2023/12/16

超電磁力

 世の中には磁気治療器というものがあるのだ。
磁力によって治療をしようというもの。
もっとも身近な例で言えば、ピップエレキバン。
肩や腰にばんそうこうで強力な磁石を貼っておくと、血行が良くなくなってコリがほぐれるというやつね。
これは旧薬事法で「管理医療機器」の許可を得ているので、臨床試験をして安全性があり、一定の効果もある、と認められているのだ。

なぜ磁石をくっつけておくと血行が改善されるのか。
ちょっとネットで調べてみると、赤血球の中で酸素運搬に使われているヘモグロビンの中にある鉄イオンに磁力が影響を及ぼして云々とかあるんだけど、どうもこれはいめーじでそう語られているみたい・・・。
ピップの公式説明によると、磁気が血管内皮細胞に働きかけ、血管拡張物質である一酸化窒素(NO)の合成が活性化されるから、と書いてあるよ。
血管内皮細胞からNPOが放出されると、まわりの平滑筋が弛緩し、血管が拡張するのだ。
これにより血流が良くなる、というわけ。
心臓病の薬で使われるニトログリセリンは、体内で一酸化窒素を出し、同じメカニズムで血管を拡張することで作用を発揮しているんだ。
バイアグラも局所的に血流量を増やすわけだけど、これもNOを介したメカニズムみたい。
はじめは心臓の薬として開発されていながら今では発毛役になっているミノキシジルも同じ(笑)

おそらく、最初に旧薬事法で最初に承認を受けたときは、周りの体温が上がったとかなんとか状況証拠で結構改善効果が見込める、としていたと思うんだよね。
でも、今となっては、血流量や、場合によっては、NOの放出も計測できるので、公式見解で出すくらいで嘘はないはず。
なので、磁石を貼っておくと血管拡張により血流が改ざんされる効果はあるんだよ。
それが肩こりや腰痛の緩和にどこまで意味があるのか、というのが問題なだけで。
ここから先は「感覚」の問題になってくるから、効果測定が難しいんだよね。

海外の論文では、磁石を貼るだけでは効果なし、というのが主流で、そういう論文も多いのだそうだけど、これは主に「
痛みの緩和」という効果についてのものなんだって。
痛みについてはもともと「疼痛緩和」みたいな分野があって、効果検証はそれなりにできるようになっていて、そのスケールで測ると、有意な影響は観測できない。
っていうか、偽薬効果(プラセボ効果)以上のものはない、という結論みたい。
それが正しいなら、腰痛や四十肩みたいな痛みの症状はそうなんでしょう。
問題は、肩こりや腰のはりみたいな、なんかこわばっていて違和感を感じる、みたいな症状に対してはどうなのか、ということ。
これらは極めて感覚的だから、本当に聞いているのか、プラセボ効果なのかはなかなか判別できないよね・・・。

逆に言えば、もっとポジティブに受け止めて、肩や腰の不調の原因は「血流の滞り」なんだと信じ切って、血行が改善されればよくなる、と思い込めば、けっこう症状は緩和されるはずなんだよね。
「病も気から」の世界ではあるけど。
リハビリや整体もけっきょくはほぐして動かして血流をよくする、っていうことなので、それと同じ。
それより簡単に磁石で血行が改善する、ということなのだ。
こればかりは「信じる者は救われる」方がよさそうだ。
もともと磁石そのものにはほぼほぼ有害な影響はないし、肩こりや腰痛は生死に直結する症状でもないから。
これが抗ガン治療とかだったら困るわけだけど・・・。

2023/12/09

植物の乳

 最近、「第3のミルク」というのをよく目にするようになったのだ。
「第1のミルク」はもちろん牛乳。
「第2のミルク」は羊乳や山羊乳ではなく、豆乳なんだよね。
スタバでもかなり前から「ソイミルクに変更」なんてオプションがあったくらいで。
で、さらにその豆乳に変わる、植物性のミルクというのが「第3のミルク」なのだ。

