2013/05/25

そのままの色で

最近は自然派志向が増えてきて、天然色素使用とか、草木染めとか、合成染料を使わないものをよく見かけるようになったのだ。
で、これは色のついたものだけでなく、「白」でもそうなんだよね。
漂白して不自然に白くすることなく、もとの素材の白さを活かすのだ。
木綿だと、オーガニックコットンをよく見かけるようになったよ。
栽培するときに有機肥料しか使わず、加工するときにも人工の漂白剤なんかを使わず、ちょっと黄色みがかった色をしているのだ。
これを「生成(きなり)」と言うんだよね。

現在の真っ白な木綿は、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)で脱脂しつつ、次亜塩素酸ナトリウム(さらし粉)で漂白をしているのだ。
これで吸水性がよく、真っ白な繊維ができるわけ。
でも、これは明治期以降に導入された西洋式のやり方で、江戸時代までの日本では別のやり方をしていたのだ。
それが「和晒し」と呼ばれるもの。

日本では、麻や木綿、繊維をほぐし、糸によってから布にした後、灰汁で煮て、水にさらしてから天日にさらしたのだ。
灰汁は木灰や藁灰を水に浸したものの上澄み液で、炭酸カリウムを主成分とするアルカリ性の溶液。
これで煮ることで繊維についている油脂が鹸化されて水に溶けるようになるし、油脂が鹸化されると石けん(界面活性剤)ができることになるので洗浄効果もあるのだ!
これをよく水にさらしてから天日干しにするんだ。

天日干しにする理由は、可視光や紫外線によって繊維の中にある色素を分解するため。
植物性の繊維の場合、含まれている色素はポリフェノール系なので、紫外線を当ててやると酸化分解され、低分子になって水に溶けるようになるのだ。
カレーによる黄色いシミはターメリックに含まれるクルクミンという黄色い色素だけど、これもポリフェノールの一種なので、紫外線で分解されるのだ。
なので、カレーのシミは染み抜きをしなくても、選択してなんどか天日干しをして上げるといつの間にか白くなっているんだよ。
木材が白茶けたり、天然色素が退色するのはたいていポリフェノール系の色素が分解されてしまうからなのだ・・・。
太陽の力ってすごい!
(なので、よい染めの着物なんかは直射日光に当てずに陰干しにするんだよ。)

というわけで、むかしながらのやり方だと、川の近くなどに作業場があって、長い木綿の布が川の水にさらされ、その後陸上で干されたのだ。
調布の布多天神には万葉集の歌碑があるけど、「たまがわに さらすてづくり さらさらに なんぞこのこの ここだかなしき」という東歌はまさに多摩川で「晒し」が行われている様子を詠んでいるのだ。
もう奈良時代には天日による漂白をしていたっていうことだよね。
ただ、この方法じゃ大量生産ができないので、西洋式のさらし粉を使って化学的に漂白される方法が主流になってしまうのだ(>o<)
「生成」の場合は漂白前の状態なので、もう少し黄褐色なんだけどね。

「生成」はエクリュを訳するときに作られた言葉だけど、そのまま導入された言葉もあるのだ。
それはベージュ。
もともとは羊毛の漂白前の色を差すんだって。
こちらもやっぱり茶色がかった淡い灰色。
刈りたての羊の毛は土で汚れているからもっと茶色いけどね(笑)

羊毛の場合は、ゴミなどを取り除いた後、石けんと水酸化ナトリウムでよく洗うのだ。
羊毛の根元にはウールグリースとかウールワックスと呼ばれる脂(グリセリンに脂肪酸がついている脂肪ではなく、高級脂肪酸と高級アルコールのエステルなので、むしろ「蝋」なんだけど、柔らかいのでグリースと呼ばれているのだ。)がついていて、そのままでは水をはじいてしまって染色もしづらいし、来ても蒸れてしまうのだ(>o<)
そこで、その脂をある程度取り除いてあげるわけ。
羊毛を洗った廃液を遠心分離すると、いわゆる「石けんかす」が下に沈殿するんだけど、これがウールグリースのなれの果てなので、これを回収して上げて、酸処理なんかをしてあげるとウールグリースを抽出することができるのだ。
実際には10%くらいしか回収できないんだそうだけど。

このウールグリースは優れもので、人間が分泌する油脂成分に極めて近い、ということもあって、肌への浸透性がよく、保水性も高いんだとか。
今ではアレルギーの問題もあるので減ってきているらしいけど、ウールグリースから精製されたラノリンは化粧品や軟膏などの基剤にも使われていたみたい。
古代ギリシアの時代から、羊毛についている脂をつけると手荒れが治る、と知られていたらしいよ!
古代ローマでは、公衆便所で集めた尿を使ってこのウールグリースを抽出していたみたい(水酸化ナトリウムの代わりに発酵した尿中にあるアンモニアを使うのだ。)。
古代エジプトでは灰汁を使ったりもしたみたいけど、アルカリ性溶液を使ってむかしから取り出していたのだ。

