2008/03/09

解熱鎮痛剤と麻酔薬

うちの大家さんが首を痛めてしまったようで、たいそうなコルセットをつけていて、とても苦しそうなのだ。
やっぱり痛いみたいで、痛み止めでアスピリンを飲んでいるんだよね。
早く治ってくれるいいけど。

で、いわゆる痛み止め薬として市販されているものは非ステロイド生解熱鎮痛薬(NSAIDs:Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)で、銭湯の桶でおなじみのケロリンなんかにも入っている19世紀から使われている薬のアスピリンをはじめとして、バファリンなんかの頭痛薬に入っているエテンザミド、かぜ薬によく入っているアセトアミノフェンやイブプロフェン、筋肉痛のぬり薬なんかに使われるインドメタシンなんかが代表的な薬剤だよ。
アスピリンだけはちょっと作用機序が違うのだけど、基本的にはシクロオキシゲナーゼ(COX:Cyclo-oxygenase)という酵素の活性を阻害するのだ(アスピリン以外は酵素の活性部位で本来の基質と競合するんだけど、アスピリンだけは酵素の活性部位をアセチル化することで阻害するのだ。)。
最初の薬のアスピリンが発見されたのは19世紀前半で、もともと柳の葉が鎮痛効果があると民間薬で使われていたんだけど、その中から有効成分としてサリチル酸が取り出されたのだ。
でも、このサリチル酸はそのまま薬として服用すると副作用が強くて、どうにか改善できないものか、と試行錯誤の上で出てきたのが、サリチル酸をアセチル化したアスピリンで、アセチルサリチル酸のことなんだよね。
アスピリンという名称はもともと商品名だったんだけど、これを開発した製薬企業のバイエルのあったドイツは第一次世界大戦で負けてしまい、このアスピリンに関する商標などもそのときに無効にされ、アスピリンという名称も一般名称にされてしまったんだ。
今でも日本のCMでアスピリンの開発から140年とかいうバイエルの宣伝があるよね。

で、このCOXという酵素は、細胞膜にある脂質のアラキドン酸からプロスタグランジンという物質を作っていて、これが実は痛みを増幅させるメディエーターとして作用するのだ。
なので、COXの活性を抑制してプロスタグランジンができないようにすると痛みが増幅されず、それにより、本来もっといたいはずのものがそんなに痛くない状態になるというわけ(アセトアミノフェンだけは中枢神経に作用していると言われているんだけどね。アセトアミノフェンだけはむかしから作用がマイルドだったので作用機序が違うと言われていたのだ。)。
ポイントは痛みのもとそのものを抑えているわけでない、ということなのだ。
でも、このプロスタグランジンには他にも作用があるので、それが同時に抑えられると副作用になるわけ。
胃が荒れたり、腎臓に悪影響が出たりするのが代表的なのだ。
でも、COXという酵素にはサブタイプで1と2があって、炎症反応などの場合は2が活躍していて、恒常的な昨日については1が担当していると言われているんだよね。
なので、最近は2だけを抑制するような薬を開発して、副作用を少なくしようという試みがなされているのだ。
プロスタグランジンは病気のときの発熱反応にも関係しているので解熱剤としても使われるんだけど、それは炎症反応系のCOX-2が関与していることがわかっているのだ。
でも、痛みの場合はどっちが効いているのかよくわからないのだ。
たぶん、2の方だと思うんだけどね。

一方、麻薬などにも使われるモルヒネなどの鎮痛剤は中枢神経内のオピオイド受容体に作用して痛みの伝達自体を止めてしまうのだ。
なので、NSAIDsとは違って、痛みが完全に遮断されるというわけ。
でも、中枢神経系に作用するがために、麻薬にも使われてしまうんだ。
いわゆる多幸感(とてつもなく気持ちよくなる)という効果なんだけど、ヘロインやコカインなんかの麻薬の場合、鎮痛効果はそれほどなくて、多幸感の方の作用の方が強いんだって。
でも、逆にそのことで禁断症状もとてつもないものになっているのだ。
本当に耐えきれないような疼痛を抱えている人にはイクラモルヒネを投与しても麻薬中毒症状は出ないとか言うけど、そういう危ない面もあるので使うには特殊な処方せんが必要なのだ。
覚醒財形は緑色の処方せんで、麻薬系はピンク色の処方せんなんだよ。

いずれにしても、麻薬系の鎮痛剤は市販では手に入らないので、とりあえずはNSAIDsで許容できるレベルまで痛みを抑えるので我慢するしかないのだ。
でも、我慢しなくなると人間はこらえしょうがなくなるから、思いどおりにならないようなことがどこかにはあった方がいいのかもしれないけどね(笑)

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