2010/03/20

マグロ問題はマクロな視点で

最近ニュースでよく取り上げられている食材と言えばクロマグロ。
日本人の食生活には欠かせない存在が禁輸措置で価格が高騰するかも、ということだったんだけど、なんとか回避できたみたいだね。
でも、クロマグロって超高級品だから、もともと庶民が口にする機会はごくごくまれだったような・・・。
更に手が出せなくなるってことかな?
で、せっかくなので(?)、今回はマグロについて調べてみたよ。

マグロはあたたかい海を回遊している大型肉食魚類のひとつで、海の食物連鎖でも最上位に位置する海の王様。
日本近海でもとれるけど、多くはインド洋や太平洋、大西洋といった外洋で水揚げされるのだ。
広い海を悠々と、というか、かなりの超スピードで泳いでいるんだよね。
その時速は最大で100ノットと言われるから、時速180kmを超える速さだよ!
おそろしく速く泳いでいるのだ。

でもでも、よく言われるように、マグロは泳いでないと死んでしまうんだよね・・・。
これは、自分でえらぶたを動かして呼吸することができないためで、えらぶたを開いた状態で泳ぎ続けることでえらに海水を通し、呼吸をしているのだ。
止まるとえらに海水が入らなくなり、呼吸できなくなるというわけ。
これはサメも同じだよ。

そのため、マグロは持久力に優れていて、その証拠があの独特の赤身なのだ。
赤身の肉質は筋肉中にミオグロビンが多い証拠。
これは有酸素運動に必要な酸素と結合するタンパク質で、人間でも長距離走のランナーは筋肉が赤いというのだ。
逆に、スプリント型の瞬発力が必要とされるアスリートは筋肉中にミオグロビンが少なくて肉質が白っぽくなるよ。
これが白身の魚で、普段はゆったり泳いでいるけど、とっさの時にさっと急加速や急展開して逃げ回るような魚に多いのだ。
さらに、マグロの場合は独特の紡錘形の体型による水の抵抗を抑え、より少ないエネルギーで泳げるようになっているんだ。
しかも、トロに代表されるように脂肪も蓄えているので、その脂肪を有酸素運動で燃焼させながら長時間の運動ができるようになっているよ。

ただし、常に泳いでいるためか、マグロは水揚げされてからも脂肪の燃焼が続いていて、放っておくと体温が上昇していってしまうのだ。
それにより、すぐに冷やしたり、尾の付け根を切って血を抜いて「活け締め」しめないと身が白っぽくなってしまうのだ。
これがいわゆる「身焼け」という現象で、せっかくの味が損なわれてしまうんだよね。
なので、つり上げられたマグロはすぐに氷水につけられたり、冷凍されたりするのだ。
そうしないと鮮度と味が保てないんだ。
泳いでいる間は海水でどんどん冷やされているようで、この体温上昇は侮れないもののようなのだ。

このマグロにもいくつか種類があって、その中でも最上等のものと言われるのが本マグロ。
今回まさに話題になったクロマグロだよ。
希少価値が高く、なかなか本物にはお目にかかれない高級魚なのだ。
次に高級なのはクロマグロとして市場に並ぶタイセイヨウクロマグロ。
本マグロが日本近海から太平洋にかけて生息しているのに対し、こちらは名前のとおり大西洋に生息していて、大きさもちょっと大きめみたい。
そして、インド洋のあたりにいるのがミナミマグロで、これが寿司屋でもよく名前を見かけるインドマグロ。
身に脂が豊富なので、寿司ネタのトロとして珍重されるのだ。

以上が高級マグロで、そのほかが庶民的(?)なマグロ。
その代表格は目が大きいことから名付けられたメバチマグロ。
日本での流通量は最大で、スーパーなんかで見かけるお刺身はこのメバチマグロが多いよ。
ツナ缶として加工されることが多いのはビンナガマグロ(ビンチョウマグロ)やキハダマグロ。
小型のマグロで、赤身が多く脂肪分が少ないのでツナ缶に加工されるんだけど、その中でもビンナガマグロはホワイトミートと呼ばれ高級品なのだ。
生食需要の高まりでビンナガマグロが「ビントロ」としてトロの部分が寿司ネタに使われることも増えてきたみたい。

いずれも世界的に食用に供されるようになったのでだんだん漁獲量が減ってきていて、それで絶滅危惧種に指定されているものもあるのだ。
今回のクロマグロの禁輸措置もそういった乱獲を抑制する意味合いがあったわけだけど、マグロを食べている国と輸出している国の意向が合致して賛成・可決に至らなかったようなのだ。
とは言え、そのままとり続けたら減っていくわけで、漁獲量を制限したりする必要はあって、その調整の枠組みはあるのだ。
さらに、ハマチなどの魚のように養殖の技術も開発されつつあって、現在では幼魚を育てるだけでなく、卵を孵化させてからの完全養殖にも成功しているみたい。
ただし、もともと長距離を回遊する性質があるし、皮が弱く、すぐに傷ついて死んでしまう、成熟に時間がかかるなどの課題があって、コスト高みたい。
ただし、とれなくなれば重要な技術にはなるんだよね。
ちなみに、稚魚から育てる養殖の場合、逆に稚魚の乱獲にもつながるので、生体数の維持という点では問題があるのだ。