というわけで、原理的なことはわかっていたのかどうかはともかく、人類はむかしから化学的なプロセスで脱脂や漂白をしていたんだね。
当然化学反応とかはわかっていないから、試行錯誤の末にこうしたらうまくいく、というのが伝承されていったんだろうけど、先人の英知もあなどれないよ。
改めて調べてみると、身近にあるものを使ってよくここまで工夫できたなぁと感心するよね。

2013/05/18

世界帝国の味

某都知事による変な発言もあったけど、2020年のオリンピック招致の関係でトルコの話がよく出るようになってきたのだ。
もともとトルコは世界有数の親日国として有名だし、カッパドキアやイスタンブールは観光地としてもかなりメジャーになってきているよね。
名物の鯖サンドも認知度が高まってきているのだ。
そんな中、やっぱり注目されているのがトルコライス♪
ま、こっちは長崎の御当地B級グルメとして話題になっているんだけど(笑)

一般的な長崎のトルコライスは、ピラフ(多くはカレー味)とスパゲッティ(大概においてナポリタン)がさらに一緒に盛られ、その上にデミグラスソースをかけたとんかつが載っているのだ。
ピラフがサフランライスになって、とんかつにカレーが係っているようなものもあるよ。
基本形は味のついた米料理と具のほとんどない炒めスパゲッティ、ソースのかかったとんかつから構成されているのだ。
最近は食堂とかでも定番メニューになってきているし、ファミレスのロイヤルホストなんかはメニューに入れていることもあったよ。
ボクも最初に食べたのは学生の時で、大学の食堂で食べたはず。
なんでトルコなのかはわからないけど(笑)

ボクが最初に聞いたトルコライスの名称の由来は、西洋と東洋をつなぐ存在を表している、という説。
ピラフ(チャーハン)やカレーは中国やインドで、スパゲッティは欧州、それをとんかつが橋渡ししているので、まさに西洋と東洋をつなぐトルコのような存在だ、というもの。
これはけっこうよく言われているよね。
「トリコロール(三色)」がなまった、という説もあって、これはピラフ、スパゲッティ、とんかつで三色ということなのだそうなのだ。
中にはトルコ発祥なんて説もあるけど、トルコでは多くの人がイスラム教徒で豚肉は禁忌だから、トルコから伝わったっていうのはそのままではいただけないよね・・・。

でも、案外トルコ伝来説というのは侮れないようなんだ。
というのも、明治期の料理本に、米を肉や野菜などの具とともにスープで炊いてからバターで炒める料理が「土耳古(トルコ)飯」として照会されているんだ。
おそらく、土耳古料理のピラフ(ピラヴ)を紹介したもので、ちょっと日本風にアレンジされているのだ(本当のピラフは生米を炒めてからスープで炊くのでもっとぱらっとできる。)。
こういったピラフ風料理が「トルコ風ライス」と呼ばれて提供されるようになり、それがトルコライスにつながっている可能性があるのだ。

そうなると、スパゲッティととんかつはどこから出てくるのか、という話になるけど、どうも付け合わせだったんじゃないか、ということになるのだ。
具のないスパゲッティは洋食の付け合わせの定番だけど、トルコライスのスパゲッティはその量が増えてメイン的になったもの。
とんかつの方はおそらくボリュームを増すためにやはり洋食の定番だったとんかつがおかずとして加わったんじゃないか、と考えられるのだ。
本場トルコ料理のケバブでは、ピラヴとサラダ、肉をひとつの皿に盛ることがあるそうで、あながち肉料理を一緒にするのは外れていないみたい。
そういえば、トルコライスには千切りキャベツがついていることも多いね(これもスパゲッティと同じ洋食の付け合わせの定番だけど。)。

こう考えると、もともとはピラフ的な料理だったトルコ風ライスが現在のトルコライスになったのもうなづけるのだ。
比較的安価でボリュームがあることもあるけど、お子様ランチ的な盛り合わせも魅力なのだ。
いろんなものをちょっとずつでも食べたい、っていうのがあるからね。
そんな欲求を満たす料理として定番化していったんじゃないかなぁ。
もはやまったくトルコとは関係なくなってきているような気がするけど。

実は、トルコライスには大阪風や神戸風というのもあるのだ。
大阪風はチキンライスにオムライス的に薄い卵焼きをかけ、その上にデミグラスソースのかかったとんかつを載せたもの。
神戸風はケチャップ味でない炒め飯の上にカレーをかけて生卵をトッピングしたものなんだとか。
どちらも長崎風のトルコライスと比べるとだいぶ違うけど、もともとトルコライスがピラフ的なものだった、と考えると、それぞれがそれぞれの地域で独自に派生していったと納得できるかも。

ちなみに、米をスープで炊くピラフという料理は、古くはアレクサンドロス大王の時代の文献にも登場するんだそうで、非常に古いものなのだ。
そのときは中央アジアの料理で、マケドニアに伝えられてから東欧に広まったとか。
中央アジアからは自然に中東地域にも広がっていって、ムガル帝国の時代にインドまで広がったようなのだ。
まさに、世界帝国並みに広がっている料理だったんだねぇ。
それが文化の最果ての日本でトルコライスになったのだ!
今度は東京五輪を通じてこの料理が世界に広まるとおもしろいのだけど(笑)

2013/05/11

沈没した大陸?

