2007/10/31

かぼちゃの日

日本で「かぼちゃの日」というと、かぼちゃを食べる冬至を思い出すけど(?)、米国ではなんと言っても10月末のハロウィンなのだ。
ハロウィン(Halloween)はカトリックの諸聖人の日(万聖節)の前日にあたる日で、もともと諸聖人の日が「All Hollows」と呼ばれていて、その前日(eve)ということで、ふたつがくっついてハロウィンになったそうだよ。
元来はケルト人の収穫感謝祭がカトリックに取り入れられたものなんだよね。

ケルト人の暦では11月から新年が始まるようで、ハロウィンはちょうど「大晦日」にあたるのだ。
日本では大晦日の夜に「歳神」が訪ねてくる、なんて考えられていたけど、ケルト人の文化では、この「大晦日」の日には死者の霊が家族を訪ねたり、魔女や妖精が出てくると考えられていたんだって。
なんだか日本のお盆にも似た考え方なのだ。
で、これらから身を守るため、仮面をつけて仮装したり、魔除けの火をたいたりしていたとか。
これが今のハロウィンの行事のもとになっているのだ。

仮面をかぶる習慣が仮装することにつながったと思うんだけど、いつしか魔女やお化けに化けて、子どもがお菓子をねだるようになったんだよね(笑)
もともとの考え方から言うとだいぶかわいらしくなったものなのだ。
「Trick or Treat」の習慣はもともと欧州に似たような習慣があって、それが取り入れられたみたい。
けっこう複雑に進化した結果なんだね。

ハロウィンと言えばかぼちゃの「ジャック・オー・ランタン」を思い浮かべるけど、もともと英国やアイルランドでは「かぶ」をくりぬいてランタンにしていたんだって。
でも、sんたいりくに入植した移民たちはよりくりぬきやすいかぼちゃを使うようになって、米国ではかぼちゃがスタンダードになったのだ。
英国の南部では一度ハロウィンの風習がすたれてしまって、現在では米国のものが逆輸入される形でかぼちゃを使うそうだよ。
英国を舞台にしたハリー・ポッターに出てくるハロウィンでもかぼちゃだけど、これはここ最近英国に浸透してきたものなんだって。
今でもアイルランドやスコットランドのむかしながらのハロウィンの習慣が残っている地域ではかぶを使うみたい。

ちなみに、ジャック・オー・ランタンは英国における鬼火伝承で、日本の各種火の妖怪に近い存在みたい。
日本でも狐火や鬼火などなど、何も火の気のないところでぼんやりとした火が見える現象を妖怪のせいにするけど、英国でも同じなんだね。
早稲田の大槻教授に言わせれば「プラズマ現象」なんだろうけど、雨の直後などにみられることも多いので、静電気の発光現象(コロナ放電)も原因のひとつと考えられるんだよね。
セント・エルモの火なんかはまさにそうなのだ。
ちなみに、ジャック・オー・ランタンは、悪事をして天国にも地獄にも行けずにあの世とこの世をさまよっている男が、哀れに思った悪魔からもらった石炭の火を火種にしたランタンを下げてうろついている、というものらしいよ。

2007/10/30

わんこの起源

米国でもペットとしての犬はかなりの人気でよく見かけるんだよね。
しかも、ペット同伴可能で入れるお店なんかも日本に比べると多いから、よく街中でも見かけるのだ。
米国のセレブなんかは小型犬をだっこするのが一種のステータスみたいになっているよね。

犬の起源は定かじゃないみたいなんだけど、DNA(デオキシリボ核酸)レベルで調査した研究によると、1万5千年くらい前に東アジアでオオカミ(タイリクオオカミ)の亜種から分岐したと考えられているみたい。
これが人間とともに移動して世界に広がっていったみたいだけど、もともとオオカミとほとんど遺伝子レベルで変わらないので、行く先々でオオカミとさらに交配したりして新しい血が入っていったみたい。
様々な犬種とオオカミの亜種をDNAで解析した系統樹で比べると入り乱れるらしいのだ。
各地域で独特の犬種がいるのはその地域地域のオオカミの亜種の影響があるのかもね。