具体的には、アーモンドミルクやライスミルク、オーツミルクなど。
どれも固形物を水と一緒にミキサーにかけてからろ過した乳濁液。
ものによっては粒子が大きいので沈殿ができることもあるみたい。
水に溶ける、あるいは、ろ過されない微粒子として均一に分散して懸濁されるものだけが残ったものだよ。
大豆で言えば、大豆をゆでてミキサーにかけ、ろ過したものが豆乳、残った残渣がおからだよね。

この中でも、どうもオーツミルクに注目が集まっているとか、いないとか。
というのも、ちょっとオーツミルクの場合は栄養面で性質が違うんだよね。
もともと健康食品としてオーツ麦(オートミール)が注目を集めたいたこともあるのかも。
オーツ麦は低カロリーでミネラルに富み、グルテンフリーなので、オートミールやグラノーラ、ミューズリーが健康的な朝食として注目を集めたんだよね。
グラノーラはかなり甘くしてあるからわりとおいしいのだけど、低カロリーというメリットが生かせないんだよね。
かといって、ミューズリーは正直味気なくていまいち。
オートミール(ポリッジ)に至ってはまずいと言われるからね。

そこでオーツミルクになるわけ。
ろ過しちゃうので食物繊維の多くは失われることになるんだけど、オーツ麦の場合は水溶性の食物繊維も多く含まれているので、完全にゼロにはならないのだ。
これは豆乳との大きな違い。
もそもそした触感がなくなって、ほのかな甘みだけが残るので、ミルクとして使うのにちょうどよいみたい。
しかも、オーツ麦はもともとカルシウムを多く含んでいて、それがオーツミルクにもそのまま残るのだ!
豆乳の場合はタンパク質は多いけど、カルシウムはないんだよね。
なので、乳糖不耐症や牛乳アレルギーがある場合は、オーツミルクがけっこういい代替品になるんだって。
ヴィーガンの人なんかはカルシウムが不足しがちだから、これはありがたいかもね。
ただし、タンパク質や脂質は少ないので、牛乳の代わりに使うとかなりあっさりにはなるのだ。

ちなみに、このオーツミルクはミキサーがあれば普通に作れるみたいだよ。
ただし、手作りの場合はどうしても粒子が荒くなるので、沈殿しやすいから使うたびによくかき混ぜた方が良いみたい。
保存性もわりと高いので、都度都度作るということでもないみたいだよ。
とはいえ、鉄づくりの場合は衛生環境に限界があるから、そこまで長期保存はできないだろうけど。
ちなみに、ろ過して残った残渣はオートミールクッキーの材料なんかにもなるそうなので、買ったはいいけどおいしくないから食べていないオートミールがあったらオーツミルクにしてしまうのもありなのかもね。

ライスミルクはオーツミルクと同じようなものだけど、いまいちはやらないのは、もともとコメは糖質の塊なので、ライスミルクにするとカロリーの高いデンプン液になるんだよね。
玄米のままミキサーにかければある程度ビタミンやミネラルは残るけど、食物繊維はほぼほぼ残らないよね。
それよりも、同じようなものなら発酵食品である甘酒の方が優れているのだ。
デンプンが糖化されて甘みがあるし、発酵過程でビタミン類なんかもあり、かつ、ろ過しなくても液状なので多少の食物繊維があるのだ。
ま、コーヒーにちょっと入れようとかはあまり思わないかもだけど。
甘酒は「飲む点滴」と言われるくらい栄養価は高いから、ミルクの代替品っていうよりは、カロリーメイトのドリンクみたいなものなのだ(笑)

2023/12/02

アンチ・ハードボイルド

 うちはわりと温泉卵を常備しているんだよね。
何かあとちょっとトッピングしたい、という時に便利なのだ。
生卵だとチャんちょ料理しなきゃ、って感じだけど、温泉卵ならのっければいいか、って軽く使えるから。
それと、納豆には生卵はよくない(納豆に含まれるビオチンが白身の中のアビジンにより吸収を阻害されるため)、ということを聞いてから、納豆と混ぜる時もできるだけ温泉卵にしているんだ。
納豆の件は気にするほどじゃないとも聞くけど。