マグロは日本ではかなりむかしから食べられていたことが知られていて、縄文時代の貝塚からも骨が見つかったりしているんだって。
でも、すぐに実が腐敗してしまって扱いづらく、今のように全国各地で食べられるというようなものではなかったようなのだ。
江戸時代には赤身を長期保存されるために醤油ベースの調味ダレにつけた「ヅケ」がメインで、それが寿司ネタにも使われていたようだけど、今とは違って下魚扱いで庶民の食べ物だったそうだよ。
お金持ちは鯛などの白身の魚を珍重していたのだ(落語の「目黒のさんま」もそうで、むかしは脂がのった魚はどちらかというと下品な食べ物だったのだ。)。
それが戦後になって冷蔵・冷凍保存技術が進んで流通が可能になると全国的に食べられるようになり、更に、味覚の変化で脂ののった身が好まれるようになると、トロがもてはやされるようになり、現在のように高級魚になっていったのだ。
近代化後もツナ缶に加工されることが多かったわけで、大きく扱いが変わったみたい。

ちなみに、俗にカジキマグロと呼ばれるカジキ類はマグロとはまったくの別種で、身の肉質や味がマグロに似ているのでそのように呼ばれるみたい。
カジキは口先が剣状に鋭く延びている分だけマグロより体長は大きいけど、ほぼ同じくらいの大きさの大型肉食魚類。
やはり海の食物連鎖では最上位に位置しているのだ。
カジキの場合、新鮮なものなら刺身も食べられるようだけど、主には焼いたり揚げたりと火を通すことが多いよね。
身は蛋白でありながら適度に脂ものっていてぱさつかないので、普通にソテーにしてもおいしいのだ。

マグロやカジキでもうひとつよく話題になるのは水銀等の生物濃縮の問題。
食物連鎖の頂点に立つので、水質の汚染があると、水銀などの有害物質が体内に貯まってしまうのだ。
これは水銀などの有害物質はなかなか排出されないので、体の中に蓄積されてしまうからなのだ。
マグロなんかは大量の小魚を食べるので、その分がどんどん貯まっていってしまうんだ。
なので、妊婦さんにはできるだけマグロやカジキなどの大型魚類を食べさせない方がよい、と指導されているよ。
最近はそういうところも気をつけないといけないから大変だよ(>_<)

2010/03/12

なめしてガッテン

新婚旅行でイタリアのフィレンツェに行ってきたんだけど、フィレンツェの名産と言えば革製品。
確かに街中にも自分の工場で革製品を作って売っているお店を見かけるのだ。
いわゆるブランドものではないけど、けっこう人気の品みたい。
かく言うボクも、お財布を購入してしまったのだ!
で、気になったのは革製品を作る前段階の皮なめし。
なんかしていることはわかるんだけど、いまいち何をしているかがよくわからなかったので、調べてみたのだ。

皮なめしというのは、動物などからはぎとった生の「皮」を加工して、製品原料となる「革」に加工することを指すんだって。
生きている間は伸縮性も柔軟性もあるけど、死んだ後の皮をそのままにしておくと当然腐ると、徐々に硬化してきてぼろぼろになってくるので、手を加えて腐敗を防ぎ、柔軟性と伸縮性を維持させる技術なのだ。
さらに、水や熱に対する耐性も高め、長持ちするようにするんだよ。
確かにハンドバックやベルト、お財布が腐ってきたらやだよね・・・。

具体的には、生皮から腐敗しやすい動物性油脂やタンパク質を除去し、網目のシート状構造を構成している繊維タンパク質のコラーゲンを安定化させるんだ。
でも、そのままだと少し固いので、そこに後から油脂を加えてしなやかにし、場合によっては表面加工をしたり、染料を加えて色を付けたりするよ。
古い加工法では、火の上で皮を拡げて煙でいぶし、薫製と同じように皮のタンパク質を変質させて長持ちさせるということをしていたようだけど、これだとどうしても固いまま固まってしまうんだよね。
で、できたものをよくたたいたりしていると多少やわらかくなってきて、やっと製品加工できるようになるのだ。
でも、そんなにしなやかな仕上がりとはいかないのは当然だし、煙でいぶしているだけなので中までタンパク質を変質させることはできず、そのためにそんなに長期間もたないのだ。

そこで発明された加工法が皮なめしで、まず生皮を水に浸して柔らかくし、川に着いている肉や脂をよくそぎ落とし、脱毛した後に消石灰を加えるのだ。
そうすると液中で水酸化カルシウムができるんだけど、これにより液性が塩基性(アルカリ性)になって、コラーゲンのような繊維状でない余計なタンパク質を溶かし出すんだ。
これはタンパク質中のアミド結合を加水分解し、より水にとけやすい分子量の小さなポリペプチドに分解する作用があるためだよ。
水酸化ナトリウム溶液を触ると指の表面がぬるぬるするけど、あれは指の表面のタンパク質が水酸化ナトリウムで溶かされているためで、あれと同じようなことが起こるのだ。
さらに、水酸化カルシウムによって皮の中に含まれる脂肪酸が鹸化され、水に溶けるようになるのだ。
こっちは手作り石けんと同じ原理で、脂肪酸と水酸化カルシウムが反応して石けん用の物質ができるんだけど、それは水によく溶けるので皮の中から脂肪分が除去されるということなのだ。

余計なタンパク質と脂肪を取り除いたら、今度は脱灰。
これは酸を加えて中和するとともに、液中からカルシウムを除くのだ。
一般にカルシウム塩は水に溶けにくいものが多く、酸を加えていって液性を酸性にまで持っていくとカルシウム塩が沈殿するんだ。
最初に入れて消石灰由来のカルシウムを除くので脱灰というわけ。
さらに、液性を酸性にしておくと、次のなめし工程に使うタンニンが皮に浸透しやすくなるのだ。