そもそもなんでオオカミを家畜化したかもよく理由がわからないんらしいんだけど、かなり古い時代に家畜化されていて、その後、牧羊犬として使われたり、番犬として使われたり、狩猟犬として使われたり、人間とかなり密接に暮らしてきたのだ。
はじめは実用目的だったんだけど、そのうち愛玩目的も加わってきて、小型犬なんかが登場するんだよね。
欧州では狩猟犬としていろんな犬種が生まれたんだけど(ダックスフンド、プードル、ポインターなど)、さらに愛玩用の小型犬も多く生まれたのだ。
中国でもチンなんかが生まれているけど、欧州ではチワワやヨークシャー・テリア、トイ・プードル(スタンダード・プードルはかなり大きな犬で、カモ猟で打ち落としたカモを泳いでとってくる狩猟犬だったのだ。早く乾くように毛を刈っていたみたいだよ。姿がかわいらしいので小型化したわけ。)、マルチーズなんかが出てくるんだよね。
でも、これらはかなり新しい時代の犬種で、古い犬種は地域地域で牧羊犬や狩猟犬として飼われてきたものみたい。
それにしても、オオカミにかなり近いシベリアン・ハスキーから、もじゃもじゃのチャウチャウ、大きいけどかわいらしさもあるレトリバー、毛むくじゃらで愛らしいシーズー、とにかく小さいチワワと幅が広いのだ。
ネコもいろんな種類がいるけど、大きさや姿にここまでのバラエティはないよね!

日本でもっとも有名な犬と言えば渋谷のハチ公。
東京大学農学部の上野英三郎教授の飼い犬だったのだ。
農学部ははじめ今の教養学部のある駒場にあったんだけど、大震災の後に現在地の文京区弥生に移ったので、渋谷に住んでいた上野教授は電車で通わなくてはならなくなったのだ。
で、渋谷駅前で教授の帰りを待っていた(と言われる)のがハチ公なわけ。

ハチ公は存命中から有名犬で、なんと生きているうちに銅像が建てられているのだ!
でも、その銅像は戦時中に供出されてしまって、今の銅像は戦後に建て直されたものなんだって。
ハチ公のはく製は上野の国立科学博物館で見られるよ。
ハチ公は上野教授を待っていたのか、駅前の焼鳥屋さんからもらえるエサを目当てにしていたのか、いろいろ説があるみたいだけど、とにかく毎日お出迎えに行っていたのは偉いよね。
(死後におなかを開いてみると焼き鳥の串が何本か出てきて、焼き鳥目当てで通っていたという説が出てきたのだ。)
ちなみに、上野博士のお墓は青山墓地にあって、「忠犬ハチ公の碑」よいう標柱が立っているよ。

2007/10/29

ネズミ

日本では区別しないんだけど、英語だとドブネズミのような大型のネズミをラット(rat)、ハツカネズミのような小型のネズミをマウス(mouse)と呼び分けるんだよね。
ボクは大学で生物系の実験をしていたんだけど、そのときに実験動物として使っていたのはマウスだったのだ。
だいたい10cmくらいの大きさ。
別の研究室ではラットを実験動物として使っていたんだけど、軽く30cmはあるんだよね。
全然大きさが違うのだ!
ラットに比べるとマウスはちっちゃくてもっとかわいらしいよ。

マウスは日本だと実験動物として確立されたハツカネズミを指すことが多いんだけど、英語では小型のネズミ全般を指すみたい。
日本で家や倉庫に住みついて害をなす小型ネズミはハツカネズミしかいないんだけど、欧州なんかでは他の種類もいるようなのだ。
マウスは別に人間の近くにだけ住んでいるわけじゃなくて、森の中なんかにも住んでいるんだよ。
その場合は他の動物の掘った巣穴なんかに住みつくのだ。
で、リスやヤマネなんかと同じように、木の実を食べたり、虫を食べたりするんだよ。
森に食べ物がなくなると人里に出てきて畑を荒らすこともあるのだ。

和名のハツカネズミはおよそ妊娠期間が20日なのでそう呼ばれるんだよね。
一度に6~8匹の子供を産むのだ。
ボクも大学の時はマウスを飼育していたけど、本当にあっという間に増えるのでびっくりだよ。
生まれて2~3週間は素人ではほとんどオスとメスの区別がつかないんだけど、4週目を超えると繁殖可能になってしまって、ちょっと確認を怠っているとまたまた子供が生まれてしまうなんてことがあったのだ・・・。
「ねずみ算」とか「ネズミ講」とはよく言ったものだと思ったよ。