でも、この温泉卵って作ろうと思うとコツがいるんだよね。
原理が分かっていれば簡単なだけど、ゆで卵を作るときに時間を短縮すればいいはず、なんて思っているとだめなのだ。
君だけ固まってない半熟卵になってしまって、白身が固まるんだよね。
もっと短い時間でってやろうとすると、白身がちょっと固まったくらいで黄身は生のままとか。
問題は時間じゃなくて、温度なのだ。

なぜ温泉卵ができるのか。
それと、白身と黄身で固まる温度が違うから。
黄身(卵黄)は70度くらいで固まるんだけど、白身(卵白)は80度くらいないと固まらないんだよね。
つまり、この間の温度で温めれば、黄身は固まるけど白身は完全に固まらない温泉卵ができるのだ。
もともとはお風呂にしては熱めのオン繊維卵を付けておくと、黄身だけ固まって白身は流動性があるままに温まる、というところから「温泉卵」と呼ばれるんだよね。
なので、ゆでながら作ろうとすると逆に難しくて、魔法瓶とか保温できる環境で卵を温めてあげると失敗しないのだ。
スーパーなんかで普通に温泉卵が売っているけど、温度管理すればいいだけだから、実は工業的には作りやすいんだよね。

では、なぜ白身が固まって黄身が固まりきっていない半熟卵ができるのか?
これは、熱伝導の問題なんだ。
卵をお湯の中で温める時、表面から中心に向かって徐々に熱が伝わっていくわけだけど、中心温度が黄身が固まる温度になる手前で加熱を止めればいいのだ。
通常は、80度、90度を超える熱湯に卵を入れて数分ゆでるんだよね。
表面に近い白身はすぐに熱が伝わって固まり、中心部の黄身は徐々にしか加熱されないので、70度になる前に火を止め、すぐに冷やしてそれ以上熱が伝わっていくのを防ぐ、ということ。
そうなんだけど、これは難しくて、多くの場合、経験則で語られるのだ(笑)
常温に戻した卵なら、〇度のお湯に入れて数分温める、水からの場合は〇分で火を止める云々。
熱伝導の問題なので、黄身の中心にサーモスタットを入れたりすればまた別だけど、これはパラメータを振って最適条件を導き出すしかないのだ。

ちなみに、お湯に割った卵を入れて作るポーチドエッグの場合は見た目でわかるので、コツさえつかめば作るのは楽なのだ。
白身が広がりすぎないように少しお湯を入れたお湯の中に静かに卵を落とし、周りの黄身が少し固まってきたところで引き上げ、冷水にとって熱を冷ます。
すると、黄身はほぼ生、白身が流動性を残す程度に半熟に固まったポーチドエッグができるのだ。
ポーチドエッグというと日常的じゃないけど、半熟卵入りのお味噌汁でもこれは同じだよ。
白身が固まってきたかな、というところで火を止めてお椀に移せば、半熟卵入りのお味噌汁が出来上がるよ。

ちなみに、牛丼とかのテイクアウトで生卵が温泉卵に変更になることがあるけど、これはあんまり意味がないみたい・・・。
というのも、温泉卵であるという以上、卵の全体は絶対に75度以上にはなっておらず、完全に熱殺菌できていないのだ。
衛生管理上は生卵とほぼ同様の扱いが必要なんだって。
半熟卵でもこれは同じで、中心部はやっぱり75度未満のはず。
というわけで、ハードボイルドのゆで卵にするか、いっそ炒り卵(スクランブルエッグ)にするかしないと駄目なわけだ。
気持ちの問題なのかもだけど。