海洋研究開発機構とブラジル政府が、かつて大西洋上に大陸があったことが判明した、と発表したのだ。
リオデジャネイロ沖の海底台地を有人潜水艇「しんかい6500」で調査したもので、「伝説のアトランティス大陸のような陸地が存在した極めて強い証拠」として、海底で花崗岩を発見したことを指しているんだ。
花崗岩というのはマグマがゆっくりと冷やされて固まってできる深成岩の一種で、通常は陸域でしか作られないのだ。
海底火山の噴火だったらマグマはすぐに冷やされてしまうので、深成岩でなくて火山岩になってしまうんだよね。
で、その深成岩の一種である花崗岩が大量に見つかったので、調査した海底大地はかつて陸地だった、ということが科学的にわかるのだ。
調査では、数千万年前に海底に沈んだと見られているので(化石から5千万年前くらいには地上にあったことが確認できていて、それから数百万年後に沈んだと考えられているみたい。)、当然人工物はないんだけど(人類の起源は数百万年前だし、アトランティスが沈んだとされるのは約1万2千年前。)。

で、にわかに伝説の大陸「アトランティス」に注目が集まるのだ。
日本ではむしろ太平洋上にあったとされる「ムー大陸」の方が人気があるようだけど、西洋世界ではアトランティスの方が身近なのか、いろいろと説があったり、創作に活かされたりしているんだよね。
古典としてはジュール・ヴェルヌさんの「海底二万マイル」がおなじみ。
日本だとやっぱりドラえもん「のび太の海底鬼岩城」かな?(リメイクもされたしね。)

このアトランティスの伝説、現在残っているものでおおもとになっているのはギリシアの大哲人プラトンさんの著作。
2つの作品の中で羽根井していたが改訂に沈んだ大陸があった、と記述されているのだ。
これらの作品の中でも、エジプトの神官から聞いた話で、エジプトでは文書の形でもその伝承が残っている、となっているらしいよ。
ギリシアは度重なる水害で古い文献が失われていたけど、古代エジプトには残っていた、というのだ。
アテナイ率いる欧州勢力とも争ったことがある、というんだよ。

これについては、他の作品に引用される形で広まっているんだけど、中にはプラトンさんの原文に載っていない情報もあったりして、本当にそういう伝承があったとは考えられるのだ。
でも、すでに古代ギリシア・ローマの時代にアトランティスの話はプラトンさんの創作した寓話であり、実在しなかった、なんて批判がなされたりもしているんだ・・・。
それでも、現在に至るまでアトランティスの繁栄と滅亡の伝説は大人気で、その直接的なモデルとしていろんなものが提唱されているのだ。
ただし、学術的には歴史的事実に基づくものではなく、単なる伝承か、プラトンさんによる創作と考えられているよ。
今回の発見も人類の登場以前に沈んだ証拠みたいだしね。

代表的な説としては、実は地中海にあった島のことを指しているというもの。
プラトンさんの記述には具体的な島の大きさなんかも書いてあるんだけど、年代や大きさは誇張又は誤記で、それ以外では合致している記述が多い、というのだ。
日本でも沖縄沖に海底に沈んだ遺跡があることが知られてるけど、地中海にもそういうのがあるそうで、それじゃないか、というんだ。
だとすると、アテナイと争ったのも頷けるし、古代エジプトで知られていたのも納得がいくよね。

それでもやっぱり大西洋にあった、という説も人気で、アゾレス諸島やカナリア諸島の当たりにあったんじゃないか、というもの。
氷河期の集結に伴う海面上昇や、海底火山の噴火によってできた空洞がつぶれることで島が沈んだ、なんて考えているみたい。
カナリア諸島沖にもやっぱり海底遺跡があるみたいで、そういうのから連想しているみたい。
今回の発見は南半球だけど、確かに大西洋上に今はない陸地があったことは確かみたいだけど、これらの地域でも海底を調べれば何かわかるのかな?
ちなみに、アメリカ大陸こそがアトランティスの正体で、沈んだわけではなくて通行ができなくなっただけ、とする説もあるそうだよ。
似たようなものに、実はインドのことで、かつて存在した運河が使えなくなって渡れなくなったので「失われた」ことになったという説も。

もう少し科学的なのはプレートテクトニクスに基づく、と称するもの。
もともとアフリカ大陸と南米大陸の海岸線がぴったりくっつく、ということから考え出されたものだけど、大陸が別れる前の超大陸の状態を仮想すると、どうしても欧州、北米、アフリカの集まる北大西洋あたりに大陸棚がうまくくっつかない空隙ができるんだって。
その空白地帯こそがアトランティスだ、とするんだ。
よく考えるねぇ。
これも今回と同じような海底の岩石を調査すれば、陸地が沈んだのか、もともとくぼんでいたのかはわかるんだろうけど。
ちなみに、今回見つかった海底台地も、南米とアフリカが別れたときに取り残された陸地が沈んだんじゃないか、と見られているので、場所の問題はあるけど、そういう考え方はなくはないらしいよ(笑)
もっと荒唐無稽なものには南極大陸がアトランティスで、ポールシフトにより極域となったので氷に覆われるようになった、なんてのもあるんだって。
南極の地下にはかつて緑の大地があって恐竜がいた痕跡もあるけど、それは大陸移動で説明できるので、大規模なポールシフトでいきなり極になるとは考えられないのだ(>o<)

