオプラスチックを使ったものなど)に転換する、といった選択肢から自由に選べたんだ。
確かに、これくらいのタイミングで、レジ袋を有料化するスーパーが出てきたり、マイバッグの場合はプラスでポイントが付加されるようになったりしたよね。
これは覚えてる。
でもでも、このときは有料化するところはそんなに多くはなくて、マイバッグ仕様による割引やポイント加算が優勢だった気がするのだ。
数円のこととは言え、上乗せでお金を取られるというのは消費者にとって忌避されるので、マイバッグを使うといいことがあるよ、という誘導策の方がイメージがいいよね。

そして、今回のタイミングで、これまでは①~③のどれでもよかったものが、①の有料化が基本、という枠組みに変わったのだ。
③の場合のレジ袋は有料化しなくてもよいことになっていて、一部のファストフードチェーンなんかはこの例外を使って無料でレジ袋を提供し続けているけど、スーパーやコンビニなどの小売大手は、本来有料化しなくてもよい紙袋も含めて、すべて有料化になっているよね・・・。
便乗有料化と言われている状態なのだ。
現在の制度では、レジ袋は有料が基本で、環境負荷の少ないレジ袋の場合は例外的に有料化しなくてもよい、ということで、その他、②のマイバッグ使用に対してインセンティブを与える取組も推奨、みたいな感じだよ。
でもでも、実は「有料化が基本」というのは、法律上の義務ではない、というのが、冒頭の記事の言いたいことだったんだよね。

平成18年改正のタイミングで導入されたのは、事業者が取り組むべき「容器包装の使用の合理化による容器包装廃棄物の排出の抑制」の判断基準を国が示す、という枠組み。
これは省令(財務省・厚生労働省・経済産業省・農林水産省の共同省令)で、本来は法的拘束力があるものではないのだ。
各省が独自の判断で制定できる下位法令で、法的に拘束力を有する義務を課すには国会で審議される法律であることが必要なのだ。
その法律の施行に必要な範囲で細かいことを定めるのが下位法令と言われるもので、閣議で決定する政令と各省が制定する省令があるわけ。
もともと「判断基準」と言っているだけあってだけあって、あくまでも細かい基準を示す、という位置づけのものなのだ。

では、なぜこれが「有料化が義務になった」と受け取られるのか。
これがもう一つのポイントだよね。
実は、その枠組み自体は平成18年改正で導入されているんだ。
新たに第7条の4というのが導入されて、さっきの「判断基準」を国が示す、ということになったのだ。
で、その次の第7条の5において、主務大臣(財務大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣又は農林水産大臣)は、この判断基準に基づいて事業者に必要な指導及び助言ができる、と規定されているのだ。
さらに、続く第7条の6では、事業者に対して、「容器包装の使用の合理化による容器包装廃棄物の排出の抑制」の促進のための取組を主務大臣に定期的に報告する義務を課していて、この報告を聞いて前条の「指導及び勧告」をする、という流れになっているのだ。
でも、これだけじゃ終わらないんだよね。

いわゆる「伝家の宝刀」になっているのが、第7条の7。
これは「勧告及び命令」という「指導及び勧告」より一段上の措置について定めている条項。
まず、定期報告を受け、必要に応じて指導・勧告を行うのだけど、事業者の取組が「著しく不十分」と認められる場合は、必要な措置をとるべきとの勧告、いわゆる「是正措置勧告」を出せることになっているんだ。
7第条の5の勧告は「こうしてね」というだけなんだけど、7第条の7の是正措置勧告は、事業者がそれに従わなかった場合、その旨を公表できる、ということになっているんだ。
つまり、是正勧告に従わない不埒な事業者は名前を公表して社会的制裁を加える、ということ。


さらにさらに、公表された上でなお是正措置暗黒に従わない事業者に対しては、審議会の意見を聞いた上で、勧告に従った措置をとるよう命令することができるのだ。
これは是正措置命令というやつ。
この是正措置命令は罰則付で、従わない場合は、50万円以下の罰金が科せられるのだ(第46条の2)。
かなり道のりはあるんだけど、事業者が国が示した判断基準に従わないと、是正措置勧告が出て、それに従わないとその旨を公表され、それでも従わないと是正措置命令が出て、これまで無視すると罰則、という流れ。
何段階かステップを踏んでいるけど、正当な理由なく判断基準に従わない、と見なされると、手順を踏む必要があっても罰金までいく、ということなんだよね。
これが「有料化が義務になった」と言われるゆえん。

当初の判断基準ではレジ袋有料化はオプションのひとつでしかなかったわけだけど、その後の判断基準の改定によってレジ袋有料化が基本となったので、この判断基準に従うことが求められるようになったのだ。
ボクはてっきり法改正があったから有料化された、と思っていたんだけど、実は実は、省令が改正されただけだったんだよね・・・。
もちろん、省令である判断基準の改定も勝手にできるわけではなくて、この場合は規制の改廃に係るものに当たるので、法律に従って意見公募手続、いわゆる「パブリック・コメント」を減ることが必要なのだ。
国からすれば、そのときに意見を言わなかっただろ、ということなんだろうけど、正直、そんなパブコメをしていたなんて知らなかった・・・。
事業者向けには説明会なんかもしていたみたいだけど。
なんか、だまし討ちされているような気がしないでもない。
こういう所に納得感がないから、レジ袋有料化はとにかく評判が悪いんだろうなぁ。