一方のラットは大型のネズミの総称だけど、日本だとクマネズミやドブネズミがこれに当たるのだ。
耳が大きくて黒っぽいのがクマネズミで、高いところに登るのが得意なので天井裏なんかにいることが多いんだって。
耳が小さくて、いわゆるねずみ色なのがドブネズミで、高いところに登るのは苦手なので縁の下とか低いところにいるのだ。
どぶのような溝や穴に住んでいることも多いんだって。
クマネズミが比較的穀物なんかの植物性を好むのに対して、ドブネズミは肉や魚などの動物性のエサを好む傾向があるらしいよ。
ちなみに、実験動物として使うのはドブネズミの方なのだ。

ネズミはかなり早い時代に日本に渡ってきていたようで、史実以前に帰化した動物と考えられているのだ。
歴史の時間にネズミ返しなんてのを習ったけど、稲作を開始した弥生時代にはすでに害獣として認識されていたはずなのだ。
平安時代以降になると、本や教典をかじってダメにする害獣としても認識されるようになって、農家だけじゃなく、都市部にも住みついていたことがうかがえるのだ。
妖怪の鉄鼠(てっそ)は、園城寺(三井寺)の頼豪阿闍梨が悲願の戒壇創立を延暦寺に阻止され、その恨みで妖怪に変化し、延暦寺の教典をことごとく食らいつくした、という伝説に基づくものなのだ。
この話が本当かどうかは別として、ネズミによる書物の害がけっこう一般的だったってことはわかるよね。

実験動物のラットやマウスは白いと思われているけど、これはアルビノという毛の色素を作る遺伝子が欠損した種類の動物なのだ。
野生種より少し大きめなのが特徴で、目は瞳孔の色素も産生できなくて血の色がそのまま出るから灯りのだ。
でも、マウスの場合は実験動物でももっといろいろな色のものがいるんだよ。
ボクが飼っていたのはC57BL/6(通称ブラック・シック)というやつで真っ黒だったのだ。
他にも茶色いやつや栗色のやつ、赤茶のやつなどいろいろ。
でも、ラットは白いやつしか見たことなかったよ。

2007/10/28

これからのイモ

だんだん寒くなってきているけど、こうなってくるとサツマイモがおいしくなるよね。
焼きいもやふかしいもなど甘くておいしいのだ。
サツマイモはデンプンがたっぷりでエネルギー源としても優れているんだけど、食物繊維も多いし、さらに、ビタミンCを多く含んでいて、それが加熱しても壊れにくくなっているので美容にもよいのだ。

でも、ふかしいもよりも石焼きいもの方が甘く感じるよね。
ボクは石焼きいもだと水分が飛んで甘みが濃くなるんだと思っていたんだけど、これが違ったのだ!
石焼きいもは熱した小石の中にいもを埋めて焼くからそのナメがあるわけだけど、こうして間接的にゆっくり、じっくりと焼き上げると、いもの中にあるデンプン分解酵素(アミラーゼ)の働きで、デンプンがブドウ糖(グルコース)に分解されるようなのだ。
なので、実際に糖度を測っても甘みが増しているというわけ。
最近はスーパーなんかでガス焼きの焼きいもも売っているけど、その場合は普通に焼いただけなのでこうはいかないのだ(>_<)
経験的により甘く焼ける方法として定着したんだろうけど、よくできたものなのだ。

でも、ボクが一番好きなサツマイモの食べ方は大学いもなのだ。
外側はかりかりで、でも、中はほくほくだとおいしいよね。
蜜はかちかちのものよりも少し糸を引くくらいのゆるい方が好きかな。
もちろん、いもの甘みがわかるように甘みは少なめの方がよいのだ。
この大学芋は、さつまいもを食べやすい大きさにしてから低温でじっくり揚げて、それを砂糖と水を煮詰めて作った蜜にからませるだけの料理なんだよね。
でも、いもの揚げ方や蜜への一工夫などでだいぶ味が変わるのだ。
精製糖より三温糖を使った方が味にコクが出るとか、揚げたてのいもを暑い蜜に絡めて急速に冷やすといいとか、いろいろとコツがあるんだって。

