2007/05/14

新大陸の野菜たち

韓国の伝統料理っていうと、キムチやチゲみたいに唐辛子のきいたからいものを想像するよね。
でも、実はこれはずっとむかしからそうだったわけではないのだ。
というのも、唐辛子やピーマン、パプリカ(いわゆるペッパー。基本的には、全部植物学的には同じ種なんだって。栽培種としての亜種なのだ。)は、中南米が原産の植物で(メキシコと言われているよ。)、ヨーロッパ人が新大陸で発見して、世界各地に広めるまではどこにもなかったものなのだ。
インドでも辛い香辛料を多く使うけど、唐辛子はなかったんだよ!

朝鮮半島に唐辛子が伝わったのは戦国時代末期で、豊臣秀吉さんの朝鮮出兵の時に加藤清正公が持ち込んだという伝説もあるのだ。
いずれにせよ、16世紀の終わりころなのは間違いないみたい。
なので、それまでの朝鮮半島の料理は辛いわけじゃなかったんだよ(今でもサムゲタンのような辛くない韓国料理もあるよね。ああいうのが伝統的な料理みたい。)。
朝鮮半島の北の方は、岩塩が少し取れるくらいで慢性的な塩不足に悩まされていたらしいんだけど、唐辛子に含まれる辛み成分のカプサイシンは、塩分が少なくても味覚として満足させる効果があるので、塩分を控え目でものをおいしく食べるために使われ始めたのだ。
中国の南にあるブータンも内陸部で塩が貴重品なので、同じように唐辛子を使った辛い料理が多くて、ブータン料理は世界一辛い料理とも言われているんだよ。
インドとかはとにかく暑いから香辛料を使って辛いものを食べる、ということだけど、朝鮮半島やブータンの料理が辛い理由とは違うのだ。

新大陸原産の野菜といえば、他にも、ジャガイモやトマト、トウモロコシなど、今は世界中どこでも使われているようなものがあるんだよね。
でも、どれも16世紀まではまったく使われていなかったのだ。
特に、ジャガイモとトウモロコシは貧困な土地でも栽培できるので、世界各地で重要な食料となったんだよね。
ヨーロッパでは、アイルランドやドイツのような土地がやせた国の大事な食糧源となったのだ。
イタリア料理もトマトが代名詞だけど、伝来前はトマトのトの字もなくて、たぶん、オリーブ・オイルを塩味が中心の料理だったはずなのだ。
トマトが伝わって一気に花開いたって感じなんだろうね。

ちなみに、ジャガイモは、日本へはオランダ船がジャカルタ経由で伝えたので、「じゃがたらいも」と呼ばれるようになり、それが「じゃがいも」となったのだ。
馬鈴薯というのはその形が馬につける鈴に似ているからだよ。
トマトは、最初は観賞用植物として伝わったんだけど(青臭くて食べられるようなものでもなかったみたい。)、明治以降に品種改良が進み、一般の家庭の食卓に入ってきたのは昭和になってからだって!
トウモロコシは明治期に北海道に導入されたらしいよ。
「トウ」は「唐」で外来品を指す言葉、「モロコシ」は「唐土」でやっぱり外来品を指す言葉なので、なぜか重なっているのだ。
ちなみに、漢字では「玉蜀黍」と書くんだよ。(「蜀」は「唐」と同じで外来品を指す言葉で、丸い実の外来のキビということなのだ。)

トマトは最近フルーツトマトなんていう甘くて青臭くない品種も出てきているけど、もともとは乾燥した高地にはえていた植物なんだよね。
で、そこに注目したのが永田農法(漫画「美味しんぼ」では「緑健農法」という名前で出てくるよ。)で、極力水を与えないで、かつ、肥料も最低限のものにして育てるのだ。
そうすると、今まで青臭いと言われていた品種でも、甘みの濃い、おいしいトマトができるそうだよ。
品種改良をしなくても、栽培法を工夫することで、おいしいトマトが作れるのだ。
これって、なんだかちょっと考えさせられちゃう話だよね。

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