今では工業的に作られたものが使われることが多いようだけど、むかしは柿渋などの天然植物由来のタンニンを使ってなめしを行っていたのだ。
酸性溶液でもタンニンはなかなか皮に浸透していかないので、薄い溶液から徐々に濃い溶液に何度もつけていくことで、皮の中までタンニンがしみ込んでいくようにするんだって。
タンニンがしみ込んでいくと、繊維状のコラーゲンなどのタンパク質と反応し、網目状に絡み合っている繊維タンパク質同士をさらに化学反応で結びつけて、その網目構造を安定化させるのだ。
これにより熱に強く、丈夫で長持ちする革になるというわけ。

でも、このままではまだ固いので、この後に油脂を加えてなめらかさ、しなやかさを出すのだ。
シャンプーした後にリンスをすることでとりすぎてしまった油脂を補充するのと同じようなものだよ。
なめしが終わったら、液性を中和し、よく水洗い。
その後、半乾きのうちにヒマシ油などの加脂剤をまんべんなく塗り込んでいくのだ。
染料をしみ込ませたいときはこの工程と合わせて行うみたい。
で、引っ張ってよく乾かしたら、たたいて伸ばしてやわらかくするのだ。
最後に表面を磨いてできあがり。

このタンニンなめしの場合、何度も溶液につけないといけないのでどうしても工程数が多くなるのだ。
そこで考案されたのが化学的になめしを行うクロムなめし。
これはタンニンの代わりに塩基性硫酸クロムなどの化学薬品(いわゆるミョウバンのようなもの)を使ってなめすんだけど、よく浸透するので一度ですむのだ。
この場合、クロムイオンが間にはさまって繊維タンパク質同士を錯体として架橋することで、網目構造を安定化させるのだ。
タンニンでなめすと自然と仕上がりは茶色くなり、型くずれしにい、染料で染めやすい、吸湿性がよい、使い込んでいくうちにつやが出てなじんでくる(柔らかくなってくる)などの特徴のある革ができあがるんだけど、クロムなめしの場合は、仕上がりが青白く、伸縮性が翼柔軟でソフト、吸水性が低く水をはじく、耐久力があり熱に強い、といった特徴の革になるんだって。
ただし、クロムなめしをした革を焼却処分すると有害な物質が出てくるので、最近では原点回帰でタンニンなめしが見直されているらしいよ。

ようは余計なタンパク質と脂肪を除いてから、繊維タンパク質を変性させて安定化させればよいので、他にもアルデヒド・ホルマリンやジルコニウムなどの金属イオンでなめすこともできるみたい。
さらに、むかしながらの手法としては、油をよくしみ込ませてなめす方法もあるのだ(ただし、耐久力などは低め。)。
さらに、日本の伝統的な白なめしという方法では、生皮を川に着けてバクテリアの力を借りて脱毛し、その後塩入れ、菜種油による油入れを経て、天日干しをしながら足でもんで徐々に柔らかくしていく、という一切のなめし剤を使わない方法もあるんだって!

さらに、なめした革の加工法としては、表面にエナメルペイントを施したエナメル皮(靴などにうよく使われるつやつやのやつ)、毛でなくて肉が付いていた内側の方の表面をヤスリなどでけずって起毛させたスウェード(表面がビロード状になったやつ)、逆に毛のついていた外側をヤスリなどでけずって起毛させたヌバック(いわゆるデザイン目的のダメージ加工)などなどがあるのだ。
上からロゴなどをプレスして型押しもするし、クラッキングと称してわざと最初から表面にひび割れを入れることもあるのだ。
加工品を作ってから脱色・染色をするものもあるみたい。
スプレー缶なんかもあるけど、表面に樹脂の膜を吹き付けてはっ水・防水加工をすることもあるよね。
と、様々な目的・用途に向けて加工されていくのだ。

この天然皮革の対極にあるのが人工皮革。
いわゆる合皮、合成皮革で、これはベースとなる布地に樹脂などを付着させて皮革のようにしたもので、天然皮革に比べて手入れが簡便、品質が安定、水に強いなどの特徴があるよ。
ただし、やっぱり色合いがチープな印象を与えたり、使い込んでいくうちになじんでくる、ということもないので、人工皮革の方がもてはやされるのだ。
さらに、むしろ合成皮革の方が劣化が早い携行があるんだよね。

というわけで、皮なめしについて調べてみたけど、けっこう奥が深い技術だよね。
今となってはどういう化学反応が起こることで丈夫で長持ちな革になっているかがわかっているけど、それを経験的に試行錯誤の末に培ってきたんだからすごいものだよ。
革製品って身近なものだけど、あなどれないよね。

2010/03/06

とろっとした乳

春が近づいてきて、八百屋さんやスーパーでもイチゴをよく見かけるようになってきたのだ。
お菓子でもイチゴ味のものが季節限定で増えるんだよね。
で、イチゴと言えば日本人におなじみなのがコンデンスミルク。
ボクは酸味があるのが好きなのでそのまま食べることが多いけど、コンデンスミルクをかけて濃厚な甘みを楽しむ人も多いよね。
でも、このコンデンスミルクって、加工乳なんだろうな、ということはわかるんだけど、どういうものなのかよく知らなかったので、ちょっと調べてみたのだ。