いずれにせよ、地中海やカナリア諸島付近には文明が栄えた後に沈んだ島があること、ブラジル沖にはかつて陸地だった海底台地があることは事実なのだ。
文明が栄えた後に沈んだ島が実際にあったという歴史的事実は伝承の「もと」になることもあるから、そこから想像がふくらまされた可能性もあるよね。
創世記のノアの箱舟の話も、局地的な大洪水から連想されている可能性も指摘されているから、さもありなんというところかな(古代オリエント地域で大きな洪水があったことは地層の調査から明か。)。
さすがに人類登場以前に沈んだ陸地があったという記憶が伝承されているとは考えづらいから、今回の発見事態はアトランティス伝説とは直接的に関係ないだろうけど(笑)

2013/05/04

先頭には何がある?

今年のGWは円安になったこともあって国内指向が強まったそうで、各地で渋滞も発生しているね。
ボクがもっと小さかった頃は何十kmという渋滞がGWやお盆には常識だったけど、今ではだいぶ緩和されているのだ。
これって、そもそも渋滞がどういう原因で起こるのか、っていう研究が進んだからなんだよね。
原因がわかれば対策が講じられるわけで、技術的に解消できる部分も出てくるのだ!

一般に渋滞という現象は、道路の交通容量を超える交通量となったときに発生するもので、通行に「よどみ」ができている状態。
警視庁の統計では、一般道では走行速度が毎時20km以下になった状態、高速道では走行速度が毎時40km以下になった状態と定義しているみたい。
赤信号で停止するのは当たり前として、青信号になってもなかなか動かない、動いたとしても遅々として進まない、という状況なのだ(>o<)
高速道路の場合は信号がないから、単純に走行速度が遅くなっているということだよね。

車両が走行する場合、車間距離をとるので、一定区間(例えば信号と信号の間)の道路には快適に走行できる車両の数の上限というのがあるのだ。
これが交通容量で、これを超えると信号が青の間にすべての車両がはけきれなくなり、青信号でも前に進めない、ということになるのだ。
高速の場合では、車間距離が短くなり、前の車両が軽くブレーキを踏んだだけでも、連鎖的に後続の車両がブレーキを踏むことになってしまい、走行速度の遅い車両の集団が形成されるのだ。
前の車両のブレーキに気づいてからブレーキを踏むまでの反応速度の分だけ遅れるので、この連鎖的なブレーキは雪崩的に拡散して、後ろの方まで行くと止まってしまうくらいにまでなるんだよ。
これが渋滞の発生で、渋滞学ではこれを「相転移」と呼んでいるみたい。

何も研究されていない頃は、それこそ先頭に「とろい」車両がいるせいで全体が遅くなるくらいにしか考えられていなかったんだけど、実際に渋滞が発生している時にヘリコプターで上空から観測すると、渋滞の先頭はある位置に特定されていて、そこから先は車両が流れているけど、その後ろは車両の流れが滞っていることがわかるんだよね。
つまり、そこにある何かが渋滞が発生するトリガーを引いているので、その原因を突き止めて、解決してあげれば渋滞が緩和するということなのだ。
実は、こういうのがわかってきたのってここ最近なんだよね。

一般道では、信号・交差点や踏切、橋などの定常的な要因と、事故や悪天候のような一時的な要因があるのだ。
交差点ではどうしても右折・左折待ちの車両があるので、右折・左折専用レーンなどを作ることで対応するんだよね。
踏切も、高架線にしたり、逆に道路を下に潜らせたりして回避するようになってきているのだ。
橋はどうしてもそこだけ交通量が限られてしまうので、橋を増やして分散させるくらいしかないんだよね・・・。
お台場もレインボーブリッジくらいしかないときはそこがボトルネックになってすっごい混雑していたけど、蒲田トンネルなどの他のルートができると分散してきて、さほど混雑しなくなったのだ。

高速道路の場合はちょっと事情が違って、交通量がもともと多いときに、渋滞が発生するレベルにまで車両の密度が高くなる(=車間距離が短くなる)きっかけがあると、そこから渋滞が発生するんだ。
そのきっかけというのは「ブレーキ」。
高速道路には信号がないので、基本はアクセルの踏み込みで速度を調節しているんだけど、誰かがブレーキを踏んでいきなり減速すると、そのブレーキが連鎖的に後続車両に伝播して、通行のよどみが発生するのだ。
すいていれば車間距離が十分にあるので、前の車両がちょっとブレーキを踏んだくらいじゃアクセルを緩めればすむんだけど、もともと交通量が多いと車間距離もそんなにないので、前の車両にブレーキを踏まれると自分も踏まないとぶつかってしまうのだ(ToT)
ちなみに、走行車線より追い越し車線の方が一般に走行速度が速いので、追い越し車線の方が渋滞が発生しやすいと言われているのだ(前の車両の急ブレーキに対応するにはブレーキしかないので。)。