名前の由来にはいくつか説があるんだけど、ひとつは大正時代に神田近辺の学生(主に帝大生かな?)が好んでよく食べたからこの名前がついたというもの。
また、昭和初期に東大生が学費を捻出するのにこれを売っていたからとも言われているんだって。
でも、本郷には元祖・大学いものお店があったといわれていて、赤門前に戦前まであった三河屋というお店でふかしいもを蜜にからめて売っていてたというのだ。
ちなみに、本郷や早稲田には元祖を名乗るお店があるみたいだよ。
ボクは個人的には浅草の言問通り沿いにあるお店のものが好きなのだ。

さつまいもは琉球から薩摩に伝わったのでこの名前があるんだけど、飢饉対策の作物として、第8代吉宗公が青木昆陽さんに栽培を命じたんだよね。
青木昆陽さんはもともと魚屋のせがれで、大岡忠相さんと知り合い、幕府に出入りするようになって抜擢されるのだ。
東大の小石川植物園は当時は小石川養生所で、その薬園でさつまいもの試験栽培が行われたんだよね。
植物園内にはその記念碑もあるのだ。
青木昆陽さんはさつまいもの栽培法の確立により多くの人を飢餓から救ったと言われていて、甘藷先生なんて呼ばれているんだよね。
目黒不動・瀧泉寺にあるお墓には「甘藷先生之墓」と書いてあるのだ。

今は飽食の時代だから主におやつ的に食べられるさつまいもだけど、やせた土地でも育つ上に栄養価が高いので、とても重要な作物だったのだ。
欧州ではじゃがいもにより多くに人が飢えから救われたんだけど、日本ではさつまいもが救っていたんだよね。

2007/10/27

メラニンで決めろ

科学雑誌のサイエンスに、ネアンデルタール人のDNA(デオキシリボ核酸)を解析したら、赤毛で肌が白い個体がいることがわかった、という論文が載って、ニュースになっているのだ。
これまではネアンデルタール人とひとくくりにしてステレオ・タイプに考える傾向が強かったみたいだけど、ネアンデルタール人は欧州から西アジア、中央アジアにかけて広く分布していたので、現生人類と同じように地域ごとに身体的特徴の差があってもおかしくないんだよね。
今回はそれがDNAレベルで解明されたというわけなのだ。
各地で骨は見つかっているから、よくよく比較研究をしていると、現生人類と同じように、地域差で北の方のネアンデルタール人は背が高いとか、南のネアンデルタール人は短足とか、きっとそういうのもあると思うんだよね(笑)

で、今回問題となった髪と肌の色だけど、これはメラニン色素の量によって決まってくるんだよね。
今回のDNA解析もそのメラニン色素を作るタンパク質について調べたようなのだ。
肌の色の場合は単純で、メラニン色素の量が多いと黒っぽく、中程度だと黄色っぽく、少ないと白っぽくなるのだ。
それぞれが黒人種、黄色人種、白人種に対応しているというわけ。
で、むかしは木の葉だの色で優劣があると本気で考えられていたわけだけど、これはただ単に環境に適応した結果なんだよね。

緯度の低い地域では太陽の光の照射角度が高いのでより多くの紫外線が地上に届くのだ。
紫外線は活性型ビタミンDを作る上で人間にとって必要なんだけど、量が多すぎるとDNAにダメージを与えて皮膚がんなどを引き起こすおそれがあるんだよね。
で、そういう紫外線の強い地域ではメラニン色素が多い方が有利になるというわけなのだ。
一方、緯度の高い地域では逆に紫外線の量が少ないんだよね。
極圏にはいると白夜なんかもあるけど、白夜があるっていうことは、その逆のほぼ1日中夜の日があるということでもあるのだ。
そう言う地域では少ない紫外線を有効活用するため、メラニン色素が少ない方が有利になるんだよね。
なので、赤道に近い地域では一般に肌が黒く、極に近い地域では肌が白くなるのだ。
黄色人種はその中間だよ(笑)