いわゆる「コンデンスミルク」と呼ばれている缶やチューブに入ったどろどろの乳製品は、食品衛生法に基づく厚生労働省令の「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(通称「乳等省令」)」においては「加糖練乳」と定義されているのだ。
乳脂肪分8%以上、乳固形分28%以上、かつ、すべての糖分58%以下というのが成分規格なんだとか。
これを見ただけでも、カロリーが高そうだよね、半分以上が糖分なわけだし。
英語ではsweetened condensed milkというらしいので、コンデンスミルクというのは和製英語みたい。

甘みの強い乳製品というイメージがあるけど、もともとは糖分を加えて浸透圧を高くすることで雑菌の繁殖を抑え、保存性を高くするために作られたらしいのだ。
一般的には牛乳に砂糖を加えて煮詰め、液体に光沢が出てきたくらいで加熱を止めて冷却。
しばらく寝かせておくと粘性の高いコンデンスミルクができあがるのだ。
しょ糖(砂糖)は結晶化せず、乳糖は最小限の結晶となる限度まで糖分を添加しているそうで、ぎりぎりでざらつき感のない、粘度の高い乳液にしているんだって。
もともと保存用なのでむかしのものは容器に充てん後の加熱殺菌は行っていなかったようだけど、今は耐熱式のチューブなんかもあるので加熱殺菌後に出荷することが多いみたい。

日本ではイチゴにかけたり、かき氷にかけたりというのが一般的だけど、ベトナムコーヒーではコーヒーミルクの代わりに使うんだよね。
生クリームを入れるウインナーコーヒーよりもさらに甘く、濃厚なミルク感のコーヒーになるのだ。
今はジョージア・ブランドの一員になっているマックスコーヒーもコンデンスミルクを入れることで甘さと濃厚さを売りにしていた缶コーヒーだったんだよね。
当初は新鮮な牛乳が得られないところで水やお湯で割って飲んだりしていたらしいんだけど、さすがに流通が発達してたいていの地域では生乳が手にはいるようになったので、今ではそういう使い方をすることはないのだ。
粉状の脱脂粉乳だと食品材料としてよく使われるんだけどね。

コンデンスミルクは、加糖練乳というくらいなので、糖を加えない練乳もあるのだ。
それが無糖練乳。
こっちは乳等省令で「濃縮乳であって直接飲用に供する目的で販売されるもの」とされていて、その規格は「乳脂肪分7%以上、乳固形分25%以上、かつ、細菌数0」なのだ。
コンデンスミルクと違って過剰な糖分で雑菌の繁殖を防げるわけでないので、「細菌数0」という基準が加わるんだよね。
一般的には、牛乳を加熱殺菌して半分くらいになってとろみがつくまで煮詰め、それを感などの容器に封入してさらに加熱殺菌をするのだ。
生乳を煮詰めるだけでなく、脱脂粉乳やカゼイン(乳タンパク)などの粉末乳製品や植物性脂肪、増粘多糖類(いわゆる寒天のようなもの)を加えて風味を付けるものが多くなってきているとか。
そのものを見かける機会はあまりないけど、ホワイトソース(ベシャメルソース)やミルク風味のお菓子の原料に使われることが多いみたい。
これは英語でevaporated milkと呼ばれるので「エバミルク」と呼ばれることもあるけど、ときどき飲食店で業務用の「エバミルク缶」を見かけることがあるよね。

練乳はさらに奥が深くて、糖を加える・加えないだけでなく、生乳原料が脱脂乳原料かの違いもあるのだ。
脱脂乳に糖を加えて煮詰めれば加糖脱脂練乳、そのまま脱脂乳を煮詰めれば無糖脱脂練乳。
コンデンスミルクもエバミルクも規格上乳脂肪分の基準があるので、脱脂乳由来の練乳は別のカテゴリーにわけないといけないんだよね。
乳脂肪少なめ或いは脂肪0とうたった乳製品・ミルク風味食品に使われるみたい。

日本ではあまりなじみがないけど、コンデンスミルクをさらに火にかけて煮詰めていくとできるのがミルクジャム。
南米ではドゥルセ・デ・レチェとして知られるキャラメル風味の乳製品なのだ。
キャラメル風味だけど茶色くなるのは糖同士が重合反応をしていくキャラメリゼ(カラメル化)ではなく、糖とアミノ酸が反応するメイラード反応なんだって。
トーストやごはんのおこげ、黒ビールやチョコレートの色素と同じようなものだよ。
キャラメルは生クリームに水飴、砂糖、バターなどをまぜて加熱しながら練り上げるので、できあがった姿は似ているけど別物なのだ。
キャラメルがソフトキャンディとして主に食されるのに対して、ドゥルセ・デ・レチェはそのまま固めて食べるだけでなく、スプレッド(ピーナッツバターのようにパンにぬるもの)として使ったり、お菓子の原料にしたりするみたい。

というわけで、意外に牛乳を濃縮しただけのように見えても広がりがあるのだ。
乳製品は発酵させたり、乳脂肪分を分離させたりといろいろと加工されるけど、加熱濃縮に糖分添加でさらにバリエーションが広がるんだねぇ。
日本ではそんなに乳製品を食べてこなかったのでよくわからない部分も多いけど、それこそ欧米の文化では牛乳を使い尽くす的な発想があったんだろうね。
感心するのだ。

2010/02/27

水は腐る?