じゃあ、なんでブレーキを踏む必要が出てくるかというと、さらにその前の車両が「無意識」に速度を低下させてしまったから、というのがわかっているんだ。
これは渋滞の名所と呼ばれるところを見ていってわかったことなんだけど、運転者が自然とアクセルを緩めてしまうポイントがあるのだ。
そのひとつが合流地点。
インターチェンジだったり、ジャンクションだったりがこれ。
もうひとつはトンネルの手前。
トンネルの中は暗いので、どうしてもその手前で速度を落としてしまいがちなんだって。
そして、研究してわかってきたのが「サグ」というもの。
これはすり鉢状にへこんだところ(「\_/」という形状)で、勾配が急ではなく、ゆるやかなところが問題なのだ。
ゆるやかに下った後にゆるやかな登りがあるんだけど、勾配が小さいと登りであることに気づかず、アクセルを踏み込まないので自然と速度が落ちてしまうのだ!
勾配が急だと「登坂車線」なんかもあってあんまり問題にならないのだ。

これらはそれぞれ渋滞の名所に対応していて、東名下りの渋滞のメッカ、厚木インターチェンジ付近にそろっていたんだ(笑)
合流地点と言えば厚木の少し先の伊勢原バス停付近。
ここは東名高速と小田原厚木道路が合流するところなんだよね。
さらに、むかしはここまでが三車線で、この先が二車線だったので、車線数の減少による効果もあったのだ・・・。
今では車線数の問題が解消されてだいぶましになったけどね。
渋滞のトンネルと言えば大和トンネル。
渋滞情報でもいまだに「大和トンネル入口付近を先頭に・・・」というのが多いよね。
そして、「サグ」は、厚木インターチェンジ手前の綾瀬バス停付近。
ここは長らくなんで渋滞が発生するかよくわかっていなかったんだ。

「サグ」については、「この先上り坂になるので速度ゆるめるな」的な注意を促すことである程度解消できるそうなんだけど、綾瀬バス停付近は特に渋滞がひどかったので、三車線から四車線に車線数を増やしたのだ。
それによりほぼ渋滞は解消されたんだけど、逆に、大和トンネル手前でまた三車線にもどってしまうので、トンネル前の渋滞がひどくなったとか・・・。
なかなかうまくいかないんだよね(>ε<)
こうなると、車線を増やすとか、東名高速のように2つのルートに分けて分岐させて車両を分散する、さらには第二東名を作る、といった交通容量を増加させるしか手段がないのが現実。
とりあえず、自分でできるのは、「サグ」やトンネルの手前では意識的に速度を落とさないようにする、ってことくらいかな?
前の車両がそもそも速度を落としていたらそれもできないんだけど(笑)

2013/04/27

アナタの見えない世界

春になって天気予報でも紫外線情報が出されるようになってきているのだ。
UVカット製品もここからが売りどころだしね。
紫外線というのは、「紫の外」と書くけど、これは人間が見える可視光領域の「赤(620-750nm)~橙(590-620nm)~黄(570-590nm)~緑(495-570nm)~青(445-495nm)~藍(420-445nm)~紫(380-420nm)」(括弧内は波長で目安)の外側にあるから。
波長が380nmより短いのが紫外線で、逆に波長が750nmより長くなると赤外線なのだ。
さらに、可視光にすぐ近い、ちょっとだけ波長が短い/長い光を特に近紫外線/近赤外線と言うよ。

驚いたことに、昆虫にはこの近紫外線が「見えて」いるらしいのだ!
昆虫だけじゃなく、鳥やネズミ、トカゲなんかも見えるらしいんだけど。
可視光領域って人間が見えるかどうかで勝手に定義しているからあれなんだけど(笑)、昆虫の世界は人間には見えない世界で溢れていることになるのだ。
よく紫外線が撮影できるカメラで昆虫の視界を再現するような写真があるよね。
実際には、昆虫は可視光も見えているので、もっと次元の違う視界が広がっているはずなのだ。
(ヘビなんかはピット器官を通じて近赤外線を感知しているから、蛇の世界では赤外線が「見える」ということなんだよね。)

昆虫が見えている紫外線は波長で言うと300-380nmの近紫外線。
UVAというやつだね。
実は、人間の視細胞もこの光には反応しているらしいんだけど、角膜で吸収してしまうので、水晶体・網膜まで届かないらしいのだ。
瞳の色は虹彩のメラニン色素の量で決まるけど、目の青い人でも茶色い人でも黒目の中央にある角膜部分は黒くなっているのだ。
ここで紫外線はフィルターしてしまっているわけだね。

紫外線も含めて見えた方が便利なような気もするけど、実はデメリットもあるみたい。
ひとつは、角の日焼けが肌にとって有害なように、紫外線が水晶体や網膜を傷つける可能性がある、ということ。
紫外線はDNAやタンパク質を傷つける(変成させる)作用があるので、それで細胞がダメージを受けてしまうのだ。
昆虫はせいぜい数年の寿命なのでそのリスクは相対的に低いけど、ヒトのように数十年~百年近く生きる生物にとっては重要な問題なのだ。