2023/11/25

くさいものには・・・

 「デスマフィン」なるものがネット上をにぎわせているのだ。
そう、デザフェスで3,000個販売されたというマフィン。
納豆のようなにおいがした、糸を引いていた、食べたらおなかを壊した、などの報告が相次ぎ、食中毒事案として報告され、回収されることになったんだよね。
その回収と返金の対応が、ということでさらに炎上しつつあるけど。
どうも、個人でやっているお店のようで、対応にも限界はありそう。
だからこそ、そういうイベントで大量販売というのはリスクがあったわけだけど。

厚生労働省の食品リコール情報のページで公開されているものはこれ
「食品衛生法違反のおそれ」という名目になっているんだけど、回収数・回収率なんかも公開される仕組みなんだね。
こんなのがあるの初めて知った。
消費者庁の方は食品以外も含めてリコールのあったものについて情報を公開しているけど、やはり厚生労働省の方のサイトの方が情報量が多い。

で、この厚生労働省の方のサイトで、今回のリコール事案が「CLASS I」になっていることも話題なのだ。
最悪死亡事例も出るおそれがある、という最上位クラスらしい。
今回報告されているのは「腹痛、嘔吐、下痢」なんだけど、こういう食中毒は、老人や子供がなくなるケースもあるからね。
で、このクラスは最強の毒と言われているボツリヌス毒素やフグ毒のテトロドトキシンと同じ分類になるので、「デスマフィン」なんて呼ばれ始めたのだ。
せいぜい「腐敗したマフィン」だとは思うんだけど。
まずはものを回収したうえで今後分析してから、ということなんだろうけど、おそらくは普通に「雑菌が繁殖して腐っている」だけだとは思うんだ。
ボツリヌス菌があるのかどうかは今のところ不明。

すでに情報があふれているけど、このお店は個人で回しているようで、こういうイベントに参加する際は、普段やっているお店を閉め、「作りだめ」して臨むようなんだよね。
本人がSNSで発信していた内容によれば、5日間朝から晩までお菓子を作り続けていたらしい(マフィン以外にもクッキーなどの商品あり。)。
で、この先に作っておいた商品の保存状態が悪くいて、ダメになってしまったのだ。
これも本人が発信しているところによると、冷房を聞かせた常に18度以下を保った部屋に置いておいた、というんだけど、4度の冷蔵ならまだしも、それって温度高すぎじゃない?、と直感的に思うよね・・・。
買った後は冷蔵保存を推奨しているみたいだし。
しかも、放送されているラップの状態などを見るに、完全に冷め切っていない、まだ温かい状態でラップでくるんでいるのではないか、とみられているのだ。
そうなると、ラップで保温・保湿が保たれて、まさに雑菌が繁殖しやすい環境になっている。
過去にも同様のイベントに出店していたみたいだけど、そのときはこういう話は出なかったのだろうか?

大企業の工場で作られる食品の場合、衛生管理がめちゃくちゃ厳しくて、可能な限り雑菌に触れないように製造されるんだよね。
例えば、防腐剤がたっぷり入っているからなかなか腐らないといわれているヤ〇ザキのパンだけど、実際はほぼほぼ無菌状態で製造されているので、未開封状態であればほぼ雑菌フリーで腐りにくいのだ。
一方で、街中にあるパン屋さんの場合はそこまで衛生管理ができないわけで、どうしても雑菌に触れてしまうから腐りやすいのだ。
つまり、防腐剤の有無の問題じゃなく、製造過程の腐敗の原因となる菌の有無の問題なのだ。
今回のマフィンの場合、本人がSNSで発信していた画像を見る限り、正直、5日間常温で放っておいていいような環境ではなさそう。
これはもう知識不足からくる「人災」なんだよなぁ。

ちなみに、ボツリヌス菌の場合は、そこらへんの地面に普通にいる「芽胞」の状態だと熱に強く、いわゆる「オートクレーブ」(密閉容器に入れて120度で4分以上加熱)しないと常温保存可にはならないのだ。
普通に焼き菓子として招請してラップにくるんだけじゃなねぇ・・・。
しかも、金は死んでも、毒素は毒素として残っていて、この毒素を失活させるには、80度で30分以上(100度なら数分以上)の過熱が必要。
今回の場合で言えば、焼く直前まで作業したものを低温で冷蔵又は冷凍しておいて、当日焼いてその日のうちに消費、というのが正しいみたいだ。
でも、イベントでは「焼きたて」として売られていたみたいなんだよなぁ。