よく「水が腐る」というけど、これって食品が腐敗する「腐る」とはちょっと意味合いが違うよね。
食品の場合は、脂肪が酸化したり、タンパク質が分解されたりしていって異臭を放ったり、糖分が酸化されてカルボン酸ができて酸味が出てきたりすることを指すけど、水はもともと元素記号でもHOなので、そんな分解をするわけはないのだ!
でも、なぜか「水は腐る」というし、実際に「腐った」と言われる水は変なにおいや味がするんだよね。
で、それはなぜかなぁ、と疑問に思ったので、少し調べてみたのだ。

端的に答えを言うと、水が腐る、といった場合、その原因は水自身ではなくて、水の中に含まれる不純物によるのだ。
密閉された容器に入っていない場合、空中からほこりなどが落ちてはいるし、いつのまにかアメンボがいたりするよね。
夏にはボウフラがわくこともあるのだ!
けっこう風に運ばれていろんなものが混入しているようで、水の中に不純物が増えていくというわけ。

その不純物の中に有機物が含まれていると、それが分解されて異臭・異味の原因となるのだ。
当然、有機物の分解が行われているので、そこにはバクテリアやカビなどの雑菌が繁殖しているわけで、そういう水を飲むとバクテリアやカビの毒素でおなかを壊したりもしてしまうのだ。
そういう細菌だけでなく、アオコといわれるらん藻が繁殖して水の色が緑色になることもあるのだ。
水が循環しない溜池などではよく発生するアオコだけど、水の表面がらん藻に覆われることで水中に日光が届かず、そのために水中に生息している緑藻や水草が光合成できなくなって水中の酸素が欠乏し、多くの生物が死滅するのだ。
そうするとそれらが分解されて異臭が出てくるわけ。
さらに、アオコの種類によっては独特の臭みを持つ物質を水中に放出するし、毒素を出すものもあるので、水の品質は格段に落ちてしまうのだ・・・。

これを防ぐためにも、公園にあるような大きな池では、水を循環させるように噴水などの装置があったり、用水路から水を流入させたりして溶存酸素を増やしてそういう事態が起こらないように気をつけているんだ。
また、洗剤などが含まれた生活排水が流入すると、その中に含まれる有機リンやカリウムが栄養源となってアオコが繁殖しやすくなるので、下水処理も重要なんだよね。
都心でどぶ川やヘドロ沼が減ったのもそういう努力が実ったのだ。
琵琶湖くらい大きいとなかなかその努力は実らないけど、むかしに比べたらかなり水質はよくなっているそうだよ。

でも、そういう開放系の水だけでなく、街中でネコよけ(?)に置かれているペットボトルに入った水も「腐っている」ことがあるよね。
上の話からすると、新たに浮遊物が落下して不純物が混入することはないので、「腐る」ことはないような気がするんだけど、そんな甘いものではないんだよね(笑)
水道水の場合、上水道の浄水では、沈殿・濾過、オゾン処理(オゾンにより化学物質を分解除去する。)、活性炭吸着処理(有機物などを活性炭が吸着除去する。)などをして水質を保っているんだけど、それでも微量ながら不純物は残っているのだ。
かつては東京の金町浄水場や大阪の淀橋浄水場の水道水はくさいと言われたけど、それは水道水中に含まれる不純物に由来しているんだよね。
水道水にはカルキ(次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カルシウム)が加えられていて、その強い酸化力で殺菌されているんだけど、カルキは煮沸で簡単に除去されるし、普通にそのまま放置しておいても徐々に抜けていくので、その殺菌力は持続しないのだ。
なので、そのまま水道水を放っておくと、不純物として含まれている有機物が分解され、結果、水が腐るという事態も発生するわけ。
特に水道水の場合は蛇口から出るときに細菌にふれる可能性が高いので、その後密閉容器に入れてもムダなのだ!
湯冷ましなんかはカルキが完全に抜けているので特に危険だよ。

一方、ペットボトルに入れて売られている天然水などは、目の細かいフィルターを通したりすることで雑菌を可能な限り除去しているのだ。
家庭用の浄水器も同じような原理だよ(家庭用浄水器はイオン交換カラムで水道水中の塩素を除いたりもしているのだ。)。
これによって、開けない限りは腐ることはほぼないのだ。
時々異物混入が問題になるけど、あれはペットボトルにつめる際の不手際だよね。

さらに純度が高いのは注射薬や点滴に使われる医療用の精製水。
これは完全に雑菌を除去した状態が求められているので、蒸留・濾過に加えてイオン交換などを駆使して無味・無臭の本来の水の状態にもってきているのだ。
それでも不純物としてのイオンなどは含まれているんだよね。
さらに精製を進めると化学実験に使う純粋になるけど、こうなると純度は99.999・・・%となるのだ。
IC工場のクリーンルームでチップの洗浄に使われる超純粋になると、小数点以下に9が10個以上も続くような純度だよ!
こうなると「腐る」なんてことは絶対にないのだ。

というわけで、「水が腐る」というのは水の中に含まれる不純物の問題なので、それをどう評価するか、というだけの話なんだよね。
自分でも蒸留とかして純度を高めることはできるけど、要は水道水の中にも「腐る」原因になる不純物はどうしても含まれるので、そのリスクを承知した上で取り扱う、というのが正しい姿勢のような気がするよ。
できるだけ腐らないように気をつけつつも、腐ること前提で取扱に注意するしかないのだ。

2010/02/20

滑り滑れば

冬季五輪真っ盛りだねぇ。
普段はフィギュアスケートくらいしか話題にならないけど、さすがにオリンピックだと他の競技も注目を集めているよね。
欧州では常にスキー競技は人気があるようだけど。