カメラ的な原理でもデメリットがあって、それは遠くの景色がよりかすんで見えるということ。
可視光とその近傍領域では、波長が短い光ほど空気の分子に散乱されやすい性質があって、そのために遠くの景色は青っぽくかすんでみるのだ。
昼間の空が青く見えるのも青い光がよりよく散乱されているからで、朝焼け・夕焼けが赤いのは青い光が散乱される結果、光が届くまでの距離が長いと赤い光の方が届きやすいからなんだ。
近紫外線は青い光よりさらに散乱されやすく、円形ではより紫外線が散乱されていて、ぼやっと明るく見えるというわけ。
これもヒトのような大型のほ乳類にとってはちょっと困るよね。
むかしのカメラのレンズは紫外線を十分に反射できなかったので、紫外線カットのフィルターをつけないと晴天下では遠景がくっきり撮れなかったそうだよ。

さらに、色収差という問題があるのだ。
視覚のメカニズムでは、角膜で絞って水晶体で屈折させて網膜に像を結ばせるんだけど、実は、光は波長によって微妙に屈折率が変わるのだ。
これはレンズ側の材質によってどれくらいのズレが生じるかは異なるんだけど、例えば、ガラス製のレンズの場合、近紫外線や近赤外線まで含めるとこの屈折率のズレにより生じる像のブレ(=色収差)が大きくなってしまって、像がかなりぼやけてしまうのだ。
これが目の中の水晶体でも起こるだろ、ということ。
近くのものならズレは小さいけど、遠くのものだとズレが大きくなるので、かすむ上に像がぼやけるのだ。

そんなこんなで紫外線が見えないことにも一定の意義があるんだけど、見えたら見えたで違う世界が開けるのも事実。
有名なのはモンシロチョウの羽根の色で、ヒトの目で見ると白地に黒のワンポイントが入ったシンプルな柄で、雄も雌も区別がつかないけど、昆虫の目で見ると違うのだ。
実は雄と雌の羽根では紫外線の吸収率が異なるので、雄は黒っぽく、雌は白っぽく見えるんだ。
花の色も同じで、タンポポの花はヒトの目には単一色の黄色に見えるけど、昆虫が見ると中央が暗く、周辺部が明るく見えているんだって。
これも紫外線の吸収率の違いで、多くの花は蜜のあるところを黒っぽく見せることで昆虫を引き寄せているみたい。

誘蛾灯というのは、昆虫が光が来た方向に進む性質(正の走光性)を利用しているんだけど、昆虫は紫外線も見えているので、紫外線で明るくしてやるとそこに昆虫が寄ってくるのだ。
普通の蛍光灯でもいいけどそれでは明るすぎるから、ヒトの目には見えない紫外線を使えば周辺をそんなに明るくせずとも昆虫を呼び寄せられるわけ(誘蛾灯の場合は紫の光も必要だよ。)。
遊園地のアトラクションの中になんかあるブラックライトも紫外線を照射している照明器具で、ヒトの目には暗い中で紫外線を吸収してより波長が短くなった(=可視光領域になった)蛍光を発しているほこりとかだけがきらきら光って見えるのだ。
逆に、昆虫からすると、紫外線で明るい中、ヒトの目できらきら光って見えるところは紫外線を吸収する黒い点に見えるはずなのだ。

特殊なカメラを使えばなんとなくのイメージはつかめそうではあるんだけど、まったくの異質の世界なんだろうなぁ。
今見えている世界にアドオンで紫外線が加わるわけだから、紫外線だけ見た映像とはまた異なるんだよね。
紫外線も見える世界ってちょっとだけ体験してみたいような。

2013/04/20

その審議を進められることを望みまーーーーす!

今年度も昨年度と同様に暫定予算で始まったのだ。
前は5日間で終わったけど、今年は最大で50日間。
とりあえず25年度予算案は4月16日(火)に衆議院で可決されたから、30日間ルールで5月中旬には予算は自然成立するのだ。
暫定予算は5月20日(月)までだったからかなりぎりぎりだけどね。

で、暫定予算になっているのは国会での議論が収束しなかったから。
通常は年末までに政府予算案ができて国会に提出され、年明け、通常国会が始まってから審議をして3月中には成立させるんだよね。
25年度予算については、12月に総選挙が入って政権交代もしたので、予算の中身の見直しなんかをしたりしているうちに遅れたのだ。
例外的に長い暫定予算になったけど、必ずしも国会がサボっているわけではないんだよ(笑)

その証拠のひとつが、衆議院で提出された予算の修正動議とか編成替え動議。
むかしの野党はただただ反対するだけだったような気がするんだけど、近頃は「こう直すべし」みたいな政策提言をするんだよね。
自分たちにも十分に政権担当能力がある、ということを政治的にアピールしたいのだ。
ま、民主党政権ができてからの「お金(財源)がない!」の騒動が記憶に新しいから、それとこれとは別のような気も・・・。
それでも建設的にこう変えたらよい、とカウンタープロポーザルができるようになったのは進歩なのだ。