髪の毛の色はもう少し複雑で、二つのメラニン色素の組み合わせで色が決まるんだって。
黒から茶褐色のユーメラニンという色素と、赤褐色から黄色のフェオメラニンという色素らしいよ。
ユーメラニンが多いと髪の毛は黒に近づいて暗い色になり、フェオメラニンが多いと髪の毛は暖色になって明るい色になるのだ。
で、色素の絶対量が少ないと銀髪(プラチナ・ブロンド)や金髪(ブロンド)のようになるというわけ。
もっとも珍しい髪の色といわれるのが赤毛で、これはユーメラニンがものすごく少なく、フェオメラニンがものすごく多いとなるんだって。
ユーメラニンがそこそこ多いと栗色や茶色になるんだけど、この髪の色の人はけっこういるよね。

今回のネアンデルタール人は比較的緯度の高い地域(それでもイタリアとスペインだよ。)に住んでいて、肌は白く、赤毛だったのだ。
サイエンスのニュースには再現写真が載っているんだけど、なんか普通にワイルドな白人といった感じ(笑)
でも、きっと毛深さは違うと思うので、こう単純ではなかったと思うのだ。
顔中毛むくじゃらだったかもしれないし、むしろ毛が少なくてつるつるだったかもしれないし、そういうのは骨をみただけじゃわからないし、DNAで解析するのも難しいんだよね。
やっぱりタイムマシンで見に行くしかないのかな?

2007/10/26

山燃える

紅葉で山が赤や黄色に染まることを「山燃ゆる」なんて言うけど、米国では本当に山が燃えているのだ!
カリフォルニア南部で起こっている野火(wildfire)で、ブッシュ大統領が現地に赴くほどの事態。
カリフォルニア南部のマリブという街にはハリウッド俳優なんかのセレブも多く住んでいるんだけど、そんな人たちも含めて緊急避難勧告が出ているのだ。
一般の人々はスタジアムなどで避難所生活をしているようなのだ。

今回の舵はどうも断線した電線が原因らしいけど、他にも落雷などの自然発火で起きることがあるんだよね。
で、秋から冬にかけては空気も乾燥しているので火事が起こりやすいみたいなんだけど、今回の火事はすでに数日間燃え続けていて、被害総額も100億ドルを超えるようなのだ!
今も消火活動が続いているみたいだけど、まだまだ完全に鎮火するには時間がかかりそう。

火事を消火するにはいくつか方法があるんだけど、ひとつは上から大量の水をかけること。
これは冷却するとともに表面を水で濡らすことで酸素を遮断する効果があるのだ。
可燃物には、火を近づけると燃え始める最低の温度の引火点と、火を近づけなくても自然に火がつく発火点があるんだけど、冷却することで引火点や発火点より低い温度にしようというわけなのだ。
水をかけると水が蒸発するときに気化熱で熱が奪われて冷却されるんだよね。
生木が燃えづらいのも、中の水分が蒸発するときに気化熱が奪われてなかなか引火点に達しないからなのだ。
それと、燃焼は発熱と発光を伴う酸化反応と言えるんだけど、酸素がなければ燃えないんだよね。
住宅の火事でも酸素がなくなるといったん火はおさまるのだ。
でも、ドアや窓を破ってそこに空気が流れ込んで一気に酸素が供給されるとバックドラフトという現象が起きて、一気に爆発的に燃焼が再開するのだ。
水をかけた場合は冷却しながら可燃物の表面が水で覆われて酸素と接しなくなるので酸素不足で燃えなくなるというわけ。
大規模な山火事の場合は、湖や海から大量の水を汲んで航空機から散布するんだけど、それでも規模が大きくなりすぎるとなかなか全体には及ばず、効果がなかなか出ないことが多いのだ。

その次にとられるのが化学消化剤で、これは燃焼反応を抑制する化学物質を上から散布するのだ。
いろんな色の薬剤をヘリや飛行機でまいているの様子がテレビに映ったりするよね。
かつては化学物質が熱で反応して不燃性のガスができて、それが酸素を希釈して消火作用を発揮すると考えられていたようなんだけど、最近ではこの説は否定されていて、可燃物と酸素が連鎖的に酸化反応を起こすのを阻害・遮断することで消火作用を発揮すると考えられているんだって。
先に可燃物や酸素と反応することで可燃物と酸素が反応するのを妨げたり、可燃物と酸素の反応を遅らせる触媒として働いたりと、いろんな種類があるみたい。
この消化剤の場合は冷却しないので、大量の酸素が供給されたりすると効果が薄まるのだ。
実際、今回の火事では乾燥した強い風が吹いていて、それで火事がより活性化されていたようなんだよね。