そんな中、ボクが気になるのはスキーやスケートの滑る原理。
長野五輪の時は、よく滑るようにとスケートリンクに特殊な氷を敷きつめていたけど、「滑る」というのは冬季五輪の競技の大きなキーワードだからね。
スピードスケートもスケート靴の刃(ブレード)の技術開発でけっこうタイムが変わってくるらしいし、スキーも板の材質・形状やワックスとの相性なんかでかなり違うらしいのだ。
というわけで、今回はそもそもの「滑る」原理を調べてみたよ。

ところが、ちょっと調べただけですぐわかるのは、スキーにしろ、スケートにしろ、一般的な説明はあっても、きちんと科学的には証明されていないようだ、ということ。
スピードが上がるとかきれいにターンできるとかの現象面が重要だから、そういった技術は向上していっても、なかなか原理的な部分を詳しく調べようとしないのかもね。
今はどうも経験則的にトライ&エラーで試しながら技術を向上させているようなのだ。
確かに、原理がわかってもなかなかそれが技術に結びつくわけでもないんだけどね。
とは言え、一般論としてわかっているのは、どちらも接触面に液体の水ができて、それで滑っているということ。

雪や氷の上では、タイヤだと滑ってしまってうまく前に進めないよね。
これは、タイヤの場合は、タイヤと地面との間の摩擦力を利用してタイヤの回転運動を直線的な前進運動にしているのだ。
タイヤの接地点が地面の上で滑ってしまうといわゆる「上滑り」になってしまって、前に進まないというわけ。
つまり、このときに重要なのは静止摩擦力で、タイヤ自体は地面の上を滑ってはいけないのだ!
摩擦が大きければ大きいほど回転力が推進力に効率的に変換されるのだ。

一方、逆にうまく滑ることで逆にそれを推進に使ってしまおうというのがスキー。
スキーの場合、ある程度面積のある板で接地しているわけだけど、それが地面の上で滑ることが重要なのだ。
よく言われるのが、スキー板が雪上を滑る際、その摩擦熱で表面の雪がとけて水になり、薄い水の膜ができて、その上を滑っていく、というもの。
自動車がぬれた路上で滑るハイドロプレーニング現象と同じようなイメージだよ。
このときは、静止摩擦ではなくて動摩擦で、摩擦が小さければ小さいほどよく滑るのだ。
なので、スキーの場合はよく滑るようにワックスを塗ったりして摩擦を小さくし、、タイヤの場合は滑らないようにタイヤの表面に溝を彫って摩擦を大きくするのだ。
ちなみに、ワックスは水をはじくので、「ぬれ」による摩擦の増加を防ぐのだ。
板の表面にべったり水がついてしまうと、水の粘性の分だけ摩擦が増してしまうんだけど、表面に水が付着しなければそれが防げるのだ。

接地面が少ないとスキー板が雪の中に埋まってしまうので、スキー板は細く長く作られているのだ。
こうすると、体重が分散されて雪面にかかるんだよね。
埋まらないようにするためにはかんじきのように面積を稼げばいいんだけど、スキー板のように細長くすると方向性が出てきて、直進性がよくなるのだ。
スキージャンプなんかは滑ってスピードも出るし、滑空時にも翼の役割をするので長いスキー板が使われるよね。
でも、実際には雪面は平らではなく、でこぼこしているので、小回りがきく必要もあるのだ。
そのためにモーグルの場合は小ぶりの板で、しかも、板自体に柔軟性があってこぶなどを飛び越えた後の衝撃を吸収するようになっているみたい。
ただ滑ればいいってもんじゃないんだよね。

これに対して、スケートは氷の上に溝を掘りながら滑っていくんだけど、そのとき、摩擦熱で溝に液体の水がたまり、それが潤滑油になって摩擦を小さくしているのだ。
固くなった窓サッシに油をさすとよく動くようになるのと同じ原理。
スキーは水の膜の上を滑るイメージだけど、こちらはあくまでも溝の中を滑るので、接地面は少ない方が摩擦が少ないのだ。
スキーと同じように使用目的でいろんな形があって、主要なのはフィギュア、スピードスケート、アイスホッケーの3種類。
フィギュア用はブレードもこぶりで、つま先にトウピックと呼ばれるギザギザのひっかける部分があるのだ。
ジャンプの時はここをひっかけるんだよね。
スピードスケート用は長いブレードでスピードが出るようになっているのだ。
アイスホッケー用は小回りがきかないと行けないので、ブレードは短いんだよ。

実は、カーリングも同じような話で、あれはストーンと呼ばれるとってのついた石を氷の上で転がしていかに正確に目的地点まで滑らせるか、という競技だけど、ここでも滑りが重要なのだ。
カーリングのストーンを誘導する際、一生懸命にブラシで氷をこするんだよね。
そうすることで、摩擦年で氷がとけ、でこぼこな氷の表面がなめらかになり、よく滑るようになるのだ。
さらに、こすったところだけが滑りやすくなるので、自然とストーンはこすった部分の上を滑っていくことになるわけ。
これで進行方向の修正なんかもできるようになるんだ。
で、ある程度行ったところでこするのをやめると、そこから急に摩擦が強くなるので、今度はブレーキがかかるというわけ。
つまり、滑りやすい「道」を作ってやって、その上でうまくストーンを誘導するのだ。

というわけで、いずれもキーワードは水と摩擦なんだよね。
でも、それぞれ滑り方に特徴があるのだ。
スキーの雪面はどうにもできないけど、スケートのリンクの氷は結晶を大きくして方向性をそろえることで「よく滑る」高速リンクを作ることができるので、そういった面で改良できたりもするんだ。
滑るだけと思っても、なかなか奥が深いのだ。

2010/02/13

回収して修理!