2023/11/18

反省してまーす

 タカラジェンヌのいじめの問題で、運営側が調査結果を会見で発表したのだけど、案の定というか、やっぱり炎上したのだ。
そもそもやる気なさそうだったけど、「いじめはなかった」というのは終始言い訳するような形だったからね。
そりゃあ、反菅感情を抱かれるよ。
おそらく、後世に語り継がれる「失敗謝罪会見」の例のひとつになってしまったね。

欧米式だと、「謝罪する」=「自らの非を認める」で、会見でもなんでも謝ってしまうとその時点で賠償することをコミットすることになるので、絶対に謝らないんだよね。
それはそういう文化だから仕方ない。
そもそも基本的にもめごとは司法で判断して決着させる、というのが基本の人たちだから。
訴訟する、ということに躊躇がないし、下手に和解などせず、自らの正当性を主張するんだよね。
で、バックグラウンドがそうであればいいわけだけど、日本は違うのだ。

日本の場合、一般的にさいばんいなる、ということ自体がハードルが高いんだよね。
訴訟を抱えている、というのがネガティブに受け取られるのだ。
しかも、民事でも刑事でも裁判には数年かかるのが通例なので、できるだけ訴訟を避け、調停に臨んで和解・示談を目指すわけ。
その意味では、裁判で白黒つけることが目的ではないので、いかに誠意を見せて少しでも自分に有利なように和解・示談をまとめていくか、という方が大事。
基本的には和解でも示談でもお互いに歩み寄るわけだけど、謝罪会見が必要な場合は往々にして自分の方が悪いと思われているわけで。
ここで「自分は悪くない」という態度をとるのは日本の文化の中では「悪手」にしかならにのだ。

多くの失敗謝罪会見はそうなのだけど、ぼうとう頭を下げてすぐに「言い訳」を始めてしまうんだよね。
そうすると、形式上謝ってはいるけど、けっきょく悪いとは思っていないんだな、形ばかりの反省・謝罪なんだな、と受け取られ、かえって印象が悪くなるのだ。
今回の宝塚の件についても、「こういう不幸な事態が発生したことの責任を運営側としても強く感じており、今後二度とこうしたことが起きないよう最善の努力をしていきたい」といった話から始めるべきだったわけ。
そのうえで、「第三者により内部調査をした結果、かならずしもいじめがあったのかどうかは明確に確認できなかったが、実際にそこまで悩んでいた生徒がいたことを重く受け止め、〇〇など対応策を講じるとともに、さらなる対応策についても検討していきたい」みたいに続けないといけないのだ。
「いじめは確認できなかった」とだけ言うと、運営側には非はない、と開き直っているようにしか見えないからね。
っていうか、本心では「自分は悪くない」と思っていて、それが前面に出てしまっているのだろうけど。

こういうのは組織の危機管理の一環で、リスク・コミュニケーションという分野なんだよね。
そういうのが得意なコンサルもいるんだけどなぁ。
阪急ほどの大手の会社ならそういう専門スキルを持った部署もあるだろうに。
例えば、欧米式の「決して非を認めない謝罪会見」でも、まず頭を下げて、「(自分に非はないんだけど)このような形で関係各所に御心配・ご迷惑をおかけしたことについては申し訳なく思っています」と、謝罪する中身をうまくすり替えるのだ。
やっぱり何かトラブルや不祥事が起きている中で、開き直っているように見えるのは得策ではない、ということなんだよね。