ここで気になるのが、修正動議と編成替え動議の2種類があるということ。
修正動議はそのままで、政府予算案に国会が修正を加えようとする際に出される動議で、国会法第57条の2「予算につき議院の会議で修正の動議を議題とするには、衆議院においては議員五十人以上、参議院においては議員二十人以上の賛成を要する。」に基づいて提出されるもの。
仮に可決されるとその修正案どおりに予算が修正されるのだ。
ま、そういう事態はほとんどないんだけど・・・。

もう一つの編成替え動議というのは、一般的な議案のひとつとして扱われるもので、国会法第56条第1項「議員が議案を発議するには、衆議院においては議員二十人以上、参議院においては議員十人以上の賛成を要する。但し、予算を伴う法律案を発議するには、衆議院においては議員五十人以上、参議院においては議員二十人以上の賛成を要する。」という一般的な規定に基づくもの。
その内容も修正動議とは違って、政府に予算案の撤回と修正の上での再提出をい求めるものなのだ。
通常は提案理由と修正の方針が動議の中で示されるよ。
ただし、こちらは予算を修正するのではなく、あくまでも直した上での再提出を求めるものなので、可決されても再び再提出された予算案について議決をする必要があるのだ。
もちろん、動議で示した理由や方針と照らして修正が不十分ならここでまた突っ返すことも理論的には可能だよ。
国では聞いたことないけど、地方議会の場合は与野党が合意した上で編成替え動議に基づき修正した予算案を再提出することもあるようなのだ。

で、わざわざ国会法に定めがあるのになんで修正動議でなく、編成替え動議を出すかというと、そこには憲法が関係してきているんだ。
日本国憲法では第65条で「行政権は、内閣に属する。」とした上で、第86条で「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」としているのだ。
つまり、予算を作成するのは内閣の専権であって、国会は審議・議決するのみなんだ。
ちょっと修正するくらいならいいけど、大幅に変えてしまって元の案とはまるで異なる予算を目指す場合、これがひっかかってくるそうなのだ。
立法府の越権行為なのかどうかは実際のところなんとも言えないんだけど、これを形式的に回避するために、撤回させた上でこれこれこういう方針で直して持ってこい、という編成替え動議が出されることになるんだ。
実際に24年度予算に対してみんなの党が出した動議を見てみると、
http://www.your-party.jp/activity/gian/001183/
 ・歳入では、消費税の全額地方移管、法人税率の半減、政府保有株の売却、公債発行額の削減
 ・歳出では、子ども手当・高校無償化の地方移管、交付金・補助金・負担金等の20%カット、教員・地方公務員の給与カット
などで、歳入・歳出両面で抜本的な見直しを行うものなのだ。
これだとほぼゼロから作り直す感じになるから、「修正」という言葉では入りきらないのかもね。

ちなみに、憲法では「内閣は予算を作成する」となっているので、国会に提出するのもあくまで「予算」であって「予算案」ではないそうなのだ。
「予算案」と呼び慣らされているけど、正式には「案」がつかないそうだよ。
確かに、国会法でも「法案」は「法律案」と「案」付で書き分けているから、意味があるんだろうね。
法案が行政府、立法府の双方で提出できるのと違い、予算は内閣しか出せず、国会はあくまでも修正しかできないというしきりになっているから、わざと変えているんだろうなぁ。

日本の場合は憲法の段階で法律と予算が分けられているんだけど、これはある程度米国の反省から来ている可能性があるんだよね。
米国の場合、予算も法律の一種で、歳入法と歳出法が議会で作られ、大統領が署名することで効力を発揮するのだ。
一応大統領府で予算要求をまとめて議会に提出するけど、それはあくまでも参考資料扱いで、議会で予算をつめていくんだよね。
そのための議会スタッフも充実しているし、場合によっては行政庁にデータの提出や細かい積算をやらせたりもするみたいだけど。

それでも、議会が主導するので、どうしても声の大きな議員の地元の要望というのが多かれ少なかれ入ってくるのだ。
こういうのは取捨選択も難しいから、議会に任せるとたいてい肥大しがちなんだよね・・・。
それに、実際に執行する行政府の思惑とは異なるコンセプトで作られるので、使いづらい場合があるのだ(何かと議会に報告と制約も多いしね・・・。)。
で、実際に執行責任を持つ行政府がやりやすいように予算を作る仕組みとして、予算と法案を分けて規定したんじゃないかなぁ、と思うのだ。
すると、予算は安定性が増すけど、硬直性も生まれるので、果たしてどっちのシステムが優れているかはにわかには言えないけど。

暫定予算についても、日本では政府が必要な予算を積算して作るのに対し、米国では、「Continuing Resolution」というのを議会で可決し、大統領が署名するだけなのだ。
基本は、前年度予算額を上限として、新規事業は開始せず、必要な継続事業のみを実施する、というもので、そこに必要に応じて特記事項がつくもの。
ぎりぎりまでもめても、すっとつなげられるところは利点だけど、そもそも議会が紛糾したり、大統領との間で合意が得られないと、延長に延長を重ねて予算が成立しないまま会計年度が終わることもあるから、それもどうかと思うけど・・・(その場合はその会計年度は新しいことがまったく始められないことになるよ!)。