ここのところ「リコール」が話題になっているねぇ。
もちろん、地方自治体の首長の辞職を求める解職請求のリコールじゃないよ(笑)
今回話題になっているのは欠陥があったり、重大な問題がある製品を回収する仕組みの方なのだ。

このいわゆる「リコール」には2種類あって、法令に基づいて行われるものと、企業の自主的な判断で行われるものがあるのだ。
リコールした場合、欠陥や不具合、問題となる事項を公表した上で製品を回収し、修理や交換、返金をしなくちゃいけないので、企業側にはかなりの負担となるんだけど、企業イメージを悪化させないようにするために行われることが多いのだ。
早めに対応することで誠意をもって対応しているイメージができるし、被害の拡大も防げるわけ。
どのみち、製造物責任法(PL法)上の責務は生じているので、なんらかの対応は追って必要なのだ。
後手後手に回るとダメージも大きいし、ろくなことがないんだよね・・・。
なので、企業側にもそういう欠陥・不具合を隠そうとするインセンティブだけでなく、早めに対応してしまおうというインセンティブも働くのだ。

法令に基づくリコールにも2種類あって、ひとつは今回話題になっている自動車関係のものと、その他の一般のものがあるのだ。
自動車の方は、原動機付自転車なども含めて原動機(エンジン)のついた車両を対象とするもので、道路運送車両法第63条の3に基づく制度。
自動車はもともと保安基準に適合してものだけが公道を走ることができるんだけど、そのために車検の制度があって、ナンバープレートがないと公道を走れないし、定期的に車検の制度に出さないといけないのだ。
でも、その保安基準に適合していないことが発覚した場合や適合しなくなるそれがあることが判明した場合、事前に国土交通大臣に届出をした上で、無償で自動車を回収し、修理を行わなければならないのだ。
これが一番厳しいリコール。

保安基準は適合しているとしても、安全上や公害の防止上放置しておくのがよくない、と判断された場合、やっぱり国土交通大臣に届出をした上で、無償で回収・修理を行うこともあるのだ。
この場合は「改善措置」と呼ばれるんだけど、リコールほど重大でなくても看過できないような欠陥・不具合が判明した際にとられるよ。
さらに軽微な、品質の改善などの目的で無償で修理などを行うことがあって、これは「サービスキャンペーン」と呼ばれるんだ。
改善措置の場合は放っておいたとしてもその対象となる自動車は保安基準上は問題ないので走り続けることはできるんだけど、リコール対象の場合は保安基準適合に問題があるのでそうもいかず、まさに徹底的に回収・修理しないといけないんだよね。
これは企業的には経済的にも企業イメージ的にも相当のダメージになるので、「リコール隠し」が行われて、「改善措置」や「サービスキャンペーン」のフリをすることがあるんだ。

その他の製品の場合は消費生活用製品安全法第39条に基づいて回収されることがあるのだ。
過去に実際に行われたのはパナソニック(ナショナル)の石油ストーブとパロマの湯沸かし器の例だよ。
こちらは消費者保護の観点から、消費者の身体又は生命に危害が発生するのを防止する目的での措置。
自動車の場合、乗っている人(消費者)だけでなく、その周囲にいる人(他の自動車や歩行者などなど)のことも考慮されていて、これとは少し考え方が違うのだ。
交通全体の安全を見ているので、もう少し幅広いんだよね。
で、こっちの制度の場合、所管の経済産業大臣が回収命令を出し、その旨を公表するというスキームになっていて、企業側が公表して行うという自動車の制度とまた異なっているんだよね。
むしろ、企業側が自主的にやらない場合に強制的に回収を命じることになるので、適用例は少ないのだ。

自動車もそうなんだけど、これらのリコール制度の対象は国内で製造されたものだけでなく、輸入されたものも同じ。
輸入品の場合は輸入し、販売した代理店がこのリコールの責務を負うことになるよ。
自動車の場合はまだよいんだけど、一般商品の場合は海外製とかだとそもそも海外の製造企業側から情報が得られなかったりして、手こずることが多いのだ。
ある国の場合、製造過程には問題ない、流通過程の問題だ、なんて主張するしね。

このほか、医薬品や食料品の回収もあるよね。
あまりリコールとは呼ばないけど。
医薬品の場合は薬事法、食料品の場合は食品衛生法で規制の枠組みがあるけど、入っていてはいけないものが入っていたりした場合に回収されるのだ。
つい最近も冷凍食品に農薬が混入していたりとかの事件があったよね。
こんにゃくゼリーのように食べる際の安全上に問題がある場合に回収される場合はむしろPL法の世界で、事前にそういうリスクがあることを言っておかないことが悪い、ということになるんだよね。

というわけで、にわかにクローズアップされているリコールの問題だけど、実はいろんなところで同じような枠組みがあるんだねぇ。
自分の身を守ることにもなるので、ある程度は知っておいた方がよさそうなのだ!
この頃は安かろう悪かろうの商品がはびこっているようだからね・・・(>_<)