そういう意味では、自分は悪くないという説明に終始するような会見だと、スノボの國母選手の「反省してまーす」という受け答えと大して変わらないことになるのだ・・・。
で、突っ込まれると逆切れして「ち、うるせーな」となるわけで。
少なくとも人がなくなっているんだし、もうちょっとやりようがあったなんじゃないかとは思う。
ま、後からだから言えることかもしれないけど。

2023/11/11

いつの間にか闇バイト

 ネットの記事でおそろしいものを発見したのだ!
X(旧ツイッター)の「お金配り」が特殊詐欺の闇バイトの入口だった、という話。
某社長が本当に配ったりしているから「全部詐欺」とは言わないけど、普通に考えればそんなうまい話はないよねぇ。
せいぜい銀行口座ほかの個人情報を抜かれる程度かと思っていたら、いつの間にか詐欺に加担させられていたんだって。
当然、本人にその意識はないので警察に逮捕されても否認・・・。
拘留が長引くのだ(>_<)

単純化した図式はこういうことらしい。
よくわからないアカウントが「お金配り」を実施。
「このアカウントをフォローしてリツイートしてくれたアカウントから抽選で〇名様に〇万円が当たります」とかなんとか。
フォローだけならとやってみると、「当選したので振込先の銀行口座を教えてください」との連絡が来る。
やったー!、と思ってそれに返信すると、確かに〇万円が振り込まれた♪
詐欺かと思ったけど本当だったんだ、とここで安心する。
その後、よく知らない人からいきなり大金が銀行口座に入金されてびっくり。
ほどなくして、〇万円くれたアカウントから、「誤ってそちらの口座にお金を入金してしまったので返してほしい、大金なのでできれば手渡しで、持ってきてくれたら謝礼は払う」とかなんとか連絡が来る。
前に〇万円くれた人だし、またなんかもらえそうだし、と思って言われた通り、自分の口座に振り込まれた大金を引き出し、指定された場所までもっていく。
すると、そのうちのいくらか(〇万円よりさらに多いくらいの金額)を謝礼でもらえた、ラッキー。
ところが、しばらくして警察がやってきて詐欺容疑(受け子)で逮捕。

特殊詐欺の場合、被害者に振り込ませる銀行口座から身元が割れるので、多くの場合はそれを避けるように金のやり取りをするのだ。
ひとつあるのは、借金などで首の回らなくなった人に持ち掛け、その人の口座を詐欺の振込先に使うこと。
その人は被害者から振り込まれると現金を下ろして元締めのところに持っていくと、いくらか分け前がもらえる、という仕組み。
これがいわゆる「出し子」。
長続きしないし、基本はトカゲの尻尾きりで、本当の元締めが誰かもわからず、という感じなんだよね。
銀行口座を使わずに、被害者に指定場所まで現金を持ってこさせて、それを代わりに受け取るのが伝統的な「受け子」。
こっちは特殊詐欺の形態によって少し演技が必要で、「オレオレ詐欺」で「興津事故を起こして示談金が必要」とか「会社の金を横領して補填しないと首になる」みたいなやつはそれ相応の受け取り方をしないといけないのだ。
そういう意味でちょっと難しいんだけど、詐欺グループからすれば、やはり使い捨てにしないとまずいポジション。

そこで、この二つのいいとこどりで組み合わせたのが、うえで照会したような新たな手法。
そもそも本人は詐欺の片棒を担いでいるという認識もないし、むしろ、間違って入金されたお金を返してあげてる、いいことした、くらいに思っているのだ。
実際は、詐欺の被害者から入金された金を詐欺グループのもとへと運んでいるだけなんだけど・・・。
捨てアカで最初の「お金配り」をしておけば足もつきづらいし、最初にちょっと必要経費はいるけど、あまり考えなしに引っかかってくれる人が次々と現れるしで、闇バイトを募集するよりはいいみたいだ。
ルフィ一味も場合も、闇バイトにスマホで指示していた内容がばれて捕まるに至ったわけで、そもそも相手に犯罪行為に加担していると意識させずに行動させれば足がつきにくいのだ。
いやあ、巧妙になっていくなぁ。