2013/04/13

ぷっちもち

最近コンビニで気になっているのが、「もち麦入りおにぎり」という商品。
いわゆる麦飯のおにぎりなんだけど、麦粒がかたくなくて、ぷっちぷちでもちもちしているのだ。
これはなかなかおもしろい食感。
ボクは割と麦飯が好きなんだけど、これはよいよ。

麦飯に使われる麦はオオムギで、オオムギには大きく分けて2種類あるのだ。
脱穀したときに穀皮が一緒にはがれてしまうハダカムギと、皮が残ったままのカワムギの2つ。
もともとはカワムギが基本で、突然変異で皮がはがれやすいオオムギが出てきたみたい。
自然界ではメリットがないけど、人間が栽培することで増えてきたのだ。
ハダカムギは押麦にして麦飯として食べたり、麦味噌の原料にされるみたいだよ。
カワムギは麦茶になったり、切断麦にして麦飯として食べたり、ビールの原料になったりするのだ。

オオムギにはもうひとつ分け方があって、それは穂の付き方。
茎の軸に沿って2列になるのが二条オオムギ、4列になるのが四条オオムギ、6列になるのが六条オオムギ。
上から見るとそれぞれ直線状、十字状、アスタリスク状に見えるよ。
京都の地名とはまったく関係ないのだ(笑)
もともとは二条オオムギが野生種に近く、穂を多くつける種が突然変異でできて広まったみたい。
ちなみに、ハダカムギ、カワムギそれぞれに二条や六条があるけど、現在主に栽培されているのは、六条ハダカムギと二条カワムギ(=ビール大麦)なんだって。

二条オオムギは主にビールや麦焼酎の原料にされるんだけど、これは麦芽にして発酵させるのに都合がよいからなんだ。
もともと穂の列の数が違うこともあって、二条オオムギは六条オオムギに比べて粒が大きく、デンプンも豊富なので醸造に適しているみたい。
日本でビールの原料となる二条オオムギはあらかじめビール会社と農家が契約して栽培しているそうで、勝手に作ってもビール醸造用には買ってくれないそうだよ。
栽培段階から品質管理にこだわっているのかな?

六条オオムギは麦飯として食べるのが主なんだけど、米と比べて煮えにくいので、そのまま混ぜてもうまく炊けないのだ。
西洋では砕いてかゆにして食べることが多かったみたいだけど、日本の場合は、古くは大まかに砕いたひき割り麦を混ぜたりしたんだ。
先にオオムギだけにてにじること冷まして作るえまし麦(麦粒が割れて「笑った」ように見えるので「笑まし」というらしいよ。)なんかにもして混ぜ込んだみたい。
えまし麦を作った煮汁には麦からデンプンが出ているので、洗濯のりに使ったそうだよ。

現在の麦飯に使われるのは、押麦、切断麦、米粒麦のどれか。
押麦というのはよくとろろごはんの麦飯で見かける平たくつぶされた麦粒のことで、外皮をはいでから水と熱を加えて上下のローラーでつぶしたものなんだって。
こうすることで水の吸収が改善されるのだ。
切断麦というのは、オオムギの特徴でもある麦粒中心部の黒条のところで2つに切ってから、水と熱を加えてローラーでつぶしたもの。
麦飯を嫌う人の多くがこの黒条のところが口に引っかかるというので、これを取り除くために切るんだよ。
黒条がなくなるので「白麦(はくばく)」とも言うのだ。
米粒麦というのは、黒条で半分に切ってからさらに削って米粒のような形にしたもので、麦飯にしてもぱっと見それと気づかないという利点があるのだ。
なので、学校給食なんかに登場しているみたい。
食味はぱらっとしていて、食べてみると白飯とは違うみたい。

今でこそ麦飯の方が高級になったけど、むかしは白飯より安かったので、貧乏人の食べ物と見なされていたのだ。
「貧乏人は麦を食え」なんて発言もあったくらいで。
で、この麦飯っていうのは、時間がたつと黄色~褐色に色がつくんだよね。
なので、麦飯の弁当を持ってきている子どもはふたで中身を隠しながら食べたそうなのだ。
この色の正体はオオムギに多量に含まれるポリフェノール。
オオムギはビタミンBなんかが多いだけでなく、にポリフェノールやタンニンも多いのでいまいち食味が悪いとされるんだけど、今ではかえってそのポリフェノールが健康志向にばっちり合っているんだよね。
食物繊維も米より多いし、ホリエモンの監獄ダイエットの成功でますます注目を集めているかも。

で、問題のもち麦。
もち米と同じで、アミロースとアミロペクチンの含有量の違いで、デンプンに粘りがあるかさらっとしているかの違いが出るのだ。
もち米がほぼアミロースの含有量がゼロなのに比べると、もち麦の場合はアミロースも多少含まれているんだって。
このもち性の麦は日中韓三国にしかないそうで、日本でも九州北部と中国・四国の瀬戸内海沿岸地域でのみ栽培されていたとか。
しかも、いったん昭和30年頃に栽培が途絶えたものを復活させたらしいよ。
それがまた着目されるようになったみたい。
このもち麦は穂がすみれ色だそうで、実ると麦畑一面があざやかな色になるんだとか。
いやあ、春(麦秋)だねぇ。