2010/02/06

今年もしっかり予習しよう♪

去年の今ごろも予習をしていたけど(笑)、今年も来週のバレンタインデーに備えてチョコレートについて予習をしておくのだ!
だからと言って何があるわけじゃないんだけど・・・。
こういう機会でもないとよくわからないまま過ごしてしまうしね。
というわけで、まだまだ奥が深いチョコレートについて調査をしたのだ。

チョコレートの主原料であるカカオは中南米の原産で、紀元前から中央アメリカの文明では薬用や滋養強壮に飲まれてきたのだ。
このころは単純に乾燥させたカカオ豆を粉砕して粉にし、お湯にといただけのもの。
そのままではかなり苦いので、タバコと同じような嗜好品という扱いだったみたい。
コロンブスさんによって米大陸が「発見」されると、じゃがいもやトマト、トウモロコシのような新大陸野菜、唐辛子のような香辛料、タバコの葉のような嗜好品とともに欧州はスペインに伝わったのだ。
ここで西洋にカカオが伝わったわけ。

これが16世紀で、最初は現地と同じように苦いまま飲まれていたらしいんだけど、しばらくすると、メキシコにいた宣教師によって砂糖を入れて飲みやすくする工夫が考案されたのだ。
これでかなり飲みやすくなったわけだけど、スペインが中南米を征服してカカオが手に入りやすくなるとスペイン国内で爆発的に普及したようなのだ。
王族・貴族だけでなく、庶民の間にも広まっていったみたい。
でも、このころはスペインから門外不出(?)になっていて、今ではチョコレートで有名なフランスやベルギー、オーストリアには伝わっていなかったのだ!

転機はフランス王ルイ13世がスペイン王家から王女を后として迎え入れたこと。
嫁いできたアナ・マリーア・マウリシアさんは大のチョコレート好きで、チョコレートを飲む道具とチョコレート職人(ショコラティエ)をフランスにもたらしたのだ。
当時の欧州では各国の王族は婚姻関係を結んでいたので、これを皮切りに欧州の王族・貴族などの上流階級の間でチョコレートが広まっていったそうだよ。

19世紀になると、オランダのバンホーテンさんがチョコレートを粉末にする特許を取得するのだ。
これはチョコレートをココアパウダーとカカオバターに効率的に分離する技術。
ココアのバンホーテンはここで生まれたんだよ!
で、それまでのチョコレートは生のカカオを粉末にしてお湯でといたもので水がないと濃厚すぎて飲めないようなものだったらしいんだけど、この発明のおかげでぐんと飲みやすくなったのだ。
これが現在のホットチョコレートだよ。

さらに、19世紀も中盤にさしかかると、英国で固形の食べるチョコレートが発明されたのだ。
これは砂糖しか入っていなくてまだまだ苦く、普及しなかったらしいんだけど(カカオ85%以上のチョコレートを思い浮かべればわかるよね。)、スイスで粉乳を混ぜたミルクチョコレートができると、かなり今のチョコレートに近いものとなったのだ。
当時は舌触りがざらざらしたものだったらしいけど、なめらかにする工夫がなされ、今のチョコレートの原型ができたのだ。

ここから今のようなバリエーション豊かなチョコレート文化が花開くんだけど、チョコレートに生クリームや洋酒、果物由来の香料などを混ぜてよりなめらかに、やわらかくしたのが生チョコレート(チョコレートガナッシュ)。
一口大のガナッシュをクーベルチュールと言われる製菓用のチョコレートでコーティングするとフランス名物のボンボンショコラになるのだ。
ボンボン菓子は殻でナッツやフルーツを包むお菓子のことで、砂糖の殻でウイスキーを包んだウイスキーボンボンが日本ではメジャーだよね。
チョコレートで包んでいるのでボンボンショコラなのだ。

一方、ナッツなどを砕いて砂糖と混ぜ、カラメル化させたものがプラリネ。
米国ではそのまま固めてキャラメルのように食べるけど、欧州ではこれをチョコレートでコーティングして食べたり、ケーキの飾りにしていたのだ。
で、いつしかチョコレートコーティングのものがメジャーとなり、ベルギーやドイツで売られているチョコレートプラリネになったわけ。
今ではナッツでなくてもプラリネと言うことがあるけど、本来的にはヘーゼルナッツとかを包んであるものがプラリネなのだ。
ちなみに、最初にプラリネをチョコレートでコーティングしてプラリンを作り出したのが、ベルギーの名店・ノイハウスなんだって。

オーストリアのホテル・ザッハでは濃厚なチョコレートをたっぷり使いながら、あんずジャムの酸味でさわやかを加えたザッハトルテが考案され、チョコレートケーキの王様となるのだ。
もともと門外不出の味とされたんだけど、ホテル・ザッハが経営難に陥ったとき、ウィーン王室御用達だったケーキ店のデメルからお嫁さんをもらい、財政援助をしてもらう際、レシピが流出。
ここからザッハトルテの商標をめぐるホテル・ザッハとデメルの「甘い戦争」が始まったのだ。
それにしても、商標をめぐって争いが起きるほどすでにザッハトルテのブランド力はすごかったということだよね。

こうして欧州では上流階級を中心にいろんなチョコレート菓子が作られていくことになったのだ。
日本ではついこの間まで普通のお菓子として売っているチョコレートが主流だったけど、海外のおしゃれなチョコレートが多く入ってくるようになってかなり様相が変わってきたよね。
もはや進駐軍にギブミーチョコレートといって甘くてくどいむかしながらのハーシーズの板チョコをもらう時代ではないのだ!
数十年前からそうだけど(笑)