もうこういうのはイタチごっこで次から次へと新しい手法が開発されるわけで、恐ろしいことこの上ないよね。
自分がいつの間にか犯罪者になるんだから。
やっぱり、世の中に早々うまい話はない、ということで、そういうのには飛びつかず、地道にやる、というのがよさそうなのだ。

2023/11/04

100時間後に食べるワニ

 広島県の山間部には「ワニ料理」というのがあるのだ。
かつてヤクルト・スワローズにいたパリッシュは本物のワニの肉を食べていたけど、こっちはサメの肉。
サメは古語で「ワニ」と言うんだよね。
記紀神話の「因幡の白兎」に出てくるやつ。
これももともとは出雲の話だけど、山陰地方ではワニを食材として獲っていたみたい。
ただ、なぜ山間部?

答えは単純で、サメやエイなどの軟骨魚類は体内の浸透圧調整のために尿素を用いているんだけど、これが死後に分解されて出てくるアンモニアが身を腐りにくくしているのだ。
アンモニアが発生すると臭くはなるけど(世界で最も臭い料理のひとつであるホンオフェはエイの肉をツボの中で発酵させたものだよね。)、これにより身がアルカリ性になるので、腐敗菌の繁殖を妨げるのだ。
なので、可能などせず、生の肉のまま比較的長距離運べるのだ。
若狭湾でとれたサバを京都に届ける鯖街道というのが有名だけど、輸送に丸一日かかるので、塩をしてから運んだんだよね。
そうすると京都につく頃ちょうどよいつかり具合で、それを使って京料理の代表でもある鯖寿司が作られたりしたのだ。
京の都は海に面していない内陸なので、川魚以外の魚介類は基調で、非常に丈夫で生きたまま運べるハモが珍重され、塩サバや身欠きニシンのような加工食材が京料理によく使われていたんだよね。

サメを食べる習慣は実は栃木にもあって、こっちでは「モロ」とか「サガンボ」と呼ばれるんだよね。
普通にスーパーでサメ肉が生で売っているほど。
ちなみに、栃木で売られているサメ肉の「モロ」は、気仙沼で水揚げされたサメのフカヒレをとった後のものが流通しているみたい。
無駄がないけど、宮城はほかに雄々しい魚介がたくさんあるから自分たちは別のものを食べるのだ(笑)
今は冷蔵輸送ができるので臭くないけど、当時はちょっとアンモニア臭がするけど生で食べられるサメ肉は貴重な食材で、臭みけしにショウガを薬味に使ったりしたみたいだよ。
川魚はサケ・マス類を代表に寄生虫がいて生食がきついから、どうしても刺身を食べたい場合はサメになるんだよね。
北海道まで行けば半分凍らせて「ルイベ」のような形で食べることはできるのだけど。

で、その頃の食習慣が現在も残っている地方が山間部に残っている、というわけなのだ。
サメ肉は低脂質・高たんぱくでヘルシーなんだけど、火を通すとパサつきがちなので、伝統的な食べ方は刺身か湯引き(ちょっと臭みが抑えられる)にするか、いっそよく煮込んで煮凝りにしたんだよね。
現在ではフライなんかの揚げ物にもするみたいで、あまり火を落としすぎないとプリッとした良い歯ごたえの白身フライになるそうなのだ。
工業的には練り物の材料に使われているくらいで、臭みがなければ白身魚としては優秀な食材なのだ。

実は、サメはわりと簡単に獲れるものなので、むかしから食べられてはいるみたい。
三内丸山遺跡からもアブラツノザメを食べていた痕跡が見つかっているくらい。
他の魚を取る場合も「外道」として一緒に取れてくるので、干物にしたり、山間部に流通させたりと無駄なく食べていたようなのだ。
特に食味が良いのは、「サガンボ」と呼ばれるアブラツノザメと、「モロ」と呼ばれるネズミザメで、臭みが少なく身がおいしいとされているよ。
こういうのを聞くと、見かけたら食べてみたくなるよね。