このほか、過激な消火方法もあるのだ。
ひとつは、爆発物を落としてその爆発で一気に周囲の酸素を消費して酸欠にして消火するという方法。
爆風によって爆発により生じた二酸化炭素などの不燃性ガスも広がるので、その効果もあるのだ
さすがに街中では使えないけどね(笑)
それと、これは消火というわけじゃないけど、延焼を防ぐために気を伐採したり、付近の住宅を壊したりすることもあるのだ。
これは江戸時代の火消しの消火方法と同じだよね。
火災の進行方向に燃えるものがなければそれ以上火事が広がらない、ということなのだ。

山火事の場合はそれこそ様々な方法を組み合わせて消火活動に当たるんだけど、なかなかこれといった決定的な方法がないのも確かなのだ。
天候条件にも左右されやすいし、最後は運任せみたいなところもあるんだよね。
カリフォルニアの火事も早く収まればよいのだけど。

2007/10/25

和風スパゲティの殿堂

一般に和風スパゲティと言うとしょうゆ味のものを思い浮かべるけど、日本でしか食べられないという意味ではナポリタンも純和風なのだ。
ミートソースは海外でもボロネーゼとして同じではなくておかなり似たものが食べられるんだよね。
でも、ナポリタンのようにケチャップで味をつけたものは自分で作るしかないのだ!
あれってたまに食べたくなる懐かしい味で、ボクもときどき作るんだよね(笑)

日本でかつてスパゲティと言うとナポリタンかミートソースしか選択肢がなくて、しかも、麺はゆで置きしたものをフライパンで炒め直して食べるのが一般的だったのだ。
今では「アルデンテ」なんて言ってかためにゆであげたパスタが好まれるけど、むかしだったら「生煮え」と言われてしまったと思うのだ。
喫茶店なんかの場合だとむしろゆで置きできた方が好都合で、それで必ずと言っていいほどメニューに入っていたけど、それが日本中に広まった要因のひとつなのかも。

本場イタリアにもトマトソースのパスタはいろいろあって、純粋にトマトの味を楽しむポモドーロや、唐辛子をきかせたアラビアータなどがあるけど、どれもさらっとしたトマトソースで、少しねっとりした感じのあるナポリタンとは違うんだよね。
フランスにはアラ・ナポリターなというトマトソースのパスタがあって、これがナポリタンのkげんとも言われているらしいよ。
日本のナポリタンは戦後に横浜のホテル・ニューグランドで、進駐軍がスパゲッティにトマトケチャップを混ぜて食べているのにヒントを得て、トマトピューレなどを使ってトマト味のパスタを作ったのがはじまりだとか。
でも、これは今のナポリタンよりもう少し高級感のあるもので、トマトピューレと肉の代わりにトマトケチャップとウィンナーで代用されたものが大衆化して広まったそうなのだ。
はじめのナポリタンはフランスのアラ・ナポリターナに近い、トマトソースのパスタという感じだったみたい。

このトマトケチャップ味のスパゲティはいろんなところに浸透していて、定食なんかの付け合わせのパスタもケチャップであえたものだし、スパゲティパンも基本的にはナポリタンをはさむよね。
学校給食ではスパゲッティの代わりにソフト麺が使われていたけど、このソフト麺というのはビタミンBを強化した強力粉を使った麺で、一度蒸してからゆでるのでのびにくいのが特徴なんだって。
正式名称はソフトスパゲッティー式麺というそうで、学校給食に出すのにのびないように工夫して発明されたもののようなのだ。
これなんかは完全に日本特有の麺らしいよ。

こうして、日本では「スパゲッティ」と言うとうどんや焼きそばに近い大衆化した洋風麺を指すようになって、後の時代のイタリアン・ブームが来ると、本格派の麺はパスタと呼びなわされるようになるんだよね。
これはとてもおもしろい現象で、スパゲティはもはや洋風の日本料理になってしまっているので、区別して呼ぶ必要があったということなのだ。
カレーやハンバーグと並んでかつては子どもに大人気の料理だったわけだけど、最近ではあまりみかけなくなって残念なのだ。
これも洋風文化を独自に工夫して取り入れた、日本の文化を象徴するよい例だと思うんだけどな。