2008/03/21

一音一字じゃないっ!

ボクは最近浮世絵とか江戸時代の絵が好きになってよく見るようになったんだけど、そこにはちょっとした字が書いてあったりするんだよね。
でも、たいていは「うねうね」している字で書いてあって判読できなかったのだ。
で、読みたくなったので少し勉強してみたんだけど、これがびっくり!
読めなかった理由は崩し字が読めなかったことだけじゃなかったのだ。
そこには今では既に使われていない仮名が使われていたんだよね。

今のひらがなは「ん」と歴史的仮名遣いの「ゐ」、「ゑ」を入れて48文字だけど、なんとこれは明治になってから(1900年)決めた小学校令の中で定められたもので、それまではひとつの音に対してひとつの仮名ではなかったのだ。
いわゆる「変体仮名」と呼ばれるものだけど、今でもおそば屋さんの看板で読めない「きそば」という文字があるよね。
まさにあれが変体仮名で、「そば」は「楚者」を崩し字で書いてあるんだ。
落語の名人古今亭志ん生さんの「志」も別に感じじゃなくて、「し」の音の変体仮名の「志」なんだよ。
浅草にあるどら焼きの隠れた名店「おがわ」も、「が」は「可゛」なんだよね。
で、こういう今は使われない変体仮名があるから、さらに読みづらいというわけ。

もともと今の平仮名は漢字の草書体をさらに崩して作られ、形が整えられたものなんだよね。
で、その崩し途中の字やら、別の字を崩したものが変体仮名なのだ。
「あ」は「安」の草書体からできているけど、「阿」からも変体仮名ができていたりするわけ。
で、別にこれは違う音で発生していたわけじゃなくて、特に使い分けもなく、描きやすさやくせで使い分けていたようだよ。
平安時代はもっと多くの変体仮名があって、江戸時代にはかなり減っていたみたいだけど、それでも100字以上はあったみたい。

もともと奈良時代より前は、日本の正式な文章は漢文で書いていたのだ。
なので日本の正史の日本書紀はすべて「漢文」で書かれていて、今の岩波文庫版なんかはその読み下し文なんだよね。
一方、万葉集なんかの歌謡は「和文」で大和言葉も使われて書かれていて、正史として書かれなかった古事記は漢文風だけど大和言葉が混じっているみたいなのだ。
でも、奈良時代の万葉仮名は今で言う仮名とは違って、表意文字として使う感じと表音文字として使う感じ(これがいわゆる万葉仮名)が混ざっていて、見た目はただの漢字の羅列なのだ。
なので、これを読むにはどれが仮名として使われている感じかを見極めないといけないんだよね。

平安時代くらいになると女性を中心に仮名書きが行われるようになるんだけど、仮名がかなり発達してきて、よく使う仮名は崩した字で書かれるようになるのだ。
これはよく使うからどんどん崩されていって、感じとして使われる文字とだんだん特別がつくようになってくるんだよね。
こうして仮名が成立するんだけど、音を表せばいい、という発想でもともと万葉仮名が作られたからか、一音一字でなくて、一音に対して様々な字が仮名として使われるようになったみたい。

でも、それだと不便なので、明治政府は一音に対して仮名を一字と定め、今の仮名が誕生したのだ。
これでだいぶ読みやすくなったし、活字なんかにもしやすくなったんだよね。
江戸時代の木版も活版印刷だけど、崩し字をそのまま画像のように彫り込んでいるだけなので(今で言うとPDFの発想に近いね。)、活字とは言えないんだよね。
でも、それでも江戸時代の識字率は世界で一番だったというから、むかしの人はすごいのだ。
あのうねうねしていて、さらにいろんな仮名の交じった文章を読んでいたんだよね。

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